大阪都構想は2015年に、住民投票で否決されました。住民投票の際に橋下徹氏や松井一郎氏は「ラストチャンス! これが最後!」と喧伝しましたが、2020年の現在、それが嘘だったのは明らかです。
なぜなら2020年11月に、またも大阪都構想の住民投票が予定されているからです。
大阪都構想2015では、108人の学者が大阪都構想の危険性を指摘しました。大阪都構想の危険性を、振り返り解説します。
大阪都構想の危険性を指摘し、多大な影響を及ぼした藤井聡京大教授
大阪都構想2015と、大阪都構想2020の変更点は「区割りがいくつか?」だけです。つまり本質部分は、全く変わっていません。
大阪都構想の住民投票が決定された2015年、1人の京都弁の学者が声を大にしました。ご存じ京大学教授の藤井聡氏です。藤井聡京大教授は、どのような影響を大阪都構想2015に及ぼしたのでしょうか。
- 学者たちによる大阪都構想の危険性を訴える記者会見の発端、火付け役となった
- 大阪都構想反対を明確に掲げ、学者としての分析などを用いて危険性を指摘した
- Facebookやメディアから、学者としての見解を発信し続けた
大阪都構想2015は様々な反対派の努力の結果、わずかに反対が上回り否決されました。まさに1万票ほどの僅差だったのです。
大阪都構想反対の理論的支柱として、藤井聡京大教授が果たした役割は大きかったと評するべきでしょう。
藤井聡京大教授が発信した、代表的な記事を2つご紹介します。大阪都構想2020にも通用する、非常に秀逸な記事です。ぜひ目を通すことをおすすめします。
【藤井聡】大阪都構想:知っていてほしい7つの事実 | 「新」経世済民新聞
【藤井聡】大阪都構想(最終回):知っていてほしい7つの「真実」 | 「新」経世済民新聞
大阪都構想の危険性を指摘する108人の学者所見
大阪都構想2015では、108人の学者が大阪都構想の危険性を指摘しました。その内容は教育学から行政学、防災学まで様々な分野に及びます。
また学者たちの記者会見も、当時は大きな話題になりました。
対する大阪維新の会や橋下徹氏は、大変に口汚い言葉で学者たちを批判したのです。その内容は、以下のようなものでした。
- 学者の批判は重箱の隅をつつくようなもの
- 批判のための批判
- 役人を動かせない学者が、偉そうに批判している
大阪都構想の危険性の重要なポイント
実際に大阪都構想2015で、108人の学者が指摘した危険性を見てみましょう。とは言っても多いので、筆者が重要と思う5つをご紹介します。また学者たちの見解について、記載しているソースを後述します。
大阪都構想の危険性1 教師の大阪離れが加速する
小野田正利大阪大学教授は、教育学の視点から「大阪都構想で、教師の大阪離れが加速する」と危険性を指摘しました。
2012年に大阪維新の会が中心となって成立させた教育基本条例以後、大阪の教育は危機的状況に陥っています。端的に言えば、教師の大阪離れが起こったのです。「学校が危ない: 週刊東洋経済eビジネス新書No.95」でも、特集になっています。
大阪都構想になれば、さらなる教師の大阪離れが加速すると、小野田正利大阪大学教授は危険性を指摘します。
- 大阪都構想で大阪市が解体されれば、予算も権限もなくなる
- よって優秀な教員確保のための研修や採用の権限もなくなり、教育はさらに凋落する危険性が高い
大阪都構想の危険性2 催眠商法と揶揄される住民説明会
政治学の観点から大阪都構想の危険性に警鐘を鳴らすのは、柏原誠大阪経済大学准教授です。
2020/09/10 柏原誠氏の所属大学誤記を修正しました
大阪都構想とは、大阪市を解体する計画です。この計画は不可逆的であり、大きな影響を及ぼします。だからこそ住民には、真摯でわかりやすい説明をすることが求められます。
ところが大阪都構想2015の住民説明会は、催眠商法と揶揄されるようなものでした。「わかりやすい説明」とはほど遠く、住民にきちんと説明されていないも同然です。この状態での住民投票は危険であり、大阪都構想は否決されてしかるべきと指摘しました。
大阪都構想の危険性3 大阪都構想では防災・減災が考慮されていない
河田恵昭京都大学名誉教授は、防災学の観点から大阪都構想の危険性を指摘しました。
防災・減災は票につながらないことから、大阪都構想の区割りでは全く防災が考慮されていないのです。南海トラフ地震や上町断層帯地震などの危険性は、大阪にとって目の前にある危機と捉えるべきでしょう。
しかしそのような問題意識が、大阪都構想に存在しないのは明らかです。
大阪都構想の危険性4 二重行政は必ずしも否定されるべきものではない
