コロナ禍で「国債発行残高1000兆円! ハイパーインフレが!」との報道が、にわかに出てきました。危機感を煽った方が記事が売れるとはいえ、事実でないなら大問題です。
日本は報道が言うように、破綻するのでしょうか? それとも破綻しない? 本当のところはどうなの?
そんな疑問を、すべて今回の記事で解決します。なお「財政破綻はあり得ないが、それ以外の破綻の危機が迫っているかもしれない」が結論ですよ。
破綻とは?
破綻! 破綻! と言っていますが、そもそも破綻の定義とは何でしょうか。
物事が、修復しようがないほどうまく行かなくなること。行きづまること
破綻(はたん)の意味 – goo国語辞書
例として経営破綻を参照してみましょう。
経営破綻とは、事業の継続、運営ができなくなった状態を指します。多くの場合は、運営のための資金が調達できない、不足したなどが原因です。
このように破綻とは、持続不可能になったことを指します。
例えば性格破綻者とは「社会生活ができないほど、性格に欠陥のある人」を指します。性格によって社会生活が持続不可能なので、性格破綻と言うわけです。
破綻=持続不可能と考えていいでしょう。
考えられる日本の破綻
考えられる日本の破綻は、財政破綻だけでしょうか? さまざまな破綻の可能性が考えられます。各項目をさらっと紹介したあとに、それぞれ詳細に解説します。
財政破綻
日本破綻論として、財政破綻論ほどポピュラーなものはありません。そしてバカバカしいものもありません。
財政とは国家財政を指し、財政破綻とは政府の債務不履行(デフォルト)を言います。後述しますが、日本が財政破綻する可能性はゼロです。
日本が先進国からの凋落
日本が、先進国から凋落する可能性はどうでしょうか。先進国として持続不可能になり、破綻するシナリオです。
経済成長ができず経済破綻
資本主義とは、経済規模を拡大し続ける経済形態です。したがって経済規模が長期間にわたり停滞していることは、資本主義の破綻と言えます。
完全に日本は当てはまりますよね。
コロナ禍で日本社会が破綻
コロナ禍で日本社会は破綻しないでしょうか? 「これまでの日本社会が持続不可能」となれば、それは社会が破綻したと言えるかもしれません。
財政破綻は理論上あり得ない
日本の破綻として考えられる、財政破綻についてまずは解説します。結論から言えば、日本が財政破綻する可能性は、現在のところゼロです。隕石が落ちてくる心配でもした方が、まだ建設的でしょう。
財政破綻の定義は債務不履行、つまりデフォルトです。償還期限がきた国債を、償還できないとデフォルトとなります。
日本政府は通貨発行権を持っています。日本円を発行することが可能です。そして日本国債はすべて、円建てで発行されています。したがって日本円で償還できます。
……どうやって破綻するのさ? 破綻しようがありません。
自分の店で発行した割引券で、経営破綻するでしょうか? あり得ないですよね。それと一緒です。
なお自国通貨建て国債では、デフォルトしないという事実は、主流派経済学すら認めるところです。
代わりに「国債を発行しすぎると、ハイパーインフレがくる!」という説があります。確かに単年度で100兆円、200兆円の新規国債発行をし続けると、過剰なインフレになるでしょう。
そんなバカなことをしろと、誰も言ってませんよね(注1)。現在の国債発行ペースでは、デフレ気味です。したがってむしろ「国債発行が足りていない」が現実です。
日本が先進国からの凋落
日本が先進国から凋落するかもしれない。この危惧はどうやら、現実になりそうです。
先進国としての日本が持続不可能になり、破綻する未来が見えています。
上記の通り21世紀に入り、日本の論文シェアは急速に減少しています。論文のシェア低下は、科学技術の低下そのものです。
30代や40代以上の人なら、20年前の日本が技術立国と言われていたことは知っているでしょう。日本の科学技術は、世界トップクラスでした。
では現在はどうでしょう。今や技術立国などという論調は、どこにも見当たりません。それだけ日本の科学技術が、低迷しているからです。
