菅内閣が発足し、さっそく内閣支持率の世論調査が行われました。報道によれば菅内閣の支持率は、64%だそうです。違う報道では、74%とする調査結果もありました。
世論調査が発表されると、一部の人が「世論調査の数字はおかしい! 世論調査なんて嘘で捏造!」と言います。
世論調査の信頼性とは、どの程度のものなのか。さらっと解説した後に、世論調査を「おかしい! 嘘! 捏造!」と考える人たちの心理を深掘り解説します。
世論調査の方法とは
世論調査の方法を、知っている人は案外少ないようです。一般教養として、知っておいて損はありません。
調査対象を無作為に抽出するRDD方式
世論調査は国民全体を対象として、どのような傾向があるのかを知るために行われます。そのため統計学的に正しいとされる、無作為で対象が抽出されます。
無作為で電話番号を抽出し、世論調査する方法をRDD方式と言います。RDD方式はRandom digit dialingの略です。
統計学的に調査する母集団は、1000件から2000件もあれば十分とされます。2000件を3000件に増やしたところで、あまり誤差は縮まりません。
2000件の回答を得る場合、無回答も含めて調査件数が4000件程度になります。
固定電話だけだったのは過去の話
RDD方式の世論調査は、固定電話だけ対象としていました。しかし固定電話だけだと、在宅している、固定電話を持っている高齢者層や女性層に偏るのではないかと考えられます。
ですから例えば朝日新聞は、2017年から携帯電話への調査を開始しました。
現在では携帯電話も含めた世論調査が、一般的なようです。
質問の文面はバイアスのかからないように検討
世論調査では文面を変えずに、何度も調査することが重要です。文面から一定のバイアスがかかることも、あり得るからです。
回答を誘導しないように、各社の世論調査は慎重に文面を検討しています。
さまざまな世論調査と選挙結果
世論調査は新聞社や、マスメディアが行います。大きく外れると、そのメディアの信用自体に傷が付く可能性も。
世論調査の種類や、その結果をさっと解説します。
政党支持率や内閣支持率など世論調査の種類
世論調査の定番は「内閣支持率」と「政党支持率」でしょう。それ以外にも話題になっている政策について、賛否を調査することもあります。
国民を母集団として無作為に調査することを世論調査とするなら、日銀の「個人の景況感」、内閣府の「国民生活に関する世論調査」なども世論調査です。
政府は数多くの、世論調査を実施しています。
参照 世論調査・全調査表示 – 内閣府
世論調査で目に付くのは、内閣支持率や政党支持率の調査です。しかしそれ以外にも、多くの世論調査が存在しています。
もし世論調査をおかしい! 嘘で捏造! と主張するなら、個人の景況感なども否定しないといけません。
世論調査と選挙結果はある程度リンクしてきた
内閣支持率や政党支持率に限っても、世論調査はある程度、選挙結果とリンクしてきました。政党支持率が低いのに、選挙に勝った政党はいません。
2013年以降の安倍政権は、長期政権化しました。自民党の政党支持率も、そこそこ高かったです。そして安倍政権は、一度も選挙に負けていません。
世論調査はある程度、選挙結果とリンクしています。世論調査から、一定の傾向が読み取れる程度の精度はあります。
世論調査の信頼性は高め
世論調査の信頼性について、いくつかの参照記事を用意しました。
世論調査の内閣支持率を統計学的に解釈すると…? | フューチャー技術ブログでは、統計学の基礎的な部分から、内閣支持率に対する世論調査を解説しています。
わずかな可能性ながら、1000件の調査で内閣支持率が100%になる可能性なども紹介してます。
しかし結論は、世論調査の信頼性はそこそこあるとしています。
調査人数は1000人が妥当か(富山大学医学部)は、さらに面白い。調査人数を増加させることで、向上する精度がどの程度なのか解説しています。
記事によれば調査人数を1000から2000にしても、誤差範囲はさほど縮まらないそうです。
調査人数が1000人、無回答含めて2000人というのは妥当な数字とのことです。
……ところでなぜ医学部に、世論調査の論文があったのかは謎です。
世論調査を「おかしい」「嘘だ」「捏造だ」という人の心理
世論調査には一定の信頼性があると、これまでの解説で理解してもらえたと思います。