小林宏至大阪府立大学名誉教授は、以下のように述べます。
- 大阪府立大学および大阪市立大学は、東大より少ない経費で多くの学生に教育機会を提供している
- 橋下徹氏が立ち上げた大阪府市新大学構想会議の提言で、両大学は地域貢献で高い評価と記載されている
- とすれば府・市公立大学の二重行政は、むしろよい結果をもたらしていた
二重行政によって、よい影響を出すこともあります。よって二重行政とは、全否定されるようなものではありません。――もし二重行政が全否定されるべきものなら、全国の政令指定都市は解体に向かうはずです。
効率化の意を指標とする大阪都構想は、二重行政のよい面も破壊する危険性が高い。
大阪都構想の危険性5 大阪市民へのサービス低下は避けられない
高寄昇三甲南大学名誉教授は、財政学や行政学の観点から「大阪都構想で大阪市民へのサービス低下は避けられない」と、その危険性を指摘しました。
大阪都構想は大阪市を解体し、廃止します。大阪市にあった予算や権限は、大阪府に多くを吸収されます。よっていままで通り、旧大阪市域が住民サービスを維持することは不可能です。
大阪都構想の危険性を指摘した108人の学者の見解ソース
大阪都構想2015で、大阪都構想の危険性を指摘した学者の見解は「大阪都構想の危険性」に関する学者所見|藤井 聡で閲覧可能です。また記者会見の動画なども、リンクをたどれば参照できます。
大阪都構想2015と、大阪都構想2020の変更点は区割りだけです。したがって大阪都構想2015で発表された、学者たちの見解は現在も有効であり、適用可能です。
大阪都構想の構造上の危険とは
大阪全体を凋落させる大阪都構想の構造
何度でも申し上げますが、大阪都構想とは「大阪市の解体・廃止計画」以外の何者でもありません。ちなみに大阪都構想が2020年11月の住民投票で可決されても、大阪府の名称は大阪都になりません。
詳しくは以下の記事を、ご参照ください。
- 政令指定都市を解体して、予算と権限を大阪府が取り上げる
- 大阪府議会で旧大阪市域の議員は3割。よって取り上げられた予算が、旧大阪市域に使われる保証は一切ない
- 大阪市という成長エンジンを失い、大阪の凋落は加速する
大阪都構想には、上記のような構造上の危険性があります。そもそも論ですが、政令指定都市を解体して成長できると思うのがどうかしているのです。
それで成長できるなら、なぜ全国の政令指定都市を抱える都道府県は、いままでやってこなかったのでしょう? また大阪都構想に、追随する動きも全くありません。
大阪都構想に財政効果は存在しない
大阪都構想はその構造上、財政効果が存在するはずがありません。なぜなら「大阪市役所1カ所でやっていた仕事を、4分割して効率を悪くする」のが大阪都構想だからです。
考えてみてください。明日からあなたの会社の経理部を、4分割します! これでコストカットが可能になります! とか言われたら「頭おかしいんちゃう? 効率悪くて、余計に時間かかるわ!」でしょ?
基本的に財政効果は「仕事を減らすこと」でしか発生しません。仕事量がそのままなのに、コストだけが減少なんて都合のよいことは「どこかに無理をさせないと」起こりません。
したがって大阪都構想に、財政効果が存在する可能性は極めて低いのです。
ないものをあるように思わせられる。これも大阪都構想の、危険性の1つです。
まとめ 大阪都構想反対を繰り広げるにあたって
大阪都構想2020の11月住民投票の不利な現実
筆者は生粋の大阪人です。そして大阪都構想に対し、反対しています。
筆者の見る限り、現在の大阪の状況はよくありません。いえ、最悪と評しても過言ではないでしょう。
2019年の大阪ダブル選、および地方統一選では大阪維新が勝利しました。世論の結果を受けて、公明党は抵抗をやめて住民投票賛成に転じます。
はっきり申し上げれば、大阪都構想が可決される危険性は極めて高いのが現状です。大阪都構想反対派は認めづらいでしょうが、これが現実です。
大阪都構想反対に、有効な運動はないものか?
1人の反対派としては、どうにもいやな現実です。何か有効な反対運動は、ないものでしょうか? と考えました。
そこで筆者は、大阪都構想関連の検索ワードで「できるだけ上位を奪取する」ことを、ひとまずの目標にしています。
先日は「大阪都構想 しつこい」で1位を奪取しました。
ちなみに全体では、こんな感じ。
この記事は「大阪都構想 危険」というキーワードで、上位を狙っています。
大阪都構想に反対する方は、筆者と一緒に「大阪都構想関連の検索上位を、埋める作業」をしませんか(笑)
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