5分でわかる!経済格差・所得格差の原因と対策を徹底解説

 日本でも世界でも、この20~30年で格差が拡大しています。富裕層はますます豊かになり、低所得層の資産や所得は一向に増えません。

 例えばアメリカでは上位10%の富裕層が、家計資産合計の70%を所有しています。残り90%でわずか30%の資産を所有しているに過ぎません。

 どうしてこのように経済・所得格差が広がっているのか? その原因を5分でわかりやすく解説します

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日本と世界での格差社会の拡大

 世界では1980年代から格差拡大が始まりました。

 以下のグラフは日本のジニ係数の推移です。日本の場合、1990年代のバブル崩壊とその後からジニ係数が上昇し始めています。

 ジニ係数とは社会における所得の不平等さ、つまり経済・所得格差を測る指標です。1936年にイタリアの統計学者コッラド・ジニが考案しました。

 厚生労働省によれば、以下のグラフのようにジニ係数は世界的に上昇傾向にあります。

 1970年代にアメリカはオイルショックからスタグフレーションに突入します。イギリスも同様でした。
 そこでレーガンやサッチャーは新自由主義を採用します。

 新自由主義の採用と格差拡大が始まった時期はほぼ重なります

 全体的な結論を先に述べましょう。新自由主義を採用したから経済・所得格差が拡大を始めました。どのように新自由主義が格差拡大を招いたのか、経済・所得格差の原因を個別に分析していけば見えてきます。

日本国内の経済・所得格差の原因

 日本国内における経済・所得格差の拡大原因は、世界とやや異なる部分もあります。

非正規雇用の増加

 2000年および2003年の労働派遣法改正で、非正規雇用は増加の一途をたどります。加えて1993年から2005年まで就職氷河期が訪れ、有効求人倍率が激減しました。

 さらに終身雇用も崩壊します。

 こういった背景が重なり、非正規雇用は激増しました。現在では労働者の約4割が非正規雇用です。

 非正規雇用は正規雇用と比較して年収が低く、雇用も不安定です。同じ労働内容でも所得に差が付きます。
 非正規雇用の拡大が経済・所得格差拡大を招いたのです。

東京一極集中と地方衰退

 地域間格差も経済・所得格差を語る上で欠かせません。

 東京への一極集中はますます進み、地方は衰退の一途をたどっています。原因は政府が地方に投資しないことです。

 2000年代から公共事業の予算は半減しており、2013年時点で建設後50年を超えた橋梁は全国で7万本に及びます。

道路構造物の現状(橋梁) – 国土交通省

 こうして地方やインフラへの投資が減少して、東京への一極集中が起きています。東京には高年収の求人が集中し、地方では求人が減少するばかりです。
 東京と地方の経済・所得格差も拡大の一途をたどっています。

セーフティーネットが不十分

 日本で経済・所得格差が広がる原因として、セーフティーネットの不十分さを指摘する声もあります。

 もともと日本の社会保障やセーフティーネットは終身雇用を前提としており、終身雇用が崩壊した現在では不十分です。
 「職業訓練や転職支援などを政府が手厚くするべきだ」との主張はもっともです。

 社会保障も社会保険料の増大、所得課税の累進性緩和など格差拡大を助長する政策が採られてきました
 こういった政策も経済・所得格差の拡大に一役買っています。

就職氷河期と自己責任社会

 就職氷河期を生み出したことが、経済・所得格差拡大に大きな影響を及ぼしたことは間違いありません。

 1991年のバブル崩壊とその後の政治的混乱により、適切な経済政策が打てなかったことが就職氷河期を発生させた大きな原因です。
 さらに自己責任論の蔓延、公共事業叩きに見られる緊縮財政なども就職氷河期を長引かせました。

 こうして大量の非正規雇用が生み出され、経済・所得格差が拡大します。加えて蔓延した自己責任論により氷河期世代が放置され続けたことも、格差拡大に拍車をかけました。

産業構造の変化

 1980年代以降、日本の産業構造は変化していきました。主力だった第2次産業が減少し、第3次産業が増加したのです。

 第2次産業は全体的に生産性を上げられますが、第3次産業はピンキリです。例えばサービス業は生産性が上がりにくく所得上昇も難しい一方で、IT産業で高いスキルを持つ人材は高所得も容易です。

 サービス業の労働者はサービス業に、IT産業の労働者はIT産業に固着しがちです。現在の業種のノウハウを持っており、ゼロから新しいことを始めようと普通は思いません。

 こうして産業構造の変化に伴う人材の二極化が進みました。人材の二極化はつまり、経済・所得格差につながります。

世界の経済・所得格差の原因

 世界的な経済・所得格差の原因は新自由主義の蔓延です。21世紀の資本を著したトマ・ピケティによれば「r>g(資本収益率>経済成長率」が資本主義の本質です。

 要するに富裕層はますます富み、低所得層は低所得のままというわけ。

 新自由主義によって国境の壁が低くなった結果、製造業は先進国から発展途上国に移りました。第2次産業は発展途上国が担い、先進国は第3次産業が主力となったのです。

 こうした新自由主義による産業構造の変化も経済・所得格差を拡大させました

 一方で先ほど紹介したとおり「r>g(資本収益率>経済成長率」で、先進国内でも富裕層と低所得層の格差拡大が止まらなくなったのです。

経済・所得格差の是正は可能か?

 日本や世界で広がる経済・所得格差を是正する対策はいくつか考えられます。

 まず各国がより社会保障を厚くし、所得の再分配を進める必要があります。産業構造の変化も経済・所得格差の大きな原因ですから、関税で自国の製造業を保護しなければなりません。
 日本では非正規雇用の待遇を改める必要もあります。

 終身雇用を前提としたセーフティーネットを、現状に合わせて厚くするべきでしょう。

 しかし何より必要なことは、経済・所得格差が広がっているという事実への国民の広い理解です。経済・所得格差を是正しろとの世論が広まれば、政治も変わることでしょう。

まとめ

 紹介してきたような経済・所得格差は拡大し続けるでしょう。なぜなら、抑止するための政治が行われていないからです。

 経済・所得格差があまりに拡大しすぎれば社会は疲弊し、さらに多くの問題が起きることは間違いありません。

 そうならないためには多くの人が現状を理解し、小さな声でも上げなければなりません。

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