格差が問題視されるのは、昨今に始まったことではありません。2000年代初頭に格差拡大が問題視され、2000年代終盤には年越し派遣村が注目されました。
「格差の拡大がなぜ問題なのか?」
さっと答えられる人は多くはないでしょう。
「資本主義ではなぜ、格差が広生まれて広がるのか?」
この問いに答えられる人は、さらに少ないはずです。
資本主義の格差の関係性や理由、そして格差がなぜ問題なのかをわかりやすく解説します。
そもそも問題視される格差とは?
世の中には格差があふれています。格差という言葉の定義は「価格・資格・等級の差」です。例えば見た目やルックス一つにしても、整っている人とそうではない人がいます。格差はそこら中にあふれているのです。
しかし問題視される格差とは、上記のような「違い」ではありません。一般的に格差といえば「本人の意思では覆らない差」であり、「その違いによって本人が、非常に不利な状態に陥る状況」を指します。
例えば年収1億円の人と1000万円の人にも、格差は認められます。しかし問題にはなりません。年収500万円の人と、200万円の人ならどうでしょう。格差として問題視されます。
何が異なるのか? 格差のほかに貧困といった「本人に非常に不利な状態」が加わることで、格差は問題視されるのです。
- 正社員の椅子が限られており、どうしても一定数があぶれてしまう椅子取りゲーム
- アメリカの過去30年間のように、ボトム9割の所得が一向に上がらない場合
上記のような場合、格差というのは大変問題視されます。
資本主義ではなぜ格差が拡大していくのか
資本主義は野放図であれば、必ず格差が拡大していきます。そのメカニズムは21世紀の資本を著したトマ・ピケティによって明らかにされています。専門的にはr(資本収益率)>g(経済成長率)の公式が有名です。
簡単にいえば「みんなで豊かになるより、一部の投資家が豊かになる速度の方が早い」のです。従って一部の投資家や資本家が、どんどんお金持ちになります。
投資家や資本家は、儲かる金融市場に熱中します。しかし金融そのものは、何一つ生産することはありません。お金がお金を生むゼロサムゲームです。
実体経済を支えている生産の利益は、この金融市場に「株主配当」という形で吸い上げられていきます。
このような構図で、上述したようにアメリカのボトム90%の所得は、30年間で1%程度しか上昇しませんでした。トップ1%の所得は、えげつないほどに伸びているにもかかわらず!!
格差が資本主義に死をもたらす理由
格差がなぜ問題なのか? 様々な理由が挙げられます。人権の観点から生存権や、最低限文化的な生活などが、理由として挙げられることが多いでしょう。もしくは格差社会がスラムなどを生み出し、社会の不安定化につながるという視点もあり得ます。
これらの理由は最もです。ほかにも格差が資本主義の死につながる、という理由もあります。
実は格差拡大は、経済成長を阻害します。これはOECDも認める事実です。科学技術や経済の発展は、教育というインフラ(下部構造)によって支えられています。しかし格差が拡大すると、格差の固定化が発生します。
つまり全ての子供に、十分な教育が届かなくなるのです。
また格差拡大は富の偏在を意味します。金持ちは消費性向が低く、1億円あっても1000万円しか使いません。逆に低所得層は消費性向が高いので、200万円あれば200万円使います。
つまり金持ちが金持ちになるほど、富の偏在が起こります。需要として使用されないお金が、大量に発生し続けるのです。
格差固定による教育格差の発生、富の偏在による需要喪失は経済成長を阻害するのです。資本主義とは「負債を増やすことで、経済成長し続ける経済形態」です。経済成長が止まることは、資本主義の死を意味するのです。
つまり格差が、資本主義を死に導きます。
これもなぜ格差が問題なのか? の理由の一つです。
資本主義で格差を広げないために政治が存在する
資本主義は全て、格差を拡大させて死を迎えるのでしょうか? そうではない選択肢も存在します。
資本主義が際限なく格差を拡大させるのは、資本主義を野放図にしておくからです。資本主義に一定の規制や縛りを書ければ、資本主義は健全なものへと変わります。
健全な資本主義を営むために必要なのは、政治の経済への介入です。つまり大きな政府というわけ。
政府は様々なルール、つまり規制を経済に敷いています。この規制は基本的に、弱者を救済したり、市場が過当競争にならないようにしたりするためのものです。こういった政府の介入こそが、資本主義を健全に営むためには必要です。
そして格差縮小は、経済成長を加速させます。例えば日本の高度成長期は、一億層中流と呼ばれて、すさまじい経済成長を達成しました。また諸外国から「世界で一番成功した社会主義」とも揶揄されました。筆者は褒め言葉では? と感じておりますが(笑)
資本主義はなぜ格差を拡大させるのかのまとめ
資本主義と格差の関係について、端的に解説してみました。格差拡大は資本主義そのものを、不健全にしていきます。
格差が一切存在しない社会というのはあり得ません。しかし格差が「問題視されない程度にしか存在しない社会」というのはあり得ます。
格差というのは当人が「まあ別に豊かに生活しているし、気にしない」なら、問題にならないからです。逆説的に格差が問題になる社会は、どんどん貧困化している社会といえますよね。
日本で格差社会が問題視されたのはまさに、2000年代初頭から貧困化していったからに他なりません。格差一つ一つにフォーカスするのも大事ですが、巨視的な視点で国家全体が豊かになることも大事だったのです。
アダム・スミスの「神の見えざる手」を多分、あなたも誤解している
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52308
現代ビジネス
この世の主流派経済学者全員が、アダム・スミスの教えを正しく理解したら、今の資本主義はかなり健全になるかもしれません。
記事、読みました。大変興味深い記事ですね。
アダム・スミスって元々、共同体をかなり大事にする論だったと聞きかじったことが。
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