1人当たりのGDPは経済記事でよく話題になります。2019年、日本の1人当たりのGDPは4万256ドルで、1ドル=110円とすると約442万8000円でした。1人当たりのGDPの世界ランキングで25位につけました。
ここまでの説明で「そうなのか!」とわかった人は、この先の記事もあまり役に立たないかもしれません。
1人当たりのGDPとは何なのか? わかりやすく解説します。
くわえて、どうすれば1人当たりのGDPが伸ばせるのかについても議論します。
GDPとは
そもそもGDPとは何でしょうか。
GDPとは英語で「Gross Domestic Product」と書きます。日本語では国内総生産と言います。
GDPとは国内で生産した付加価値の総合計です。付加価値とは粗利のことです。50円で仕入れて200円で売れれば150円の粗利=付加価値が発生します。
こういった経済活動で発生した付加価値の総合計がGDPです。
GDPの計算式は「GDP=消費+投資+政府支出+純輸出」です。
GDPは経済規模を表します。経済規模とは国力とも言い換えられます。
以下は世界の名目GDPランキングです。日本は名目GDPで第3位につけています。
国名 | 単位:100万USドル | |
1位 | アメリカ | 21,433,225 |
2位 | 中国 | 14,731,806 |
3位 | 日本 | 5,079,916 |
4位 | ドイツ | 3,861,550 |
5位 | インド | 2,868,930 |
名目GDPと実質GDP
GDPには名目GDPと実質GDPがあります。
名目GDPとは先ほど説明したとおり、単純な付加価値の総合計です。
実質GDPとは名目GDPから物価変動を差し引いた指標です。
実質GDPが経済にとっては重要と言われていますが、国力や1人当たりのGDPの比較はもっぱら名目GDPで行われます。
三面等価の原則
三面等価の原則とは生産・支出・分配のいずれの面から計算しても、GDPは同じ値になるという原則です。
要するに、付加価値を生産したのも消費したのも国民です。よって生産と支出は同じ値になります。支出するには分配されなければなりません。よって分配も同じ値になります。
例えば、あなたがパンを生産したとします。このパンを誰も買ってくれなければ付加価値は発生しません。したがって、パンを生産しただけではGDPはゼロです。
(パンの元手はかかっていないものとする)
パンが100円で売れると100円のGDPが発生します。売れるとは誰かの消費です。
生産と消費が同時に行われ、初めてGDPが発生します。
だから生産と支出(消費)は必ず同じ値になります。分配についても同じ理屈です。
1人当たりのGDPとは
GDPの定義がわかれば、1人当たりのGDPのイメージもつかみやすくなります。
1人当たりのGDPは、国民1人当たりが生産した付加価値を表す指標です。
同時に、国民1人が消費できる金額を表します。
要するに、1人当たりのGDPは国民の豊かさを示す数値です。
1人当たりのGDPの計算式は「1人当たりのGDP=名目GDP/人口」です。
日本の1人当たりのGDPの推移
上記の図では1991年のバブル崩壊で、1人当たりのGDPが停滞しかけています。それでも1992年から1997年まで緩慢ながら1人当たりのGDPは伸びています。
1998年から現在まで、1人当たりのGDPは停滞しました。
1人当たりのGDPが停滞した原因はデフレです。
以下はイギリスの1人当たりのGDPの推移です。
他の先進国もイギリスと同様に1人当たりのGDPは伸び続けています。日本だけが20年以上も停滞したのです。
1人当たりのGDPの主要国ランキング
国名 | 単位:USドル | |
7位 | アメリカ | 65,254 |
11位 | オーストラリア | 54,348 |
18位 | ドイツ | 46,473 |
22位 | イギリス | 42,379 |
23位 | フランス | 41,897 |
25位 | 日本 | 40,256 |
69位 | 中国 | 10,522 |
日本の1990年の1人当たりのGDPランキングは9位、2000年には2位でした。2010年に18位にまで転落し、2019年が上記の図のとおり25位です。
