自由主義は民主主義にとって、とても重要です。民主主義国家の日本で自由主義は誰もが知るところ――のはずが、あまりよく知られていません。
記憶が確かなら、義務教育で自由主義について習いませんでした。検索しても自由主義の記事は、言い回しがわかりづらく難解です。
そこで、今回の記事はできるだけ簡単に自由主義を解説します。
また、自由主義に伴うさまざまな疑問についても答えていきます。
自由主義とは?簡単に概要を解説
自由主義とは自由と平等に至上の価値をおくイデオロギーです。一般的に自由主義者は民主主義や個人主義、資本主義、男女や人権の平等、言論や表現の自由を支持します。
自由主義の歴史はあまり長くありません。ヨーロッパで啓蒙思想が台頭した17世紀後半から18世紀に、自由主義は明確な運動となりました。
まだ自由主義の歴史は300年ほどです。
ここからはもう少し詳しく自由主義の内容を見ていきます。
積極的自由と消極的自由
自由主義と一口に言ってもいくつか種類があります。自由の種類ですら1つではありません。
自由には積極的自由と消極的自由があります。積極的自由とは「~への自由」、消極的自由は「~からの自由」と表現されます。
幸福を追求する自由は「幸福への自由」と表現できるので積極的自由です。反対に、規制緩和は「規制からの自由」と表現できるので消極的自由です。
自由主義の種類によってどちらを重視するかが変わります。
例えば新自由主義は経済自由主義で小さな政府を目指します。すなわち「政府からの自由」を目指しているので消極的自由を重視しています。
一方、日本のリベラルは格差や貧困を問題視します。「幸福になれないことへの不自由」を問題視し「幸福への自由」という積極的自由を重視しています。
どちらの自由を重視するかによって、自由主義の内容は大きく変わります。
自由主義と経済自由主義の違い
自由主義は日本において政治的です。人権や平等、貧困の解消などを重視します。こういった自由主義を近代自由主義と呼びます。
経済的自由を指す場合、経済自由主義と書くことが多いです。
リベラルは自由主義者のことですが、同時に左派のことです。左派に経済自由主義というイメージはありません。
むしろ、経済自由主義に積極的なのは新自由主義を支持する右派です。
文脈で自由主義なのか、経済自由主義なのか変わる場合があります。注意しましょう。
自由主義の対義語は権威主義
自由主義の対義語は権威主義です。権威主義は英語でAuthoritarianism(オーソリタリアニズム)と書きます。
権威主義とは個人や社会が権威に服従する姿勢や態度、考え方です。例えば中国は権威主義国家です。他に、ロシアも権威主義に非常に近しい国家でしょう。
権威主義は民主主義の対義語でもあります。このことから自由主義=民主主義と考える人もいますが、それは間違いです。
自由主義と民主主義の違いは後述します。
自由主義は英語でLiberalismだが……
自由主義は英語でLiberalism(リベラリズム)と書きます。英語でも経済自由主義はEconomic Liberalism(エコノミック・リベラリズム)として政治的な自由主義と区別されます。
自由主義=リベラリズム=政治的な自由主義=近代自由主義と考えていいでしょう。
しかし、新自由主義は英語でもNeo Liberalism(ネオ・リベラリズム)と表記されます。新自由主義のように、経済自由主義か自由主義かが区別しにくい場合も。
ちょっとややこしいですよね。
自由主義と新自由主義の違い
自由主義=近代自由主義とします。
近代自由主義と新自由主義には、明確な違いが2点あります。1つは近代自由主義が政治・経済を内包しているのに対して、新自由主義は主に経済自由主義だという点。
2つめは近代自由主義が積極的自由を重視するのに対して、新自由主義は消極的自由を重視する点です。
- 自由主義(経済・政治)と新自由主義(経済)
- 自由主義(積極的自由)と新自由主義(消極的自由)
新自由主義は経済自由主義の一種です。政治は市場で間違えるという信念のもと、市場に介入しない小さな政府を目指すイデオロギーが新自由主義です。
「(市場の)政府からの自由」という消極的自由が新自由主義の価値観です。
一方、近代自由主義は人権や平等など積極的自由をより重視します。経済的にも政府からの自由より、格差の拡大や貧困を問題視します。
これが自由主義と新自由主義の違うところです。
自由主義と民主主義の違い
自由主義と民主主義はどちらも権威主義の対義語です。「自由主義=民主主義」と勘違いする人もいますが、自由主義と民主主義は厳密には異なります。
民主主義とは個人が能動的に社会と関わり、社会を改善していこうとするイデオロギーです。学級会でいろいろな問題をみんなで話し合い、それぞれが自主的に考えて発言していく様が民主主義です。
この民主主義の土台が自由主義です。民主主義を成立させるためには表現の自由や、思想信条の自由が不可欠です。そういった自由や平等、人権を保障するのが自由主義です。
もう少し突っ込むと自由主義は自由や平等を至上の価値として、運動して勝ち取っていくイデオロギーです。有り体に言えば、民主主義国家でなくても自由主義運動は可能です。
逆に自由主義のない場所で民主主義は育ちません。
土台と建物の関係と考えるとわかりやすいでしょう。
自由主義と社会主義の両立は可能か
東西冷戦は「社会主義vs自由主義の戦い」と描かれました。このイメージで多くの人が、社会主義と自由主義は両立しないと考えています。
しかし、両立は可能です。
社会主義とは経済自由主義の弊害を修正しようとする運動です。したがって、新自由主義など弊害の大きな経済自由主義との両立は確かに不可能です。
しかし、近代自由主義と必ずしも対立するものではありません。
格差や貧困を問題視して、積極的自由を重視する近代自由主義と社会主義はむしろ、相性が良好です。
社会主義と自由主義は両立が可能です。ちょっとびっくりですよね。
まとめ
自由主義について簡単に概要を述べ、その後にさまざまな疑問について答えてきました。少し自由主義の全体像やイメージがつかめたのではないでしょうか。
イデオロギーや哲学の話は難しいと敬遠しがちですが、さまざまな政治問題を考える土台として非常に重要です。例えば自由主義を知らずに民主主義は語れませんよね。
イデオロギーをしっかりと理解して、政治への造詣を深めてくださいね。