そこの氷河期世代のお兄さん! ゆきどけ荘をご存じ? え? 知らない? 遅れてるなぁ。一緒にイラッとしませんか?
冒頭から閑話休題。
2020年7月28日に内閣府主導の下、氷河期世代支援ポータルサイト「ゆきどけ荘」がオープンしました。もちろんニュースになりました。報じられた内容は「イラッとする人が続出している」でしたが。
ニュースは真実なのか? 就職氷河期世代の筆者がゆきどけ荘サイト、ニュース内容、そして就職氷河期世代を取り囲む現状まで深掘り分析&解説します。
ゆきどけ荘とは?
まず肝心の、ゆきどけ荘についてざっと参照しましょう。
概要
内閣府が主導して制作された、就職氷河期支援ポータルサイトがゆきどけ荘です。イラストは漫画家の今日マチ子さん、サイト制作は官庁のサイト制作実績がある株式会社 idealumpが請け負っています。
idealumpは2008年創業のサイト制作会社で、プレスリリースを見るに1ヶ月に1回ほどは官庁からの制作以来を受けているようです。
サイト構成
トップページは流行のランディングページ形式。1ページを下までスクロールするタイプで、レスポンシブウェブデザインが一般的になってからは、この形式のサイトも多く見られます。
デザインはシンプルかつミニマルな傾向で、とても上手くまとまっています。ミニマルデザインですがスタイリッシュすぎないのは、今日マチ子さんの暖かみのあるイラストの影響も大きいでしょう。
コンテンツ構成は「キャラ」「ストーリー」「支援内容の紹介」で、官庁にありがちのお堅さはありません。かなり触れやすい、馴染みやすい雰囲気作りに成功しています。
しかしコンテンツ内容にやや難があります。例えば「業種から選びたい」という支援を選んでみます。
いくつかコンテンツが出てくるのですが、リンクをたどるとすぐに「観光産業の就業体験はこちら」と外部リンクに行き着きます。
すべての就労支援やサポートがこの調子。つまり就職氷河期支援ポータルサイトゆきどけ荘は、就職氷河期支援ポータルサイトと銘打っておきながら、実態は単なるサポートページへのリンク集でしかありません。
「観光産業の就業体験」ページの文面はこれだけです。
全国数か所の観光地域で、地域の観光産業の発展を推進する人材を育成するため、
観光産業の就業体験 | 就職氷河期世代支援ポータルサイトゆきどけ荘
旅館実務の基礎知識や地域の特色についての座学、
施設の就業体験等をモデル事業として実施します。
……もっと見せ方や書き方があるはずです。デザインや構成は決して悪くありません。サイト制作会社もイラストレーターも、良質な仕事をしています。
この手のコンテンツ内容が乏しいサイトになるのは、たいていの場合は「クライアントにやる気がない」というケースです。
「仕事を丸投げしたい」
「コンテンツ内容を考えるのが面倒くさい」
「デザインさえかっこよければ、それでいいと思っている」
「丸投げして作れない制作会社が悪い、俺は悪くない」
せめて支援内容を、ライターを雇って書かせろよ! と思います。
ゆきどけ荘にイラッとくる人続出中?!
