原子力巡航ミサイルとは?ロシアの新兵器ブレヴェスニクに迫る

 私はもともと、単なる歴史好きです。歴史も、超一般的な戦国時代や明治維新から、入ったクチです。
 歴史に軍事や経済、政治はつきもの。はては国際政治学も……と、手当たりしだいに吸収してきました。

 もちろんながら軍事も興味の範疇です。また原子力なども、その範疇に入ります。

 報道ではロシアの爆発、原子力巡航ミサイル実験か 周辺で一時放射線量上昇 – 毎日新聞という、驚くべき記事が出ています。

 原子力巡航ミサイルって……。名称だけで、非常に物騒なことこの上ありません。
 気になりましたので、調べてみました。

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原子力巡航ミサイルとはなに?物騒なんですけど……

 原子力巡航ミサイルという響きは、明らかに物騒です。なにせミサイルの推進力に、原子力を使用していると読み取れるからです。

原子力の推進エンジン開発の歴史

 過去にアメリカも、原子力巡航ミサイルに近いものを開発した形跡があります。
 原子力のラムジェットエンジンを、1958年から開発したようです。

 当時は冷戦下。米ソともに、原子力ラムジェットエンジン開発をしたようですが、アメリカは1964年に断念したようです。
 その原因は「原子炉による大型化」「放射線の問題」「乗員の被爆」「大気汚染」etc……。山積する問題が、解決できなかったからとされます。

 ソ連でも同様に、実用化には至りませんでした。
 米ソともに、原子力飛行機を想定して開発していたのだそうです。

放射線事故が、原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」と疑われる理由

 今回の爆発事故で、ロシアの原子力巡航ミサイルではないか? と疑われている原因は、いくつかあります。

  1. ロシアから詳細が発表されていないこと
  2. 発表どおりだとすると、放射線レベルが上がることはありえないこと

 端的にいえば、ロシアの発表は「液体燃料エンジンの事故」です。これだけなら、放射線レベルが上がることはあり得ません。
 「液体推進剤の為に開発された放射性同位元素」の事故、とも発表されていますが……要領を得ないとのこと。

 このことから専門家などは、原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」ではないか? との推測が流れているようです。
 もっとも、単なる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に、原子力電池を搭載していただけでは? という推測もあるようです。
 ただし……上記は前例がないので、考えにくいとのこと。

 ロシアの提示した原子力推進の核魚雷と核巡航ミサイルの意味(JSF) – 個人 – Yahoo!ニュースによれば、2018年時点でブレヴェスニクは「本当に開発してるの?」という段階だったようです。

 ネット上での「原子力巡航ミサイル・ブレヴェスニクは海に潜る」という情報は、上記記事のポセイドン(原子力推進の核魚雷)と混同しているのかもしれません。

原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」のスペックは?

 原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」の詳細は、じつは判明していません。カタログスペックが、公表されていないものと思われます。

 ブレヴェスニクとは、ロシア語で「ヒメウミツバメ」のことだそうです。ウミツバメは「海面すれすれで、小魚などを捕食する」とのこと。

 ネット上でブレヴェスニクは、海に潜るんじゃね? ともいわれています。本当かどうか? はわかりません。
 しかし名称から察するに、海面すれすれを巡航するのではないか? と思われます。
 仮に海に潜るとしたら、迎撃不可能な超兵器です。

 ……なんとも物騒なミサイルです。

 また、確度が高いと思われる情報として「巡航距離がほぼ無制限」だそうです。まあ、原子力ですしね。地球一周くらいは、余裕っぽい気がします。

 ブレヴェスニクの動画は、存在するようです。

 最初は固形燃料で上昇し、その後に原子力ジェットエンジンに切り替わるのだそうです。

原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」の軍事的インパクト

 原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」が実用されると、かなりの軍事的インパクトがあるのではないか? と思われます。

 そもそも巡航ミサイルは、海面近くを飛行するミサイルです。ブレヴェスニクの航続距離と原子力以外の特徴は、通常の巡航ミサイルでも備えているものです。

 巡航ミサイルの巡航距離は通常、500~2500kmほどです。この航続距離が「ほぼ無制限」になる意味は、かなりインパクトがあります。なぜか?

