保守的と聞くと「ガンコ親父」「気難しい人」というイメージを受けますよね。しかし保守的に生きたり、保守的に考えたりするとプラスの効果が生まれます。
今回は保守的の語源である保守や保守思想を解説し、保守的だから得られる5つの効果を紹介します。生き方から仕事、政治まで多くの場面で「保守的」は役立ちます。
保守的とは
保守的の「保守」とはメンテナンスではなく、保守思想から来ています。保守思想は一見すると難しそうですが、堅いものではありません。
まずは保守本来の意味から英語での表現、対義語までお伝えします。漠然とでかまいません。保守的のイメージをつかんでください。
保守は英語でConservative(コンサバティブ)です。保守主義と表現する場合はConservatism(コンサバティズム)です。
アメリカでは共和党が保守、民主党がリベラルという立ち位置です。日本では一応、自民党や維新の会が保守と言われています。
筆者的には自民党も維新の会も保守ではありませんが……閑話休題。
保守思想は革命や革新への拒否反応、警戒感が本質です。保守思想は今までの体制を維持し、漸進的に改善していく態度です。
急激な改革や革新に反対する姿勢とも言えます。
保守的の対義語は革新的です。革新的とは制度や組織、習慣などを新しくしようとする態度です。革新的なことはいつも成功するとは限りません。
むしろ革新的なことのほとんどが失敗します。しかし取り上げられるのは成功例ばかりなので「革新的=善」というイメージがついています。
保守的の類語としては旧態依然や古風、慎重などが挙げられます。もっとも近い言葉は慎重でしょう。旧態依然や古風はやや趣が異なります。
なぜなら保守は漸進的に改善を進める態度であり、現状維持のみを指す言葉ではないからです。
保守思想とは
エドマンド・バークは保守思想の父と言われます。そのエドマンド・バークやフランス革命、近代を起源とする思想が保守思想です。
エドマンド・バークが保守思想に言及した著作がかの有名な「フランス革命の省察」です。
保守思想は近代とともに生まれました。イギリスの産業革命やフランス革命のような、変革への警戒感から生まれたのが保守思想です。
近代とは理性の時代です。合理主義や啓蒙主義といった、理性を万能とする考え方が台頭しました。
これに対して保守思想は「理性は万能ではない」という立場を取ります。
したがって伝統や歴史に培われたものを大事にします。要するに、慣れ親しんだものを大事にするのが保守思想です。
生活においては慣れ親しんだ道具であり、政治においては慣れ親しんだ制度を貴重とします。これが保守思想のコアの部分です。
革新的はよくて保守的はダメ?
メディアや自己啓発本では革新的な成功ばかり取り上げられ、革新的=善という風潮です。逆に保守的という言葉は、革新を邪魔する悪い奴のようなイメージが定着しています。
自己啓発本ではチャレンジが重要と書かれていますし、メディアは「改革が必要だ!」「抜本的改革!」などと政治に革新性を求めます。
メディアや自己啓発本では決して書かれませんが、革新的なチャレンジは往々にして失敗します。成功例が珍しいからこそ大きく報じられるのです。
99%の革新的な失敗は報じられません。
革新的なことは本当に善なのでしょうか? そして保守的なことはダメなことでしょうか? そうではありません。
人間の本性は保守的
「人間の本性は保守的」と言ったのは20世紀を代表する保守思想家、マイケル・オークショットです。オークショットは「道具の使用の本質は使い慣れることであり、それゆえ人間は、道具を使用する動物である限り、保守的性向を有するのである」と喝破しました。
道具は使い慣れることで使用できます。そして人間は道具を使用する生き物です。保守の本質とは慣れ親しんだものを大事にすることですから、人間の本性は保守的なのです。
誰しも慣れた仕事がなくなり、慣れてない仕事に回されるとストレスがたまります。それは人間の本性が保守的だからです。
ただし保守的は現状維持とやや異なります。改善を保守思想は否定しません。
急激な革新や変革だから拒否するのです。
保守的だから得られる5つの効果
保守的だと、5つのプラスの効果が得られます。生き方や仕事の仕方、政治全般に当てはまる効果です。
効果を知っておけば保守的という言葉への拒否感も薄れるはず。やたらと革新性を追い求めなくて済むので、精神的にも楽になります。
①チャレンジ疲れしない
保守的であればチャレンジ疲れと無縁でいられます。
自己啓発本では「失敗してもチャレンジが重要」と書かれています。地に足をつけたチャレンジであればいいのですが、革新的なチャレンジは99%失敗します。
政治でも失われた20年の中で「抜本的改革!」「構造改革!」と何度も改革にチャレンジしました。しかし多大な労力を使って成果はなしです。
現在では、むしろ改革疲れとすら称されます。
保守的であれば、このような無駄なチャレンジをしなくて済みます。現実を見据え、改善していけばいいのです。
②腰を据えて物事に取り組める
保守的とは、1つの物事に腰を据えて取り組むことでもあります。保守思想とは「慣れ親しむものを大事にすること」ですから、慣れ親しむものを見つけ育まなければなりません。
加えて自然に育まれた慣れ親しんだものを、大事にしなければなりません。
どうなるかわからない革新的なチャレンジは、往々にして近視眼的に行われます。しかし物事を維持、存続するには長期視点と根気が必要です。
今の日本の政治にも保守的な態度が必要です。
腰の据わらないチャレンジより、保守的に腰を据えた取り組みを行いましょう。
③生活と精神が安定する
当たり前と言えば当たり前ですが、慣れ親しんだものを大事にすれば生活も精神も安定します。海外に行った日本人の多くが味噌汁を飲みたくなるのは、慣れ親しんだ味で精神の安定を得たいからです。
明日から味噌汁が飲めないとか、日本語をしゃべってはダメとか言われたら誰だって困りますよね。
慣れ親しんだものがなくなると、生活も精神も不安定化します。逆に大事にすると安定し、地に足がつきます。
安定こそが明日への活力を生み、物事を漸進的に改善するパワーになります。
④大きな失敗が少なくなる
革新的なことをやろうとすればするほど、失敗は重なります。頭で思い描いた通りに、現実は進まないからです。
どのような綿密な計画も、計画通りに進むことはありません。
しかし保守的であれば、地に足のつかないチャレンジはしなくて済みます。したがって失敗も少なくなります。
漸進的かつ現実的に改善することで、大きな失敗を防ぎつつ前進できます。理性で考えた「計画」より、現実をPDCAサイクルで回す漸進的な改善の方が効果も高いです。
⑤習慣化して積み重ねられる
保守的な人は1つの物事に腰を据えて取り組みます。その物事を習慣化して積み重ねられるので、やがては大きな成果につながるケースもあります。
また習慣化できることは、自分に無理がないことでもあります。無理してチャレンジするより、無理なく積み重ねられる方が精神的にも楽ですよね。
まとめ
今回の記事では「保守的」という言葉への悪いイメージの払拭に努めました。保守的と言えばすぐに「ガンコ」「旧態依然」「古い」などのイメージで見られます。
しかしほとんどの人間は保守的です。革新的な人間なんて一部の天才だけ。だからこそ保守的に生きるなら、精神的にも安定して生活できるはず。
無理に革新的である必要はありません。チャレンジも結構ですが、まずは地に足をつけることが必要です。保守的に生きて安定を手に入れてくださいね。