昨今は日本の大学ランキングが、低下していると指摘されます。東大の「世界大学ランキング」が低迷する致命的な理由など、さまざまな記事や報道がされています。
日本の技術力の低迷は、消極財政(緊縮財政)に原因があります。例えばOECD28カ国中、日本のGDPに占める教育予算の割合は24位です。下から数えた方が早い。
参照 教育指標の国際比較
※データ不明の6カ国は除く
GDPにおける基礎研究費の割合は0.4%で、他国と比べて低いわけではありません。しかしそのGDPが伸びていないので、基礎研究費の絶対額では他国に見劣りします。
教育予算への分配が少ないことや、GDPが伸びずに基礎研究費が停滞していることなど、日本の科学技術の凋落原因はさまざまです。それらの根元をたどると、GDPが停滞していることが大きな原因です。
GDPの停滞は、消極財政(緊縮財政)が原因です。しかしその消極財政(緊縮財政)が、日本では支持され続けています。積極財政への転換は、非常に困難でしょう。
科学技術力の低下は、日本が先進国として持続不可能であることを示します。先進国としての日本の破綻が、訪れようとしています。
経済成長ができずに経済破綻
破綻とは持続不可能になることです。資本主義とはそもそも、経済規模を拡大し続ける経済形態です。
経済規模が長期にわたって停滞することは、資本主義の破綻と言えます。
日本は失われた20年と言われ、1998年を境に経済成長を止めました。
円換算のGDPは1998年が450兆円、2019年が539兆円とわずか1.2倍の伸びです。イギリスは同じ期間で1兆3920億ポンドから2兆580億ポンドになり、およそ1.5倍の伸びです。フランスは1.8倍、イタリアで1.6倍です。
当然ながらアメリカ、台湾、韓国、中国、インドなどはもっとも伸びています。日本のGDPがいかに停滞しているか、理解できるでしょう。
20年でたった1.2倍程度の経済成長は、むしろ経済停滞と呼ぶべきです。すでに資本主義として規模拡大が続かず、破綻していると解釈することも可能でしょう。
破綻の原因は非常に簡単です。政治が経済への責任を、放棄したからです。すなわち消極財政(緊縮財政)をし続けたことが、日本の資本主義を破綻させました。
コロナ禍は日本社会を破綻させるか?
コロナ禍は日本社会を、持続不可能にしてしまうのでしょうか? コロナ禍によってさまざまなことが、懸念されています。
1点目の懸念はコロナ禍という非常事態に、自粛要請しかできなかった政府でしょう。自粛とは、自分で考えて判断しろということです。すなわち政府は「こうしろ」と行動を強制して、その代わりに責任を取ることができませんでした。
このことは「国に頼るな! 全部自己責任!」という論調を、日本政府が肯定していることを示します。
2点目は自粛警察です。政府が責任を取らないので、全体的な空気で自粛を強制しようとさせました。まるで「自粛しないのは非国民!」的な空気でしたよね。
筆者は自粛しない派だったので、マンガ喫茶もカラオケも全部閉まっていて辟易としました。
自粛警察や自粛の空気は、全体主義的な動きでした。
3点目はコロナ第二波の到来です。すでに東京では、200人以上の新規感染者が出ています。政府は再び、緊急事態宣言を出せるでしょうか? 筆者はなかなか出せないのではないか、と見ています。
なぜならいくら財政出動しようと、自粛で経済活動を停止すれば意味がありません。財政出動は経済の活発化、自粛は経済の停止なのです。この矛盾に、日本政府はどう対応するのでしょうか。
さまざまな問題が、コロナ禍で噴出しています。果たして日本社会は、これらの問題を内包していけるでしょうか? 内包できずに、今までの日本社会が持続不可能、つまり破綻する事態は起きないでしょうか?
まだわかりませんが、可能性はあるでしょう。
まとめ
一般的には財政破綻論ばかりが、日本が破綻する可能性として取り上げられます。しかし議論してきたとおり、むしろ財政破綻を恐れて消極財政(緊縮財政)に走るからこそ、日本が破綻していくことが明らかになりました。
地獄への道は善意で舗装されている。
ありもしない財政破綻を恐れ、回避しようとして破綻していく。これは悲劇か、喜劇か。それが問題です。