「MMTへの批判や反論」へ反論!なぜMMTは恐れられるのか

 本稿では代表的なMMT批判や反論に対して、それぞれ反論していきます。そのためにMMTへの批判・反論を分類しました。

 およそMMTへの批判・反論は以下になります。

  1. インフレが昂進しない
  2. 政府は経済への最適行動ができずインフレになる
  3. インフレが低所得層にダメージを与える
  4. MMTは机上の空論
  5. 日銀は国債を直接ファイナンスしていない
  6. 「インフレ昂進まで財政拡大」はMMTでなくても説明できる
  7. 信用創造など存在せず又貸しだ

 上記7つでほぼすべてのMMT批判・反論を分類できます。各批判・反論の概要を著しつつ再反論を行います。

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MMTへの批判・反論に再反論

 MMTへ批判・反論はタケノコのように出てきます。しかしよくよく見てみると、いずれも7つのどれかにほぼ分類されます。

 7つの分類のうち理論を突き詰めて行き当たるのは1つだけです。その1つがどれなのか? 各批判の概要欄で明らかに。

インフレが昂進しない

 もっともよくあるMMTへの批判・反論です。

概要

 MMTは財政赤字を気にする必要がない、赤字国債はいくらでも発行できると言う。そんなことをすればインフレになってしまう。

 ところがMMTではインフレは昂進しないことになっている。そんなはずはない!

再反論

 そもそも論ですが、MMTでも財政拡大を行えばインフレが昂進するとしています。よって「MMTはインフレが昂進しないと言っている」との批判はわら人形論法です。

 こんな稚拙な批判があり得るのか? 櫨 浩一氏が「MMTが間違った政策提言を導き出しているワケ」でこの批判を展開しています。

政府は経済への最適行動ができずインフレになる

 MMT批判・反論でもっとも理論的な批判です。

概要

 財政拡大をするとインフレに傾く。国民は財政拡大の恩恵に味を占めて、政治家にさらに財政拡大を望む。よって財政拡大に際限がなくなり過剰なインフレが訪れる。最後はハイパーインフレになるはずだ!

再反論

 「財政赤字に国民が味を占めて、赤字は拡大し続ける」というのはジェームズ・M・ブキャナンの「赤字の民主主義」と呼ばれる理論です。

 ちなみに「赤字の民主主義」は根本に見落としがあります。そもそも資本主義そのものが「負債を拡大しながら経済成長し続ける経済形態」であり、民主主義だから赤字が拡大するというわけではありません。

 なお「政府が最適な行動を取れないことがある」は指摘の通りです。デフレでも緊縮財政をしているバカな政府が、極東のどこかにあるそうです

インフレが低所得層にダメージを与える

 スタンダードな批判・反論ばかりだったので、ちょっとキワモノを見てみましょう。

概要

 インフレは物価が高騰する。よって低所得層ほどダメージを受ける! MMTは財政拡大でインフレが健全だと言うが、低所得層ほど困ることになる!

再反論

 このMMT批判・反論も櫨 浩一氏です。

 デフレでは物価下落以上の早さで所得が下落します。一方、インフレでは所得が上がる可能性の方が高いです。なぜなら需要>供給の状態では雇用市場が売り手有利となり、労働者に有利な労働環境や労働条件が提示されるからです。

 むしろインフレでは、金融資産を持っている人たちが損をします。受ける恩恵は低所得層の方が大きいと言えます。

MMTは机上の空論

 キワモノに見えて案外スタンダードなMMT批判・反論の1つです。

概要

 MMTに理論的な間違いはないかもしれない。理論的には筋も通っているかもしれない。しかし現実的には通用しない。MMTは机上の空論だ!

再反論

 これ、本当にメディアで記事になりました。ハーバードビジネスオンラインに「やっぱりMMTに飛びつくべきではないたった一つの確かな理由」という記事です。
 著者は経済評論家の佐藤治彦氏。

 佐藤治彦氏はMMTを「原発の安全神話と一緒」と論じています根拠は佐藤治彦氏がそう感じるから、以外にありません。

 佐藤治彦氏自身が「MMTは理論的に間違っていない」「矛盾もない」と認めているのですから。

 再反論すらバカバカしくなりますよね。しかしこういった批判・反論は案外多いものです。

日銀は国債を直接ファイナンスしていない

 重箱の隅をつついて一部を切り取ることで「反論ができた」と勘違いしている一例です。

概要

 政府が国債発行してそれをファイナンスするのは民間銀行であり、民間銀行の信用創造で国債は発行される。日銀がファイナンスしているわけではない。

 したがって政府の国債は本質的に、企業の借金と変わらない!

再反論

 この議論はTwitterでMMT批判を展開するNemuro氏の主張です。MMTがおかしいと一発で分かる方法で参照できます。

 面白いのは「政府負債は企業府債と本質的に同じ」と論じているのに、同じ稿で「インフレ昂進まで財政拡大は可能」としている点です。

 こういった批判・反論になっていない主張は後を絶ちません。

 理論的には日銀が最終的に国債を引き受けるので、その過程を論じる意味はありません。最終引受先が日銀であることは、間接的に国債をファイナンスできることを示しています。

 確かに日銀は国債を直接ファイナンスしていない。だから何? という話でしかありません。

「インフレ昂進まで財政拡大」はMMTでなくても説明できる

 この主張も先ほどのNemuro氏です。積極財政派だけどMMTは否定したい人たちがよく使用する批判・反論です。

概要

 政府赤字は問題ないし、インフレ制約まで財政拡大可能。しかしこのことはMMTに頼らなくても、他の理論で説明できる! だからMMTは不要

再反論

 まず、自国通貨建て国債が――インフレ制約以外で――無限に発行可能であるという理論の前提は「信用貨幣論」です。

 例えばアバ・ラーナーの機能的財政論は上記を主張しています。しかし機能的財政論の前提には、信用貨幣論があります。ケインズの主張も同様で、ミッチェル・イネスの信用貨幣論を前提としています。

