先日、以下のツイートをリツイートしました。
筆者はゲイですが、アウティングという言葉になじみがありません。カミングアウトなら、耳慣れた言葉なのですが……。
「アウティングって何だろう?」と調べて「これのことね」と納得。
アウティングの意味と、アウティングをした側、された側のさまざまな問題点や深刻さを解説します。
オープンにしているゲイが書くアウティング解説記事は、おそらく日本初でしょう。
アウティングとは
アウティングの意味とは、何でしょうか。筆者は最初「アウティング……無視のことやろか?」と勘違いしました。
アウティングの意味
アウティングとは、本人の許可なくセクシャリティを暴露すること。
アウティングは主に、LGBTのセクシャリティの暴露を言います。
「この前、本人から聞いたんだけど、Aさんってゲイなんだって」
こういった会話が、アウティングとされます。
他にもLINEやTwitterなどSNSでの暴露も、アウティングに含まれます。本人の意図しないところ、許可のない人たちへのセクシャリティの暴露は、すべてアウティングと呼ばれます。
カミングアウトとの違い
LGBT用語にはカミングアウトもあります。カミングアウトは本人が、人に自分のセクシャリティを打ち明けることを言います。
カミングアウトは英語で「クローゼットから這い出る」的なイントネーションです。隠していたものを、恐る恐る出すというイメージでしょうか。
アウティングとは、全くの別物です。
三重県でアウティング禁止条例の制定へ
三重県はLGBTのアウティング問題に対応するため、条例を制定するようです。三重県いなべ市はすでにLGBT差別禁止条例で、アウティングの禁止を発表していました。
参照 三重県がアウティングの禁止などを含むLGBT差別禁止条例を制定へ
一人のゲイとして、歓迎するべきなのでしょう。
しかし手放しでは歓迎できない、ナイーブな問題がたくさんあります。
このことは後述します。まず2015年に起きた、アウティングによる痛ましい事件を参照しましょう。
一橋大学アウティング事件
2015年に起きた一橋大学アウティング事件は、一人の大学院生がゲイであることを、同級生にLINEで暴露されたことで起きました。
大学院生は学校の相談室に相談するも、性同一性障害のパンフレットを渡されるなど、理解と支援が受けられませんでした。
最終的には校舎から転落し、自殺しました。
もう少しかみ砕いて解説しましょう。
大学院生Aは、同級生Bが好きだと告白。Bは「良い友達でいよう」と対応しました。しかし「お前がゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん(Aの実名)」とLINEに投稿し、LINEグループ10人弱にアウティング。
対してAは憔悴、精神を病んだとのことです。
……書いていて、筆者は泣きそうになります。
自殺したAの気持ちはもちろんのこと、Bの「カミングアウトされて重い、誰かに相談したい。隠し事をしたくない」という気持ちも理解できるからです。
あなたが当事者なら、どうしたでしょうか。
LGBTにもいろいろな考え方がある
LGBTにも、いろいろな人がいます。考え方もさまざまです。
当たり前ですよね、だってLGBTって単なるセクシャリティなんですから。「俺は男で、女が好きだ」「私は女で、男が好きよ」と同じライン上に「男だけど、男が好き」「女だけど、女が好き」があります。
オープンLGBTは少数
とはいえLGBTは少数派、いわゆるマイノリティです。ただでさえ日本は、同調圧力が強いです。マイノリティであることを公言するのには、勇気がいります。
オープンにしているLGBTは、さほど多くありません。またオープンにする度合いも、本人や環境によります。
例えば親しい友人や、家族にだけオープンにしているという人もいます。
一方で筆者は「ん? そやで? ゲイやけど何か?」というスタンスです。
LGBTを公言しない多数
LGBTは公言しない、隠している人の方が多数です。
一部には「LGBTみんながオープンにするべきだ」と、考える人もいます。しかし筆者は、それは暴論だと思います。
状況にもよりますが、隠していた方が無難です。波風も立ちません。公言しないのも、一つの選択だと思います。
アウティングの動機と問題
LGBTからカミングアウトされて、アウティングしてしまう動機は何でしょうか? そしてアウティングして起きる問題とは、どのようなものでしょうか?
傍観者ではなく、あなたが当事者だと思って考えてみてください。
告白されたら?
あなたが同性から告白されたら、どう思いますか? とても真剣な、恋愛感情からの告白です。
あなたが異性愛者なら、答えはほとんど一つでしょう。
「これからも良い友達でいようね」
しかしそれだけで終わるでしょうか。
自分が性的な対象、恋愛対象になっている。相手の気持ちを受け止めきれない。どうするべきか、誰かに相談したい。どう振る舞えばいい? 友人同士の集まりで、隠し事をしているようでイヤだ。ああ、誰かに話して楽になりたい!
