就職氷河期は悲惨なほど求人や応募がなく、数十社の面接を受けるのも当たり前の時代でした。
なぜそのような悲惨な事態になってしまったのか?
原因は政府の経済政策の失敗です。バブルを崩壊させ、有効な経済政策を打てず、さらには消費増税と緊縮財政でデフレに陥りました。
実際に有効求人倍率は政府の失敗で低下しています。
しかし本当に氷河期世代が悲惨だったのはその後。政府も世間も無関心を貫き、氷河期世代を放置し続けました。
氷河期世代の悲惨さを、できるだけ具体的に解説します。
就職氷河期と有効求人倍率
就職氷河期は一般的に1993年から2005年とされます。1991年にバブルが崩壊し、企業は新卒採用を控えます。当時の新卒にそのしわ寄せが行きました。
当時は、以下のように有効求人倍率が低下。
バブル期に1.4だった有効求人倍率は1993年に0.76と半減しました。もっとも低下した1999年は0.48とバブル期の約1/3です。
当時は数十社の面接を受けて、内定を取れないことも珍しくありませんでした。
1993年に新卒だった人は2020年の今では49歳。2005年に新卒だった氷河期世代もすでに37歳です。
氷河期世代のほとんどがアラフォーからアラフィフに差し掛かっています。
正規雇用を求める氷河期世代は100万人以上います。200万人だとする試算もあります。
就職氷河期で大変だったことをアンケートすると、以下のような回答が多かったようです。
- 内定がなかなかもらえない。面接で数十社を受ける人もいた
- そもそも求人数が少なすぎる。募集自体をしていない
- 給料が安い。なかなかあがらない
- 正社員・正規雇用になれなかった
給料が安いと感じたのは、上のバブル世代と否応なく比較するからでしょう。
就職氷河期が悲惨だった7つの原因
就職氷河期が悲惨だった原因はいくつもあげられます。主な7つの原因を解説します。
①バブル崩壊
就職氷河期の発端はバブルの崩壊でした。1991年にバブルが崩壊して景気が悪化。
企業はバブル期に抱えた過剰雇用を圧縮するため、新卒採用を手控えます。
また当時の政治は混乱しており、政府の経済政策も遅れました。こうしてバブル崩壊に端を発した就職氷河期が始まります。
②デフレ
1994年に0.64まで落ち込んだ有効求人倍率は、1997年に0.72まで持ち直します。小康状態かと思われた矢先、消費増税や緊縮財政が行われました。
日本経済は一気にデフレ化し、1998年の有効求人倍率は0.53、1999年は0.48まで落ち込みます。経済政策の失敗が就職氷河期をさらに悲惨にしました。
③小泉改革による非正規雇用の増加
2003年の小泉構造改革による労働者派遣法改正は、非正規雇用を拡大させました。非正規雇用から正規雇用への転換を狙っていた氷河期世代にとって、非正規雇用の拡大は逆風でした。
しばしば「正規雇用の総数は減っていないので、非正規雇用が拡大しても問題ない」との議論があります。しかし小泉構造改革で規制緩和しなければ、正規雇用が増えていた可能性は十分あります。
④新卒一括採用
日本の企業文化も氷河期世代にとって逆風でした。新卒一括採用が慣習化しており、中途採用に消極的だからです。
氷河期世代の正規雇用への転換は、日本の企業文化にも阻まれました。
また非正規雇用では責任のある仕事を任されず、スキルが向上しません。キャリアアップも困難です。中途採用が厳しいのは、上記のような事情もあります。
⑤フリーターは面接で低評価
フリーターとはアルバイトやパートで生計を立てる人です。
厚生労働白書によれば「企業が正規雇用を採用するとき、フリーターのこれまでの経験をどう評価するか」で、マイナス評価する企業が3割でした。
プラス評価が3.6%ですから、フリーターは正規雇用にかなり不利です。
日本社会で非正規雇用に転落すると、正規雇用への転換は大きな困難を伴います。
⑥労組の弱体化と企業別労働組合
1993年の就職氷河期が始まったとき、労働者の味方である労働組合は何をしていたのでしょうか。
1990年代に労組は労使協調をスローガンに、企業との対決路線をやめて協調路線を取りました。労働組合が企業に従順になったのです。
そのため労組は氷河期世代に無関心でした。
⑦リーマンショック
2005年に就職氷河期は終焉を迎えます。リーマンショックは2008年ですから、就職氷河期とリーマンショックに直接の関係はありません。
けれど氷河期世代の苦難には関係します。
2006年から2007年まで有効求人倍率は1倍を超えて、つかの間の春が来ました。氷河期世代にも正規雇用へ転換するチャンス到来です。
しかし2008年にリーマンショックが起こります。民主党政権への移行もあり、リーマンショックへの対策は不十分でした。
こうして正規雇用へ転換するチャンスは失われたのです。