昨日、ゆきどけ荘がニュースになっていました。ゆきどけ荘を見て、イラッと来る人が続出中とのことです。
実際にTwitterを見てみると、ゆきどけ荘関連のツイートの約9割がネガティブな意見でした。
コンテンツ内容が薄くてやる気が感じられないので、イラッとするのも宜なるかな。
就職氷河期世代の現状
氷河期世代で支援を必要としている非正規雇用や無業者は、約100万人いると推計されています。200万人近くいるとする試算もあります。
氷河期世代とは1995年から2005年――定義によっては1993年から2004年――に、学校を卒業して社会に出た人です。
非常に就職が困難だったのが、就職氷河期です。産業構造の転換による雇用のミスマッチが起こり、加えて非正規雇用が一気に増加した時代です。
ようやく正社員になった人も2008年のリーマンショックで失業するなど、常に就職氷河期世代は景気の調整弁として扱われてきました。
2008年に20代後半だった人も、今ではアラフォーに。
さらに追い打ちをかけるように、今回のコロナ禍です。非正規雇用の雇い止めや派遣切りなどで、第二の就職氷河期世代が発生する恐れまで囁かれています。
第一就職氷河期世代にとって、現状はまさに極寒。僕たち南極探検隊。氷河の大陸を冒険し放題。
やってられるか、馬鹿野郎! というのが、現在の就職氷河期世代の心境と現状です。筆者も就職氷河期世代なので、非常に理解できます。
就職氷河期世代支援プログラムの概要
2019年に安倍政権は、唐突に就職氷河期世代支援プログラムを行うと発表しました。かなり唐突で、じっくり検討をした形跡はありません。
筆者は、目玉政策がなかったのでぶち上げただけと考えています。
とはいえ、やらないよりやった方がマシです。2020年度の就職氷河期世代支援プログラムの予算は、1300億円が計上されました。
支援内容は大きく分けて4つです。
- 本人への直接支援で資格取得や職業訓練
- 支援窓口の強化
- 支援企業への間接支援(助成金など)
- ひきこもりの居場所づくり・相談サービスの拡充
この内容で2022年までに、就職氷河期世代30万人の正規雇用を生み出すとしています。……無理じゃね?
就職氷河期世代でWebライター&制作の筆者がゆきどけ荘を見た感想
まず前提条件ですが、就職氷河期世代の現状ってかなりきついんですね。すでに中年になっており、今さら正社員になれても多分結婚できない。失われた時間は、取り戻せません。
加えて20代から正規雇用だった人たちと比べて、スキルは格段に落ちる。非正規雇用でスキルやキャリアを身につけろなんて、無理すぎます。
30代や40代が働き盛りと言われるのは、スキルが身について一人前に仕事ができるからです。いちからスキルを身につけるとなると、無茶苦茶しんどいですよ。
現在40歳で技術畑の人が、いきなり営業に回されたら泣くでしょ。それと一緒です。
さらに現状、コロナ禍で有効求人倍率は低下中。非正規雇用の雇い止めや派遣切りが横行し、急増した休業者が失業者になる未来も遠くありません。
ゆきどけどころか、吹雪いとるやんけ! という状況です。
この状態で「就職氷河期支援ポータルサイトゆきどけ荘オープンしました!」と言われても、そりゃイラッとするでしょう。
論理的に考えるなら、ゆきどけ荘もないよりあった方がマシです。情報がまとまっていますから、就職氷河期世代の支援になるはずです。クライアントである政府のやる気がないのは脇に置いて、ですが。
しかし今の今まで、就職氷河期世代は放置され続けました。これは感情の問題です。Twitterがゆきどけ荘に対して、ネガティブな反応になるのも致し方ない話です。
以下は貧困、格差、就職氷河期問題などを扱う藤田孝典氏の著作です。藤田孝典氏のなかでも名著との評価も。
『「頑張ったら正社員になれるよ」と思っている人達にぜひ読んでもらいたい』
『就職氷河期世代のみならず、全世代に読んでもらいたい本』
まとめ
ゆきどけ荘のサイトを見て、最初に思いました。
「これ、典型的なやつやん。クライアントにやる気がなくて、制作者が四苦八苦するやつ」
筆者は別に「就職氷河期世代の気持ちに寄り添って」なんて言いません。ただ流石に、やる気がなさ過ぎだと思います。
何であんなスカスカなコンテンツになったのか? 答えは簡単で、そもそも就職氷河期世代支援プログラムの内容がスカスカだからではないでしょうか。
政府のやる気のなさが、ゆきどけ荘から伝わってくる。だからこそ、イラッとするのかもしれません。
「ゆらぎ荘」に見えた私は深夜アニメの中級者(笑)。
ジャンプ連載のちょっとエロな少年マンガでしたか……懐かしい(笑)