ナショナリズムの意味を直感できるよう多角的に解説

 ナショナリズムの解説はいろいろありますが、あまりピンとこない人も多いと思います。説明している言葉は理解できるし、意味も理解できる。しかし、ナショナリズムそのものが見えてこない。
 ナショナリズムを調べているとそんな感覚に陥りますよね。

 ナショナリズムを直感で理解できるよう、今回は記事を書いています。あなたにも直感できるよう多角的に、かつ事例を交えて解説します。

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ナショナリズムの意味とは

 まず、簡単にナショナリズムの意味をおさらいしておきましょう。

ナショナリズムとは、国家という統一、独立した共同体を一般的には自己の所属する民族のもと形成する政治思想や運動を指す用語。

ナショナリズム – Wikipedia

 この説明はわかりにくい代表例でしょう。

 ナショナリズムはラテン語が語源で、英語のネイションにismをつけたものです。英語ではNationalismと書きます。ネイションとは民族や部族、はたまた国家などの共同体を指します。
 ナショナリズムは、基本的に国家という共同体を指していると考えればいいでしょう。

 日本語では「民族主義」「国家主義」と翻訳されますが、これが混乱の元です。本当は「共同体意識」「国民意識」とでも翻訳するべきでした。

 民族や国家といった共同体の一員である意識、一員であると考えることがナショナリズムです。

 パトリオティズム(愛国心・愛郷心)とはやや趣が異なります。パトリオティズムは愛国心ではなく、祖国愛と翻訳した方がしっくりきます。
 パトリオティズムは郷土、国家への愛着です。

ナショナリズムの対義語は?

 ナショナリズムの対義語はグローバリズムです。ネイションが共同体を指し、グローバルは地球を指します。
 ナショナリズムが共同体主義で、グローバリズムは地球主義です。

 現在、共同体の最大単位は国家です。基本的にナショナリズムとグローバリズムは相容れません。ですが、覇権主義や帝国主義なら両立することも可能です。

リベラル・ナショナリズムやエスノ・ナショナリズムの意味

 リベラル・ナショナリズムの意味は一言では言い表せません。リベラリズム、リベラルとは自由主義です。ナショナリズムとは共同体主義、共同体意識のことです。

 リベラル・ナショナリズムとはヤエル・タミールが提唱しました。要約すれば「民主主義というリベラルな政治制度もナショナリズム(共同体意識・国民意識)がないと成り立たない」ということ
 この議論は後述します。

 リベラリズムとナショナリズムは対立概念ではなく、車の両輪だとするのがリベラル・ナショナリズムです。

 エスノ・ナショナリズムは一言で言い表せます。エスノとは民族を表す接頭語ですから、日本語では民族・共同体主義とでも翻訳するべきでしょう。
 エスニック(民族)な集団が国家から独立し、自らの国家を建設しようとする動きはエスノ・ナショナリズムの発揮です。
 冷戦が終結した後から活発になり、現在に至るまで世界の国家は増え続けています。

 「同じ習慣を持った民族内部の仲間意識」がエスノ・ナショナリズムです。

ナショナリズムと意味と効用

 「ナショナリズムはわかったけど、でも何の役に立つの? なんか意味あるの?」との疑問があるでしょう。ここからは実際の事例を引いて、ナショナリズムの意味と効用について考えます。

ダニ・ロドリック「世界経済における政治的トリレンマ」

 ナショナリズムの意味と効用を解説するのに、「政治経済のトリレンマ」の説明が必要です。政治経済のトリレンマはダニ・ロドリックが提唱しました。

 ダニ・ロドリックはトルコ出身の経済学者です。正式には政治経済のトリレンマではなく「世界経済における政治的トリレンマ」です。
 政治経済のトリレンマを要約すると国家主権・民主主義・グローバリズムは同時に2つまでしか成り立たない」というトリレンマです。
 国家主権は「≒」でナショナリズムとも読み替えられます。

経済ナショナリズムと中国の台頭

 中国は21世紀に入って経済的・政治的に台頭してきました。グローバリズムが始まったのが1980年代であり、中国はグローバリズムの中で台頭してきたのです。

 一方、民主主義国家であるアメリカや日本はその勢いが衰えています。この違いはダニ・ロドリックの政治経済のトリレンマに関係します。

 アメリカや日本は民主主義です。そして、グローバリズムを推進しました。必然として最後のピースである国家主権(≒ナショナリズム)は弱体化します。

 中国は民主主義ではありません。グローバリズムと国家主権(≒ナショナリズム)が両立します。その結果、中国は台頭してアメリカや日本は凋落しました。
 ナショナリズムの有無が興隆か凋落かを決定づけたのです。

民主主義とナショナリズム

 リベラル・ナショナリズムの段でも書きましたが、民主主義にはナショナリズムが必要です。ナショナリズムという国民意識、仲間意識がないと民主主義が成り立ちません。

 例えば東日本大震災のときに政府は復興予算を組みました。このことに文句を言う国民はいませんでした。なぜなら同じ国民、仲間だからというナショナリズムがあったからです。
 もし外国の震災に日本政府が復興予算を組んだら非難囂々でしょう。

 民主主義は少数も尊重する政治理念です。少数――上記の場合は被災者――を尊重するには仲間意識、国民意識が必要です。つまり、民主主義はナショナリズムなしでは成り立たないのです。

ナショナリズムの意味と効用は「国民同士の結合」

 ナショナリズムで中国は台頭し、弱まったアメリカや日本は凋落しました。民主主義ではナショナリズムが不可欠です。
 一体ナショナリズムの正体とは何なのでしょうか。

 ナショナリズムは「国民同士を結合させる意識」と言えます。国民同士が結合し、団結すると経済も強くなります。
 結合して仲間意識が芽生えるからこそ、民主主義の理念である少数の尊重が可能になります。

 サッカーや野球でもチームワークが大切なように、国家もナショナリズムの多少によって興隆や凋落が決定されます。

まとめ

 ナショナリズムの意味や効用、正体についてできるだけ平易に解説しました。直感してもらえるなら幸いです。

 日本は長らくナショナリズムを否定してきました。日本で国民が大同団結したのは昭和であり、あの太平洋戦争だったからです。
 ナショナリズムは日本において危険なものとされ、忌避されてきました。

 しかし、ナショナリズムは必ずしも戦争を引き起こすものではありません。健全なナショナリズムも存在します。
 ナショナリズムの意味について――あなたにも熟考してほしいと思います。

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