日韓経済戦争と呼ばれる韓国へのフッ化水素輸出規制は経済制裁か?

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 現在、日本が半導体のフッ化水素など3品目の輸出規制を、8月28日から韓国に課す予定です。
 品目はレジスト、フッ化水素、フッ素化ポリイミドです。
 いずれも半導体産業に欠かせない、材料です。

 この輸出規制は経済制裁ともいわれます。
 一方で日本は、菅官房長官が「繰り返し説明している通り、禁輸措置ではなく、正当な取引については恣意的な運用をせず許可を出していることを示したものだと承知している」と発言。

 「輸出規制なの? 経済制裁なの? 違うの?」という疑問に、お答えする記事です。
 また、短期と長期で日韓に「どのようなメリットと、デメリットがあるか?」も分析します。

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韓国へのフッ化水素など3品目の輸出規制の発端

 今回の韓国への輸出規制・経済制裁と呼ばれるものは、直接的には日韓徴用工訴訟問題が原因です。
 遠因としては2015年の、日韓合意があげられるでしょう。

 2015年の日韓合意は、朴槿恵政権のときです。しかし韓国人の反発は、非常に強いものでした。
 日本でも、”いわゆる保守層”も反発しました。
 朴槿恵政権倒閣の直接原因は、汚職です。

 その後の文在寅大統領は、前政権の方針(日韓合意)を否定することで、求心力を出そうとしました。つまり、対日強硬路線です。
 日韓徴用工訴訟問題や、慰安婦財団の一方的な解散が、文在寅政権下で行われます。

 上記の行動に対抗するために、日本が打ち出したのが「韓国のホワイト国からの除外」です。つまり今回の輸出規制・経済制裁と呼ばれるものです。

ホワイト国とは?キャッチオール規制の概要

 そもそもホワイト国とは、何でしょう?
 2002年に成立した安全保障貿易管理、キャッチオール規制の「優遇国(グループA)」がホワイト国と呼ばれます。

 キャッチオール規制は「兵器製造に関わる品目は、経産大臣の許可が必要」というものです。相手国(輸入先)の企業が、この許可を取り付けねばなりません。

 キャッチオール規制にはグループA(ホワイト国)、グループB、C、Dと分かれています。

  1. グループA:キャッチオール規制の対象外。経産大臣の許可不必要。通称「ホワイト国」
  2. グループB:輸出管理レジーム参加国。経産大臣の許可が必要
  3. グループD:国連武器禁輸国
  4. グループC:A、B、Dに該当しない国

 韓国は今回、グループAからグループBになる、というわけです。

 通常、キャッチオール規制で経産大臣からの許可は、90日ほど必要だそうです。しかし今回、日本側はわずか1ヶ月で品目許可を出した、と報道されています。
参照:韓国向け半導体材料、一部に輸出許可 厳格化後で初:日本経済新聞

 上記は「禁輸措置ではない」としめすための特例、と見られています。

日本と韓国の産業構造

 なぜ半導体の材料規制が、これほど騒がれているのか? 日韓の産業構造を理解しないと、ピンとこないかもしれません。

 簡単にいえば、韓国の主力輸出産業はスマホなどの完成品。日本の半導体産業は、半導体の材料や部品です。
 ではなぜ、日本は完成品を製造、輸出しないのでしょう?

 1つは過去の日米貿易摩擦です。日本の家電や車、半導体製品は非常に強い競争力を持っていました。
 アメリカの圧力、反発などによって迂回貿易を選択した、といわれています。
 つまり主要部品や材料を日本が受け持ち、他国が完成品を作って輸出するというわけ。