きっとこう思います。
こうして悪意がなくても、アウティングするケースもあります。
アウティングなしに、誰かに相談することは不可能ですものね。
秘密を漏らさないのは難しい
「人の口に戸は立てられぬ」
昔の人は、上手いこと言うものです。LGBTがカミングアウトをしない理由も、まさにこれです。秘密は漏れるもの、そう考え恐れるからです。
秘密が重ければ重いほど、漏れたときの衝撃は大きい。歴史が証明するとおり、秘密を漏らさずにはいられないのが人です。
悪意あるアウティング
悪意のあるアウティングも、存在するでしょう。ホモフォビア――同性愛者嫌悪のこと――や、相手をおとしめたいと思っているなら、LGBTは格好の攻撃材料です。
とはいえ、悪意のあるケースは多くないと思います。
なぜならセクハラやパワハラと同じように、LGBT差別もダメという空気だからです。
空気とは、良くも悪くも強く作用します。
アウティングは平等か侵害か
ここからは、主観が強い文章になります。ゲイである筆者が感じたこと、考えたことです。
アウティングは一般的に、プライバシーの侵害です。一人のゲイとしても、されるのは御免被りたいです。――まあ、筆者はオープンにしているので成立しないのですが。
LGBT活動家たちは、LGBTに差別のない世界を! と訴えます。筆者もそういった世界を、望んでいます。
一方で「あの人は異性愛者だ」と暴露することは、アウティングにはなりません。当たり前だからですよね。
差別をしないなら「あの人は同性愛者だ」とアウティングすることは、平等な態度なのではないか? という議論があります。
しかし上記は、多数派、マジョリティの論理です。仮に差別が一切なくとも、マイノリティの悩みは尽きません。オープンにするかどうかは、個人の判断を尊重するべきです。
「アウティングは極力、できるだけ控えるべし」が、本日の結論です。
ゲイの筆者がアウティングを考える
わかるんですよね、アウティングしてしまう心理は。人は秘密を抱えるとき、その秘密の重さによっては押しつぶされていまいます。
抱えられる秘密の重さは、人によって異なります。
あなたが会社や学校の同性から、告白されたらどうしますか? その秘密を、抱え込めるでしょうか。
誰かに話してしまいたい! 楽になりたい! と思うのではないでしょうか。
でも少しだけ考えてください。告白してきた彼、彼女はずっと一人で秘密を抱え込み、悩み続けてきました。本当に、本当に重い問題なのです。
思い出してください、彼、彼女は震えていませんでしたか? 泣きそうになっていませんでしたか?
誰かに相談のためアウティングするなら、しっかりと人を選んでほしい。筆者はそのように切に願います。
もしできるなら、カミングアウトしてきた本人に許可を取った上で相談するのが、もっとも適切でしょう。
まとめ
アウティングはダメ! と押しつけるのはとても簡単。アウティングした人を責めて、批判するのも簡単。
だって当事者じゃないんだもの! というわけ。
この手の問題はあなたが当事者だったら? と、考えてみることが大事です。
もちろんアウティングされるLGBTが一番被害を受けるので、アウティングはしてほしくない。それが本音です。
漏らすにしても慎重に、ですよ。
以下はLGBTに関して、知識を持っておきたいならおすすめの書籍ですよ。口コミと併せて紹介します。
LGBTについてちゃんと描かれているのはもちろん、LGBTにからめて進路や家族関係の悩み、友人関係での悩みや嫉妬など中高生のリアリティが詰まっている。
ステレオタイプじゃない。そして等身大の明るさがある。星5つです。すべての保健室がこうだったらいいのに。
Amazon口コミ
「うちの息子はたぶんゲイ」は、ほんわか系のマンガ。「問題提起してやろう!」的な堅苦しさはないので、気軽に読めます。
読んでいて「あるある」と、筆者はたくさん頷きました。以下は口コミ。
タイトルで手に取りにくい人もいるかもしれない。それでも。
この本で救われる子供が(大人も)たくさんいるだろうと思う。
LGBTであることの生きづらさを知ってもらうこと、LGBTが除外されている権利について声を上げること、そんなことと同様に、「こんな現実を生きているあなたの隣人が何百万人もいること」を知ってほしい。
久しぶりに、素敵な物を読んでしまったわ。
ゲイをホモだオカマだって馬鹿にするブスがいるけど、将来自分の子供がゲイだって分かった時、どうするつもりかしら?ブーメランよ、ブーメラン!
好きになった人同士が、普通に結ばれて、当たり前のように祝福されるような国に。
サッサとしなさいよ、べーやん?遊んでんじゃないわよ!
個人的にも「うちの息子はたぶんゲイ」は、超おすすめ。