コロナ禍は緊急事態宣言によって雇用を急激に喪失させ、企業や店舗に休業を強いています。恐ろしい速さで縮小する実体経済と、じわりと拡大する民間負債は「あることが起きる可能性」を示唆します。
金融危機の発生と日本経済の崩壊です。
結論だけ先に述べます。政府支出をさらに拡大しないと日本経済はもたないどころか、金融危機や崩壊の危険性すらあります。日本経済がコロナ禍によって崩壊するメカニズムと、最後に処方箋を解説します。
コロナ禍で日本経済崩壊と金融危機が起こる
コロナ禍で日本経済崩壊が起きる可能性は、誰しも承知しているでしょう。しかしそのメカニズムについて、しっかりと理解している人は少ないです。
日本経済に何が起きるのか? まずは現状を確認していきましょう。
コロナ禍の経済負担を負おうとしない政府
コロナ禍でも日本政府は、負債拡大をなんとか食い止めようとしています。コロナ禍の緊急経済対策予算は総額100兆円超えとされていますが、真水はせいぜい16兆円から20兆円と推計されます。
目立った給付も今のところ、決定したのは国民一律10万円くらいです。また自営業や中小企業に100万円から300万円を補償するそうですが、経営者からは「家賃でそんな金額はすぐ消える」と聞こえてきます。
休業と支払いで負債ばかりが増える民間
一方で政府は緊急事態宣言を発し、様々な業界や企業に休業要請をしています。余談ですが休業要請に従うかどうかは、任意です。但し従わない場合、企業名を公表するという実質的な罰則を受けます。
しかし法的に要請であり任意である以上、補償とセットではないと解釈可能です。よって現在は「休業補償を出さずに、休業を実質的に強制している」状態です。
休業している企業は金融機関から、コロナ対策融資を受けて糊口をしのぎます。しかしこの融資、不良債権化しない保証はありません。
喪失し続ける雇用と所得
企業も大変ですが、個人も大変です。主に非正規雇用を中心に、雇用が喪失し続けています。特に飲食やサービス系のパート、アルバイトは雇い止めや勤務時間短縮などが起きています。
停止した大都市の経済成長エンジン
我が大阪では、梅田の街が閑散としています。東京も同じようなものだと、報道で見聞きしています。日本を代表する都市の機能が停止し、経済成長のエンジンが喪失しました。
緊急事態宣言は5月初旬までとのことですが、1ヶ月でコロナ禍を押さえ込んだ国家はありません。日本だけ1ヶ月で押さえ込めると思う方が、どうにかしています。
従って大都市という経済成長エンジンは、緊急事態宣言の延長によって止まりっぱなしという可能性も高いでしょう。
経済崩壊と恐慌の第一歩
このように現在の日本で起きている、様々な事象を羅列してみると「これで日本経済が、崩壊しない方がおかしい」とすら思えます。
経済が停止しているのも問題ですが、経済停止の影響で2つの最悪が進行しています。
- 体力のない店舗や企業から倒産し、もし経済が再開されてもすぐには再生しない
- 民間の負債が拡大し続けており、信用不安に発展する恐れがある
仮に政府がこのまま支出と負債拡大を嫌った場合、日本で恐慌と金融危機が発生する恐れがあります。発生すると日本経済は、まさに崩壊と表現するべき状態になるでしょう。
金融危機は常に民間負債の異常な拡大が原因
金融危機のメカニズムを、正しく理解している人は多くありません。経済学者ですら、ほとんど理解していないのです。――経済学者が、正しく経済を理解していることが珍しいのは、脇に置きましょうか。
金融危機は常に、民間の負債拡大とともに起きてきました。金融商品や投機によって、実体経済以上に金融経済が肥大化すること――つまり民間負債の実体経済以上の拡大――が金融危機を引き起こします。
バブルの本質は、民間負債と実体経済のアンバランスが生じ、投資家の投げ売りで金融危機へと発展することです。
コロナ禍でバランスを崩す民間負債
民間の負債の拡大も問題ですが、もうひとつの問題は実体経済の縮小です。「実体経済と民間負債のアンバランスが、金融危機を引き起こす」のですから、民間負債の拡大ペースが遅くても、実体経済の縮小ペースが速ければ金融危機に発展する可能性は高い。
そして実体経済が縮小しているのは、誰の目にも明らかです。
政府負債の拡大でバランスしなければならないが
本来は政府が民間負債を肩代わりして負債拡大し、政府支出を拡大するべきです。民間企業や個人の負債は、容易に信用不安を招くことがあります。しかし政府は通貨発行権があるので、信用不安が起こりようがありません。
膨らまないバブルが破裂した後