 上記はじつは、あまり正しくもありません。間違ってもいないのですが……。

 実態は中国や韓国にキャッチアップされ、車以外の輸出製品が競争力を失ったのです。なぜ日本が半導体製品や白物家電で、競争力を失ったのか? 2つ理由があります。

  1. 中韓による引き抜き。技術者の流出
  2. 長期デフレによる投資の減速と、技術革新の遅れ

 ここで、1つ懸念されることがあります。
「半導体材料の技術の流出は、起こらないのか?」

韓国と日本の輸出規制によるメリット・デメリット

 日本側の得たい目的、メリットは簡単です。「徴用工訴訟問題などの政治問題を、経済問題(経済制裁)を行うことで、解決したい」です。
 すでに韓国が、半導体材料を国内生産するという方向性にかじを切りました。韓国が折れるかどうか? は不透明です。
 むしろ、徹底抗戦の構えでしょう。

 韓国側のメリットは、国内で半導体産業がまかなえるかもしれない、という長期メリットです。
 「そんなバカな! 日本の技術の蓄積に、追いつけるわけがない!」と思うかもしれません。

 断言しますが、フッ化水素関連なら10年で100%追いつけます。森田化学工業株式会社のフッ化水素の特許取得は、2008年前後だそうです。
 特許の期間は20年。したがって2028年には、韓国がその気であれば可能です。

 韓国の「半導体材料国産化」を見くびれない理由 | 韓国・北朝鮮 | 東洋経済オンラインによれば、韓国政府は7年間で7000億円を、新たに半導体の研究開発費につぎ込むと発表しました。

 GDP比での研究開発費は日本0.5%、韓国1%です。
 政府負担割合は、四捨五入で日本15%、韓国24%となります。
参照:経産省より

 いかに日本が、技術開発に「力を入れていないか」が理解できます。そら、白物家電でも有機ELでもスマホでも、追い抜かれます。
 日本は「長年、蓄積した技術に追いつけるものか!」と強気ですが……それ、白物家電やスマホ等々で追い抜かれるまでにも、言ってましたよね? という話。
 現在の惨状を見れば、どちらの可能性が高いか? は理解可能です。

 また上記の記事では、韓国は1年以内に半導体材料3品目の、日本依存からの脱却を目指すとしています。

 可能でしょうか? 類例ではありますが、ロシアの例があります。クリミア問題で経済制裁されたロシアは、短期的には経済が混乱しました。
 しかしロシア経済の現状と展望というレポートによれば、国内産業の育成によって混乱はなくなり、むしろ強固な産業構造になったことが見て取れます。

 経済制裁されたのに、なにもしないでボーッとしている国家はないのです。

長期的には日本と韓国のどちらが有利になるか?

 日本の問題点を述べれば、誰が有利になるか? が明らかになるでしょう。結論からいえば、日韓が負けて、中国が勝つことになります。

  1. デフレによる、研究開発費の停滞や減少と技術競争力の凋落
  2. 企業による、技術者の冷遇
  3. 中韓からの技術者の引抜き

 最初にお断りします。「技術者の流出の最大原因」は「与えられる、相対的な待遇の悪さ」です。
 そこに「技術者が愛国でない」とか「Googleみたいな社内環境(真似るだけ)」という議論は関係ありません。

 デフレである限り、技術者を優遇しない限り、流出は止まりません。白物家電も、スマホもキャッチアップされました。
 では、韓国が有利なのか? こんな記事が出ています。

 日本の輸出管理だけじゃない! 韓国の半導体産業は「人材流出という問題にも直面」=中国 (2019年8月1日) – エキサイトニュース

 上記報道と韓国国家情報院によれば、韓国の技術者が中国に流出しているとのこと。中国はなんと「人材こそが最も重要な資源」と言っているそうです。
 またIT分野において、中国はすでに韓国と並んでいるそうです。

 経済成長著しい中国です。かなりの高待遇で、韓国や日本の技術者を引き抜いているようです。

 長期的に見れば、日本と韓国は両方負け。最後に笑うのは中国だと予想されます。――一番負けるのはどこかって? デフレの日本である可能性が高いでしょう。

問題の根本はデフレと人材の低待遇

 韓国への輸出規制・経済制裁は、私としては「どうでもいい問題」と捉えています。やっても、やらなくてもOK。

 中国は「人材こそ最も重要」といいました。これは、日本にこそ必要な認識です。
 デフレは企業の、研究開発意欲を削ぎます。研究開発費もコストです。
 また人件費も企業は極力、抑えようとします。

