トリクルダウンが起きずアベノミクスで豊かになれない当然の理由とは

 2013年。安倍総理就任とアベノミクスに、期待したひとりが筆者です。その期待は露と消え、いまでは無残な現実のみが目の前に広がります。

 アベノミクスではしばしば、トリクルダウンを前提としていたと言われます。
 そもそもトリクルダウンとはなんでしょうか。アベノミクスとの関係性も含め解説します。

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トリクルダウン理論とは

 トリクルダウン理論の概要は、至ってシンプルです。「金持ちがもっと金持ちになれば、その富がしたたり落ちて低所得層の所得も底上げされる”はず”」というものです。

 トリクルダウンとは英語で、徐々にあふれ落ちるという意味です。このことからもすでに、トリックルダウンが起きない理由は明白です。
 富が徐々にあふれ落ちるとは、金持ちの財布に容量があることが前提。金持ちの財布が容量無制限なら、あふれ落ちる富も発生しないことになります。
 そして現実は、後者でした。

 自由競争と自由貿易で全体の所得は底上げされず、むしろ格差が拡大しました。OECDの見解が示すとおり、格差は経済成長を鈍化させる要因です。

トリクルダウン理論がもてはやされた背景

 「金持ちを優遇すれば、低所得層にもおこぼれがある」は明確な嘘でした。しかも大企業や大資本に都合のよい嘘です。
 このことからも、トリクルダウン理論がもてはやされた理由も明白。「低所得層に金持ち優遇の政策を、納得させられる嘘だから」です。

 「法人税を上げると大企業が海外に逃げる!」と同じですね。

トリクルダウン理論と先富論の違い

 しばしばトリクルダウン理論と、先富論は混同されます。確かに金持ちを優遇する点において、トリクルダウン理論も先富論も一緒です。しかし先富論は「金持ちになった人が、低所得層を助けることを義務とする」ことが盛り込まれています。

 自由競争で自然に富がしたたり落ちるとした、トリクルダウン理論とは異なります。

アベノミクスとは

 アベノミクスとは、端的に表現すれば「新自由主義・グローバリズムな規制緩和や構造改革、小さな政府」です。以下の3つの例を示すだけで、多くの人が納得することでしょう。

  1. 2014年および2018年の入管法規制緩和による移民拡大
  2. 2014年と2019年の2回にわたる消費増税と、法人税減税
  3. 水道事業民営化や農協改革、各種規制緩和

 アベノミクスの本命は金融緩和と言われていましたが、現在ではすでに「金融緩和だけでは、デフレ脱却は不可能」と周知されつつあります。ちなみに金融緩和でデフレ脱却を主張していた、リフレ派は新自由主義経済学の亜種です。

 よってアベノミクス=グローバル化、市場原理主義と解釈しても齟齬はありません。

アベノミクスとトリクルダウンの関係性

 トリクルダウン理論は、金持ちがさらに金持ちになる優遇を受けるための嘘でした。アベノミクスはグローバル化であり、格差を拡大させる政策です。すなわち金持ち優遇の性格を帯びています。

 従って理論構造的に、アベノミクスはトリクルダウン理論とセットになります。

 2014~2015年あたりの国会答弁では、大臣たちがトリクルダウン理論を連呼しています。また自民党も国会質疑で、アベノミクスはトリクルダウンと認識していました。

 しかし2018年の自民党総裁選において、安倍首相は石破茂議員の質問に対して以下のように反論しています。
「先ほど石破氏から『今の安倍政権がとっているのはトリクルダウンの政策だ』という趣旨の話をいただきましたが、私はそんなことを一度も言ったことはありません

 この発言で「アベノミクスはトリクルダウン理論か否か」が議論になります。バカバカしい話です。安倍首相が「言ったことがない」のと、実際の経済政策がトリクルダウンを前提としていることは両立します。

 トリクルダウンが起きない、トリクルダウンが嘘だったことが周知され始めると急に「私は言ったことがない!」と強弁し始めるのです。
参照 安倍首相の「トリクルダウンとは一度も言っていない」発言について – ロジ・レポート

トリクルダウンが起きない理由とは?

 最初に上述しましたが「金持ちの財布が容量無制限」であれば、何もしたたたり落ちてきません。そして現実を観察する限り、金持ちの財布は容量無制限です。トリクルダウンは机上の空論、現実では起きなかったのです。

トリクルダウンがどれだけ起きないか?の実例

 実際にトリクルダウンが、どれだけ起きないか? を示す例もあります。アメリカではトップ1%の富や所得は、1980年代から急増していきます。アメリカではトップ1%が持つ資産は、ボトム90%が持つ資産の総量より多いのです!

