民主主義は結果を保証しない!政治における政治システムの考え方

 政治を考える上で、必ず民主主義とは何か? という問いに、皆様もぶつかるのではないでしょうか? 

「民主主義は守られなければならない」
「他の政治システムより、民主主義の方が優れている」

 このように考えている人は大勢います。しかし「民主主義」至上主義は、ときに現実を見る目を曇らせます。

 政治を考える上で、民主主義をどのように扱ったらよいのか? 解説します。

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政治とは

 まず簡単に、そもそも政治とは何か? を振り返ってみましょう。

漢字から読み解く「政で治める」

 日本語とは便利なものです。漢字を読み解けば、単語の意味するところを理解できるケースが多いからです。

 政治とは「まつりごと」「治める」と書きます。では政とは、どのような意味でしょうか。

  1. 民を導いて正道につかせたり、国家を治めたりすること
  2. 全ての物事の筋道を立てて、よくととのえること

 倫理観や道徳観を大事にするように民を導き、国を運営することが「政治」と漢字からは読み取れます

政治の定義をわかりやすく再翻訳する

 次に政治の定義について、国語辞典を当たります。

人間集団における秩序の形成と解体をめぐって、人が他者に対して、また他者と共に行う営み。権力・政策・支配・自治にかかわる現象

広辞苑

1. 主権者が、領土・人民を治めること。2. ある社会の対立や利害を調整して社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用

大辞泉

 上記の定義を再翻訳します。

「国がよく治まるために、主権者が社交をしつつ意思決定し、実現を目的とする運動」

 もっとわかりやすくしましょう。
 「主権者が利害関係などを調整しながら、行く先を決めてそこに辿り着こうとすること」が政治です。

身近な社内政治で考えてみる

 企業は目的がはっきりしています。利益を稼いで、存続や拡大を図ることです。

 しかし得てして社内政治は、利益を指針にして合理的に行われることはありません。なぜなら「どうすれば利益がより大きくなるか」が合理的に判断できる部分で、社内政治は必要ないからです。

 もう少しいえば「合理的な判断が可能なもの」は、政治の領分ではありません。利害関係が決定的に折り合わないなどの、難しい部分でこそ政治が必要になります。

 正解がない問いに対し、答えを示して妥協し、調停し、治めるのが政治といえます。

民主主義の政治における位置づけとは

 政治における民主主義とは、どのような位置づけでしょうか。先に結論を書くと「民主主義とは政治における、一形態に過ぎない」です。

民主主義とは何か

 民主主義とは英語でDemocracyデモクラシーです。なお「~主義」とは英語ではismがつきます。「Fascismファシズム」しかり「Socialismソーシャリズム」しかりです。
 ですのでデモクラシーの日本語訳で、民主主義というのは誤訳です。

 デモクラシーは「民主制」ないし「民主政治」と翻訳するべきでした。ちなみに貴族制はAristocracyアリストクラシーです。

 上述した言葉の定義で、民主主義がはっきりしました。民主主義とは政治体制の一形態であり、システムのひとつです。

  • 独裁制
  • 民主制
  • 貴族制
  • 封建制
  • 共和制
  • 立憲君主制
  • 大統領制

 独裁制や貴族制、封建制と並列で民主制は語るべきものです。「どの政治体制が優れているのか?」という疑問に対する答えは後述します。

民主主義という政治システム

 民主主義もとい民主制は、どのような政治システムなのでしょうか。端的に表現すると「国民を主権者として、権力を分散させた政治体制」が民主主義です。

 民主主義の特徴を、箇条書きにします。

  1. 革命や内戦などの暴力で血を流さずに、政権を交代することが可能
  2. 物事の決定を、遅らせる政治システム
  3. 国民が主権者であるため、国民の教育が必要不可欠

 「物事の決定を遅らせる」というのは、昨今の「スピード感のある決断」と真逆であり、悪いことに感じるでしょうが、長所でもあります。

 なぜなら急激な変化は大抵、悪い結果を生むからです。

政治システムは結果を保証しないという事実

 では民主主義は、他の政治体制と比較して優れた政治体制でしょうか? 判断基準によって、答えは異なります。

  1. 自分たちのことを自分たちで決める、という倫理的な一点において優れている
  2. 国民皆兵が強かった過去の時代において、民主主義は軍事的に優れていた
  3. 人の命は大事という近代人権思想において、流血なく政権交代ができる民主主義は優れている