 こうして人材流出が起こるのです。デフレこそが、日本の技術力凋落の主因でしょう。こうして技術者などのノウハウが失われれば、日本の凋落はますます進みます。

 企業を見習わすには、政府からです。政府が積極財政をするしか「日本の凋落」を止める術はありません。

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Muse

>長期的に見れば、日本と韓国は両方負け。最後に笑うのは中国だと予想されます。――一番負けるのはどこかって? デフレの日本である可能性が高いでしょう。

どうやら、そうなる可能性が極めて高いと個人的にも思います。残念ながら。それから、今回のブログ記事の内容もまさしく正論ですが、と同時に、ここに描かれている内容程度は少なくとも政財官界のリーダーや知識人、文化人、メディア等のオピニオンリーダーと称される人間たちにとっては、本来ならば、常識レベルとして心得て欲しいところ。

ところが実際は、そんな常識の欠片もないというのが、ほとんどすべてのリーダー達だったといえます(逆に言えば、この30年間にわたるリーダー達の知的・精神的劣化が、日本にかくも無残な凋落を招いてきたと言える)。

ところで、リーダー達(広く言えば日本国民)の知的・精神的劣化をもたらした根本原因は何でしょうか?戦後日本人の最大の特性であるところの例の「思考停止と現実逃避」という心理的傾向でしょうか?それとももっと広く、戦後日本社会は西欧近代社会に普遍的にみられる高度大衆化の成れの果てだったということでしょうか?

Muse

確かに1980年代までは戦前生まれのリーダー達が健在でした。そして、戦後民主主義&平和主義教育にどっぷりと浸かった世代が政財官界のリーダーとなったのは1990年代。冷戦終結とバブル崩壊を経て日本が坂道を転げ落ちるように凋落していった時期と符合しています。

それから、戦後教育では古今東西の古典を読む機会がますますおろそかになっていきました。古典を読むと「過去の賢人の教えや経験を学ぶことによって、現在の歪みを軌道修正する」という効果があると言われています。古典を読む教育の貧弱ぶりなども戦後日本人(とりわけリーダー達)の知的・精神的劣化の要因になっていると思います。

黄昏のタロ

為替ですね。

日本から原材料を輸入して半導体を製造して採算が採れるのは為替のおかげです。
中国も同じくですね。

国が豊かになれば採算が採れなくなって舞台が移っていきます。
悪く言えば韓国は未だにそのレベルなんですね。

真の勝ち組は製造のノウハウを維持して製造装置・製造設備を売り続けられる事なのかなと思っています。研究の結果を製造に落とし込んで行くんですね。

研究者と同じ様に、こっちの技術者も流れちゃうんでしょうね。

黄昏のタロ

ごめんなさい。わかりにくかったです。

原材料を国内生産じゃなく、割高な日本からの輸入をしても採算がとれちゃうのは、部品や製品として輸出する時の為替ですよね。

…ですね。全部書き直すレベルかな。

通貨が安い国で作って輸出すれば安くなります。
製品でも部品でも安いと競争力が強いです。
国が豊かになって通貨が強く(高く)なったり人件費が上がれば、違う国に。

全く同じ物を作って海外の納入先の要求する価格で納める。
日本だと赤字。韓国ならまだ勝負出来る。
中国なら余裕がある。

まとめると『為替』になるのかなと。

黄昏のタロ

うまく説明出来てないですね。

製品と値段も説明しないとですね。

フェラーリやレクサスの世界。付加価値。
 ちゃんと作ればこの値段なんじゃ!嫌なら買うな!…の世界。

白物家電の世界。市場と価格。
 戦略的に高付加価値で高価なものを出す場合もありますが、買ってもらってなんぼですよね。
 買ってもらえる価格帯に収めなければいけないです。日本製の品質を維持しながら中国で製造したりで価格を抑えます。通貨が安く価格が抑えられ品質が維持できれば中国でなくても良いんです。
 世界の市場では、純粋な日本製品だと価格で勝負できないんですね。

