言論の自由とネット空間-ネトウヨ的空間形成プロセスとネット言論の功罪

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 ネットが普及し始めて20年になります。この間の言論空間の変遷は、まさに「激動」でした。

 かつてはマスメディアや知的権威から、フィルタリングされた情報を我々は受け取っていました。
 しかしネットが発達した現在、玉石混交の情報の海を、我々は泳いでいかねばなりません。
 また、誰でも情報を発信できるようになりました。

 悪貨は良貨を駆逐する、という言葉があります。
 言論の自由の重要性を認めるとともに、ネット空間における「言論の良質性」を担保するために、何が必要なのでしょう。

 多くの有識者は「ネットとリアル」を切り離して考えます。誹謗中傷などの悪質コメントや、ネトウヨなどの極論を「ネットの中の現象」と片付けます。
 私の考察によれば、それは間違っています。

 本稿は「ネットというツールによる、言論空間」という「現実」を解説し、最後に「より良い、ネットの言論空間は可能かどうか?」を考察します。

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言論の自由の重要性と言論空間

 言論の自由は、大切です。この事実は、誰しも理解するところでしょう。

 情報なしに、判断は不可能です。正しい情報なしに嘘にさらされれば、容易に判断を誤ります。言論の自由は「正しい情報の担保」として、必ず必要なのです。

 しかし、しばしば言論の自由があっても、社会は間違った結論を出します。日本を覆う、緊縮財政・全体主義などは好例でしょう。

 ほとんどの人は様々な情報を、理論や論理で解釈しません。肌感覚で肯定ないし否定するのです。
 緊縮財政は「家計や経営」として。商品貨幣論は「物質的担保」として。
 このような肌感覚から、パワーワードが使用されるようになっていきます。

 ネットが発達する前の言論空間にも、問題は存在したのです。
 それでも、言論の自由は「重要」と言わざるを得ません。情報が規制された言論空間は、さらに容易に歪むからです。
 太平洋戦争当時の、大本営発表を見れば「あまりに明確であり、自明」と言わざるを得ないでしょう。

ネット時代の言論空間の特徴

 ネット時代の言論空間は、ネットが発達していなかった時代と違う特徴を持ちます。

  1. 知的権威と大衆の横並びと、玉石混交
  2. 誰でも発信できる、言論空間。つまりフィルタリング機能が、低下した
  3. 大量情報化社会と、能動的な情報の取捨選択

 昔は、テレビと新聞で事足りました。しかしネットの海は、大量の情報をもたらしました。なにせ、誰もが発信できるのです。情報発信の分母が、飛躍的に増大したのです。

 情報発信元は、もはや知識人だけではありません。一般大衆も、情報を発信するようになりました。
 ネットの海は、玉石混交となったのです。

 とすれば情報を受け取る人も、能動的に情報を取捨選択しなければなりません。新聞やテレビの情報フィルタリング機能の働きは、情報量に比して低下したのです。

 情報に溺れ、溺死することすらあり得る時代の到来です。

ネットの言論空間は、人々に何をもたらしたのか?

 端的に結論だけ先に、書きましょう。

  1. わからないと、言えなくなった
  2. 当事者意識が、欠乏した

知性なき知的振る舞いが「可能になったネット時代」

 私はご存知の通り、政経論をブログに書いています。ネット上では、リアルの議論のような「回転の早い知的さ」は求められません。
 また、自分の頭にない知識を、容易にネット上から仕入れられます。

 これが何を意味するか? 「知性的でなくても、知的振る舞いが可能になった」のです。

 したがって、ネット上で発信する人たちは「知的に振る舞いたい欲求」に逆らえません。自ら「自分はアホですねん!」と言うのは、アホの坂田師匠くらいでしょう(笑)
※アホの坂田師匠は、すごいねんで。私、尊敬の念を持ってますし。

