格差社会の原因はなんでしょうか? 主に4つにまとめることが可能です。そしてその対策も、当然ながら存在します。
格差拡大が叫ばれて久しく、しかし一向に「格差社会への対応策を打った」という話は聞こえてきません。対応策は存在するにも関わらず。
このまま対応策を打たなければ、日本の民主主義は近い将来、必ずや抜け殻となります。その理由も含めて、解説していきます。
格差社会の4つの原因
日本が格差社会になった原因は、4つに切り分けることが可能です。
- 所得税率の累進性の弱体化、法人税率を下げて消費税を上げるなど逆累進性の強化
- 労働派遣法の規制緩和による、非正規雇用の拡大
- 貧困家庭の再生産、教育格差の問題による格差の固定化
- 緊縮財政によるパイの縮小・固定化。限られたパイの中で、レントシーキングなどの動きの活発化。また東京一極集中による、首都・地方の格差問題
1.の税の累進性の弱体化、逆累進性の強化は再分配機能を弱めます。再分配機能が弱まれば、当然ながら低所得層や貧困層がダメージを受けます。
2.の労働派遣法緩和は、小泉純一郎内閣で行われました。端的にいえば労働者の立場を弱め、流動性を高めるというものです。
したがって労働者の9割以上は、この規制緩和によって損をします。スキルのない労働者に大きなダメージです。
3.はもっとも深刻な問題です。貧困家庭では教育にお金がかけられず、子供は貧困から抜け出すことができない可能性が高い。貧困の再生産です。または格差の固定化とも呼ばれる現象です。
4.の緊縮財政はもはや、いまさらでしょう。緊縮財政の問題は2つに分けられます。パイが大きくならないので、既存のパイから利益を抜こうとする人たちが出てくること。つまりレントシーキングが横行することが問題です。
レントシーキングされたものは大抵、国民にとって損です。なぜなら「国民にとって得なら、レントシーカーにとって利益が出ないのは明白」ではありませんか。
もう1点は、東京一極集中です。東京にのみ富が集まり、地方はどんどん過疎化していきます。首都・地方格差の解消は、地方自治体や民間では不可能です。国家による地方への積極財政だけが、東京一極集中を留めることができます。
格差社会の4つの原因に、対応策はあるのか?
格差社会を招いた、4つの原因を明らかにしました。では対応策はあるのでしょうか? あります。原因がわかっていれば、対応はできるものです。
- 所得税や法人税、消費税を含めた累進性の強化。消費税の減税ないし廃止や、税の再分配機能の強化
- 労働派遣法や労働法の規制の「強化」
- 大学の奨学金の返済を家庭環境によっては免除するなど、貧困家庭への優遇措置や特別措置
- 積極財政による地方インフラの整備、国家計画による国土の開発
対応策は明確なのに、なぜいままで日本は対応してこなかったのでしょうか? プライマリーバランスと均衡財政主義が、対応を邪魔しているもっとも大きな要素です。
各政党の均衡財政主義への考え方
格差社会は多くの、左派系政党が問題視しています。立憲民主党や国民民主党、共産党、れいわ新撰組etc……。
しかし現状では、均衡財政主義を問題視しているのはれいわ新撰組と、立憲民主党や国民民主党の一部のみです。
例えば共産党は「企業の内部留保を活用すれば良い」と考えます。しかしこれは「民間の1部門から1部門への、お金の置き換え」です。政府でいえば「予算の付替」です。全体の量は変わりません。
全体の量を変えないようにする……つまり均衡財政主義的な考え方といえます。
共産党だけでなく、野党の殆どがこのような考え方です。
格差社会が民主主義をぶっ壊す?
格差社会の拡大は、民主主義に重大な危機を生じさせます。富裕・貧困というカテゴライズで、国民を分断するからです。
格差社会は、格差を固定化します。貧困層は貧困層で認識共同体を形成します。富裕層はもちろん、富裕層同士で形成します。
認識共同体とは、自分たちと環境や状況、考え方が近い人達がつくるグループです。世界を股にかけるグローバルエリートが、ブラジルのスラム街に住む人と話しが通じるか? 価値観を共有できるか? できないに決まっています。
格差社会で富裕・貧困の認識共同体が出来ると、この2つの人々はそれぞれ「違う日本」に住むことになります。異なる文化・常識・考え方が日本に存在することになります。
したがって日本全体での「連帯や協調」は遠ざかります。
連帯や協調がなくなった国で、どのように民主主義が成り立つというのでしょう。格差社会は民主主義を、数取りゲームに変化させていくのです。
昨今は「北朝鮮や中国の脅威」が叫ばれます。しかし私は国内の「民主主義が抜け殻になる脅威」のほうが大きいのでは? と思います。