アベノミクスの評価が揺れています。5カ月連続で賃金マイナス。厚労省の「勤労統計」で浮き彫りに – まぐまぐニュース!によれば、2019年の5月までにすべての月で「実質賃金・名目賃金ともに前年比マイナス」だそうです。
前々から私は「失業率の低下は、アベノミクスの成果ではない」「2010年からの、民間の自立回復のおかげだ」を主張してきました。
また2016年辺りからの景気拡大は、外需が下支えしているだけで、内需は停滞しているとも分析しました。
2019年――外需が怪しくなり始め、アベノミクスの評価が地に落ち始めています。
少なくとも2014年以降の、安倍政権の経済政策、すなわちアベノミクスは失敗でした。
失敗理由を明らかにしていきましょう。
アベノミクスとして掲げられた、実際の政策
アベノミクスは2013年当初は「金融緩和・財政出動・成長戦略」の3つが主要政策でした。しかし実際には「金融緩和・規制緩和」のみに変化し、財政出動が行われることはありませんでした。
アベノミクスでは、失業率の低下が成果として喧伝されます。
上記グラフがしめすように、失業率の低下は2010年を起点としています。そのトレンドは、2018年まで「特に加速することなく」続いています。
2010年といえば、民主党政権時代です。つまり……アベノミクスが喧伝する「失業率の低下」は、単なる民間の自立回復だったのです。
では実際にアベノミクスで掲げられた政策は?
- 金融緩和
- 消費税増税
- 水道事業民営化、種子法改正などの各種規制緩和
アベノミクスは「金融緩和+緊縮財政+規制緩和」でした。
報道では「過去最高の税収!」と報じられますが、これは「国民からたくさんの税金を徴収した=緊縮財政」であることを示します。
財政出動を当初は掲げながら、財政出動を忘れてきたのがアベノミクスであり、アベノミクスの失敗でした。
実感なき景気回復と呼ばれる「不景気」
景気判断とは、内閣府のいち研究会の判断に依ります。スクープ!景気拡大「いざなぎ超え」の真実 | 三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blogによれば、かなり恣意的な判断が可能とのことです。
具体的に書けば、ヒストリカルDIと呼ばれる9つの指標のうち8つが悪化しないと「景気後退ではない」と強弁できるようです。
実際に安倍政権下での、日本のGDP拡大の大部分は外需が支えています。ですから「内需低迷」と報じられるわけです。
内需が低迷するのも当たり前で、消費税増税や社会福祉の低下が理由です。政府が財政拡大を行わないのが、一番の原因でしょう。
なんといっても、いまだに政府はデフレ脱却を掲げています。これは裏を返せば「まだデフレだ」ということ。
デフレ下での好景気などというものは、存在しません。
アベノミクスはデフレ脱却を果たせていない
デフレというものは、政府が本気になれば3年で脱却できます。積極財政をしたら良いだけだからです。
先程も申し上げましたが、デフレ下で好景気という状況はありえません。
なぜならデフレ=供給>需要だからです。需要不足、つまり消費や投資が足りないのです。これでは、企業も売上が上がりません。
したがって国民の所得が増えることもない。
なぜデフレが脱却できないのか? 合成の誤謬(デフレ下では企業・個人ともに節約する。それがデフレ圧力になるという、合理的行動が全体として悪い結果をもたらすこと)の状況下で、支出を拡大できるのは政府だけだからです。
しかしアベノミクスは、緊縮財政を継続しました。
理論的に、アベノミクスでデフレ脱却は「不可能」です。
アベノミクスの金融緩和が無意味だったわけ
異次元の金融緩和をしたから、その効果があるはずだ! という反論があるかも知れません。しかしこれも、議論の余地はほとんどなく「無意味な行為」でした。
リフレ派の理論はこうです。
日銀が国債を引き受けて、お金を大量に発行する。そのお金は、日銀当座預金にプールされる。
供給さえすれば、民間の資金需要を逼迫しないから、資金需要が伸びる”はず”だ。
また日銀総裁が市場にコミット(約束)することで、インフレ期待が形成される。だからみんな、借りて使う”はず”だ。
実際に日銀は、数百兆円の金融緩和をしました。
……考えてみてください。「借り手がいないと、お金は貸せない」のです。
リフレ派のいう、民間資金需要を政府支出が逼迫しているなどということは、事実ではありませんでした。銀行は、信用創造によっていくらでもお金を「創造」できるのですから。
またインフレ期待の形成も、無理でした。実際に誰かが借りて使うをしないと、インフレにはならないと証明されただけです。
「当座預金に、過剰なお金が積み上がっただけ」だったのです。
だからこそ、マイナス金利政策という「銀行いじめ」で「銀行の貸出努力」を促したのですが、資金需要がなければどうにもなりません。
アベノミクスで国民が貧困化しているという事実
冒頭でもあげましたが、2019年は2018年より国民が貧困化しています。
参照:5カ月連続で賃金マイナス。厚労省の「勤労統計」で浮き彫りに – まぐまぐニュース!
2019年だけでしょうか? 2011年から2018年の統計が大和総研から出ています。
家計の実質可処分所得の推計(2011~2018年)によれば、以下のように書かれています。
(前略)いずれのケースにおいても、2011年から2018年にかけて実質可処分所得は減少している。すなわち、「妻が正社員」、「妻がパート」、 「妻が専業主婦」のいずれの世帯においても、この間の賃金の増加分は消費税増税を含む物価上昇などの負担の増加分に追いついていない。
GDPデフレーターは、消費税増税分だけ上がっています。日本のGDPデフレーターの推移(1980~2019年) – 世界経済のネタ帳を見れば、2014年から100を超えたようです。
実質賃金も5%程度、下落しています。こういうと必ず「失業率が下がって、新入社員が増えたから! 非正規が増えたから!」という反論があります。
それなら名目賃金も下がっていないとおかしい。
実際には以下のグラフのように、実質賃金だけが下がっています。
端的にいえば上記のグラフ、リーマン・ショック前から日本国民は、10%以上所得が減っていることを示しています。
実質賃金だけを見れば、民主党政権のほうがアベノミクスよりマシだったことになります。
国民を貧困化させたアベノミクスが、成功か失敗か? など論じるまでもないでしょう。
名目賃金で、リーマン・ショック後の民主党政権となんとか同列。実質賃金は大きく下落してます。
アベノミクスはまごうことなき、失敗だったのです。
失業率が下がってるから、成功に見えちゃうんでしょうね・・。
だからまだ、景気が良くなってるなんて頓珍漢なことを言う安倍総理支持者が後を絶たないのでしょう・・。
しかしそれも、今年に行われる消費税増税と、外国人労働者の増加のコンボで数年後には日本国民にさすがに実感として襲ってくるのではないでしょうか・・。(具体的には東京五輪の翌年か翌々年あたりからか・・?)
気づいた時にはもう遅い。日本国の先行ケースである韓国は、最近になってようやく文在寅に批判的な空気が出てきましたが・・、それを日本も安倍ちゃん相手に後追いする可能性が高いかもなあ・・って思うと、ゲンナリしますね・・・。
人間、実害がでるまで気づかないパターンが基本多いですからね・・。韓国も、あとをおって日本も、今のままでは、そうなっていくのかもしれませんね・・・。