日本がハイパーインフレにならない5つの理由を簡単解説!

 「日本がハイパーインフレになる!」という言説が、まことしやかに囁かれています。しかし、日本がハイパーインフレになるなど、まずあり得ません。

 今回の記事では、日本がハイパーインフレにならない5つの理由を解説します。くわえて、なぜ日本がハイパーインフレになるなどと言説を流す人たちがいるのか議論します。

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ハイパーインフレとは

 ハイパーインフレの定義は2種類あります。1つはアメリカの経済学者フィリップ・ケーガンが提唱した定義です。
 ケーガンは月に50%のインフレをハイパーインフレと定義しました。
 月に50%のインフレとは、年率約1万3000%です。

 2つめは国際会計基準の定義です。国際会計基準では3年間で累積100%、年間平均で26%のインフレをハイパーインフレとしました。

 ベネズエラや第1次世界大戦後のドイツは年間1万3000%以上のインフレで、ケーガンの定義に当てはまります。日本の第2次世界大戦後のインフレは国際会計基準に照らし合わせればハイパーインフレですが、ケーガンの定義からはハイパーインフレとは呼べません。

 一般的にハイパーインフレの定義はケーガンの1万3000%が使われます。

ハイパーインフレの原因

 ハイパーインフレの原因は3つあります。統計ができる歴史上、ハイパーインフレは計57回起こりました。このハイパーインフレはケーガンの定義である1万3000%以上です。

 57回のハイパーインフレを分析すると、3つの原因が判明しました。

①戦争などで国内の供給が止まり、輸入もできない状態になる
②革命などで旧体制が瓦解して新体制に移行したばかり
③もともと国内産業が発達せず高インフレが続き、そこにマクロ経済政策の失敗が重なった

ハイパーインフレとは?戦後日本やドイツの高インフレの原因 | 高橋聡オフィシャルブログ バッカス

 ①は供給が壊滅することでハイパーインフレになります。たとえば、ベネズエラも石油の輸出が落ち込み、くわえて、外債の利払いで外貨が消えて輸入が滞りハイパーインフレになりました。

 ②は旧共産圏の東欧諸国で多く見られました。旧体制の瓦解と不安定な政府がハイパーインフレを引き起こします。新体制の貨幣が信用されずハイパーインフレに陥ります。

 ③は高インフレに、さらにインフレ圧力をかけることでハイパーインフレになります。国内産業が未成熟な発展途上国が財政出動を重ねるケースで引き起こされます。

 詳しくは以下の記事で解説しています。ハイパーインフレについてもっと知りたいならおすすめです。

日本がハイパーインフレにならない5つの理由

 日本がハイパーインフレになることはほぼあり得ません。もしハイパーインフレになるなら、そのときは非常事態、異常事態です。
 つまり、戦争やとてつもなく大きな震災を心配した方が現実的です。

 日本がハイパーインフレにならない理由を5つ挙げます。

クラウディングアウトは起きない

 日本がハイパーインフレになると言われている大きな理由が、クラウディングアウトです。

 「クラウディングアウトでハイパーインフレ!」とは「100あるお金のうち、政府が90借りると民間が10しか借りられなくなる。そうすると資金需要が逼迫して金利が上がり、金利が物価を押し上げ、雪だるま式にインフレが引き起こされる」という理論です。

 つまり、日本国債が積み重なってハイパーインフレが引き起こされるとされています。

 しかし、コロナ禍のアメリカの財政出動などで判明したとおり、クラウディングアウトは起きません。「政府が100借りたら、100のお金が生まれる。民間がさらに100借りたら、合計で200のお金が生まれる」が現実のお金の仕組みです。
 金利は上がらずにコントロール可能であり、国債がいくら積み重なってもインフレ圧力にはなりません。

 インフレ圧力にならないので、もちろんハイパーインフレも起きません。

供給の壊滅は異常事態

 ハイパーインフレは供給の壊滅によっても引き起こされます。戦争や超巨大地震などが起きて、国内が焼け野原になるとハイパーインフレになるでしょう。

 戦後日本の高インフレも戦争が原因でした。戦争による膨大な戦争需要、そしてB29などによる空襲での大破壊で供給力が壊滅しました。
 さらに太平洋戦争中は輸入が滞っていました。

 こうしたことが重なって高インフレになりました。

 現在の日本で考えられるでしょうか? もしかしたら、南海トラフ巨大地震が襲うかもしれません。それと同時に輸入が滞ればハイパーインフレになる可能性があります。
 ハイパーインフレ発生には「巨大震災と国際社会に見放される」という2つの事態が同時に起きる必要があります。

 なかなか考えづらい状況です。

 明らかな異常事態であり、もはやハイパーインフレがどうのというレベルではありません。ハイパーインフレが起きるとするなら、それ以上の非常事態の余波として引き起こされます。

政府が安定している

 ハイパーインフレは不安定な政府、新体制が理由でお引き起こされます。不安定な新体制が発効する通貨に信用がないからです。

 日本政府は明治維新以来、150年以上続いています。途中で太平洋戦争もありましたが、現在の政府はかなり安定しています。
 少なくとも、自衛隊やその他勢力によるクーデターや革命などは起きそうにありません。

 そういった状況では、ハイパーインフレ説が大好きな人たちが言う「通貨の信認」は担保されます。通貨の信認とは突き詰めれば、政府の信任です。
 日本で政府に不満はあれど、ならば革命などという人は皆無です。

