40代の引きこもり61万人に社会復帰支援記事がいまいち刺さらない理由

 引きこもりの高齢化問題も、就職氷河期世代を深堀りすると必ず出てくる話です。現在は40代以上の中高年引きこもりが、社会問題として浮上しています。じつは39歳までの引きこもりより、40代以上の引きこもりのほうが多い。

 40代以上の引きこもりの社会復帰を、支援する動きや記事も探せば結構あります。しかし見ていて「なんか、刺さらないんじゃね?」と感じました。
 なぜ刺さらないのか? ハズしているのか? を分析してみました。

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引きこもり100万人時代と8050問題クライシス

 まず現状の整理をしましょう。従来の引きこもりの定義は「15歳から39歳が6ヶ月以上、自宅に引きこもっていること」でした。しかし潜在化していた中高年、就職氷河期世代以上の引きこもりが高齢化してきて、余裕がなくなり顕在化しました。

 15歳から39歳の引きこもりが54万人に対して、40歳から64歳の引きこもりは61万人です。中高年の方が多い。中高年の引きこもりのメインは、40代とのことです。
 さらに中高年・40代引きこもりの75%は男性です。

 現在は引きこもり100万人時代なのです。

 8050問題はご存知でしょうか? 40代引きこもりの親は、平均して70歳ほどです。あと10年も経てば80歳と50歳です。80歳といえば、日本人の平均寿命になります。
 つまり親の年金を頼りに生活していた40代引きこもりは、頼るべき収入がなくなります。結果として2018年に北海道で起きた、親子孤立死のような事態が発生します。
 これが8050問題です。

中高年、40代が引きこもる原因と理由とは?

 便宜上「40代61万人引きこもり問題」と、中高年引きこもり問題を表記します。なぜ働き盛りといわれる40代が、引きこもるのでしょうか?

 中高年の引きこもり“61万人超”…なぜ4分の3が男性?「学歴や職歴が厳しい」から!? – FNN.jpプライムオンラインによれば、以下のような共通点が多く見られました。

  1. 40代以上の引きこもり増加と、(親と同居する)未婚者の割合は連動している
  2. 40代61万人引きこもりの4割は、誰にも相談をしない(できない)
  3. 退職と同時に引きこもることが多いと、確認されている(その他は病気、人間関係)
  4. 40代61万人引きこもりのうち、男性が75%を占める

 上記から類推できる40代の引きこもりの理由は、ほぼ明白です。
 「男性としての自信とアイデンティティの喪失」です。

  1. 失われた20年などで、所得が下落。非正規雇用の増大や終身雇用制度の崩壊
    →一定割合の男性労働者は、結婚して女性や子供を養う収入が得られない
  2. 定収入による親との同居
    →独り立ちができないという負い目
  3. 退職・病気・人間関係という引きこもり理由を深堀りすると、燃え尽き症候群と諦観に結びつく
    →無理して頑張ったができなかった、という諦観や燃え尽き症候群

 どうして男性が75%と多いのか? も明白です。男性としての「テンプレート・一般的概念(バリバリ働いて過程を支える的な)」と、自身の落差に自信喪失するからです。

ゲイなのに40代引きこもりが理解できるのかって?できるんだな、これが

 筆者はゲイですから「男性としてのテンプレート」から、もともと著しく外れています。家庭は持たないし、子供も持たない。一生独身貴族です。

 LGBTが最初に悩み、苦しむ点が「世間のテンプレートとの乖離」です。LGBTの場合は性の問題ですから、折り合い(というか理由付け)が明確です。「ゲイなんだから、しょうがないじゃん!」と。

 とすれば40代引きこもりの苦しみは、じつはLGBTの悩み以上のものなのかもしれません。自身のセクシャリティや性別で言い訳ができないのですから。

40代引きこもりへの社会復帰支援記事がハズしているポイント

 40代61万人引きこもり問題が顕在化してますが、公的な社会復帰支援活動はあまりないようです。しかしざっと検索してみたところ、どうも取り扱っているブログや報道の記事タイトルが「ズレてる、ハズしてる」のです。

  1. 40代引きこもりでも就職して、社会復帰できます!
  2. 40代引きこもりを友人が脱出した方法!
  3. 40代引きこもりの末路とは?正社員になる方法

 上記のような記事タイトルを見て、40代の引きこもりが「よし! 頑張ってみよう!」と思うでしょうか? 筆者だったら、見た瞬間に苦痛を感じると思います。「そんなのいわれなくても、わかってんだよ! バーカ!」的な。

 ある種、うつ病患者に「頑張れ!」と発破をかけている的な気がします。
 40代61万人引きこもりの最大の社会障壁は「自分は社会に、受け入れてもらえない」という感情なのです。

中高年も若年層も引きこもる、余裕なき社会日本

 引きこもりについて、面白い研究を見つけました。引きこもり現象はいつから始まったか – 井出草平の研究ノートによれば、最初に引きこもりという現象が確認されたのは1970年代だそうです。不登校という形で、確認されました。1980年代後半より、急激に引きこもり数が上昇することになります。

 1970年代といえば、学歴社会に日本が変遷した時代です。1960年代後半を境に、大学進学率は上昇の一途をたどり続けます。

 何がいいたいのか? つまり「求められるものは大きくなる一方」「しかし失われた20年で、所得は下落し続ける」というのは「日本にどんどん余裕がなくなってきている」証左ではないでしょうか。