では世論調査のたびに聞こえる「世論調査がおかしい! 世論調査は嘘で捏造!」という言説は、何なのでしょうか。
なぜ一定数の人は、世論調査を信じることができないのでしょう。
多数派同調バイアスと認知不協和
心理バイアスには、さまざまな種類があります。
その中でも多数派同調バイアスは、日本人にとって強めの心理バイアスです。自分が多数派であれば安心でき、少数派であると不安が生じるというバイアスです。
災害などでは「多数が行動してないから大丈夫」となり、多くの被害が生じることもあります。
世論調査によって自分が、少数派であると判明すると不安が生じます。
そして「多数派でいたいのに少数派」「自分の政治スタンスは正しいはずだが、多数から否定されている」と、矛盾を抱えることになります。
いわゆる認知不協和状態です。
この認知不協和を解消しようとすると、以下のようになります。
①「多数派でいたいのに少数派」→「世論調査が間違っているに違いない」「世論調査が嘘で、本当は自分は少数派ではない」
②「自分の政治スタンスが多数から否定されている」→「同上で自分が正しいはず」
自分が少数派だと認めるのが怖くて、世論調査を「嘘だ! おかしい! 捏造だ!」と否認する心理が働きます。
確証バイアス
一度、多数派同調バイアスで世論調査を否定すると、確証バイアスがかかります。
確証バイアスとは、決定されている結論に向けて情報を集める行為です。
確証バイアスにかかると論理的に否定されても、同じ結論に向けて違う情報を集め出します。
したがって「世論調査の信頼性は、そこそこある」といくら論理的に話しても、世論調査を嘘だ、捏造だ、おかしいと言っている人にはほぼ通じません。
なぜなら「何が正しいのか知りたい」のではなく、「世論調査を認めたくない、否認したい」だけだからです。
ダブルスタンダード
世論調査はおかしい、嘘だ、捏造だと批判する人たちは、自分のスタンスが少数派だからこそ世論調査を否認します。
逆に言えば多数派になると、コロリと世論調査を無条件に信用します。
安倍政権の世論調査では、その傾向が顕著でした。擁護派は内閣支持率が低いと世論調査を批判し、高いと世論調査を信用しました。
安倍政権批判派は逆です。
報道された菅政権の世論調査結果は、支持率64%でした。「世論調査は信用できない! おかしい! 嘘だ、捏造だ!」がもし正しいとすれば、菅政権の支持率がさらに高い可能性だってあります。
しかし世論調査を批判する人たちに、そういった主張や論理性は見られません。
世論調査をデタラメだと思いたい現実否認
世論調査をおかしい! 嘘だ、捏造だとする人たちは、現実を否認したいがために批判を繰り広げます。
例えば「安倍政権は間違っているはず」なのに、「多数の人が支持している現実」に耐えられなかったのです。
安倍政権の部分は自民党でも、大阪都構想でも何でもいいです。
しかし現実を否認したら、正しい対応は取れません。世論調査を否認して、現実逃避に走った時点で彼らの政治的主張は、意味を失ってしまったのです。
まとめ
世論調査は筆者の知る限り、妥当な方法で行われています。個人の景況感なども世論調査の一種です。世論調査を否定してしまうと、そもそも世の中が成り立ちません。
とはいえ世論調査を「おかしい! 嘘だ! 捏造だ!」と否認する人たちにいくら論理的な説明をしても、徒労に終わることは明白です。
なぜなら解説してきたとおり彼らは、正しいことや、正しい対応が知りたいのではないからです。
世論調査について、以下の書籍がおすすめです。
世論調査というものは、統計学的に信頼できる方法で実施されているはずなのに、たとえば各新聞やテレビで発表される内閣支持率や政党支持率などの数値を見ていると、なぜこんなに違うのだろうと疑問に思ってしまうことがしばしばある。
そうした疑問にも答えてくれているのだろうと思い本書を読んでみることにしたのだが、本書で紹介されている世論調査に内在するさまざまな問題点は、想像以上だった。
世論調査結果を読み解くのに役立つ、読みやすい入門書です。おすすめ。
口コミでも非常に高い評価を受けている、世論調査の著作です。
>世論調査をおかしい! 嘘だ、捏造だとする人たちは、現実を否認したいがために批判を繰り広げます。
>例えば「安倍政権は間違っているはず」なのに、「多数の人が支持している現実」に耐えられなかったのです。
