上級国民しか結婚できない時代-年金2000万円問題・少子化・消費税

 ネットスラングに「上級国民」というものがあります。昔の「ブルジョワ」と一緒です。逆に「下級国民」という言葉も、対になってます。
 このネットスラングが、冗談じゃなくなりそうな時代が来てます。

 結論だけいえば、下級国民が結婚しにくい時代です。
 安倍政権の年金2000万円問題、少子化、そして消費税増税がキーワードになります。「言っていることと、やっていることがチグハグ」なのです。

 このままでは格差により、国民間の断絶が発生するでしょう。EUと同じような状況に陥ります。
 またダブルバインドという心理学的現象により、国民は深刻なトラウマを植え付けられるかも知れません。

スポンサーリンク

老後には持ち出しで、年金以外に2000万円の貯蓄が必要らしい

 年金問題「老後に2000万円必要」の不都合な真実 | 加谷珪一 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイトなどで報じられていますが、どうやら老後には2000万円の貯蓄が必要だそうです。

 ただしこの問題、現代貨幣理論(MMT)を通せば「デフレ問題」なります。
 政府が老後を保証しない、となればどうするか? 多くの人が「貯蓄して備えなきゃ」となります。

 貯蓄する=消費しない=需要減は明らか。ほら、デフレ問題でしょ? しかも「貯蓄ができないギリギリ世帯」もたくさんいるそうです。

 働けなくなった後に、政府が生活を保証してくれるかどうか? してくれないなら”自己責任”で貯蓄しないといけません。
 1年間に100万円を貯蓄したとして、20年間。
 平成の30年で上昇「貯蓄ゼロ世帯」23%の危うさ | 人生100年時代のライフ&マネー | 渡辺精一 | 毎日新聞「経済プレミア」によれば、なんと4世帯に1世帯が「貯蓄ゼロ」です。

 単身世帯では50%近くが、貯蓄ゼロだそうです。
参照:一人暮らしの平均貯蓄額は822万円だが、中央値はなんと20万円のみ!実に48.1%の単身世帯が貯金ゼロという状況のようです。 – クレジットカードの読みもの

 そりゃあ「老後に2000万円必要だ!」なんていわれたら、反応するでしょう。

子供を育てるのに1人2400万円だそうです

 政府は「少子化をなんとかしないと!」といいます。子育ての費用って、2400万円~3000万円かかるそうです。
参照:子ども1人にかかる費用は3000万円って本当? [結婚のお金] All About

 さて……年金をもらっても2000万円は持ち出し。しかも貯蓄ゼロ世帯は多い。そのうえ子育て? 物理的に無理です。
 では何を諦めるでしょう? 答えは簡単で「結婚を、低所得層は諦める」でしょう。

 下級国民の、結婚しにくい時代の到来です。
 だってデフレで、実質賃金は増えてないのですから。名目賃金も、増えてません。

 一応まだ先進国の日本において、大学に子供を行かせないのは「ハンデ」にしかなりません。稼げないデフレ国家日本で、下級国民に位置する我々は「結婚と子供か、老後かを諦めねばならない」というのが現状です。

消費税増税でさらに下級国民の可処分所得を削るそうです

 消費税増税は、私はほぼ決定していると解釈してます。
 消費税とは「消費するたびに、罰金を取られる」ことです。

 では消費税の使いみちは何でしょう? 政府がいうように、社会福祉に回してくれるのでしょうか? 社会福祉に回すのは、嘘でした。
参照:借金返済が8割の「消費税の使途」 | ニュース | 税務会計経営情報サイト TabisLand

 政府広報では、ポスターまで使って「消費税増税分は”全額”、社会福祉のためです!」といってましたが、嘘です。

 消費税には、逆累進性があります。上級国民ほど軽税に、下級国民ほど重税になります。
 なぜって? 下級国民のほうが、消費税高が高い=貯蓄に回せる金額が少ないからです。

 具体的に計算してみましょう。

  1. 年収1000万円の人
  2. 年収200万円の人

 どちらも単身世帯として、計算します。
 年収400万円なら、単身世帯としてはかなり豊かに生活できます。したがって、年収1000万の人は、500万円しか消費しないと仮定します。税率は計算しやすいよう、10%と仮定します。

年収1000万円の人の、所得への消費税率

 消費が455万円。消費税が45万円。所得が1000万円なので、可処分所得にかかる消費税率は4.6%。残り500万円は、消費しないで”貯蓄”する。

年収200万円の人の、所得への消費税率

 消費はほぼ100%の182万円。消費税は18万円。所得が200万円で、可処分所得にかかる消費税率は10%。貯蓄ゼロで、貯蓄できない。

 下級国民のほうが、所得に対する税率が重くなるのが消費税です。上級国民ほど、軽税なのです。
 なんだか、奴隷に対する扱いと似てますね?

下流国民は結婚を諦める時代か?上級国民しか結婚は許されないのか?

