安全保障とは?安全保障のさまざまな種類や分野について解説

 安全保障と聞くと、国防や自衛隊を思い浮かべる人も多いでしょう。確かに国防も安全保障の一分野ですが、現在ではより多くの分野が安全保障という概念によって語られます。

 安全保障という概念は、なかなか学ぶハードルが高そうに見えます。しかし、安全保障の本質はそんなに難しいものではありません。

 安全保障の本質をわかりやすく解説します。また、さまざまな分野や種類の安全保障をざっと一覧することで本質がつかめるはずです。

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安全保障とは

 安全保障は英語で「Security(セキュリティ)」と書きます。国家安全保障を特に表す場合は「National security」です。

 安全保障とは「ある集団や共同体の人たちが安全・安心に暮らせる土台を守ること」です。国家安全保障の場合は「領土が侵されない」「食料を自分たちでまかなえる」「エネルギーや天然資源が不足なく調達できる」などが該当します。

 じつは専門家の間で、確固とした安全保障の定義は存在しません。

 しかし、おおよその定義は「ある集団や共同体の人たちが安全・安心に暮らせる土台を守ること」です。これが安全保障の本質と言って差し支えありません。

安全保障の種類

 安全保障にはさまざまな種類があります。ざっと一覧して本質部分をイメージしてください。
 どの安全保障の概念も「どうすれば危機が起きないか」を重要視しています。

伝統的安全保障

 伝統的安全保障とは国家の領土、領海や政治的独立を守ることです。もっとも基本的な安全保障の概念です。
 領土や領海だけでなく、国民の生命や財産を守ることも伝統的安全保障に含まれます。

 多くの場合、1カ国では十分な安全保障が行えません。そのため、同盟条約や集団安全保障によって伝統的安全保障を確立します。

人間の安全保障

 人間の安全保障は聞き慣れない言葉ですよね。人間の安全保障とは国家より人間に着目し、人権や平等、民主主義などを守るためのシステムを確立しようという概念です。

 外務省においては以下のように定義されています。

人間の安全保障とは,人間一人ひとりに着目し,生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り,それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために,保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促す考え方です。

(ODA) 分野をめぐる国際潮流 | 外務省

総合安全保障

 総合安全保障は軍事力だけに限定せず、非軍事的なものも含めた安全保障を確立する概念です。また、国外だけにとどまらず国内や自然の脅威への安全保障も、総合安全保障に含まれます。

 日本だと地震に対する安全保障、台風や土砂災害に対する安全保障も総合安全保障です。他にも食料安全保障、エネルギー安全保障もそうです。

集団安全保障

 集団安全保障は国家連合で互いの安全保障を確立する概念です。国家連合内で武力行使を禁止し、違反した国家には集団的制裁をすることで抑止力とします。

 国際連盟で採用されたのが集団安全保障です。現在の国際連合では、集団安全保障は確立されていません。

共通の安全保障

 敵国とも戦争回避が共通の利益であると認識し、敵国と協力して戦争回避を目指すのが共通の安全保障です。東西冷戦の時代のヨーロッパでこの概念は生まれました。

 従来の競争対立的な安全保障ではなく、敵国との相互依存的な協力を重視します。

協調安全保障

 協調的安全保障は、複数の国が協調的な行動を取ることで安全保障を確立しようとします。安全保障の危機となる相互不信を避けるため、情報交換や相互交流などの信頼醸成が求められます。2国間ではなく多国間で行われることの多い安全保障の手法です。

安全保障の分野

 安全保障にさまざまな種類があるように、適用される分野も多種多様です。現在、安全保障の概念が適用される分野は「人間の生活にかかわるほぼすべて」と言えます。
 なぜなら、安全保障とは上述したように「ある集団や共同体の人たちが安全・安心に暮らせる土台を守ること」だからです。

 ここでは非軍事的な安全保障の分野を見ていきます。

経済安全保障

 経済とはその社会や場所、国家に住む人々の生活そのものです。したがって、安全保障の概念がもちろん適用されます。

 例えば失業率の急上昇や雇用の喪失は、経済安全保障の重大な危機でしょう。他にも、他国と急激に経済格差が広がれば経済を支配され、経済的自立が達成できません。
 急成長する中国と日本を見れば危機は明らかです。

 経済とは人々の生活そのものであるとともに、その国家の国力です。平時の経済と呼ばれますが、非常時には兵站と同義になります。
 だから、経済安全保障は非常に重要な安全保障の分野です。

エネルギー安全保障

 エネルギーや天然資源は、経済にも軍事にも欠くべからざるものです。天然資源をどのように調達し、確保するのかは国家にとって重要な課題です。

 日本が太平洋戦争に踏み切ったのは、ABCD包囲網による禁輸が原因と言われています。石油や鉄鋼が調達困難になり戦争に突入しました。
 天然資源やエネルギーは近代国家にとって絶対に欠かせません。

 エネルギー安全保障を確保するためには輸入先の分散、シーレーンの確保、国産エネルギーの確立などが必要です。

食料安全保障

 「腹が減っては戦はできぬ」ということわざがあります。食料がなければ人々の生活も経済も軍事も立ちゆきません。エネルギーや天然資源と同様に、食料も国家の土台を支える重要な物資です。

 アメリカなどは食料を戦略物資とすら見なしています。それほど食料は重要です。

 食料安全保障を確保するためには、食料自給率のアップや国内の農林水産業の保護が必要です。

環境安全保障

 環境安全保障とは簡単に言えば環境保護です。自然環境に重大な影響を与え、人間の生存に支障が出ないようにするのが環境安全保障です。

 日本では水俣病やイタイイタイ病が有名です。環境破壊を省みずに工業化を進めた結果、公害病にまで発展しました。
 こういった事態を防ぐのが環境安全保障の役割です。
 他にも、水害を減らすための植林なども環境安全保障に含まれます。

思想文化安全保障

 思想や文化は国家の精神的な基幹です。イスラム国家の場合、イスラム教の教えや文化を捨て去ることはアイデンティティを捨て去るのと同様です。
 日本においても日本の文化、思想を捨て去ることは日本人であることを捨て去ることと同義です。

 こういった国家の精神的な基幹を守るのが思想文化安全保障です。

日本では安全保障が軽視されている

 日本では安全保障が軽視されています。

 近年、中国は急速な経済成長を遂げました。それに伴って軍事費も大きく増加しています。その中国の隣にいる日本の軍事費は、この20年間でわずか数千億円程度の増加にとどまっています。

 中国と日本の軍事費を比較すると、いかに日本が安全保障に無頓着かが理解できます

 他にも日本が安全保障を軽視している証拠があります。

 食料自給率は改善しようと思えば改善できたはずです。しかし、現在の日本の食料自給率は低下の一途です。

 さらに、メタンハイドレートなど自前の資源開発も遅々として進みません。予算を大きくして努力した形跡も見られません。

 安全保障が軽視される原因ははっきりしています。プライマリーバランス黒字化目標や財政健全化目標が優先されているからです。

 安全保障の本質は「ある集団や共同体の人たちが安全・安心に暮らせる土台を守ること」です。財政健全化すれば安全・安心に暮らせるでしょうか? そんなわけがありません。

 日本の安全保障の軽視は、非常に深刻です。

まとめ

 安全保障は国家にとって重要です。もちろん、国家に属する国民にとっても重要です。我々の生活の土台を守ることが安全保障だからです。

 日本は災害大国です。秋になれば台風が来ますし、南海トラフ地震も心配されています。そんな日本だからこそ、安全保障にしっかり取り組む必要があります。

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