 簡単にいえば、コピペ&リライティングで「知的に振る舞える」のです。
 よって言論空間では、真に物事を理解した発信ばかりではなくなりました。

 料理で例えれば「料理を食べた感想を、ネットの海から引っ張ってくる」ようなものです。
 当然、当事者意識も欠乏するでしょう。
 また「どこかから情報を引っ張ってくれば、ある程度カッコがつく」のですから、「わからないものを、わからないと言えなくなった」のです。

ネトウヨ的言論空間の形成プロセス

 ネトウヨは「ネット右翼」の略語です。しかしネットで左派をバカにする「パヨク」には「ネット」がありません。
 したがってネット右翼というのは、ネット特有の現象と思われます。
 リアル右派は、ネトウヨに対して否定的な見解が多いようです。しかし左派は、パヨクに対してあまり否定的ではないようです。

 ネトウヨ的な「偏狭した言論空間」は、どのように形成されたのでしょう。

  1. 歴史的な中韓のプロパガンダと情報戦への反発
  2. グローバリズムによる、アイディンティティの喪失と認識共同体への依存
  3. 愛国心というパワーワード

 人は「見たい情報しか、見ない」といわれます。地で行ったのが、ネトウヨなのでしょう。
 なぜか?

  1. 愛国心に必要な、文化論がネトウヨからは語られない(勉強してない)
  2. 国際政治学やバランス・オブ・パワーも、議論に出てこない
  3. 歴史以外の、社会科学がそもそも出てこない

 ネットの特性である「能動的な情報の取捨選択」を、「都合の良いようにした結果」がネトウヨでありました。
 これは知性への敬意の欠乏も、1つの要素でしょう。

ネットの言論空間の功罪

 常識的な判断力を持てば、情報の能動的な取捨選択も「常識的」になるはずです。
 では、ネットがない時代に「常識的でない情報ばかり、信じる人達」はいなかったのでしょうか?

 答えは、おそらく「否」です。

 しかし「現実として、人と社交する」ことで「極論は否定されていた」のでしょう。
 ネット上では、多くの人が「モニターのあちら側の、人格」を想定しません。

 これは仕方のない話で、コミュニケーションの7割が「仕草や表情、声色などの『言葉以外』」なのです。ネットとは極めて、不自由なツールでもあるのです。
 したがって、文章の作法は必須になります。

 しかしもう1つの特性。つまり「誰でも発信できる」とは「文章の作法がない人も」を含意します。
 全く「現実と社交」にフィルタリングされていない、極論があふれるのはそのためです。

 一方で、ネットのメリットも存在します。
 取捨選択さえすれば、容易に「良質な言論」にたどり着ける点です。

 ネットの言論空間の「より良いあり方」を探るのであれば、上記の点を追求するしかなさそうです。

ネット言論空間の、より良いあり方と実名制

 私は、ネトウヨが嫌いです(笑) 彼らから学ぶべき点など、何もないと思います。
※私は、元ネトウヨです。

 ネットの言論空間の、より良いあり方を模索するとき、必ず出てくる議論があります。ネットを実名制にしよう、という議論です。

 端的にいえば、実行した韓国で「効果は確認されていない」が現実です。効果抜群! なわけではない……? ネットを「実名制」にしたらネット犯罪は減るの? | ニコニコニュースが一番わかりやすく、書かれています。

 韓国の論文でも、「ライトユーザー(誹謗中傷しない人)のコメントが減少した」以外の効果は、確認されていないようです。

 では、政府による言論規制はどうでしょう。論外ですよね?

