消費税10%増税の2019年-駆け込み需要が起きない理由とは?

 報道によると、2019年の消費税増税を目の前に「駆け込み需要」が起きていないとのこと。
 政府は「駆け込み需要が起きてないので、消費税増税後のショックも少ない!」と胸を張ります。

 本当でしょうか? 少し考えれば、大間違いと理解できます。

 1997年、2014年と消費税増税のたびに、駆け込み需要は起きました。なぜ今回、起きないのか? 駆け込み需要とは?
 経済指標から分析し、なぜ今回は駆け込み需要が起きていないのか? を解説します。
 「2019年の消費税増税10%のヤバさ」は「半端ない」ことを、ご理解いただけると思います。

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消費税10%増税まであと2ヶ月-2019年10月に増税の見通し

 消費税10%への増税は、2019年10月1日から施行される見通しです。現在が8月6日ですので、あと2ヶ月弱です。

 いまだに「安倍政権は、消費税増税を延期するのでは?」との観測もあります。これは希望的観測というべきでしょう。
 7月の参院選でも自民党は、消費税増税を公約に入れていたからです。
 また、軽減税率も国会で可決されています。

 参院選で野党が勝利していれば、延期や凍結の目もあったかも知れませんが……。

駆け込み需要とは?

 駆け込み需要とは何でしょう? 簡単にいえば「増税前に、欲しい物を買っておくこと」です。
 例えばたばこ税の増税前に、タバコをカートン買いするのも、駆け込み需要になります。

 消費税の場合、特に高額商品の駆け込み需要が多いようです。住宅や自動車、高級宝飾品などが主な対象となります。

 消費税増税は1997年、2014年でした。
 どちらも増税直前に駆け込み需要が発生し、増税直後には反動が来ています。

 1997年の3月の駆け込み需要が少ないのは、1~2月にすでに駆け込み需要があったからでしょう。

 2014年の、特に自動車の駆け込み需要は顕著だったそうです。前年比で2~3割弱も、売上が上がったそうです。

消費税増税2019は駆け込み需要が起きてない?

 10月には消費税が、10%へと増税予定です。ところが今回、駆け込み需要が起きていないとの報道が相次いでいます。
参照:消費増税2カ月前、担当者は言い切った「駆け込みない」:朝日新聞デジタル

 どうしてでしょうか? 軽減税率に自動車や、住宅などは含まれません。食品類だけです。
 1997年の「いまいち盛り上がりに欠ける、駆け込み需要」より、さらに低いのです。

 安倍総理は駆け込み需要はが少ないことをあげ、以下のように発言したようです。
(現時点で)駆け込み需要がないということは、落ち込みも少ないのではないか
参照:安倍首相「リーマン級発生せず」=消費税増税、予定通り:時事ドットコム

 一言、感想を。「そんな訳はないバカタレ

駆け込み需要が起きない理由は実質賃金の下落と貧困化

 6月実質賃金は前年比0.5%減、物価高止まり響く=毎月勤労統計 – ロイターによれば、2019年の1月~6月の実質賃金は「すべての月で、マイナス(!!)」だそうです。

 どういうことか? 端的にいえば、「2018年よりさらに、国民が貧乏になった」のです。

 ちなみに、2012年と比べると2018年は、5%ほどの実質賃金マイナスになっています。
 2012年に年収400万円だった人は、2018年には20万円ほどのマイナスとなる計算です。
※実質賃金なので、買えるものが20万円すくなると考えてください。

 ……ちなみに、【実質賃金】推移を図解|ニッポンの数字で実質賃金の2019年1月~6月のマイナスを、足し算してみると……6.5%マイナス!!
 年率換算で6.5%/6ヶ月でおおよそ、1.1%マイナスになる計算です。

 2012年と比較すると、現在は6%ほどの実質賃金マイナスとなります。年収400万円の人だと、年に24万円。2万円/月ほどマイナスという計算です。

 端的にいえば「買えるパンが、少なくなった」です。

 国民が貧困化しているのに、自動車や住宅などの駆け込み需要が大きくなるはずがありません。
 単純に考えて「国民に、大きな買い物をする余力がない」ことを示しています。

