現在、政府では選択的週休3日制という議論が盛んです。一億総活躍相が提案し、自民党や野党も巻き込んで議論が引き起こされそうです。
選択的週休3日制は議論が始まったばかりで、確固たる仕組みや法律はありません。しかし、先んじて選択的週休3日制がどのように議論され、どのような問題点やメリット・デメリットがあるか押さえておきましょう。
選択的週休3日制の目的
選択的週休3日制の目的は「多様な働き方」です。子育てや介護と仕事の両立や、副業、学習に休日をあてるのが目的です。
選択的の意味は「希望者のみ週休3日制が選択できる」です。従来の週休2日制や、完全週休2日制と週休3日制を両立させようという試みです。
週休2日制は、最低でも1ヶ月の間に1回は週に2日の休みが与えられます。完全週休2日制はすべての週で2日の休日があります。
現在の労働基準法で週休2日制は定められていません。
今でも労働基準法では、週に1日以上の休みとしか定められていません。
週休2日制も法制化してないのに週休3日制の議論が進めらていることに、筆者は違和感を覚えます。
選択的週休3日制で想定されている仕組み
選択的週休3日制は3つのパターンが想定されます。
- 週休3日制で給与2割減、4日制で4割減
- 変形労働制で1日10時間労働×4日で週40時間労働
- 週休3日制で給料も据え置き
自民党や政府で議論されているのが1.のパターンです。年収300万円人は2割削減で年収240万円になる代わりに週休3日になります。
厚労省の賃金構造基本統計調査の金額を2割削減すると、以下の数字になります。
- 20~24歳:約17万円
- 25~29歳:約19万円
- 30~34歳:約22万円
- 35~39歳:約25万円
- 40~44歳:約26万円
- 45~49歳:約28万円
2.の4日間×10時間労働は給与はそのままです。UNIQLOや佐川急便で導入されている制度です。
3.の週休3日+給料据え置きは非常に難しいでしょう。一部では「労働時間を短縮すると生産性が上がる」という議論がありますが、因果関係が逆です。
生産性の高い企業が労働時間を短縮しているのです。
生産性の低い企業が労働時間を短縮しても、売り上げがそのまま下がるだけです。
仕組みとしては自民党案の「2割削減」か、すでに導入されている「4日間×10時間労働」が最有力でしょう。
選択的週休3日制導入のメリット・デメリット
選択的週休3日制のメリット・デメリットについて検討します。
メリット
休日が増えることで育児、介護と仕事の両立ができると言われています。くわえて、増えた休日を副業や学習にあてることが可能です。
週休3日になるとメリハリのついた働き方ができ、生産性の向上が期待されています。企業としては柔軟な働き方をアピールでき、求職者が増加すると想定されます。
デメリット
週休2日制と3日制の労働者の間での昇給、昇進に格差が生じる可能性があります。働いている日数が異なるので同列にしたらしたで不平等です。
週休2日制の取引先とコミュニケーションコストや齟齬も生じるでしょう。担当が週休3日制だった場合、同じ社員が担当できないからです。
くわえて、週休3日制になった社員の穴を埋める人員が必要です。
生産性向上が起きない場合は、企業側からすると人件費増加という結果になるかもしれません。
選択的週休3日制の実現性
選択的週休3日制は一億総活躍推進本部で議論されています。議論の口火は猪口邦子が切りました。猪口が出している試案によれば、選択的週休3日制を採用すると給与は2割削減になります。
まだ議論の段階で仕組みも不明ですが、実現性と危険性について検討しましょう。
企業のリストラ代わりに選択的週休3日制が導入される可能性があります。従来は人件費削減にリストラが必要でしたが、選択的週休3日制を導入して人件費削減することが可能です。
選択的週休3日制を多くの人がとると、人手不足に陥る可能性も指摘されています。筆者の見解としては人手不足は大歓迎です。なぜなら、人手不足になれば企業は雇用環境を改善し、労働者にアピールしなければなりません。
人手不足こそ労働者の待遇改善に役立つからです。
一方、選択的週休3日制は正規雇用を前提に検討されています。同じ職場に勤める契約社員やフルタイムの非正規雇用はどうなるのでしょうか。
同一労働同一賃金や平等などの観点から、非正規雇用や契約社員も選択的週休3日制を選択できないと不公平です。
まとめ
選択的週休3日制はとても先進的な議論です。
選択的週休3日制の前に、現在の週休2日制は慣習であり法制化されていない事実を考えるべきです。法律では週休1日以上としか定められていません。
選択的週休3日制の議論より、週休2日制の法制化が先だと思います。
選択的週休3日制の給与2割削減はあまり魅力的に見えません。休日が増えても給料が減れば何もできないからです。一般的には給料のために働きたい人の方が多いと思われます。
全体として選択的週休3日制の議論は滑っている印象です。
地に足をつけた議論が必要でしょう。