コロナ禍で政府の財政出動により、国債発行額が増えています。国の借金を「国民の預金で相殺」!? “事実上の預金封鎖”に備えよ! AERA dot.のように、現在の事態を「危機への入り口」と吹聴する報道が目立ちます。
こんな報道があったら、心配になりますよね。「国の借金、大丈夫なの? コロナも怖いけど、国の借金もなんだか怖い! どこから借りてるの?」と思う人向けに、今回の記事を書きました。
国の借金はどこから借りているのか? 大丈夫なの? 結論から言えば、全く心配ありません。安心して記事を読み進めてくださいね。
そもそも国の借金って何?
そもそもマスメディアで報道される、国の借金とは何でしょうか?
国の借金と表現されているものは、正確には「政府の借金」です。「国と政府って一緒じゃない?」と思う人もいるでしょう。しかし、異なります。
厳密な国の借金の定義は政府、企業、個人すべての負債の合計です。
国の借金問題で採り上げられるのは、国債だけです。よって本当は「政府の借金」が正しい表現です。
現在、コロナ禍で国債発行残高は急速に膨らんでおり、1000兆円を突破するそうです。ではその1000兆円、どこから借りたの? まずは借金の原理原則を解説します。
借金の原理「誰かの負債は誰かの資産」
国だろうが個人だろうが、絶対に適用される借金の基本原則があります。
「誰かの負債は誰かの資産」
国の借金が1000兆円あるなら、その反対側で1000兆円の資産が存在します。そりゃそうですよね?
あなたが100万円を親に借りるとします。あなたの手元には100万円の現金(資産)と、借用書(負債)。親はマイナス100万円の代わりに、100万円の債権(資産)を得ます。
100万円の借用書の反対側には、100万円の債権が必ず存在します。
なぜなら「借りるためには、貸す人が必要」ですし「貸すためには、借りる人が必要」だからです。
そう! 次から本題に入ります。国の借金はどこから借りているのでしょう? 誰が貸しているのですか?
日本はどこから借金しているのか?
先に結論から行きます。国の借金もとい政府にお金を貸しているのは、政府です。
今「はぁ??」ってなりました? でも事実です。
国の借金はすべて、円で借りています。円を発行する権限を持っているのは、政府です。通貨発行権は、国家の主権のひとつです。
つまり政府は理論的には、円を無限に発行できます。円を発行して、それを借りているのが国債です。要するに「自分でお金を発行して、自分で借りている」のですから、政府にお金を貸しているのは政府ということになります。
国の借金はどこから借りたのか? 政府から借りたのです。
もう少しだけ、込み入った話をしましょう。
国債を保有している主体は海外が7.7%で、残り92.3%を国内で消化しています。そして海外が保有する国債も当然、円建てで発行されています。ドルやユーロ建てで発行されている日本国債は、1円もありません。……いやこの場合、1ドルないし1ユーロもありません。
上記のグラフで驚くべきことは、日本国債の約半分、47.2%を日銀が保有していることです。
日銀はご存じの通り、お金を供給する組織です。金融緩和によってお金を当座預金に供給し、代わりに民間銀行の保有する国債を引き受けました。
そして日銀は実質的に、政府の一部門です。
お金を発行する政府の一部門が、一度民間にリリースした国債を引き受けています。イコールで「政府が自分でお金を発行し、自分で借りている」ことになります。
国の借金はどこから借りていたのか? じつは政府が政府に貸していました。
ここからはやや詳細な議論を、概要だけ解説します。
日銀の独立性という議論
「日銀は政府の一部門」と書くと必ず「日銀は独立した機関である! 統合政府論はもの知らずの言うことである!」という自称経済学者(学徒)様が現れます。
しかし通貨発行権は、国家主権のひとつです。また日銀を成立させ、コントロールするのは日銀法という法律です。法律である以上、国会および行政によって変更が可能です。
したがって力学的に、日銀は政府のコントロール下にあると解釈することができます。実質的に日銀は、政府の一部門として機能します。
この事実はアベノミクスで、金融緩和を政府が掲げて日銀が追随したことからも明らかです。なお日銀はいくらでも、国債を引き受けることができます。なぜなら……お金を供給しているのは日銀だからです。
問題が起こらないのかって? 実際に5割近くまで日銀が国債を保有しても、何の問題も起こっていないじゃないですか。
無税国家が可能なのでは?
勘のいい人なら「あれ? じゃあ日本は、無限に国債を発行できるってことになるのでは?」と思うでしょう。こうなると「無税国家もその理論だとできるよね?」と考えます。
ところが残念なことに、無税国家は実現できません。
現代貨幣理論(MMT)でも機能的財政論でも、国債発行はインフレが行き過ぎなければいくらでもできる、と言っているに過ぎないからです。
簡単に言えば、インフレが過剰になったら国債発行は控えなければなりません。これをインフレ制約と言います。
無税国家にして国債発行だけで財政をまかなうと、100%の確率で過剰なインフレになります。よって無税国家は残念なことに、実現できません。
まとめ
国の借金はどこから借りているのか? 政府が政府に貸している! というのは、なかなか衝撃的だったのではないでしょうか。
もちろん現実的には、民間に向けて国債発行をしてそれが回り回って……ともう少し複雑です。しかし単純な帰結のみを論じるなら、国の借金は政府が貸しているが正解です。
「もっと詳しく、ちゃんと国の借金について知りたい!」と思うなら、現代貨幣理論(MMT)を学ぶといいでしょう。
国の借金の正体については以下の記事もどうぞ。