駆け込み需要が起きない今回の、消費税増税の結末の予測

 おそらく、消費税増税後に個人消費は低迷します。また、外食産業なども低迷するでしょう。
 消費税増税への対策1位は「自炊・内食」、20代・30代女性を中心に「節約」と「稼ぐ」意識が高まる:MONEYzineでは「増税されたらどうするか?」の1位と2位は、以下のようなもの。

  1. 自炊をする。外食は控える
  2. お金のかからない、暇つぶしをする(趣味ですらない)

 これで消費税増税後も、需要が落ちないと思うほうがおかしい。

 1997年、2014年の消費税増税のショックは、2008年のリーマン・ショックと同等か、もしくはそれ以上でした。
 今回もそうなる可能性は、高いでしょう。

 京大の藤井聡教授が警鐘 消費増税の影響はリーマンショック70個分 – ライブドアニュースによれば、1997年から「消費税増税のせいで消えた需要」は6500兆円だそうです。
 この試算が正しいとすれば、1997年から現在の「日本国民の所得」が数千兆円単位で「消えた」ことと同様です。

 では2019年10月の、10%への消費税増税は何をもたらすか?

  1. 耐久消費財の需要の低迷
  2. 外食産業の需要低迷
  3. 税の顕著性(わかりやすい税率)による、個人消費の低迷
  4. 需要縮小による、企業の設備投資の減少
  5. 消費税の永続効果による、日本経済の凋落

 実質賃金は当然下落しますし、国民の貧困化は避けられません。特に2020年以降の日本経済は、凋落の一途をたどるでしょう。
 デフレも、脱却どころか加速が懸念されます。

 安倍総理は「戦後で一番、国民を貧困化した総理」として、名を残すかも知れません。
※最悪と思えるうちは、最悪ではないそうです。つまり、安倍総理以上の「国民貧困化総理」が出てくる可能性もあります。

 とはいえ……参院選の結果を見る限り、与党は勝利しています。これは「国民自身が、貧困化を望んでいる」のでしょう。
 日本が先進国から転げ落ちる日も、そう遠くないのかも知れません。

おまけ 消費税反対なのに、自民党に入れる国民の心理

 消費増税の影響「不安感じる」75% 朝日新聞世論調査などで報じられる通り、世論調査では消費税反対が過半数以上です。
 ところが、安倍政権の支持率や参院選を見ても、与党が勝利。安倍政権の支持率も安定。

 様々な解釈があり得るでしょう。「経済政策以外で期待している」「政治と生活の乖離」「政治不信」「野党不信」etc……。

 私の解釈は「思考停止と現実逃避」です。「活力の低下」ともいえます。
 もっとわかりやすい言葉でいえば「視野狭窄」でしょうか。

 視野狭窄の行き着く先はどこか? 大抵は破滅的な結末です。

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2 Comments
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Muse
4 年 前

>単純に考えて「国民に、大きな買い物をする余力がない」ことを示しています。

仰る通りであり、逆にそれ以外の理由など全く考えられません。相当ヤバイ。別の意味でそれと同じくらいヤバイのが、

「(現時点で)駆け込み需要がないということは、落ち込みも少ないのではないか」

という呆れ果てた妄言を時の総理大臣が臆面もなく発言していること。そしてさらにヤバイのがこのアホ発言に対して国民から非難の大合唱が起こるどころか、少なくとも表面的には無反応であることなどです。

>私の解釈は「思考停止と現実逃避」です。「活力の低下」ともいえます。
もっとわかりやすい言葉でいえば「視野狭窄」でしょうか。

大東亜戦争の総括も何ら行うことなく、”戦後平和主義”というお花畑の住人として過去70年以上も生きてきた戦後日本人の成れの果てとでもいいますか?しかも、少子高齢化と国民総貧困化による「活力の低下」はさらに深刻ですね。方向性が完全に間違っていたとはいえ、左翼や新左翼による60年・70年の安保闘争や60年代末の学生運動のような、反権力的活動を行う気力はもう完全に失ってしまったのか?

このまま行けば、「日本国民は自らの怠慢によって座して死を待つごとき愚民の群れにほかならなかった」と後世、世界中の人間から憐れみと嘲笑の対象となることでしょう。とてもじゃないが”爽快”な気分にはなれませんね。