 政府の安定はハイパーインフレの発生を抑制します。

そもそもデフレ

 そもそも論ですが現在はデフレです。デフレとは物価が下落し、貨幣価値が上昇する現象でインフレと真逆です。インフレと真逆の現象が起きているのに、さらにその上のハイパーインフレを心配する意味がわかりません。

 拒食症で体重が減少している状態で、200kgを超える肥満を心配するようなものです。少しくらい太らないとダメです。
 日本もデフレを脱却し、インフレにしないとダメでしょう。

国内産業が成熟している

 国内産業が未成熟だと、輸入に日用品や食品を頼ることになります。そのため、高いインフレ率に悩まされます。発展途上国などにこの傾向があります。

 日本はデフレです。国内産業は成熟しており、高インフレに悩まされることもありません。高インフレに悩まされないのに、さらにその上のハイパーインフレの心配をする意味はありません。

ハイパーインフレはどうして煽られるのか

 日本はハイパーインフレになりません。ならない理由は述べてきたとおりです。

 では、どうしてハイパーインフレを心配する声がこんなにも大きいのでしょうか。理由はいくつかあります。

  1. 極端な危険は話題性がある
  2. ハイパーインフレの記事で原稿料がもらえる
  3. 消極財政(緊縮財政)したいのでハイパーインフレを煽る

 ハイパーインフレや財政破綻などは日本においてほぼフィクションです。現実に起こることはありません。しかし、これらの危険なトピックは話題性があります。
 起きようが起きまいが、真実だろうが嘘だろうが、話題になれば記事にする価値があります。

 ハイパーインフレの記事を書いている人は、原稿料を日本円でもらっています。ドルやユーロでもらっている人はいないはずです。くわえて、外貨で資産運用をしているかどうかも怪しいものです。
 少なくとも、ハイパーインフレの原稿を書いている人たちは、本気でハイパーインフレが起きるとは思っていません。

 消極財政(緊縮財政)を推進したい人たちもハイパーインフレを煽ります。「財政出動するとハイパーインフレになる!」とすることで、消極財政というドグマを正当化しようとします。

 しかし、何をどう言いつくろったところで、日本はハイパーインフレになる可能性は極めて低い。日本がハイパーインフレにならないのは自明であり、明白です。

まとめ

 日本がハイパーインフレにならない理由は5つありました。

  1. クラウディングアウトは起きない
  2. 供給壊滅の異常状態は考えづらい
  3. 政府が安定している
  4. そもそもデフレ
  5. 国内産業が成熟している

 日本でハイパーインフレが起きるとすれば、超巨大地震と国際社会からの断絶、という2つの異常事態が重ならないといけません。とても考えづらい状況です。

 日本がハイパーインフレになると煽っている人たちも、じつは日本円で原稿料をもらっています。本気でハイパーインフレを心配して原稿を書いている人などいません。
 こういった人たちの記事を見て、読者が煽られるのがかわいそうです。

 ハイパーインフレを信じている人たちには、ぜひこの記事を見せてあげてくださいね。

 財政破綻や財政赤字に関する嘘は「財政赤字の神話」がおすすめです。

原書の『The Deficit Myth』が今年6月に刊行されてから、あまり間を置かずに邦訳が出されたことに感謝したい。

帯にもある通り、重要な結論は“財源は絶対に尽きない”という事実にある。「財政赤字は悪であり、いずれ財政破綻を招く」という誤った神話が深く刷り込まれたことで、社会が受けてきたダメージは計り知れない。そして、これはわが日本に限ったことではなく、米国でも全く同様であることを改めて知ることができた。

ポール・クルーグマン氏との論争などを見て、ケルトン氏には女傑という印象を持っていたが、やはり非常に強い信念を持ってMMTを主張しているようだ。投資家であって経済学者ではないウォーレン・モズラー氏との出会いがMMT派となるきっかけであったことや、強い反発を覚えながらも徹底的に事実を突き詰めていった経緯なども明かされており、平易な表現を用いながらも決して水準を落とさない筆致で、順を追ってMMTを理解できる内容になっている。翻訳の水準も高いと思う。

財政支出の削減を主張する(共和党に多い)財政タカ派も、富裕層増税等の歳入増を主張する(民主党に多い)財政ハト派も、どちらも均衡財政という前提が間違っている点では同罪であるという指摘は重い。自身がアドバイザーを務めていたバーニー・サンダース氏にすら、辛辣な評価を下しているのは意外だった。国家財政についての根本的な誤りは、イデオロギーや党派を問わずほぼ全ての政治家を蝕んでいるらしい。

日本人としては悪い印象しかないルーズベルト(FDR)が、道半ばに終わったとはいえ、壮大な社会保障制度の創設を目指していたことなど初めて知ったことも多く、米国の財政と社会保障の歴史や、誤った神話が強化されてきた経緯の他、就業保証制度(JGP)の真の意義についても理解を深めることができた。

信用創造や内生的貨幣供給論についての言及が欠けていることや解説の人選など不満もあるが、それを補って余りある価値がある良書である。

ケインズが「未開社会の遺物」と呼んだ「金本位制」ですら脱却までに長い時間を要したことに鑑みれば、決して簡単なことではないものの、これが常識となるなら世界の未来は間違いなくとても明るいものになるだろう。

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