信用創造とは?わかりやすく図解で解説 イングランド銀行公式見解も参照

 信用創造を説明すると「わからない!」「おかしい!」「理解できない!」という意見が散見されます。
 これは「銀行=お金を貸す人=貸してもらってから(預貯金)貸す人」という先入観が、そうさせているのだと思います。

 実際に、事実関係をお示しして、この先入観を取り払える記事にできたらと思い、解説します。

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預貸率と預貯金と融資額

 まず最初に、「銀行は預貯金を預かり、そこから融資している」という先入観が間違っている! という事実をお示しします。

 預貸率という言葉があります。これは「銀行への預貯金に対して、融資がどれくらいの金額か?」という指標です。預貯金(銀行にとっての負債)が100で、銀行からの融資が80の場合、預貸率は80%となります。

 「銀行は、預貯金から融資をしている」のであれば、預貸率は100%を超えないはずです。

 2011年でやや古いグラフですが、100%を超えてます。これは預貯金100なのに、融資額が預貯金を超えている、という”事実”を指します。

 預貸率100%を超えたぶんは、不正経理でしょうか? いいえ、違います。単なる信用創造です。

銀行融資は、預貯金額に依存しないという”事実”

 預貯金額以上の融資も行える、というのが先程のグラフでご確認いただけました。これは突き詰めれば、銀行の融資・貸付は「預金残高に依存しない」という事実を示しています。
 実際に日本も2003年までは、預貸率100%以上だったそうですよ。
預貸率とは|金融経済用語集

日本においては、1990年代のバブル崩壊によって、企業の経営破綻が相次ぐなど不良債権問題が長く深刻化したため、銀行は貸し渋りや債権回収に走り、2003年に預貸率はついに100%を割り込みました。

銀行貸付が預貯金を生み出すという、単なる事実

 経済の原則は「誰かの負債=誰かの資産」です。
 上記は単なる事実です。「誰の負債でもない資産」など、この世に存在しません。

 余談ですが、お金は国民にとって資産です。当然、誰かの負債です。(統合)政府の負債なのです。

 閑話休題。
 因果関係からみると、「負債が発生すると、資産が発生する」のです。
 預貸率を見てもそうです。

 預貯金→融資といっている人たちは、「銀行はお金(預貯金)があるから、貸付ができる」と思っていますが、実際は預貸率を見て分かる通り、「銀行はお金(預貯金)よりも、多くの貸付ができる」が事実です。

 つまり……「銀行はお金(預貯金)があるから、貸付ができる」はグラフから事実ではありませんでした。ならば、因果関係は逆なのです。
 「銀行が貸付をするから、預貯金(お金)が生まれる」のです。
※預貯金の全てが、民間銀行から生まれたとはいっておりません。政府負債による部分も当然存在します。

 政府対民間では「政府が支出(負債拡大)するから、民間資産が生まれる」のです。(spending first スペンディングファースト 「支出が先」という意味)

需要と供給はどちらが先で、どちらが後か

 新古典派経済学(主流派経済学)はしばしば、サプライサイド(供給側)の経済学といわれます。実際にセイの法則などの理論は、「需要と供給は一致する」とします。
 これはデフレやインフレは起こらない、といっているようなもので、現実的ではありません。

 全くのゼロの状態から、需要と供給を考えてみましょう。

 人は食べ物がないと飢えますから、食べ物を生産します。食べ物を生産したから、食べるのではありません。
 経済は常に、需要が先に存在します。潜在需要であれ、通常の需要であれです。

 ところが経済を語る人は、何が需要で何が供給か? しっかり区別できていないことがあります。

 もう一度、信用創造の図を見てみましょう。

 図を見て頂ければ分かる通り、「資金需要があるから、銀行は貸付ができる=お金が生まれる」のです。預金がいくらあっても、資金需要がなければ貸付は不可能です。
 これが他の国家ないし、2003年まで日本で起こっていた、預貸率100%超えのからくりです。
 需要があったから、貨幣が創造されていたのです。

実際の銀行の、信用創造への見解を見よう

 イングランド銀行は、サイトで信用創造(money creation=貨幣創出)を解説しています。イングランド銀行は17世紀に中央銀行として発足した、世界で2番めに古い、伝統と格式ある中央銀行です。
参照:Money creation in the modern economy | Bank of England
和訳してくれている記事:イングランド銀行が貨幣創造を解説 – 経済学を疑え!

 イングランド銀行でも以下のような図を使用し、説明しています。

 和訳では、以下のようになっているようです。

現代の経済では、ほとんどのお金は、銀行預金の形をとる。
しかし、それらの銀行預金がどのように作成されるのかはしばしば誤解されている。
主要な方法は、市中銀行が貸し付けをすることによってなのだ。
銀行が貸し付けをする時には常に、銀行は、借り手の銀行口座に同額の預金を同時に作り出す。そのようにして、新しいお金を作るのだ。

 中野剛志さんの「日本の未来を考える勉強会」ーよくわかるMMT(現代貨幣理論)解説ー平成31年4月22日 講師:評論家 中野 剛志氏 – YouTubeによれば、日本銀行協会の「図説 わが国の銀行」にも、同じことが書かれていたそうです。

 ……現場の専門家たちが「信用創造(money creation=貨幣創出)しているよ?」といい、門外漢が「民間銀行は信用創造していない! 又貸しだ!」と否定するのは、少々いかがかな? と思います。

 イングランド銀行が発足したのは1600年代後半。300年以上の知見を、私は否定する無謀さは持ち合わせていませんが、みなさまはいかがでしたでしょうか?

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