最近、知ったのですが……MMT四天王やらMMT五大明王なるものが出てきた様子。MMT四天王と言われている1人は、進撃の庶民にも属している望月夜さん(望月慎に変えたようです)です。
というわけで、四天王に入ってない下っ端MMTerの私が、今日も現代貨幣理論(MMT)批判を検討・反論してみます。
※ジョークです。望月さんの記事に、私もたくさん勉強させてもらいました。
本日は2ちゃんねる創設者のひろゆきさん。そして未だに議席を獲得できない、幸福実現党党首の釈量子さんです。
現代貨幣理論(MMT)批判への反論と解説を通して、現代貨幣理論(MMT)を解説します。
ひろゆきの現代貨幣理論(MMT)批判概要
MMT信者を応援して、無税国家をつくろう。は、ひろゆきさんの記事です。相変わらず皮肉が多いのに、読者を引きつける奇妙な書き方です。
内容はともかく、記事の書き方は「すごいし、独特」と感心してしまいます。
- 国が借金できなくなるまで、借金しても問題ない→お金が借りれなくなったら、破綻する
- インフレ率がコントロールできるなら、バブル崩壊が起こってない
- ベネズエラのハイパーインフレは、コントロールできてない
上記がひろゆきさんの、現代貨幣理論(MMT)批判の概要です。
ひろゆきさんは知識人ではなく、一般人に近い感覚の批判の仕方だと思います。上記の批判がなぜ「間違っているか?」を解説します。
前提条件として、政府赤字はすべて「自国通貨建て」という点を、頭に入れておいてください。
(1)国が借金できなくなるまで、借金しても問題ない→お金が借りれなくなったら、破綻する
ひろゆきさんは、マンション投資を例えに出します。
つまり「国が借金できなくなる、限度がある」と考え、だから「バブル崩壊もあったじゃない」という論理構造につながるのです。
これは外生的貨幣供給説と商品貨幣論が、ひろゆきさんの論理の根底に存在することを示唆します。
外生的貨幣供給説とは? 非常に簡単に表現するなら、「預金(というお金のプール)があるから、国が借金できる」という理論です。
しかし上記は、間違っています。
「誰かの債務(負債)は、誰かの債権(資産)」の原則を思い出してみましょう。預金は、民間にとっての資産です。とすれば、誰かが負債を持っていなければなりません。
答えは政府です。
つまり「預金がたくさんあるから、まだ政府が借金できる」のではなく、「政府の赤字が、民間の資産(預金)になる」のです。
だから「政府が(自国通貨で)借金できなくなる日は、永遠に来ない」のです。
(2)インフレ率がコントロールできるなら、バブル崩壊が起こってない
1991年のバブルは「民間負債の増大と、不良債権化」が原因です。確かにバブル崩壊は、日本政府の政策の間違いもありました。
ただ……バブル崩壊前のインフレ率って、最大3%強です。バブルとインフレ率は、関係なかったりします。
バブルはコントロールできなかったのですが、インフレ率は安全圏にしっかり入っていました。
(3)ベネズエラはハイパーインフレを、コントロールできてない
現代貨幣理論(MMT)批判では、ベネズエラのハイパーインフレがよく例に出ます。ベネズエラのハイパーインフレは、なぜ起こったのか?
