アベノミクスは成功か?失敗か?なぜ景気回復を実感できないのか

 新聞やテレビ、雑誌などでは「戦後最長の景気」と、アベノミクスは報道されてきました。一方で庶民にとって、アベノミクスによる景気回復は実感できません。

 私のような現代貨幣理論者にとって、アベノミクスの失敗は明らかです。しかし本日は現代貨幣理論(MMT)をまじえず、アベノミクスは失敗したことを端的に解説します。

 先に結論をいえば、アベノミクスは国民を貧困化しました。国民が貧困化してなぜ、戦後最長の景気といわれるのか? についても解説します。
 このからくりの解説は、なかなかショッキングだと思います。

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アベノミクスは成功か?失敗か?

 失業率や銀行貸出DIのような経済指標が、改善し始めたのはいつでしょう? 2008年のリーマン・ショックの2年後、2010年を起点としています。

日本の失業率の推移グラフ

 上記のグラフでも、失業率のトレンドの転換は2010年です。アベノミクスの成果といわれる失業率の低下は、2010年から起きてました。
 アベノミクスが始まったから、失業率の低下につながったのではないのです。

 ではアベノミクスでデフレ脱却ができたか? 政府ですら首相、令和時代に「デフレ脱却」 経済政策を継続:日本経済新聞といっています。6年かけても安倍政権は、デフレ脱却ができていません。

 なぜアベノミクスで、デフレが脱却できないのでしょう? 答えは非常に簡単で、デフレを脱却できるほどの政府支出(積極財政)をしないからです。
 デフレとは供給>需要ですから、政府の需要創出が”過少”なのです。

 デフレ脱却をしていないと指摘すると「GDPデフレーターはプラス値だ! 現在はデフレではない!」という反論があります。
 日本のGDPデフレーターの推移(1980~2019年) – 世界経済のネタ帳によれば、2014年からGDPデフレーターは100超えを果たしています。

 GDPデフレーターの計算式は「GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100」です。じつは消費税の増税分も、名目GDPには加算されます。消費税増税分がかさ上げされるのです。
参照:【島倉原】アベノミクスとは何だったのか | 「新」経世済民新聞

 現在GDPデフレーターは102~103弱で推移してますが、これは消費税増税のかさ上げと解釈できます。決して、景気が良くなってGDPデフレーターがプラス値を示した……わけではありません。

報道では戦後最長の景気拡大。しかし景気回復の実感がないのはなぜ?

 アベノミクスで景気が回復している! いざなぎ超えの景気拡大局面! などと報道されます。戦後最長の景気拡大局面だそうです。
 しかし「戦後最長の景気回復」、8割が実感せず 本社世論調査:日本経済新聞にある通り、日本国民の8割が「え? ホンマに景気ええの?」状態です。

 国民の感覚のほうが、じつは正しい。実質賃金がリーマン・ショック並みに、アベノミクスでは下落しているのです。
参照:アベノミクス以降の実質賃金は、リーマン・ショック期並みに落ちていたという事実(中原圭介) – 個人 – Yahoo!ニュース

実質賃金の推移グラフ
【三橋貴明】なぜ、実質賃金が低迷するのか? | 「新」経世済民新聞

 じつは民主党政権時代は、実質賃金下落を食い止めていました。安倍政権になり、アベノミクスが始まってから実質賃金が下落していったのです。

 上記のように主張すると必ず「失業率が低下しているから、新たに雇われた人たちが実質賃金を押し下げているだけ」と反論されます。本当でしょうか?
 総実労働時間という数字があります。「日本の労働者全員の労働時間の合算」です。

  毎月勤労統計調査平成29年分結果速報(P9)によれば、日本国民の総実労働時間は、最も景気が悪いとされた2009年”以下”です。
 失業率が低下しているなら、労働者も増えているはずです。そして総実労働時間も”増える”はずです。

 結論をいえば「パートタイム労働者が、労働のシェアリングしている状態」といえます。100時間を10人で分けていたのが、100時間を15人で分けているような状態です。
 景気拡大の実感が持てないのも、当然です。

 また2014年の消費税増税8%で、低所得層の可処分所得は3%ほどダメージを受けたはずです。これで景気回復? なんじゃそら? となるのも、当たり前です。

 アベノミクスは成功していない、いや失敗したのです。

アベノミクスの本質的失敗

 デフレから脱却できないのは、アベノミクスの顕著な失敗の1つです。なぜ脱却できないのか?

 デフレ下では、企業も個人も節約します。つまり消費しない=需要が低迷するのです。したがって消費=需要創出が可能な経済主体は政府だけになります。

 いまだにデフレを脱却できていない=需要が足りないのです。
 マスメディアなどは「今年の予算額は過去最大!」などと報道しますが、結果としてデフレ脱却ができていないのは、政府予算額が過少だからです。

 予算の絶対額ではなく、「デフレ脱却に向かっているかどうか?」が緊縮財政か、積極財政かの基準です。アベノミクスは緊縮財政でデフレ脱却しようとしました。
 理論的に不可能なことをしようとしたわけですから、当然結果は「デフレ脱却ならず」です。

 アベノミクスの本質的な失敗。それは「論理的な矛盾を抱えたこと」です。もしくは、論理的に思考しなかったことです。
 もしくは「嘘をごまかし続けていること」です。

 その嘘の1つを解説します。景気判断の話です。

景気はどうやって判断されるのか?

 景気判断はヒストリカルDIで判断されます。以下のようなものです。

  • 生産指数(鉱工業)
  • 鉱工業用生産財出荷指数
  • 耐久消費財出荷指数
  • 所定外労働時間指数(調査産業計)
  • 投資財出荷指数(除輸送機械)
  • 商業販売額(小売業 前年同月比)
  • 商業販売額(卸売業 前年同月比)
  • 営業利益率(全産業)
  • 有効求人倍率(除学卒)

 上記の9つの数字のうち、最大8つが悪化して初めて「景気後退」と判断されるようです。

 スクープ!景気拡大「いざなぎ超え」の真実 | 三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへによれば、2014年の消費税増税8%のときに7つの項目が悪化しても、景気後退と判断されなかったようです。

 どこが判断しているのか? 景気動向指数研究会の判断を、内閣府は使用しているようです。
参照:景気動向指数研究会 – 内閣府

 要するに恣意的に内閣府が「7つの数字が悪いけど、でも景気は良いことにしておこう」と出来るのです。いかに景気判断がいい加減で、嘘にまみれているか? ご理解いただけると思います。
 いざなぎ超えは「嘘・デマ」でした。

 すなわち、アベノミクスの成果も「嘘」が多分に含まれているのです。
 嘘が真になるか? なるはずがありません。アベノミクスというプロパガンダは、今後の日本の経済運営に多くの禍根を残すことでしょう。

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