就職氷河期世代の悲惨さの根因は「放置」
就職氷河期の雇用情勢は悲惨で、多くの悲劇が生まれました。ずっと非正規雇用の氷河期世代も多いです。
「ボーナスなんてもらったことがない」「生活が苦しい」などの声も。
1993年に新卒だった世代はすでに49歳です。多くの氷河期世代も40代に差し掛かっています。
20年前は「まだ若いしなんとかなるさ!」と思えたでしょうが、今では気力も体力が衰え始める年齢です。
政府は何をしていたのか? じつは2019年の就職氷河期世代支援プログラムまで、何もしていませんでした。
氷河期世代は1993年から数えて26年間、放置され続けたのです。
就職氷河期が起きたのは経済政策の失敗が原因です。その責任は政府にあります。しかし政府は責任を取るどころか、氷河期世代を放置し続けました。
マザー・テレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心」と言います。2019年まで政府や世間は氷河期世代に無関心でした。
氷河期世代の本当の悲惨さは、今まで政府や世間が無関心・放置を貫いたことでしょう。
まとめ
- 氷河期世代はバブル崩壊とともに生まれた
- 消費増税や緊縮財政でデフレに陥り深刻化した
- 正規雇用に転換できるチャンスが少なかった
- 政府も世間も氷河期世代に無関心・放置を貫いた
- 2019年にようやく就職氷河期世代支援プログラムが開始
就職氷河期世代支援プログラムが開始されましたが、その実態はお寒いものです。詳しくは以下の記事で解説しています。
何のことはなく、未だに政府は問題を解決する気がほとんどないのです。こういった事情も含めて氷河期世代は悲惨なのだと思います。
>就職氷河期世代支援プログラムが開始されましたが、その実態はお寒いものです。
確かに今更レベルです。40代後半に至っては、スキル、経験、人脈すべての側面において、失われたもの(正確に言えば、正社員として働いていれば本来得られたであろうもの)は一生涯死ぬまで取り戻すことはできない。
ちなみに、本日、「就職氷河期世代」を対象とした各省庁共通の国家公務員中途採用試験が行われているそうです。157人の採用枠に対して応募者は1万943人だとか。
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kyodo_nor/life/kyodo_nor-2020112901001182
>氷河期世代の本当の悲惨さは、今まで政府や世間が無関心・放置を貫いたことでしょう。
この無関心・放置状態は、弱者を平然と切り捨てる自己責任礼賛の風潮が背景にあり、そこから、国民選別論やら地域選別論、ゾンビ企業淘汰論等が派生する。
嫌な話ですが、20年後には身寄りが一人もいない高齢単身者世帯が激増、アパートや自宅などでの病気等による孤独死や自殺が全国至る所で続出することでしょう。あるいは、何とか低額の高齢者施設に入れたとしても、人手不足と資金不足で生活環境は劣悪で生き地獄の日々。それでも政府や世間は無関心・放置を貫けるのか?
せめてもう少し手厚い支援があってもいいと思います。
>157人の採用枠に対して応募者は1万943人だとか。
わぁ、結構絶望的ですね。
本当、氷河期世代に政府も世間も冷たいです。
はじめまして。
氷河期世代で特に悲惨な年代かつ広汎性発達障害持ちの独身オッサンですがよろしくお願いします。
企業案内取り寄せ100社近く、応募や面接した企業は50社ちょっとで内定は1社。とにかく大変だった大学時代の就職活動を思い出します。
無職のまま卒業した同級生が2割程いましたので、これでも運が良かった方です。
しかし入社して5年ちょっとで勤務先が潰れてしまいました。
そして当時の小泉純一郎による弱い者いじめ政治の影響で色々うまくいかなくなり、非正規雇用を転々とするようになりした。社保完備なとこで勤務できたのは幸いですが…
10年前に精神疾患を発症し、その原因が広汎性発達障害であったのが判明したのが5年前でした。
恵まれた環境とは程遠いですが、6年前から本格的にマラソンを始め、色々レースに出て人生を楽しめてると思います。
政府は氷河期世代の女性は介護職、男性は土建業か運送業といった人手不足の業界にぶち込む事で何とかしようとしてますが、離職率が高く、実務経験ないと難しいうえに粗暴粗悪な人間が多いこれらの業界で氷河期世代がうまくやっていくのは厳しいです。
信用できる機関と人間が皆無に等しいので、何にも縛られず、自分の直感で自分が生きたいように生きる事にしました。
長文になり、失礼しました。
>信用できる機関と人間が皆無に等しいので、何にも縛られず、自分の直感で自分が生きたいように生きる事にしました。
いいと思います。私自身も氷河期世代ですが、自由に生きてます。
ぼちぼちとお互い、頑張りましょう。