国の借金がこのまま増えるとどうなるか? 最初に結論を言います。「国の借金が増え続けても、別にどうともならない」が答えです。
国の借金とは何かをおさらいし、国の借金が増える3つのシナリオをお示しします。そして国の借金が増えても大丈夫な理由を解説していきます。
国の借金が増えてもどうともならないので、何の心配もいりません。
国の借金とは何か
まず国の借金についておさらいしておきましょう。
いわゆる国の借金と呼ばれるものは「国債・政府短期証券・借入金」の3つで構成されています。メインの国債が国の借金の9割近くを占め、残りが政府短期証券と借入金です。
国の借金のメインである国債はすべて円建てで発行されています。ドル建てやユーロ建ての国債は日本国債に存在しません。
現在、国の借金の総額は1114兆円です。2000年で国の借金300兆円強の頃から財政破綻が間近だと言われていましたが、20年でおよそ3倍の金額になりました。
国の借金が増えたらどうなるか?
国の借金が増えたらどうなるのか? 3つのシナリオで考えてみます。①現状維持、②積極財政、③緊縮財政です。
①現状維持-アクセル&ブレーキでダラダラと増える
1つめは現状維持です。現在と同じようにコロナ禍や不測の事態ではある程度財政出動し、事態が収束したら緊縮財政に戻します。
現状維持ではこれまで通りダラダラと国債は増え続けます。経済成長は年間1%程度の微々たるものとなるでしょう。
つまり低成長+緩慢に国の借金が増え続けるという状態です。
20年間で700兆円の国債が増えましたから、今後20年間でも同じかそれ以上の国債が増えると予測されます。したがって2040年には2000兆円近い国の借金となっており、逆にGDPは700兆円弱と予測されます。
GDPは現在が550兆円、複利で1%が20年間と計算すると671兆円が正確な数字です。失われた20年と同じく、ほとんどGDPが伸びないこともあり得ます。
②積極財政で国の借金が一時的に急増する
積極財政を採用した場合、一時的に国の借金の増加ペースは急増します。積極財政というくらいですから、従来の予算規模+20~30兆円の新規国債発行が考えられます。
期間はデフレを脱却する3~5年の間、集中的に積極財政を行うこととします。内容は所得移転と公共投資を半々です。
経済波及効果は30~45兆円ほどとなり、GDPは5.5~8%の伸びを見せるでしょう。完全にデフレ脱却を果たせばその後も継続して、2~3%の経済成長を期待できます。
平均して3%の経済成長を20年間続けると、GDPは1000兆円にまで成長します。
税収も増えるために国債発行のペースは現状維持とそう変わりなく、2040年でも2000兆円ほどでしょう。
対GDP比で大きく財政健全化することが予想されます。
この試算は机上の空論ではなく、アメリカのクリントン大統領が行った政策――クリントノミクス――の結果をベースにしています。
むしろ成長スパイラル軌道に乗せることができれば、途中から国債発行額を減少させる事態すら考えられます。
③緊縮財政で一時的に伸びが穏やかに
緊縮財政で国の借金を増やさず、抑えるとどうなるでしょうか。一時的には国の借金の増加は止まります。
しかし政府支出も同時に減少するために景気が落ち込み、税収は大幅にダウン。経済成長率も1%どころかマイナス成長すら考えられます。
税収の落ち込みをカバーするために余分な国債発行が必要です。
つまり国債発行ペースは抑えられないのに、経済はマイナス成長という最悪の事態が考えられます。よくても20年間、ゼロ成長でしょう。
実際に日本は、1998年から2018年までの20年間でほぼゼロ成長+国債発行額だけ増える事態となりました。
財政健全化を目指すなら積極財政が必要
財政健全化を対GDP比で目指すなら、②の積極財政シナリオがもっとも有効です。逆に③の緊縮財政シナリオは経済成長できず、国債発行額ばかり増えて財政が不健全化します。
国の借金をどのように増やすか? 増やし方によって将来がどうなるか決定されます。どうせ増えるなら賢い増やし方をしなければなりません。
しかし「国の借金が増えても大丈夫なの? 国の借金が増えたらどうなるの? マズいのでは?」と思う人も多いでしょう。
じつは国の借金が増えても何一つ問題はありません。
国の借金が増えてもどうもならない理由
国の借金が増えても、財政破綻も起きなければ国債費で予算が圧迫されることもありません。そんな嘘のような本当の理由について解説します。
国の借金が増えても財政破綻しない
国の借金が5000兆円になろうと、日本は財政破綻しません。なぜならメインである国債はすべて円建てであり、通貨発行権を政府が持っているからです。
円を発行できる政府が、円で債務不履行(デフォルト=財政破綻)することは考えられませんよね。
「そんなことをしたらインフレになる!」という言説がありますが、現在はデフレです。デフレのときにインフレの心配をすることは、ガリガリに痩せ細った人が太る心配をするようなものです。
円建て国債である限り、日本が財政破綻することはあり得ません。そして現在のところ、国債は100%円建てです。
国の借金が増えても国債費で圧迫されない
国の借金が増えると国債の利払いなどで予算が圧迫されるのでは? と心配する向きもあります。しかし心配には及びません。
まず「国債が増えても問題ない」のであれば、それに付随する利払いなども同様です。
そもそも国債の約半分は現在、日銀が保有しています。そして日銀と政府は連結決算で利払いは相殺されます。
現在でも利払いの半分は相殺されています。異次元の金融緩和を継続すれば、さらに利払いは減少することでしょう。
もっともそうすると銀行が資金の運用先に困ります。
国の借金はその気になれば一瞬で返済できる
国の借金はその気になれば、一瞬で返済可能です。政府は通貨発行権を持っており、現在でも硬貨を発行しているのは政府です。
1000兆円硬貨を発行して返済すれば、現在いわゆる国の借金と言われているものは返済できます。
ただし、国内経済が大混乱します。だからそんな愚行は政府も犯しません。
まとめ
借金がこのまま増えるとどうなるか? という問いへの答えは「増やし方によって将来が変わる」でした。
- ①現状維持では財政健全化は遠のき、③緊縮財政ではさらに遠くなる。②積極財政だけが対GDP比での財政健全化が達成できる
- 国の借金が増えても円建てである限り、別段どうともならない
- だから積極財政でしっかりと経済成長させることが必要
国の借金が増えても財政破綻もしなければ、国債費が予算を圧迫もしません。2000年にわずか300兆円前後だった国債は、現在では1000兆円に上ります。
しかし日本に財政破綻の兆しは1mmもありません。
むしろ長期金利が低下しており、財政リスクは極めて低いと見られています。
「国の借金が増えるとどうなるか」の答えは「別にどうともならない」でした。