コロナ禍の雇い止めや時短、休業で生活困窮者が続出しています。厚生労働省の調査では年末までに8万人に迫る勢いで雇い止めが拡大し、多くの人が職を失いました。
民間の支援団体によれば、リーマンショックのときの年越し派遣村以上だと言います。大変厳しい状況であり、困窮したときに生活保護は有力な選択肢です。
その生活保護を支援するオンラインサービス「フミダン」がリリースされました。スマホからでも利用できる生活保護申請書作成サービスです。
フミダンとはどんなサービス?
一般社団法人「つくろい東京ファンド」は2014年、複数の生活困窮者支援団体が集まって設立されました。
そのつくろい東京ファンドがリリースしたサービスが「フミダン」です。
フミダンは要するに「オンライン上で誰でも簡単に生活保護申請書が作れるサービス」です。また、2020年末から年始にかけて、福祉事務所へのインターネットFAXを用いた申請も試験運用します。
インターネットFAXを用いた試験運用は、東京都内の23区で行われる予定です。
スマホからでも項目を入力していけば、簡単に生活保護申請書が作れます。作った申請書はPDFで出力し、コンビニなどのネットプリントで印刷して申請します。
申請書を持っていけば水際作戦もクリアできます。クリアできる理由は後述します。
生活保護はどんな人が受けられる?
生活保護は以下、4つ条件に当てはまる人が受けられます。
- 世帯収入が政府の定める最低生活費を下回っている
- 生活を支えるために活用できる資産がなく、貯金も10万円以下
- 雇用保険や年金などの公的制度が利用できないか、利用しても最低生活費を下回る
- 他に生活を支える方法がない
世間でよく誤解されていますが、車が生活や仕事に必要な場合は所持が認められることがあります。生活場所としての持ち家も同様です。
毎月の光熱費や携帯代を2ヶ月滞納している人は困窮状態と言えます。困窮したらまず、民間支援団体や福祉事務所に相談しましょう。
最低生活費を計算してみよう
最低生活費は自治体によって異なります。家賃も含めて10~13万円程度が最低生活費です。最低生活費は「生活保護費計算システム」のエクセルシートで計算できます。
上記は公式なものですが、ネット上での計算ツールなら「生活保護の金額、あなたはいくらもらえる?簡単な入力だけで保護費を自動計算します!」が簡単です。
住んでいる自治体や年齢、世帯人数を入力するだけで最低生活費が計算できます。
「収入があると生活保護が受けられない」との誤解がありますが、収入が最低生活費を下回っていれば受けられます。
フミダンがリリースされた背景
フミダンがリリースされた背景は、コロナ禍による生活困窮者の増加です。加えて、生活困窮者の若年化も挙げられます。
コロナ禍では年末に8万人に迫る勢いで雇い止めが増えており、若年層での生活困窮者も目立ちます。今までは生活困窮者が高齢者だったこともあり、オンラインサービスはあまり受け入れられませんでした。
しかし、生活困窮者の若年化に伴いオンラインサービスも許容されます。そこで福祉事務所の水際作戦をクリアするため、生活保護申請書のオンライン作成サービス「フミダン」をリリースしたとのことです。
フミダンはなぜ水際作戦に有効なの?
フミダンがなぜ福祉事務所の水際作戦に有効なのか説明する前に、水際作戦について解説します。
水際作戦とはできるだけ生活保護受給者を増やさないよう、申請自体をさせなくすることです。福祉事務所に相談にいくと「実家に帰ってはどうか」「頼れる親族はいないのか」など、さまざまな理由で生活保護の申請をさせてもらえないケースが目立ちます。
水際作戦は「社会保障費の膨張を防ぐため」「国民が怠けないように」という理由で蔓延りました。しかし生活保護を受けられず餓死者を出したり、本当に生活保護が必要な困窮者を保護できなかったりとさまざまな問題があります。
日本の生活保護者の補足率はわずか2割で、ヨーロッパ各国と比較しても低い数字です。これは水際作戦が原因です。
生活保護の申請は国民の権利です。申請の意思を示せば福祉事務所は受けざるを得ません。だから、申請自体をさせないようにしていました。
しかし、フミダンで申請書を作ればあとは提出するだけです。福祉事務所は提出を断れません。
だからこそフミダンは水際作戦に有効なのです。
フミダンの使い方は簡単!
フミダンの使い方はとても簡単です。表示されている項目に入力していくだけで、生活保護申請書が作成できます。
入力する項目はやや多いですが、15~30分もあれば終わるでしょう。
所々にヘルプもあり、迷うことはありません。非常にわかりやすい親切な設計です。
上記はパソコンでの画面。スマホでは以下のような画面になります。
生活が困窮気味の人はいざというときのために、生活保護申請書を作っておくことをおすすめします。作っておけば万が一の場合でも慌てずに済みますよ。
まとめ
生活保護を多くの人は「恥ずかしいこと」と忌避するようです。支援団体によれば生活が困窮しても「生活保護はちょっと……」と断る人も多いと言います。
生活保護は国民の権利です。憲法25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされます。
生活保護は何ら恥ずかしいものでも、いけないものでもありません。
いつ自分が貧困に転がり落ちるかわからない現代。フミダンを使って生活保護申請書を作っておいて損はありません。
生活保護の実態について、やや古いですが以下の書籍がおすすめです。
著者はケースワーカーとして働いていたこともあり、生活保護の現場が垣間見える書籍です。KindleUnlimitedならただで読めちゃいますよ。