言葉はとても大事です。
言葉の定義を知らずに、物事は語れません。
正確な意味も、つかめません。
自助・共助・公助という言葉に、反発を覚える人が少なからずいます。
あるインフルエンサーは「そういう人たちは、自助努力をしたくないんだろう」と言い放ちました。本当にそうでしょうか?
自助・共助・公助とはどのような意味か。深掘りして解説します。
「自助・共助・公助、そして絆」と菅総理は言った
自助・共助・公助が話題になったのは、菅総理が取り上げたからです。菅総理は「自助・共助・公助、そして絆」と言いました。
野党や一部マスコミは反発し、政治の責任放棄だと批判しています。Twitterでも「#政治の仕事は公助です」とのハッシュタグが、トレンド入りしました。
政治家が自助・共助・公助を使用するのは不適切かどうか、考えていきましょう。
自助・共助・公助とは本来、防災用語だった
自助・共助・公助という言葉は、本来は防災用語でした。
- 自助・共助・公助とは何ですか? | FAQ | 姫路市
- 「自助」「共助」「公助」-防災危機管理eカレッジ
- 「自助」「共助」「公助」 : 防災情報のページ – 内閣府
- 平成30年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-1 国民の防災意識の向上 : 防災情報のページ – 内閣府
姫路市や総務省、内閣府などが防災用語として使用しています。
個人にとって貧困に陥ることは、災害に等しいでしょう。社会保障制度としては防貧が共助、救貧が公助とされます。
ポイントは「貧困に陥ると公助が必要」です。
上記の図では貧困に対し、自助がするべきことは書かれていません。
貧困という災害でなぜ自助は強調されないか? 行政の手が届くからです。自然災害では「公助が届くまで、自助や共助でなんとか生き抜いてください」との文脈で使われます。
このように色々な使用例を参照すると、自助・共助・公助が防災用語だと理解できます。
自助・共助・公助の定義とは
「人の力によらず、自分の力だけで事を成し遂げる」が、自助の意味です。
そもそも論ですが、助けはどんなときに必要になるでしょう。
自分の力だけでは、足りないときです。
つまり自助とは助けを必要としない状態、ないし助けが望めない状態を指します。
例「自助努力でなんとかしろ」「自助できる状態です」
共助はともに助け合う、公助は公的支援がある状態を指します。
自助・共助・公助で自助が強調される理由
自助とは、助けを必要としない――ないし助けがない――状態です。
自助・共助・公助は防災用語として「まずは自助」と強調されます。
よって政治家が自助・共助・公助を使うとき、自助は必ず強調されます。なぜなら、強調しないのであれば使う必要がないからです。
自助を強調することは「国民は公助に甘えず、自助で頑張ってください」を意味します。有り体に言えば「国民は政府に甘えるな」です。
高橋洋一の野党批判が的外れ
菅総理の「自助発言」をいたずらに批判する、野党とマスコミの勘違い(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)では、高橋洋一氏が野党批判をしています。
- 野田総理も、枝野代表も過去に自助・共助・公助という発言をしている
- 自助・共助・公助は防災用語と言われるが、サミュエル・スマイルズの「Heaven helps those who help themselves.」で高橋洋一氏は知った
- よって自助は、防災用語ではない?
まず1.ですが、野田総理や枝野代表が発言していたことと、自助・共助・公助を打ち出すことが適切かどうかに関係はありません。
高橋洋一氏は「他人が悪口を言っていたら、自分も言ってもOK」と判断するのでしょうか?
だとするとあまりに、幼稚です。
2.や3.の反論も、問題外です。菅総理は「自助・共助・公助、そして絆」と言ったのです。2.には共助も公助も含まれていません。
自助・共助・公助とセットで使われたのは、阪神淡路大震災からでしょう。
自民党の綱領に見る自助・共助・公助
自助・共助・公助は、じつは自民党の綱領に書かれています。
自助・共助・公助は防災用語、災害で使用する用語だとすると、自民党の綱領から興味深いことが読み取れます。
結論から言います。我々日本国民は2010年から、未だ被災中。
2010年の新綱領で自助・共助・公助が出現
2009年8月に自民党は下野し、民主党政権になりました。下野した自民党は党の立て直しを図るため、新綱領の制定に動きます。
そうして2010年に、新綱領が定められました。
新綱領の中に、自助・共助・公助という言葉が出てきます。
2010年代初頭は、惨憺たる状況でした。
2008年のリーマンショック。2010年には中国が日本のGDPを追い抜き、2011年はあの東日本大震災です。
まさに新綱領の自助・共助・公助が必要とされた、被災の時代と言えます。
参照
【綱領編】まっとうな政治。理念のある政党。自民党プラットフォーム | 政策 | ニュース | 自由民主党
新しい綱領 新たな出発
立党宣言の旧綱領にはなかった言葉
「立党宣言・綱領 | 自民党について」は、旧綱領です。旧綱領に、自助・共助・公助は出てきません。
このことからも自助・共助・公助が、新しい言葉だとわかります。
自民党の結党は1955年です。日本の敗戦からわずか10年後。しかしこの時代に、自助・共助・公助という文章は使われていませんでした。
その代わりに「完全雇用を目指す」とあります。なお完全雇用の箇所は、新綱領で削られました。
完全雇用を目指さず、自助・共助・公助で自助を強調する。
日本が被災中でないと、辻褄が合わないではないですか!
日本、未だ被災中
2010年代初頭は、惨憺たる状況でした。リーマンショックの余波、中国の台頭、東日本大震災とショッキングな出来事が次々と起きました。
東日本大震災で原発事故が起き、日本全体が緊迫感に包まれました。
日本は復興し、立ち直ったのでしょうか?
2020年に再度、菅政権は言った
2010年に自民党は、自助・共助・公助を新綱領で打ち出しました。大きなショックや災害からの、復興を目指したと解釈できます。
自助・共助・公助は、時代にふさわしい言葉でした。
2020年に菅総理は「自助・共助・公助、そして絆」と打ち出しました。
これは「日本が被災中である、復興し切れていない」との認識でないと、出てこない言葉です。
日本、未だに被災中。
安倍政権は危機突破内閣から、国難突破内閣になった
補足しておきます。
2012年末に、安倍政権が誕生しました。
安倍政権は民主党政権を批判し、現在が危機的状況だとの認識を示します。こうして危機突破内閣が組閣されました。
その4年後、2017年に安倍政権は国難突破内閣を組閣します。
危機から国難へと、状況はさらに悪くなりました。
そして2020年。菅総理は「自助・共助・公助、そして絆」として、日本は被災中であるとの認識をほのめかしました。
復興どころか、どんどん状況が悪くなっているとしか考えられません。
まとめ
注意深く観察すれば、日本はまずい方向に向かっています。自助・共助・公助発言や、これまでの経緯からは間違いないでしょう。
しかしそれはそれ。
多くの日本国民は、自助・共助・公助発言など歯牙にもかけないでしょう。
ギャンブルと一緒です。負けているときほど「まだ慌てるような時間じゃない」と、現実否認します。
日本の2020年代はどうなるか? あまり楽観的には考えられません。
以下は、これからの日本がどうなるかを示唆する1冊です。口コミとともに紹介します。
表題の問いに対する答えをきちんとデータで示してくれる名著。
筆者が主張しているソロ化も決して孤独を推奨しているのではなく、結婚という形だけが全てではないというスタンスなのですごく入ってきやすい。これからの時代を生きていく上で新たな選択肢を提供してくれる良本だと思います。
筆者も読んでみたい本の一つです。読んで面白ければ、レビューしますよ。