 信用貨幣論を土台として理論を組み立てたのが現代貨幣理論(MMT)です。

 信用貨幣論を前提とするならどう説明しても、MMTとほぼ同じ説明になります。信用貨幣論を採用しないなら、積極財政は理論的に不可能です。

 MMTでなくても――MMTとほぼ同じ説明になるが――説明できる! ならあながち間違いではないでしょう。

信用創造など存在せず又貸しだ

 積極財政派で「信用創造は存在していない!」と考える人も一部にいます。

概要

 お金が「借りた瞬間に生まれる」などあり得ない。お金はどこかにプールされており、それが又貸しで世の中に流れているだけだ。したがってMMTは間違っている。

再反論

 MMTの信用創造理論は日銀の黒田総裁や、イングランド銀行の公式見解と同じです。つまり銀行の専門家たちが認める構造論です。

 一方で批判は、コロナ禍において専門家の意見にケチを付ける、自称専門家のド素人と一緒です。

 なお又貸し理論は主流派経済学が採用しています。専門用語では外生的貨幣供給論と言います。

財務省のMMTへの批判・反論

 財務省は経済エリートだけあり、均衡財政主義への脅威としていち早くMMTに目を付けました。MMTが日本で話題になった最初期に「財務省MMT批判資料」でMMT批判を展開しています。

 批判内容は世界中の有識者、著名人たちのMMT批判を集めたものです。P57からがMMT批判となっています。興味のある人は参照してくださいね。

MMTへの批判・反論をする理由

 MMTへの批判・反論がやまない理由は何でしょうか。

 MMTが矛盾だらけの理論なら、批判や反論をせずとも自壊します。したがって批判・反論は必要ありません。

 自分たちの脅威になり得ない理論でも同様です。これだけの批判・反論があるのは、裏を返せばMMTは理論的に矛盾が少なく、脅威になり得ると判断されているのです。

主流派経済学の権威崩壊への恐れ

 MMTの信用創造理論は主流派経済学にショックを与えました。というのも主流派経済学は今の今まで、信用創造を間違って解釈していたからです。

 信用創造は換言すると「貨幣の発生原理」です。経済学が貨幣の発生原理を間違っていた! とするとその権威は地に落ちます。

 主流派の経済学者や経済評論家たちがMMTをこぞって攻撃するのは、まさに自分たちの権威崩壊を恐れてではないでしょうか。

積極財政論の古参だというプライドと怠慢

 一方で積極財政派にも、MMTを批判する人たちがいます。

 これは想像でしかありませんが、彼らはMMTという新参者を認められないのかもしれません。自分たち古参が研鑽してきた積極財政理論を、ことごとく体系的にMMTが説明してまったのです。

 加えて今までの理論の間違いを修正するのは、大変な労力と手間です。それをしたくないからMMTを否認する、ということもあり得るかもしれません。

MMTの理論への無理解

 MMTへの批判・反論で多いのが「MMT理論への無理解」です。そもそも理解せずに批判・反論しているのでは? としか思えない稚拙なものが目立ちます。

最初に批判スタンスを取って引っ込みがつかなくなった

 最初になんとなくMMTを批判している人が多いので、批判してみたら引っ込みがつかなくなった。そんな人も多そうです。

 こういった人たちはもはや批判のための批判、反論のための反論しかしません。

自分の独自理論へのこだわり

 ときどき自分の独自理論を持っている人がいます。たいていの場合その独自理論は、取るに足らないものです。すごいものならそもそも、学会にでも発表するべきです。

 独自理論とMMTが相容れない場合、ほとんどの人は独自理論にこだわります。そうしてMMT批判や反論を展開します。

「である論」と「べき論」の区別とMMTへの反論

 MMTとは――政策提言のJGP以外は――ほぼである論で構成されています。べき論はありません。

 である論とは「事実を事実と指摘すること」と言えます。「リンゴは赤色である」「水は透明である」など。

 逆にべき論は「理想を語ること」と言えます。「上司はこうあるべき」「女性のこう振る舞うべき」などです

 MMTの大半の部分はである論です。したがってMMTへの反論もである論で行わなければなりません

 「リンゴは赤色である」に対して「リンゴは紫色であるべき」は批判・反論になり得ません。「リンゴには青色(緑色)もある」との指摘で初めて批判・反論として成立します。

 である論のMMT批判は驚くほど少ないのが現状です。

 べき論とである論でMMT批判・反論を分別すると、興味深いものが見えてくるかもしれませんね。

まとめ

  1. インフレが昂進しない
  2. 政府は経済への最適行動ができずインフレになる
  3. インフレが低所得層にダメージを与える
  4. MMTは机上の空論
  5. 日銀は国債を直接ファイナンスしていない
  6. 「インフレ昂進まで財政拡大」はMMTでなくても説明できる
  7. 信用創造など存在せず又貸しだ

 上記がMMT批判を大別したもの。

 MMTは非常に有力な”仮説”です。現在のところもっとも説得力がある、と筆者は考えています。

 各種の批判・反論とそれらに対する再反論を頭に入れることで、さらにMMTへの理解が深まることでしょう。

 なおMMT全体を俯瞰して学びたい方は以下の記事が最適です。

 おすすめのMMTの書籍は、以下の記事にまとめてあります。興味を持ったものから購読すると良いでしょう。

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