MMTでしか解決しない「日本人の給料安すぎ問題」

 先日、デービッド・アトキンソンのMMTでは解決しない「日本人の給料安すぎ問題」 | 東洋経済オンラインが報じられました。この記事の論旨は「積極財政では、日本人の給料は上がらない」です。

 記事はあるツイートに、デービッド・アトキンソンが答える形です。ツイートの内容は「積極財政でGDPを成長させたら、生産性が上がる」という、筆者の主張と同じものです。

 ”MMTでは解決しない「日本人の給料安すぎ問題」”に対して、”MMTでしか解決しない「日本人の給料安すぎ問題」”と題し、デービッド・アトキンソンの見落とし、ないし意図的な詭弁について解説します。

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日本人の給料が上がらない現状

 最初に日本人の給料が上がっていない、安いという現状について確認しましょう。

 厚労省の統計によれば、2018年の日本人の平均所得は441万円でした。2016年まで停滞しており、2017、18年と2年間の上昇幅が2~2.5%となっています。

 ざっくりとした分析では、2014年の消費増税が2016年まで影響しています。2015年あたりから世界経済は順調さを見せ、消費増税の影響を日本で相殺できたのが2017年と見るべきでしょう。
 なおこれらの数値は、名目賃金です。

 日本人の平均所得は1990年が425万円、1997年がピークの467万円です。驚くことに30年前と比べて、日本人の給料はほとんど上がっていません。
 20年前の1997年と比較すれば、むしろ下がっています。

 日本人の給料は30年以上停滞、もしくは下落していると言えます。

全労連 実質賃金指数の推移の国際比較より

 全労連の資料によれば、1997年と比較して実質賃金は0.9倍と減少しています。先進諸国は低くても1.1倍以上ですから、日本の異常性が際立ちます。

 20年以上に及ぶ消極財政(緊縮財政)の成果がこれです。日本の経済エリート、マジ頭悪い。

デービッド・アトキンソンの論旨

 MMTでは解決しない「日本人の給料安すぎ問題」での、デービッド・アトキンソンの論旨を確認しましょう。ポイントのみに絞って解説します。

 「生産性=GDP÷人口なんだから、GDPを増加させれば生産性が上がるじゃん! 積極財政したらいいじゃん!」とのツイートを、記事冒頭に紹介しています。

 デービッド・アトキンソンは「生産性=GDP÷人口なら、生産性=労働生産性×労働参加率と展開できる」とします。

 労働参加率とは、失業率のことと捉えてOKです。
 そして「MMTで積極財政をしても、労働参加率が改善するだけ。労働参加率が改善するからGDPが最初は増えるが、労働参加率には上限がある。上限が来たらMMTは効果がなくなる。あとはおそらく、インフレになるだけだ」と述べます。

 デービッド・アトキンソンの主張の、ポイントを整理しましょう。

  1. 生産性=GDP÷人口なら、生産性=労働生産性×労働参加率と展開できる
  2. MMTで改善するのは労働参加率のみ
  3. つまり完全雇用になれば、MMTではそれ以上GDPは上がらない。よって生産性が上がらない
  4. それが現状だ
  5. したがって労働生産性を上げることでしか、日本人は給料は上がらない

 デービッド・アトキンソンは何を見落としているのか? どこに詭弁が潜んでいるか? あなたはわかりますか?

 次の文章に進む前に、少しだけ考えてみてください。

デービッド・アトキンソンへの反論

 答え合わせをしましょう。

 デービッド・アトキンソンが言っていることは「積極財政では失業率が下がりきったら、次はインフレが訪れる」という当たり前のことです。
 ところが彼は、インフレを関係のない現象と処理しています。ここが間違いです。

 インフレ=需要>供給の状態です。したがって生産した財やサービスが同質、同数なら価格が上がります。

 デービッド・アトキンソンが持ち出した「生産性=労働生産性×労働参加率」の、労働生産性はさらに「労働生産性=労働成果×労働投入量」で求められます。

 労働成果とは付加価値です。付加価値とは粗利であり、金銭で計量するものです。
 したがって需要が増加してインフレになる=同じ生産物でも高く売れる=付加価値が上がることになります。
 インフレで労働生産性が向上するので、当然ながら生産性も向上します。

 デービッド・アトキンソンがインフレを無視したのは、なぜでしょうか? インフレ=需要>供給だと知らなかった? まさか!

 彼はインフレでは、実質賃金は上がらないと思ったのかもしれません。つまり給料の額が上がっても、インフレになったら買えるものは同じ。よって意味がない! という「中学生並みの勘違い」をしたのかもしれません。

 インフレは現金価値を減少させます。また需要>供給状態であり、売り上げの見通しが立ちやすい経済状況です。したがって企業はインフレになると、積極的に投資します。

 投資が循環すれば、イノベーションの機会も増加します。加えてインフレでは、労働市場も売り手市場化します。よって日本人の給料が上がる傾向になるでしょう。

 デービッド・アトキンソンが認めたくなかったのは「政府支出の拡大によって、生産性が向上するという事実」だったのではないでしょうか。

各国の政府支出とGDPの推移

 もう少し強力に、デービット・アトキンソンに反論しておきましょう。

MMTと「政府支出の真実」 | 三橋貴明オフィシャルブログより

 上記は2000年を1とした場合の、政府支出の増加割合です。日本が1.2倍程度に対して、G7諸国は1.8~2.3倍以上に政府支出を増やしています。

MMTと「政府支出の真実」 | 三橋貴明オフィシャルブログより

 日本のGDPが全く伸びていないのに対して、他国は1.6倍以上に伸びています。
 明らかに政府支出の増加と、GDPの伸びは関係性があります。

全労連 実質賃金指数の推移の国際比較より

 さらに実質賃金の推移も並べると「生産性が上がらないから、GDPが増えないの!」ではなく「消極財政(緊縮財政)でGDPが増えないから、生産性も上がらず給料も増えない」と理解できます。

 日本人の給料安すぎ問題は、MMTでしか解決できないのです。

まとめ

 現代貨幣理論(MMT)は「自国通貨建て国債をいくら発行しても、財政破綻=デフォルトはあり得ない」とします。国債発行を制約するのは、インフレのみです。つまりインフレが行き過ぎなければ、いくらでも国債は発行できます。

 世界各国の政府支出の伸びは、GDPの増加と相関があります。中国は21世紀に入り、政府支出を20倍にした結果、すでに日本の3倍近いGDPになっています。

 デービッド・アトキンソンは「産業構造が非効率になっていることによって、労働生産性が低迷していることにあります」と言います。筆者は真っ向から「それは違うやろ」と反論します。

 なぜならデービッド・アトキンソンたちが言う「非効率」とは、「労働生産性が上がっていない! だから非効率に違いない!」と、思い込んでいるだけに過ぎないからです。

 本当は「労働生産性が上がっていない! 当たり前だ! 需要が少なくて高く売れないんだから!」です。

 政府支出を拡大すれば、100%日本人の給料安い問題は解決します。

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