 実名制が効果がなかったのは、当たり前です。なぜかって? プロパイダ登録はそもそも、実名じゃないとできないでしょ?
 そして事件や名誉毀損があれば、弁護士を通じてプロパイダに情報公開を求めることができます。

 特殊なソフトを入れてない限り、じつはネットって根本的に「実名制」なんですよ。
 スマホでフリーなWi-Fiから接続する? Macアドレス(スマホなどの、機械番号)は記録されます。
 個人にたどり着くのは、不可能ではないのです。
※ハッカーの踏み台、IP偽装等々の手口はまた別です。完全な隠蔽も可能ですが、そこまでやる一般人は存在しません(笑)

ネットは「隔絶された、別空間か?」という問題

 もう少し、根源的な問いに戻ってみましょう。ネットとは、リアルと隔絶された空間でしょうか? 答えは否です。
 実名制の議論はまさに、「隔絶されたネット空間を、現実空間に接合する」という発想から生まれたものです。

 しかし効果は確認できませんでした。これは「現実空間とネット空間は、最初から接合されている」からに他なりません。

 とすれば「ネット空間の言論空間をより良くするためには、現実空間をより良くしなければならない」という結論に至るはずです。
 ネット空間は様々な欲求を、表面化したに過ぎない。こう考えることが、必要でしょう。

 したがって、現実空間の「問題の解決」こそ、ネット空間における問題の解決につながるはずです。

 格差、生活のしづらさ、貧困化、凋落。いじめや差別、公平さを欠いた社会システム等々。
 現実空間での課題は、様々に存在します。

 社会の問題解決こそが、これからの言論空間の「良質な言論」の割合を増やすことでしょう。

原子論的個人を脱却し、共同体再生を目指さなければならない

 ネット空間の様々な「罪」は、現実社会空間の課題解決こそが必要だ。こう結論づけました。
 ネトウヨという「害悪」もまた、「現実社会の空間から生まれた、罪」なのです。

 ――身も蓋もないですが、ネットなんて所詮は「情報インフラ」にしか過ぎません。使ってるの、人間ですし。
 そしてネットという情報インフラは、もはや不可欠。それを前提条件として、問題解決を探るしかないのです。

 上下水道が出来て問題が発生したら、上下水道を廃止しろ! なんて議論にならないでしょ?

 どこから問題解決に、手を付けるべきか。私見を述べます。

 日本という、共同体の再生を目指すべきでしょう。

  1. 格差縮小し、「金」による「国民意識の断絶」を止める。要するに1億総中流層の再生
  2. インフラ整備による、東西南北の移動の容易化と社交化
  3. 社会保障とセーフティーネットの充実による、こぼれ落ちる層への徹底的なケア

 ネット空間に誹謗中傷、炎上、罵詈雑言は主に「社会への不満」が根源的動機だと思われます。ネット以前も、革命とかありましたでしょ?
 インフラが1つ増えただけで、人間のあり方が変わるわけはありません。
 むしろネット空間は「社会への不満の、バロメーターの可視化」と捉えるべきかもしれません。
※結果として、ネットの言論空間が歪み、現実空間の言論にまで負の効果を生むのですが……。循環が加速した、という解釈で良い気がします。

 結論は「現実社会の課題解決こそ、ネット空間における課題解決につながるだろう」です。

あとがき 社会科学とネットを論考する人、いないの?

 ネットが普及して20年ほど。ネットは単なる、情報インフラにしか過ぎません。

 社会科学、特に哲学は非常に古く、アリストテレスの時代から語られます。2400年ほど前です。
 インターネットは新しく、ここ数十年のものです。

 したがって「社会科学とインターネット」は、20年に渡り「結びついてこなかった」のです。
 私はサーバー運営もしましたし、副業はサイト制作です。プログラムも組みますし、SEO(検索エンジン対策)などもおおよそは把握してます。

 社会科学、特に政治経済については、大変に興味を寄せてきました。社会科学は「将来においては」、「ネットやAIを論じることになるだろう」とは思います。
 が……今までなぜ、論じられてなかったの? と疑問です。

  1. ITという技術が「特別視された」
  2. 単に「新しいインフラ(ネット)」への、理解がなかった

 ITなんて、情報発信が「早くなっただけ」にしか過ぎません。WEB2.0? あんなのは虚妄です(笑) ビッグデータ? 国家レベルのGDPというビッグデータが、企業レベルで可能になっただけです。
 統計学の統計を取る「労力が下がった」だけの話。

 所詮はインターネットもITも、AIですら「単なるツール」です。

 この「インターネットというツールが、何を起こすか?」は、社会科学の知見で十二分に予測ができると思います。
 社会科学は、こういった技術も含め「定義し、論じること」が必要なのではないでしょうか?