バブルを「実体経済と民間負債のアンバランス」と定義すると、実体経済の急激な縮小によって「膨らまないバブル」が生じている可能性があります。
ハイマン・ミンスキーの金融不安定性仮説
ハイマン・ミンスキーは「どうしてバブルが起こるのか?」「資本主義の不安定性」を解き明かした、希有な経済学者です。ミンスキーの金融不安定性仮説によれば、バブル発生と金融危機は以下のように起こります。
- 調子のいい時、投資家はリスクを取る
- どんどんリスクを取る
- リスクに見合ったリターンが取れなくなる水準まで、リスクを取る
- 何かのショックでリスクが拡大する
- 慌てた投資家が資産を売却する
- 資産価格が暴落する
- 投資家が債務超過に陥り、破産する
- 投資家に融資していた銀行が破綻する
- 中央銀行が銀行を救済する(‘Minsky Moment’)
- 1.に戻る
今回の場合は4.のショックがコロナ禍であり、民間負債が過剰だったわけではありません。実体経済の急激な縮小によって、民間負債が相対的に過剰になる事態です。
日本経済崩壊と金融危機
コロナ禍がいつ終息するのか? 誰にもわかりません。しかし長期化して経済活動が抑制されるほど、実体経済と民間負債のアンバランスは拡大します。
金融危機と日本経済の崩壊が、足音を立てて確実に忍び寄っています。
日本経済崩壊と金融危機を予防することは可能
コロナ禍の日本経済崩壊と、金融危機を予防することは可能です。信用不安の芽を、取り除けばよいのです。すなわち政府負債拡大による民間負債の肩代わり、ないし民間資産の拡大です。
安定した経済の実現は政府負債の拡大しかない
コロナ禍で実体経済が縮小する中、民間企業や個人に負債縮小の可能性はありません。とすれば政府が、民間の負債を肩代わりする必要があります。従って政府負債を拡大することが必要です。
日本経済崩壊と金融危機を食い止めるには、政府負債拡大という解決策しかありません。他の解決策は経済の原理上、存在しません。
考えてみてください。規制緩和や構造改革で、コロナ禍の経済がよくなりますか? 自由貿易は? グローバリズムは? 全てコロナによって、否定されたのです。
そもそも規制緩和や構造改革、グローバリズムが経済を発展させる、という認識自体が間違いでした。
プライマリーバランスは経済を不安定化するという事実
「誰かの負債=誰かの資産」という等式は、経済において不変です。すなわち「誰かの負債が拡大すると、誰かの資産も拡大している。従って経済も拡大している」ことになります。
しかし「誰の負債か」が重要です。民間の負債か過剰に拡大した場合、ちょっとしたショックで信用不安が生じ、バブルが崩壊して経済が不安定化します。
経済を安定的に運営するためには、政府負債の拡大がもっとも望ましいのです。
ポスト・グローバル資本主義は訪れるか
コロナ禍はグローバル化が進んでいたからこそ、世界中に蔓延しました。もしコロナ禍が1960年代の出来事なら、広がるにしても速度は緩やかだったはずです。
グローバリズムは、グローバル化が内包する脆弱性をさらけ出しました。世界はグローバリズムの危険性を、認識したといえるでしょう。
ではポストグローバリズム、ポスト・グローバル資本主義は訪れるでしょうか? 中野剛志氏によれば、社会主義が訪れるのではないか? とのことです。
筆者もこの見解に同意します。
カール・マルクスが「資本主義が成熟して、社会主義が訪れる」と予言しましたが、この予言は半分あたりで半分はずれ、といったところでしょうか。
激動する、不確実性の時代です。しかしひとつだけ確かなことがあります。いま必要なのは「政府支出のさらなる拡大である」ということです。
>金融危機と日本経済の崩壊が、足音を立てて確実に忍び寄っています。
とのことですが、日本全体の「モノやサービスの生産・供給能力」が著しく低下した結果、ハイパーインフレになる恐れはありますか?もし今の状況で首都直下型地震とか南海トラフ地震でも起きたら確実にそうなると思います。
それから、(大地震が起きないまでも)金融危機と経済崩壊によって日本円の信用がガタ落ちになり、円建ての預金や国債、社債、保険商品がパーになる恐れはありますか?
>とのことですが、日本全体の「モノやサービスの生産・供給能力」が著しく低下した結果、ハイパーインフレになる恐れはありますか?
おっしゃるとおり、南海トラフ地震でしょうね~。
>金融危機と経済崩壊によって日本円の信用がガタ落ちになり、円建ての預金や国債、社債、保険商品がパーになる恐れはありますか?
ならないんじゃないですか? 基本、日本円=日本国内だけのはなしですし。
保険商品や社債は、商品によるとしか。