- 大きな対外債務(自国通貨建てではなく、ドル)
- 輸出の95%を、石油に依存する体質
- 原油価格の下落で、輸入する外貨が獲得できなくなった
- 生活必需品などを、輸入に頼っていた
簡潔にいえば「自国内ないし自国資本で、国民に必要な食料や必需品を、生産していなかった」という、経済構造の問題になります。
よって原油価格の下落で外貨が獲得できなくなり、生活に必要なモノが不足しました。モノ不足によるインフレは、容易にハイパーインフレへと変化します。
ベネズエラという「特異な経済構造」だから、ハイパーインフレが起こったのです。当然、日本には当てはまりません。
幸福実現党・釈量子の現代貨幣理論(MMT)批判概要
釈量子の志士奮迅 [第83回] – MMTを「生き方」で考える | ザ・リバティwebも、なかなか香ばしい現代貨幣理論(MMT)批判です。
- MMTは生き方(道徳)に反する
- MMTが本当なら、国債など発行せずに現金を刷って使えばいい
- 政府赤字は、そのうち返済しなければならない
批判の概要は以上です。
(1)MMTは生き方(道徳)に反する
純粋科学に対して、道徳で批判してどうするのでしょう? 例えば「地動説は、生き方に反する! だから天動説が正しい!」とか相当に「ダメ」でしょう。
よしんば道徳観などの思想を持ち出すにしても、それはMMTの思想を理解してからの話です。
MMTer(現代貨幣理論支持者)やビル・ミッチェル、ランダル・レイ、ケルトンなどは「MMTは『現実に起こっていることを、説明しているだけ』」と説きます。
私も同感です。
重力でリンゴが落ちるように、その事実を述べているだけです。
(2)MMTが本当なら、国債など発行せずに現金を刷って使えばいい
通貨(法定流通貨幣)には2種類あります。現金通貨と預金通貨です。大半を占める預金通貨は、信用創造で生まれます。
詳しくは信用創造とは?わかりやすく図解で解説 イングランド銀行公式見解も参照を、ご覧ください。
とりあえず、通貨の種類くらいは勉強するべきだと思います。
現代貨幣理論(MMT)では政府+日銀を、統合政府として考えます。大雑把に言えば「国債とは、統合政府内で最終的に処理される」のです。
よって「国債発行は技術的な問題であり、統合政府が通貨を供給して使っている」ともいえます。
現金ではないものの、政府によってすでに「通貨は供給されている」ので……釈量子さんは「現代貨幣理論(MMT)を批判したつもりが、批判できてない」ことになります(笑)
(3)政府赤字は、そのうち返済しなければならない
釈量子さんは、現代貨幣理論(MMT)を実践するとリーマンショックが! とも、記事内に書いてます。
しかし、政府赤字の縮小こそが金融危機を起こすのですが……(苦笑い)
「誰かの負債=誰かの資産」を思い出してみましょう。
政府の国債残高がゼロになったとします。日本はめでたく、1000兆円の負債を返済しました。
ということは……1000兆円の「誰かの資産」が消滅することを意味します。もちろん、民間ですね。
- 民間が負債を1000兆円拡大しないなら、凄まじいデフレとGDP縮小になる
- 民間が負債を1000兆円拡大したら、凄まじい――リーマンショックなど比ではない、金融危機が100%起きる
上記のようになります。釈量子さんの「生き方」とやらを押し付けると、日本は間違いなく滅びます。
健全な経済と、健全な財政が「異なる」理由
現代貨幣理論(MMT)では「健全な経済を目指さなければならない」とします。一方で、現在の日本は「健全な財政を目指す」が多数です。
どちらが正しいのでしょう?