 またアメリカのトップ10%で資産は7割、所得は5割を占めます。
 そして1980年代からボトム90%の所得は、なんと1%程度しか伸びていません。

トマ・ピケティの式がトリクルダウン理論が起きない理由を裏付ける

 21世紀の資本で有名になったトマ・ピケティは統計で、200年間の資本主義の傾向を分析しました。その中でr(資本収益率)>g(経済成長率)という式が、経済学会で波紋を呼びます。
 ピケティは「資本主義は放っておくと、格差を拡大し続ける」と、統計から導き出したのです。

市場原理主義はむしろトリクルアップを引き起こす

 新自由主義やグローバリズム、市場原理主義はトリクルダウンが起きないどころか、むしろトリクルアップを起こします。

 大資本や金持ちは、政治にも介入します。自分たちに都合のよいシステムを作り、さらに稼ごうとするわけ。いわゆるレントシーキングと呼ばれる行為です。

 レントシーキングは誰から稼ぐか? 大多数のアンダークラスやミドルクラスからです。つまりボトム99%からトップ1%へ、富がトリクルアップするのです。

まとめ トリクルダウンの嘘とアベノミクスで豊かになれない理由

 そもそも論としてアベノミクスが大企業優先、消費増税などで国民を置き去りにしています。その言い訳として使用されたのが、トリクルダウン理論です。
 そしてトリクルダウン理論はいまや、嘘やフィクションであったことが明白になっています。
 つまり国民がアベノミクスで、豊かになれるはずがありませんでした。

 アベノミクスで豊かになれない、デフレ脱却できないのも当然なのでした。

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トナカイ
6 月 前

またアニメの話ですみません。
ガッチャマンや鬼太郎の時と同じで、またアニメと社会風刺(ネオリベ批判)の話題です。
まあ、創作物と政治や社会を安易に結びつけるのも、問題は無くはないですが……。

それでも、政治経済の素人の一般人に、今の難しい社会問題をわかりやすく伝えるための材料になったらなあという思いで、紹介しますは、小学生の頃に見てた爆走兄弟レッツ&ゴーというミニ四駆アニメ。
最近大人になってから見返したら、悪役の描写が、社会の問題をリアルに描いていたという話です。

テーマは「弱肉強食の自由と、その代償について。」ですかね。

もし、車検制度というルールが大人の都合で廃止されたら、何が起きるのか。
ルールなき自由がもたらすのは、子供たちの笑顔ではなかった。
コース上に横たわるミニ四駆の残骸と、泣いている子供たち。
子供相手に脅し半分で、エゲツナク描いていてます。
なんか、作中に普通にアメリカという国名まで出てきます。
そして、自由の名の下に、とんでもないものが正当化されてしまいます。

公式のあらすじ紹介では、この22~28話の部分ですね。
http://cgi.shopro.co.jp/tv/let_go/story/21-24.html
http://cgi.shopro.co.jp/tv/let_go/story/25-28.html

描かれる構図は、こんな感じ。
22~23話

ミニ四駆でミニ四駆を切り裂いて破壊する、切り裂きジャックが街に出没。
アメリカ帰りの小悪党レーサー黒沢は、「本場アメリカのミニ四駆は、勝つためなら何でもありのバトルロイヤルだ」と、本場アメリカではみんなやっている事だと、ドヤ顔で粋がるが……。
初登場の第二話の時点からアメリカ式の弱肉強食の自由を体現していた黒沢というキャラが、自分が被害者側になる事で、過ちに気づき改心するという話です。

参考:23話の公式あらすじにも、こう書いてあります。
>豪たちは、黒沢にもビークスパイダーに注意するようにと促すが、黒沢はマシンの破壊はアメリカでは当然のことと受け付けない。

25~26話。
大会の運営オフィシャル「子供たちのために、自由なミニ四駆レースを。」

本場アメリカ仕込みの、勝つためなら他車への妨害ありというバトルレース形式のルールを日本のレースに導入。
「子供たちの自由なレースのため」という大義名分で、車検制度が廃止される。
車体に、ナイフやノコギリをつけて、相手のタイヤをパンクさせる類の違法改造を、公式ルールで許可される。

そんな中、悪のミニ四駆博士の手下、「切り裂きジャック」が、レースに参加。
会場に起こる、大惨劇。 コースに転がるのは、一般参加のミニ四駆の残骸。
危険な改造は、レースを滅茶苦茶にしただけではなく、会場である豪華客船に、火事まで引き起こす。

27~28話

壊された、主人公陣営のミニ四駆を治すために岡田鉄心という仙人みたいな爺さんに会いに行く。
ZMCというセラミックなら、切り裂きジャックの攻撃を跳ね返せる。
鉄心爺さんの力で、ミニ四駆はパワーアップ。
でも、鉄心爺さんは、子供たちにこう釘を刺す。
うろ覚えながら、こんな感じで。
鉄心「お前さんは、復讐するつもりか? 強い力は、使い方を間違えれば、誰かを傷つける。」

今、このアニメを見直して思います。 
大人になって、たどりついた答えは、小学生時代に既に、気づいていた人がいてアニメにしていたんですね。

ルールや規制は、人を縛り抑圧するためのロープや手錠ではない。
むしろ、規制のおかげで、守られている安全もある。
車検制度という、規制があるからこそ、子供たちはミニ四駆で楽しくレースができる。
でも、大人たちは、「自由」という名目で、アメリカ式の自由なレースを導入した。
その結果が、切り裂きジャックが大暴れする、惨劇のサマーレース(会場に火災まで発生する異常事態)。

ルールや規制って、本当に大事なんですね。
それが失われた瞬間に、他者を傷つける自由を正当化する悪人が現れて、横行し、蔓延する。