 実質賃金は下がる。名目賃金すら停滞。そしてデフレ。

 子育てに2000~3000万円。老後にさらに、年金が当てに出来ず2000万円。しかも低所得層に厳しい、消費税増税。
 これって、下流国民を殺しに来てますよね?
 下流国民の選択肢は「結婚しない」か「自分の老後をなくす」ですもん。首が回りません。

 どうすればこの問題は、解決できるのか? 積極財政、財政拡大以外の解決方法は存在しません。緊縮財政の安倍政権では、不可能です。
 下級国民が”自己責任”で解決しろって? 絶対に無理です。マクロ経済の話ですから。

 格差社会といわれて久しいですが、本当の格差社会が到来してます。すでに。あなたは「俺はこれからだ、所得をガンガン上げる!」と自信を持っていえますか?
 若い人はともかくとして。若い人でも、諦観を抱いている人が多いと私は感じます。

 格差は固定します。今の収入で、子供を私学に通わせられますか? そう、教育にもお金が必要なのです。
 残念ながら、爪に火を灯したところで「所得以上のお金は使えない」のです。
 つまり、子供にまで格差は「伝播」します。「教育格差」として。

 解決策は「積極財政による、デフレ脱却」しかありえません。

いってることと、やってることが違う安倍政権とダブルバインド

 結婚を諦める人たちが多くいたら、少子化になるでしょう。ただでさえデフレなのに、緊縮財政では所得が得られない=結婚を諦めざるを得ないとなります。
 その上、消費税増税。

 少子化対策。政府がよくいう言葉ですが、解決されたことはありません。社会福祉の充実も、消費税増税分を国債返済に当てていたので嘘でした。
 安倍政権はその上、国債発行を5兆円ほど削っています。

 表面上では「経済成長!」「デフレ脱却!」と音頭を取りながらです。
 なぜこのように矛盾するか? プライマリーバランス目標が第一で、国民の生活なんぞ知ったこっちゃないからです。

 このような嘘つき政権にさらされて、国民の心理状態はどうなるか? ダブルバインドによる、トラウマを受ける可能性があります。
 簡単にいえば、国家のパワハラです。

 ダブルバインドとは | ビジネス・心理学用語集:意味・解説など | ビジネス心理学によれば、ダブルバインドとはこうです。

ダブルバインドとは、日本語訳で「二重拘束」という意味です。 二つの矛盾した命令をすることで、相手の精神にストレスがかかるコミュニケーションの状態です。

 少子化をなんとかしないと! といいながら、緊縮財政で国民貧困化。
 デフレ脱却しないと! といいながら、プライマリーバランス重視でデフレ推進。

 ちなみにダブルバインド – Wikipediaによれば、この症状は安倍政権支持者にも当てはまるように思えます。

  1. 言葉に表されていない意味にばかり偏執する(妄想型)
  2. 言葉の文字通りの意味にしか反応しなくなる(破瓜型:はかがた)
  3. コミュニケーションそのものから逃避する(緊張型)

 つまりダブルバインドとは安倍政権でいえば、「少子化を気にしながら、一方で緊縮財政を受け入れる」という人たちを生み出すわけです。
 彼ら自身は上記が矛盾していることに、気がつけない。というより、その矛盾を受け入れて世界観を構築し、矛盾したフィルターで現実を解釈しようとするようになるのです。

 矛盾を指摘しても、無駄なことが多いようです。世界観、認識枠組みが「歪んでいる」のですから。
 とすれば、矛盾を指摘するグループと、矛盾を受け入れるグループで「現実認識の断絶」が発生します。

 こうして、国民&共同体への断絶が生まれていくのです。

申し込む
通知する

2 Comments
一番古い
最新 投票が多い
インラインフィードバック
すべてのコメントを表示
Muse
5 年 前

かつての一億総中流時代とは真逆の超格差&分断社会の到来。(民主党政権時代も含めた)過去20年以上にわたる日本政府の根本政策の致命的失敗(緊縮財政と構造改革)とりわけ、7年間にわたる(庶民にとっては)”生き地獄”にも等しい安倍政権の極悪政策が元凶です。

それにもかかわらず、日経世論調査によると、内閣支持率はいまだに56%もある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46780410Q9A630C1MM8000/

この統計データがどこまで信用できるかどうかわかりませんが、それにしても、上級国民だけでなく、かなりの数の下流国民(B層と呼ぶべきか)がいまだに安倍政権を支持し続けているという呆れ果てた実態。

マクロ的(つまり日本社会全体の次元)に見れば、反緊縮財政・反構造改革・反グローバリズムの政策集団ないし政党が国民世論の支持を集めて政権を奪取するしか道はありません。

そして、ミクロ的(つまり個人生活の次元)に見れば、

>政府が老後を保証しない、となればどうするか? 多くの人が「貯蓄して備えなきゃ」となります。
>働けなくなった後に、政府が生活を保証してくれるかどうか? してくれないなら”自己責任”で貯蓄しないといけません。

しかない。

そして低所得の下流国民にとっての究極の選択は、
>「結婚と子供か、老後かを諦めねばならない」というのが現状です。

ということ。

ちなみに自分(月給25~30万の低所得)の場合ですが、前者はとっくに諦めました。その代わり、後者は少なくとも経済的には安泰です。現在50代後半ですが、借金なしの金融資産だけで9600万以上あります。前者を完全にあきらめたことの代償です。