 他にも色々あるかもしれません。筆者がさっと考えつく、民主主義の利点は以上です。しかし利点の中に「民主主義の方が、他の政治体制よりよい結果を生み出す」は含まれません。

 それどころか歴史を見れば、民主主義は最悪の結果を生み出すことすらあります。第二次世界大戦は、まさに国民皆兵国家同士が、ぶつかり合った結果でした。
 その国民皆兵システムは、民主主義の産物でありました。

 政治システムは所詮、単なるシステムです。長短はあるものの、結果を保証はしません。

民主主義が至上と考えるイデオロギーの間違い

 ようやく本論に入ります。民主主義とは、至上ではありません。チャーチルがいうように、他の政治体制に比べて(近代人権思想的な観点から)マシなだけです。

安倍政権は独裁だから悪政なのか

 ときどき「安倍政権から政治を取り戻せ! 安倍政権は独裁だ! だから悪政になるんだ!」という主張を見かけます。つまり「独裁=悪政」「民主主義=善政」という図式です。

 この主張は正しいでしょうか? 人類は過去の歴史において長く、独裁制や貴族制、封建制などを採用してきました。少人数による統治が、行われてきたのです。

 中には悪政も、善政も存在しました。なぜなら政治の結果は、政治体制が保証するものではないからです。

 従って独裁政治でも善政はあり得ますし、民主主義でも悪政は存在します。

安倍政権=独裁=悪政と主張することの論理矛盾

 安倍政権が悪政だという点に、筆者は大いに賛同します。しかし独裁か? と聞かれれば、NOと答えるでしょう。

 なぜなら安倍政権は、期間のほとんどで50%前後の支持率を保っていたからです。安倍政権が長期政権下したのは、国民が望んだからに違いありません。

 「独裁=悪政」「民主主義=善政」の固定観念にとらわれると、支持率と悪政の矛盾が説明できないのです。
 ……もっとも説明するために「国民は騙されている」というレトリックが、使用されるわけですが(笑)

「国民は騙されている」というレトリックの陳腐性

 仮に「国民は騙されている」ことが、事実だったとします。安倍政権ごときに「騙される知性」で、よりよい政治を選択することは、一般的に考えれば不可能です。
 よって現在の安倍政権による悪政は、国民が招いたものと結論されます。

 要するに「その程度に騙される国民なら、現在の政治の惨状も仕方がない」というわけ。

民主主義の貴重性はどこにあるか

 民主主義の貴重性は、近代人権思想との親和性でしょう。つまり流血せずに、政権交代が可能という一点です。

 筆者はそれ以外で、実物的な民主主義の利点を見いだせません。

政治について考えるときに必要な現実の考察

 政治について考える際に、必要なことは何でしょう? 筆者はまずひたすらに、現実を見つめることだと思います。

政治でも経済でも必要なのは現実

 政治も経済も、所詮は人の営みです。それ以外の何者でもありません。現実の観察から発展した理論以外は、政治や経済を考える上で使えません。

 例えば共産主義の理論はまさに、その典型だったといえます。ユートピアを夢見て、理論に現実を当てはめようとしたのです。
 共産主義と社会主義の違いは、以下の記事を参照。

矛盾を少なく解釈する癖をつけよう

 何かの物事が起きたときに、矛盾が少なくて説明できる解釈、ないし理屈を考えるようにしましょう。

 上述したとおり「安倍政権は独裁だから、悪政なのだ」という主張は、現実との矛盾が生じます。現実との矛盾が生じてもその主張を続けると、最終的には思考停止に陥ります。

 結論だけ決まっており、その結論に向けて情報を取捨選択する状態です。……端的にいえば、ネトウヨ化ですね。

まとめ

 政治とは「主権者が成否も成果も不確実な、何かを実現するための人の営みや活動、社交」であり「倫理や道徳に基づいて、民を導き治めること」でもありました。

 民主主義において主権者は国民です。すなわち国民自身が、自らを倫理や道徳などによって治めつつ、不確実な未来へ向けて活動していかなければなりません。

 但し国民が選択したから、その結果が必ず保証されるというものではありません。むしろ最悪の結果となることも多いと、歴史が証明しています。

 政治を考える上で、政治システムに正邪はありません。民主主義についても、客観的に捉えたいものですね。

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9 Comments
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Muse
4 年 前

