インフレとデフレとは?違いや覚え方、見分け方を解説

 経済用語は横文字が多く、覚えづらいですよね。インフレとデフレは「どっちがどっちだっけ?」とあやふやになることも。

 今回はインフレとデフレの仕組みや、簡単な覚え方を解説します。また、今がインフレとデフレのどちらなのかの見分け方や、インフレやデフレで金利がどうなるかについても解説します。

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インフレとは

 インフレとはインフレーションの略語です。インフレは物価が継続的に上昇する状態で、相対的に貨幣価値が下落する状態と言えます。

 この「物価が上がる」「貨幣価値が下がる」という表現への理解が肝要です。

 昨日は100円でパンが2つ買えました。今日は100円でパンが1つしか買えません。これはパンの値段が50円から100円に上がったとも言えますが、100円の貨幣価値がパン2つから1つに下がったとも言えます。

 インフレでは預金しておくより消費・投資した方が得になります。なぜなら貨幣価値が継続的に下がるからです。
 そして企業や個人の投資や消費が増えて、売り上げや所得も増えます。増加した売り上げや所得でさらに需要が増えます。

 インフレはこのような好循環を招きます

 インフレは需要>供給の状態です。もしデフレからインフレにするなら、政府支出(需要)の増加が必要です。

 インフレと聞くとすぐ、ハイパーインフレを懸念する有識者がいます。しかしハイパーインフレは供給への壊滅的な打撃や革命、内戦の混乱でしか起こりません。
 民主主義国家が平時にハイパーインフレを引き起こした例は、歴史上ありません。

 インフレの覚え方は以下です。

  1. インフレとは「物価上昇・貨幣価値下落」
  2. 「需要>供給」の状態がインフレ
  3. インフレは資本主義にとって正常な状態

デフレとは

 デフレとはデフレーションの略語です。デフレとは物価が継続して下落する状態で、相対的に貨幣価値が上昇するインフレの逆バージョンです。

 デフレでは消費・投資するより、預金しておく方が得です。貨幣価値が上昇し続けるからです。
 企業や個人は預金や内部留保に励み、節約やコストカットします。全体的な需要が減少し、企業の売り上げや個人の所得も下がります。

 恐ろしいことにデフレでは、物価下落速度以上の早さで所得が減少します。

 こうした悪循環はデフレスパイラルと呼ばれます。

 デフレとは需要<供給の状態です。抜け出すために需要が必要ですが、デフレ下では企業も個人も節約に走って需要減少を招きます。
 このようにミクロで合理的な行動がマクロで間違った結果を招くことを、合成の誤謬と言います。

 民間だけでデフレは脱却できません。政府が支出(需要)を拡大して初めてデフレ脱却が可能になります。

 日本は1998年からデフレに突入し、デフレないしデフレギリギリの状態を20年以上続けています。日本のGDPが先進諸国に比べて伸びないのはデフレが原因です。

 デフレは以下のように覚えましょう。

  1. デフレとは「物価下落・貨幣価値上昇」
  2. 「需要<供給」の状態がデフレ
  3. デフレではGDPが伸びず経済成長できない

インフレとデフレの見分け方

 インフレとデフレをどのようにして見分けるのか、いくつかの指標で解説します。

GDPデフレーター

 GDPデフレーターとは、名目GDPから実質GDPを計算するときに用いられる物価指数です。基準年を100としてプラスならインフレ、マイナスならデフレとなります。

 上記のグラフは1998年からデフレ化し、2013年までデフレが続いていたことを示しています。他に、2014年の消費増税でデフレ圧力が強くなったことも読み取れます。

消費者物価指数

 消費者物価指数は名前の通り、世帯の家計消費から物価変動を計測する指数です。

 英語でCPIと表記され「CPI」「コアCPI」「コアコアCPI」の3つがあります。コアCPIは消費者物価指数(CPI)から食料品を除いた数字、コアコアCPIはさらにエネルギーを除いたものです。

 食料品やエネルギーは外的要因に左右されやすく正確ではありません。デフレかどうかを見分けるためにはコアコアCPIを参考にしましょう。

 プラスならインフレ、マイナスならデフレです。

名目成長率と実質成長率

 もっと単純にインフレとデフレを見分ける方法があります。名目成長率と実質成長率です。

 「名目成長率-実質成長率」がプラスならインフレ、マイナスならデフレ。もしくは「名目成長率(GDP)>実質成長率(GDP)」ならインフレ、逆ならデフレです。

インフレとデフレはどちらが困る?

 インフレとデフレでは当然、デフレの方が問題です。

 インフレでは消費や投資にお金が回りますが、デフレでは企業、個人ともに節約しようとして需要が減少します。

 需要が減少すると企業は売り上げ、個人は所得が下落します。物価の下落以上の速度で所得が下落して、国民は次第に貧困化します。

 またデフレでは企業がコストカットのために人員整理したり、規模縮小したりします。そのため供給力も最終的に毀損されます。需要<供給という不均衡が循環して国力が低下していく現象がデフレです。

 資本主義においてインフレは正常な状態です。

 国民生活や国家にとって困るのは明らかにデフレです。

インフレとデフレと金利の関係

 最後にインフレとデフレにおける金利の動きについて解説します。

 金利とは長期金利のことで、10年もの国債の利回りを指します。この長期金利の上下に一般的な金利も影響されます。

 主流派経済学ではデフレで金利が下がり、インフレで金利が上がるとされます。しかし現代貨幣理論(MMT)によれば、日銀は長期金利をコントロールできます

 これは「YCC(イールドカーブ・コントロール)」と呼ばれます。仕組みは買いオペと売りオペの使い分けです。
 長期金利を抑えるには買いオペで市場から国債を買い、当座預金を供給します。逆に長期金利を上昇させるには売りオペで市場に国債を供給します。
 前者が金融緩和、後者が金融引き締めです。
 短期金利は当座預金への付利などを通じてコントロールします。

 すでに日銀が2016年から実施しており、実績もあります。これからの時代は「インフレだから金利が上がる」と言えないかもしれません。

まとめ

 インフレとデフレの違いや覚え方、見分け方は慣れてないと難しいですよね。聞き慣れない言葉がたくさん出てくるので、覚えるのも大変です。

 しかし日本経済の現状をしっかり理解したいなら覚えましょう。

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