 それは人々に、ひとつの思考の指向性を与えることになるでしょう。
 私のようないちブロガーの知見ではなく、社会科学の専門家の先生たちに期待をさせていただきます。

いちブロガーの限界

 もういや。疲れた。これは、書くのがしんどいです。脳みそが、焼ききれそうです(笑) 発熱してます(普通に、風邪)。

 私は、研究者でも学問の徒でもありません。ブロガーです。日々、PVアップを目指し、知的好奇心から様々に情報を取り入れるだけの「しがないブロガー」なのです。

 私の役割は明確です。「学者さんの学説を、政治経済において『わかりやすく、解説する』だけ」です。
 知性がピラミッドのてっぺんなら、私は中層あたりです。
 どのように「意味ある知性と説」を、一般的に広めるか? が役割です。ある種、ジャーナリズム的な役割とも解釈可能です。

 したがって……新たな「議論」を提案することは、超苦手。今回の「社会とインターネット」も、苦手な提案です。
 だから、脳みそは焼ききれそうになります。
 いちブロガーの限界です。

 主流派経済学以外の社会科学は、インターネットを含意しても、なお揺るぐことなく知的議論を発せられる。これは、私の確信です。
 ぜひとも、様々な分野の社会科学の先生方には、その「懐の深さと知性」を見せていただきたいと願います。

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阿吽

>多くの有識者は「ネットとリアル」を切り離して考えます。誹謗中傷などの悪質コメントや、ネトウヨなどの極論を「ネットの中の現象」と片付けます。
>私の考察によれば、それは間違っています。

そのとおりですね。

ネットも、人が介在する限りにおいて、十二分にリアルなんですよ。

だって、キーボードを打つのも、その打たれた文章を見るのも・・、ひとえにそれは人間なのですから。

ただ、リアルなのに、ネットだからとそれを言い訳にする人が多いですよね。

ネットでやばければ、リアルでも十二分にきっとやばいですよ。

だから、犯罪予告なんてネットでされれば警察だって動くんです。

実際に事件を起こすバカ者がいれば、警察だって動かなければならないし・・、なにかあってからでは、これは遅いのです・・・。

,
>また「どこかから情報を引っ張ってくれば、ある程度カッコがつく」のですから、「わからないものを、わからないと言えなくなった」のです。

議論においては、わからないものをわからないというのも、また一種の誠実さですよね。

(ただ、私はそれを前提にした上で・・、わからないものにはそもそも触れない方が良い・・、というふうにさえ思いますが・・)

(だから、私はMMT議論なんかには理解が足りないと思ったのでいっさい参加しませんでした・・ww。)

(まあ、それはそれでしょうもないんですけどね・・。すみません。)(でもやっぱり自信をもって正否を語れるほどの自信はこれはなかったんです・・)

,
>日本という、共同体の再生を目指すべきでしょう。
>1、格差縮小し、「金」による「国民意識の断絶」を止める。要するに1億総中流層の再生
>2、インフラ整備による、東西南北の移動の容易化と社交化
>3、社会保障とセーフティーネットの充実による、こぼれ落ちる層への徹底的なケア

その通りだと思います。

,
>とすれば「ネット空間の言論空間をより良くするためには、現実空間をより良くしなければならない」という結論に至るはずです。
>ネット空間は様々な欲求を、表面化したに過ぎない。こう考えることが、必要でしょう。

その通りだと、思います。

,
>結論は「現実社会の課題解決こそ、ネット空間における課題解決につながるだろう」です。

その通りだと、思います。

(なんだか、同じ言葉の連発ですみません・・(^^;))

(ただこれほんとその通りだと思ってしまうのです・・。すみません・・σ(^^;))

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