部品の世界。要求される価格。
 組み立てて製品として売るわけです。完成品の値段から逆算して部品の値段がはじき出されます。その要求された値段と品質に応えられる企業が受注するのです。
 部品の規格は段階的に決まっています。
 日本勢が勝負するのは、より小型の規格と生産技術です。他国・他の企業より先に小型の製品を製造できる付加価値。量産して価格を抑える技術。でも限界があって利益を出すのが難しくなるです。
 人件費や通貨安(物価?)で、韓国や中国は優位なんです。

自動車の世界。隠れた技術。
 良い物を作る技術だけではないんです。品質を維持して大量生産する技術にも支えられてます。日本製製造装置を為替や関税もなく世界一安く買えるってのもあります。

 おいらは部品の世界で働かせてもらったです。すごく勉強になったです。値下げ交渉で仕事が過酷になって、正社員の打診を蹴って辞めたです。未来が見えなかったです。もったいなかったかな…。

阿吽

>朴槿恵政権倒閣の直接原因は、汚職です。

私の見立てでは、これは微妙に違うと思います・・。

朴槿恵政権は、日韓慰安婦合意を結んだことによって人気が凋落し・・、その結果、政権の汚職がごまかしがきかなくなって、最終的には倒閣した・・・かと思います。

逆に言えば、日韓慰安婦合意さえむすばなければ・・、セウォル号沈没事故、チェ・スンシル事件で多少のバッシングはあったとしても、さすがに、さすがに倒閣まではいかなかったのではないかと思います。(あの廬武鉉大統領ですら弾劾はまぬがれましたからね・・)

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ちなみに、最後の部分は賛同します。

ようは、どこまでいってもこの国の問題は、結局は財出しろというところにいきつくわけです・・。

(緊縮思想が全てを縮こまらせてるわけですから・・)

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ちなみに、韓国に対する輸出問題に関しましては、これは完全に韓国側のから騒ぎと聞きました。

そもそも規制ではないということで、90日かかると言われている輸出許可も、本来は最長で、というのがつくらしく、普通は30日ぐらいと聞きました。

ですんで、韓国の企業側からすれば・・、そろそろこの問題、から騒ぎと気づいてもいいころだというふうには、そういうふうにテレビで聞きました。

ただ、上記はテレビで元経産省の役人さんが、何か問題のあるようなものではないと説明されてたのを聞いてただけなので、明確にソースはだせません、すみません・・。

ただ、そのかたが言っていたこといわく、今回の韓国の騒ぎは『から騒ぎ』だそうです。

実際はほぼ、輸出に関して問題ないそうです。(そもそも台湾とかも、この制度でなんの問題もない)

ただ、大統領府が最初に過剰反応して、それを真に受けた国民が暴走して、さらに日本への強気姿勢というアピールで支持率回復を狙うムンジェイン大統領の思惑で(実際に文大統領の支持率は回復してる)、この問題は、日本の『輸出規制』問題ということに韓国でされて・・、大騒ぎになっているというだけの、そういう問題だそうです。

ほんとに、ほぼ、輸出規制でもなんでもないんだそうです。(ただ、チェックをしますよってなだけで。)(グループAから除外されたらチェック品目が1000品ぐらい増えると言うのも、実際はその中のほとんどは、日本と韓国の企業によって問題なく輸出されるようなもの・・みたいなふうに説明されてたと思います。たしか。)

その元役人さんと一緒にテレビに出てた人達も、皆さんその説明(輸出がそんなに滞るような問題では無い。韓国の企業がどうにかなるような問題では、実際には無い。と言う説明)で納得されていました。

(ただ、上記は、テレビで言ってたことを、私がふーんそうなんだ的な感覚で聞いていただけの話なので・・、そんな話もあるんかなぐらいの感覚で聞いて頂ければ幸いです。すみません。)

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