日本の1人当たりのGDPは低い
日本の1人当たりのGDPが1998年から停滞し、世界的には凋落していることが図から見て取れます。
1人当たりのGDPは国民の生産性とともに、国民の豊かさを表す指標です。日本人は世界的に見てどんどん貧困化しています。
普通の先進国は名目GDP、1人当たりのGDPは右肩上がりです。日本だけが停滞しています。
1人当たりのGDPを伸ばす方法
1人当たりのGDPを伸ばすことは、生産性の向上とともに国民が豊かになることでもあります。1人当たりのGDPを伸ばす方法はいくつか考えられます。
付加価値増加による生産性の向上
1人当たりのGDPを伸ばすには生産性の向上が必要です。一般的に生産性は競争することで向上すると思われがちですが、これは間違いです。
生産性の向上とは付加価値の向上です。競争とは何の関係もありません。
付加価値を向上させるためには需要の増加が必要です。ほしい人がたくさんいれば、同じ商品でも値段は上がりますよね。
人気のあるコンサートだとチケット代(付加価値)がうなぎ登りなのと一緒です。
つまり、生産性の向上には付加価値向上が必要で、付加価値向上には需要の増加が必要です。
デフレの脱却と積極財政
デフレとは需要<供給の状態です。需要が少なく付加価値も向上しません。したがって、生産性も低下する状態がデフレです。
1人当たりのGDPを伸ばすには生産性向上が必要で、生産性向上にはデフレ脱却が必要という結論に至ります。
デフレ脱却には政府による積極財政が不可欠です。合成の誤謬により民間だけでデフレ脱却は不可能だからです。合成の誤謬とは「個人や企業がデフレで節約・コストカットしたら余計に需要が縮小し、デフレが深刻化する」という現象のことです。
ミクロで合理的な行動が、マクロで間違った結果になることを合成の誤謬と呼びます。
よって、デフレは民間だけでは脱却不可能です。政府による積極財政=需要創出こそがデフレ脱却には必要です。
デフレを脱却すると1人当たりのGDPも自然と伸びます。
自国産業の保護と育成
1人当たりのGDPを伸ばすには競争力も必要です。現在はグローバル化が進み、海外から安い製品が輸入されます。国内で競争していても海外製品に押される時代です。
つまり、1人当たりのGDPを伸ばすには国際競争力が必要となります。
国際競争力を国内産業が伸ばすには、国家が自国産業を保護して育成する必要があります。
国際競争力アップのため、自由競争を選択するのは間違いです。自由競争とは政府による企業の放置です。放置していて国際競争力がアップするはずがありません。
中国や韓国など成長著しい国家は官民が協力し、国際競争力アップに努めています。官民協力とはつまり国内産業の保護や育成です。
1人当たりのGDPを伸ばすには国際競争力向上が必要です。国際競争力向上には自国産業の保護、育成が必要となります。
最低賃金と所得のアップ
最低賃金アップは1人当たりのGDPを簡単に伸ばすことができます。GDPとは「どれだけの付加価値を生産したか」であると同時に「どれだけ消費したか」でもあります。
最低賃金がアップすれば低所得層の所得が向上します。低所得層は消費性向が高く、所得向上は消費に直結します。
消費性向とは「1万円のうちどれだけ消費するか」という指標です。1万円全部を消費すれば、消費性向は1です。5000円なら0.5となります。
株式や配当に分配されていた企業の利益が、最低賃金アップで低所得層に振り向けられます。そのため、消費性向は上がり需要が増加します。
需要の増加とはイコールでGDPの増加です。よって、1人当たりのGDPも増加します。
まとめ
GDPとは何か? 「国民が生産した付加価値の総合計」です。言葉にすれば非常に簡単ですが、GDPを取り巻くさまざまなものを理解することはかなり大変です。
三面等価の原則など、最初は筆者も「ん? わからんねんけど?」でした。
閑話休題。
1人当たりのGDPを見れば国の豊かさがわかります。日本はかつて世界で2番目に豊かでした。今では25位にまで転落してしまいました。
1人当たりのGDPを向上させるには、まずデフレ脱却が必要です。
積極財政とデフレ脱却こそが日本を豊かにし、1人当たりのGDPを伸ばすことになります。