 巡航ミサイルは、レーダーで補足されにくい。また自律航行機能も備えています。
 先進国以外では、巡航ミサイルを補足、迎撃出来る国家のほうが少ないのです。
 とすれば、ブレヴェスニクが実用化されれば、ロシアは「世界中に精密攻撃が可能になる」かもしれないのです。

バランス・オブ・パワーは極東から崩れる

 現在、中露は蜜月です。これはアメリカの凋落によって、アメリカへの挑戦が可能になったからです。
 中露はもともと、アメリカによる秩序を嫌っています。秩序といえば聞こえがいいですが、従属になるからです。

 したがってロシアと中国は、結託してアメリカに対抗しようとするわけです。
 今回の放射線事故が、原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」だとすると、アメリカに対抗するロシアの意志が強いことの証明です。

 バランス・オブ・パワーという言葉を、聞いたことがありますか?
 国際平和は、平和主義や人道主義で保たれているわけではない。各地域や国家の軍事力・政治力・互いの牽制やバランスによって保たれている、とする概念です。

 現実の国際政治では、人道主義などよりバランス・オブ・パワーで、説明できることのほうが多いのです。

 極東において、1つだけ明らかに「バランスが欠如した国家」が存在します。日本です。
 21世紀に入り、自国通貨でロシア、中国はGDPが10倍前後に成長。韓国ですら、3倍弱に成長してます。
 一方日本は? 約1倍です。

 どう考えても、日本がバランスブレーカーになっています。

 極東のバランス・オブ・パワーは、日本が原因で崩れる可能性は高いでしょう。皮肉にも、日本の平和主義が、戦争の原因となり得るのです。

アインシュタインの予言した「第四次世界大戦」

 アインシュタインは「第三次世界大戦は、どのようなものになると思いますか?」とのインタビューに、こう答えました。
「第三次世界大戦についてはわかりませんが、第四次大戦ならわかります。石と棍棒でしょう」

これは、全面核戦争かあるいは(発言時点では)未知の新兵器による破滅的な第三次世界大戦を経たならば人類文明の崩壊は必至であり、その後はたとえ世界規模の大戦が起きても武器はもはや石と棍棒しかないだろう、という意味の「予言」というよりはアインシュタイン自身による皮肉を含んだ「警句」である。

アインシュタインの予言 – Wikipedia

 原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」も、人類に石と棍棒をもたらす1つかもしれません。

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軍事・国防・外交
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この記事を書いた人

「難しいこともわかりやすく」政治・経済コラムをメインに発信。
2019年まで16年間自営業→Webライターに転身。
日本で数少ない現代貨幣理論の論者(MMTer)。
左右や保守・革新にこだわらず「庶民(自分含む)のためになる政治経済情報」をブログで掲載。

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2 Comments
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Muse
5 年 前

毎年この時期になると、それこそ年中行事のように、先の大戦の悲惨さ”だけ”を情緒的に訴えるような皮相的なテレビ番組やらTwitter等のネット情報が目につきますね。

それから、中学高校とかで行われているいわゆる平和教育と言えば、これまた「先の大戦は本当に悲惨だった。だから、その体験を語り継いで平和の尊さを伝えていこう」云々のテンプレ内容そのもの。確かに、悲惨な戦争体験を語り継ぐことも重要ですが、問題は内容が”そのレベルの単純さ”に留まっていること。あまりケチをつけるのも気が引けますが、本当に辟易しますね。こんなことを70年以上も繰り返している。

自分から言わせれば、「先の大戦が起きた国内外の背景や原因、発端、そして、敗戦に至った経過等々について、それこそ喧々諤々の議論を戦わせて、その議論の中から、戦争を未然に防げる可能性はあったのか、あるいは、現在も続く冷徹な国際情勢を踏まえた上で、今後の戦争を未然に防ぐために日本の国家戦略はどうあるべきかといったことについての道筋を探っていく」。こういうのが真の平和教育だと思いますがね。

>現実の国際政治では、人道主義などよりバランス・オブ・パワーで、説明できることのほうが多いのです。

全くその通りで、こうした観点から戦争の原因とかを究明していくべきですが、いわゆる9条護憲のお花畑サヨクの連中も、米国べったりの親米似非ホシュの連中も、思考停止と現実逃避の真っ只中にいます。これでは断じて”爽快”な結末ではなく、”絶望と悲嘆”の結末がやってきます。

さらに言えば、近頃はようやく、反緊縮・反構造改革・反グローバリズムの潮流も生まれてきたようですが、伊藤貫さんが主張するような、勢力均衡(バランス・オブ・パワー)のリアリズムの観点から外交戦略・軍事戦略を含む国家戦略を打ち立てていこうという潮流は皆無に近いのではないか?もっとも、もはや遅きに失したといえなくもないですが。