資本主義とは、負債を拡大しながら経済成長していく経済形態です。なにせ”資本(負債)”主義ですから。
通貨発行権のない民間が負債を拡大(政府が黒字化)すると、金融危機が起こります。
したがって、政府赤字は永遠に拡大し続けることになります。
※自国通貨建ての政府赤字を、縮小した国家は存在しません。アメリカは1900年から現在で、国債残高が3000倍以上になってます。
自国通貨建ての国債残高は、気にするだけ無駄です。
では健全な経済とは、なんでしょう? 国民が必要なものを、国内でできる限りまかなえる「供給能力」です。
デフレは最終的に、国内の供給能力を毀損します。したがって、資本主義下ではインフレが望ましいのです。
健全な経済とは、適度なインフレ(需要>供給での追いかけっこ)なのです。
まともな現代貨幣理論(MMT)批判が、いまだに出てこない件
私はこれでも、現代貨幣理論(MMT)関係のニュースは割と見ています。ほとんどが、批判的なものばかりですが(汗)
しかし1つも、まともな現代貨幣理論(MMT)批判を見たことがありません。
これは釈量子さんの記事が、本質だと思います。つまり「借金は返さなければいけない」という個人道徳です。
「地獄への道は善意で舗装されている」
国家に、個人の道徳を当てはめるのはいかがなものか? と、いつも思います。個人の善意や道徳心が、国家を誤らせることは現在進行系であるのです。
しかし、ひろゆきさんまでMMTを認知はしだしたんですね・・。
これは、地味に、世間の認知がはじまりだしたとも、とらえられそうです。
取るにたらない飛んでも理論あつかいではなく・・、(世間において)取るに足るレベルでの、とんでも理論扱い・・ということなのですから・・。
逆説的であり、なおかつ皮肉な話しではありますが・・、ある意味ではMMTとか財出に対する捉え方の評価価値が一段あがったとも、ある意味ではとらえられるかもしれませんね・・。
ちょっとびっくりですよね。広まってくれるとよいのですが……。
先日、ひろゆき氏の記事を見て『お!どんな記事なのかな?』とワクワクして読みはじめたら、あまりにも周回遅れ過ぎて目がテンになりました(笑)
私も最初「お?」と思ったのですが(笑) 同じ感想をいだきました。
自分に都合が良いように言っていれば、最強の理論だな
バカ丸出しの小学生なみ
コメントするのなら、せめて明確な主語をつけましょう。
はじめまして。コメントさせて頂きます。
>まともな現代貨幣理論(MMT)批判を見たことがありません
とありましたので、結城剛志氏の記事はいかがでしょうか。
現代貨幣論(MMT)はどこが間違っているのか<ゼロから始める経済学・第7回>
https://hbol.jp/195466?cx_clicks_art_mdl=2_title
現代貨幣論(MMT)はどうして間違ってしまったのか?<ゼロから始める経済学・第8回>
https://hbol.jp/196715?cx_clicks_art_mdl=1_title
あたりの記事になるかと思います。
ちなみに、私はMMTの考え方は普通に受け入れられますし、もともと「財政破綻するわけない」と感覚的に思っていた人間です。
Youtubeで、「カリンゴンの怪獣でもわかる経済のお話」というチャンネルで
(117)結城剛志氏のMMT批判に対する反論
https://www.youtube.com/watch?v=GogOMg72Gp0
ということで反論を述べている方はいらっしゃいますが、高橋様のご意見はいかがでしょうか。
宜しくお願い致します。
結城さんのMMT批判を、全文読了しました。なかなか、読み応えのあるMMT批判で驚きました。
「さすが、専門が貨幣論!」です。かなり……いやすごく「おお! まともな批判!」と感心しました。素晴らしい議論だと思います。
さて、結城さんの批判のエッセンスは「信用貨幣論」と「国定貨幣論(租税貨幣論)」はパラレル(並行)だ、という点です。
つまり結城さんは市場を「法律がなくても成り立つ、商取引の信用関係」とみなしている、と解釈可能でしょう。
したがって
>税を課し、税を支払わなければ罰するという権力関係と、商品の売り買いから生じる信用関係とは本質的に異なるもの
という見解が、結城さんから導き出されます。
反論動画は見てないのですが、市場は「権力から自由な、完全市場ではない」のは明らかです。
市場もまた、法律という「ルール」の制約を受けます。
結城さん的にいうなら、「ルールを課し、ルールを破れば罰するという権力関係」が市場に存在するのです。
よって信用貨幣論と国定貨幣論(租税貨幣論)は「視野を広く持てば、全くパラレルではない」と言えます。
したがって結城さんの結論は崩れる、となります。
というのが、私の見解でした~。
高橋様
お忙しい中、ご回答頂き誠にありがとうございます。
MMTという名前付きでが広まる、というより、「本当のこと」が広まるようになると良いなと思います。
繰り返しになりますが、ありがとうございました。