Twitterでは以前より政権批判派からと思われるこうした書き込みがありました。本当にアホかと。まさに思考停止・現実逃避・現実否認の極みであり、そういう意味では、この「8年近くの間、日本社会と経済を徹底破壊してきた安倍政権」を無条件に礼賛するネトウヨのクズどもと同類だといえます。
ところで、この「世論調査がおかしい! 世論調査は嘘で捏造!」と叫ぶ輩の思考回路には、「国民世論そのものが間違っている、狂っている、要は国民自身がバカで民度が低い」という意識が完全に欠如しているように思われます。Twitterでは、「国民世論の大馬鹿さ」を指摘する書き込みがほとんど見られないことがそれを物語っていると思います。
結局、彼らに足りない認識は、「大多数の国民=有権者、つまり日本国民はバカだという事実」です。
>国民世論そのものが間違っている、狂っている
まさにこれなんですよね。20年間も経済政策を間違え続けたのに、まだ改革を支持しているわけですから。
「結構ヤバいぞ」という認識の元で、「じゃあどうするか」を考えないといけないんですよね。
ある程度、各調査会社で恣意的に調査してるっていうことに関しては、あるとは思いますね。。
朝日新聞の内閣不支持率が、産経新聞の同調査結果より一度だって下回ることはなかったと思いますし、逆に、産経新聞の内閣支持率が、朝日新聞の同調査結果を一度だって下回ることもなかったのではないかと思います。
(一度でも上記ではおこらなかった逆転現象が起こっていれば、各調査会社の恣意性は疑われなかったと思いますが、結果としてはそうはならなかったので、各調査会社で恣意性があったりしたことはこれはしょうがないと思います)
(支持率の上がったり下がったりの世間的な動向事態は、ある程度各調査会社でも同様の結果がでているようですが・・)
個人的に一番数字が信用できるのは、NHKの調査だと、個人的には思っています・・。(個人的にはですが)
逆の見方も可能ですよ~。
各社の質問の仕方が恣意性を差し挟むとすれば
「恣意性を差し挟んだ調査が逆転せず、水平に同じ動きをする=すべての調査の傾向は、同じ」
ということでもあります。
とはいえ、それは置いて……私は傾向さえわかればOKかなと。
>すべての調査の傾向は、同じ
これはその通りだと思います。
ただ、どこの会社の調査がいっちゃん正確なところをついてるかなあという分析もまた必要なのではないかと思うのです。
複数社の調査結果を見れば、傾向はわかりますが、あくまで傾向です。朝日は間違いなく平均より(支持率を)低く見積もり、産経は間違いなく高く見積もっています。
考えてみれば、数千人単位でしているアンケートなら、各社とも本来ならば最終的にはほぼ同じような結果に収束していくはずです。
違うというのなら、それはサンプル数が少ないか、もしくは各社それぞれのある程度の思惑の中でアンケートが行われているその証左かと思います。(政府よりなら政府寄りに、反政府なら反政府的に)
で、私はその各社によって上下するアンケート結果の比較的中間点に、個人的にはNHKが一番ふさわしいんじゃないかなと、個人的には思っているという、そういう話しなのです。(とりあえず、ではありますが)(もしくは産経と朝日の調査結果の中間くらいでしょうか(笑))
なるほど、NHKですか~。私、じつはどの世論調査が正確かを、考えたことがなかったです(汗)
うーん……印象ですが、共同通信が数字的に妥当な気が。
>ただ、どこの会社の調査がいっちゃん正確なところをついてるかなあという分析もまた必要なのではないかと思うのです。
まあ、そういった分析も必要だとは思いますが、結局のところは、どの調査結果も大同小異。より重要なのは、(調査結果の差以前の)世論=民意の動向それ自体。
今も昔もそうですが、政権のスキャンダル等をメディアが大々的に取り上げれば、政権支持率は一気に下がり(さらには政権崩壊の危機に陥る)、逆に閣僚など政治家たちのくだらないパフォーマンスでもメディへの露出度が上がれば、政権支持率は上がる。
結局のところは、国民世論の動向など、メディアの垂れ流す浅薄な報道に左右されるような軽佻浮薄な情弱愚民の醜態を曝け出している、実にくだらないしろものだと言えます。これぞ民主主義の劣化→崩壊の現象。
中選挙区制と政党助成金制度によって、政治家が党執行部のいいなりになり、また、(国民各層の意見を集約して国政に反映させる)各種の中間共同体が構造改革=規制緩和によって破壊されるに至ったことが、その傾向に拍車をかけました。
中選挙区制→小選挙区制の間違いでした(コメントを編集できないので不便)。