 余裕なき社会で脱落してしまったのが、40代61万人引きこもりになるのだと思います。

 こんな事を言うと「後進国では引きこもりなんていない! 甘え!」という反論があると思います。上記の反論は「バカのテンプレート」と指摘しておきましょう。
 なぜなら「後進国や他国と日本では、求められているものの種類や大きさが異なる」からです。
参照:「日本人はスタート時間しか守らない」ツイートに反響多数! 「遅刻に厳しいのに残業代支払われない」「世界一時間にルーズ」

現在40代引きこもりの8050問題への対処法

 結論から言います。当事者は親が亡くなったあとは、生活保護を申請しましょう。
参照:親亡きあと、生活保護で何が悪い?~高齢引きこもり(田中俊英)

 どうも40代61万人引きこもり問題を分析していると、対処療法では効果が上がらないのでは? と思えて仕方がありません。社会のあり方そのものを変えていかないと、問題も解決しないでしょう。
 したがって就労支援などは、単なる徒労に終わる可能性が高い。当事者の40代引きこもりだって、できるならすでにやっていますって。できないから、引きこもっているわけで。

 しかし生活保護というとすぐに「予算がどうのこうの」という話になります。これもまた「バカのテンプレート(第二弾)」です。以下を参照ください。

 そもそも論ですが、生活保護拡大を容認しなければ中高年引きこもりから、死人が出ますって。
 例えば災害が起きたら「予算なんか後で考えろ。まずは救出! 自衛隊を動かせ」でしょう? 一緒だと思うのですよね。

まとめ-40代61万人引きこもり問題で、なぜ他の記事が刺さらないのか?

 「40代 引きこもり 社会復帰(ないし支援)」でググると、松岡修造ばりの記事がずらっと出てきます。「できる! できる! やればできる! 諦めるな!」的な(笑)
 1つくらい「社会復帰しなくてもいいじゃん。将来は生活保護でいいじゃん。生きてるだけでいいじゃん」という記事があっても良いと思います。

 筆者は10月末に、16年間続けた自営業をたたみました。恐ろしいほどのストレスで、うつ病に近い症状に。まあ病院に行ってないので、わからないのですが。初めて「ああ、うつ病ってこんな感じなんかな。こら、頑張れとかいわれたら泣きそうになるわ」と感じました。

 「40代で引きこもりを脱出する方法」「就職のノウハウ」etc……。しょせんは「他人事のアドバイス」であり「上から目線的な隔絶」を感じてしまうのではないでしょうか。

 色々議論、分析しましたがいかがだったでしょう。40代61万人引きこもり問題は、まだ顕在化したばかりです。したがってコンセンサスもありません。
 これから発展するであろう議論の一助になれば幸いです。

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4 Comments
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黄昏のタロ
4 年 前

お邪魔しますです。
是非ともコメントさせて下さいです。

 NHKのラジオでは、引きこもりと発達障害との因果関係を指摘しています。投稿を募って・・・番組をやったみたいです。
 発達障害なら、なじみやすい職場でなければ仕事が上手くいかずに続けられません。
 無自覚であれば、自分自身が原因と気が付かない。仕事が出来なくて怒られても、なぜ怒られたのか理解できず差別やイジメと受け止め対立しうつになったり。
 そして引きこもりに。

 引きこもりの人が診断を受けて発達障害と判ると楽になる場合も多いようです。

> とすれば40代引きこもりの苦しみは、じつはLGBTの悩み以上のものなのかもしれません。自身のセクシャリティや性別で言い訳ができないのですから。

 この、言い訳に発達障害が加わるからだと思ったです。
 就職の支援を受けて、理解のある職場に就職するのです。聞いた番組では、的確な指示(言わなくても判るだろうではなく)や、平行してやらせず終わってから次へって完結型にしてもらったりする事で、仕事をこなせるようになったとのことです。

 毒親は、このパターンで引きこもりになったです。相続して大家に専念するって仕事をしなかったのです。逃げたのです。仕事で怒られても怒られた理由が理解できていなかったです。
 問題行動が金にまつわることなので、おいらも引きこもって監視です。

> 上記のような記事タイトルを見て、40代の引きこもりが「よし! 頑張ってみよう!」と思うでしょうか? 筆者だったら、見た瞬間に苦痛を感じると思います。「そんなのいわれなくても、わかってんだよ! バーカ!」的な。

 それに付け加えて、家族の説得が無視されてるです。家族も苦悩して、苦悩の分だけ説得をする事でしょう。それでも奮い立つことが出来ない。長くなればなるほど深刻なはずです。簡単に解決するなら社会問題になるわけがないのです。

 発達障害や境界知能など支援が必須なパターンから、背中を押すだけのパターンまでさまざまあるかと思うです。自分で何とかなるのか支援が必要かは分けて考えないとダメかもです。
 

Muse
4 年 前

>結論から言います。当事者は親が亡くなったあとは、生活保護を申請しましょう。

やはり、結局はそこに落ち着くしかないと思います。ただ、申請時の資産要件にはかなり厳しいものがあるようです。多少古い記事ですが、こんな感じ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52686

こちらに書かれていますが、高齢者単身世帯で月額約8万円を下回ると生活保護費を受給でき、支給額も約8万円だとか。ちなみに、当方の今月分の出費額は83,000円弱(持ち家で住宅ローンなし)。国民年金の保険料16,410円を除けば1か月の出費額は6,6000円弱(生活保護受給者は国民年金の保険料は法定免除)。

なので、仮に生活保護を受けたとしても(資産があるので無理ですが)何とか生活できます。ただ、パソコンの所有(それから光回線の利用も?)が認められないそうなので、個人的には到底耐えられないところ。