>よって現在の安倍政権による悪政は、国民が招いたものと結論されます。
 要するに「その程度に騙される国民なら、現在の政治の惨状も仕方がない」というわけ。

現代日本の政治状況の本質はまさにこれです。なので、たとえ安倍政権を打倒しても有権者自身、国民自身が変わらなければ、またぞろ安倍一味に代わる新たなクズどもがのさばって、国家国民を窮地に陥る結果になることは目に見えている。現に、橋下徹のメディア露出とか維新の支持率増大等、非常に危険な兆候が現れています。

問題は、上記の本質を理解して賢明な投票行動をとれる人間が果たしてどれほどいるのか?ということです。選挙の時だけ大衆受けする耳障りの良いワンフレーズを掲げる政治家や政党、そして、彼らを持ち上げるメディアや言論人の言説にコロッと騙される「B層愚民」が大多数を占めているのではないかと。

本来ならば、「B層愚民こそが民主主義を形骸化させて国を滅ぼす元凶である」等々の言説をメディアや言論人たちが積極的に発信して国民自身に自己反省を促すべきですが、適菜収氏などごく一部の論者を除いて皆無。

それからTwitter等のSNSでも、安倍政権に対する批判のツィート(もちろん批判内容それ自体は正しい)は山ほどあるが、こんなろくでもない政権をここまで野放しにしてきた国民自身の愚かさを糾弾する声はほとんど聞こえてこない。

通りすがり
Reply to  Muse
4 年 前

私も、そう思っていました。
日本の教育にも問題があると考えています。
民主主義=良いものだと教え込まれますね。
先生方も、そう信じている。
まるで宗教です。
私が民主主義に異議を唱えたり、選挙に行かないと言うと、脊髄反射的に反論されます。
「お前は政治に文句を言う資格はない」「(金持ちの)貴族が政治権力を握っていていいのか」「独裁国家になる!」
などなど。挙げたらキリがありません。
結局、間違った教育を教え込まれているんだと思います。
歴史や古典を軽視しているから、新自由主義やグローバリズム、構造改革にも簡単に騙されるのでしょうね。

4 年 前

「銀河英雄伝説」を思い出しました。あれのテーマの一つだったと思います。

Reply to  ポルシェ万次郎
4 年 前

ここのコメントの「返信」の紐付けやらレイアウトやらが、以前の仕様と比べて分かりにくくなりました(改悪)。投稿できない不具合まであります。

>銀英伝、2期

「本伝」ではなく「Die Neue These」の方なら、CSの方で先行放送が終わっていたと思います。今はNHKなどで、主題歌を変更した「Die Neue These」の一期が再び放送されていて、その流れで二期も放送するものと思われます。

これはコロナの影響とか関係なく、既に制作済みということもあって、気長に待っていれば二期の放送は始まりそうです。

・本好きの下克上(二期)
・イエスタデイをうたって
・かぐやさま(二期)
・放課後ていぼう日誌
・かくしごと

今期のアニメは上記が面白いと思います。いま「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が再放送されていますが、相変わらず素晴らしいクオリティですねー。

Reply to  高橋 聡
4 年 前

『本好きの下克上』は、元の世界の知識を活かして無双するという、本来あるべき異世界転生ものの醍醐味をちゃんと描いているため、毎週楽しみにしています。神に祈りを~!(笑)

>・キングダム
>・乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった

リストには上げませんでしたが、もちろん視聴していますよ。『キングダム』は昨日から、放送延期になっているっぽいですね。まあ、ヤングジャンプで連載開始から欠かさず原作漫画を読んでいるため、内容は知っているわけですが、アニメはアニメで楽しませてもらっています。