日本とヨーロッパの消費税と経済比較-経済指標からわかる日本の経世殺民

 よく消費税議論で「ヨーロッパは20%以上だ! でも大丈夫じゃないか!」という主張が聞かれます。つまり「日本の消費税は、まだまだ足りない!」というわけです。
 結論からいえば、上記の主張はおバカさんの戯言です。

 主要な経済指標、政府支出などを比較すれば明確です。
 本稿ではヨーロッパなどとの経済指標を比較します。また比較していくなかで、いかに日本から国家運営のプラグマティズムとクライテリオンが蒸発しているか? が明確になるでしょう。

 日本がいかに、経世殺民なのか? 世を治め、民を殺すのか? を明らかにします。

スポンサーリンク

世界各国の消費税率比較

引用元:国税庁

 まず確認ですが、ヨーロッパは消費税率が高めです。ちなみに……なぜアメリカが入っていないか? アメリカには消費税は存在しません。

 よく言われるように世界的に「消費税を増税しても、直後にはダメージがあるが、その後に緩やかに消費は持ち直していく」という傾向は確かに存在します。
 しかしこれは「消費税が100%再分配に使われた場合」「ないし、消費税増税分を補う政府支出があった場合」の話です。

 論より証拠。データを見ていきましょう。

世界の公共事業費の推移と日本の異常さ

 世界的には公共事業費は伸びています。1996年-2012年比較で1.5~2倍程度です。少なくとも、減らしている国はありません。日本以外は、ですが。

 日本は公共事業費を半減させました。

 日本ではまことしやかに「働き方改革で、生産性向上だ!」といわれます。少し常識で考えてください。道路などのインフラがないところで、生産性向上は可能ですか?

 こういうと「日本にはすでに、たくさんの道路があるから不要なんだ!」とデータも見ずに反論されます。比較してみましょう。

 スカスカですやん。日本は「インフラ後進国」なのが事実です。
 インフラ後進国なのに、公共事業たたきで公共事業費を削減してきました。その結果が失われた20年です。

 インフラという土台がなければ、働き方改革などやったところで無意味です。

賃金の伸び率の国際比較に唖然とする

 上記は1995年-2009年までの、賃金の伸び率の比較です。
 十数年でEUは1.5倍ほどに伸びてます。日本は……むしろ下がってますね。

 ヨーロッパが高い消費税率でやっていけるのは、賃金が伸びているから=需要が伸びているからにほかなりません。
 日本のように、デフレ=需要不足=政府の支出過少=公共事業の削減で、消費税増税なんてやっている異常な国家はないんじゃないでしょうか?

 はっきり申し上げますが、日本の経済政策って相当に「頭がおかしい、狂ってる」のです。びっくりすることに、狂ってる経済政策を報道も、国民も肯定してます。
 いやはや……。

日本の消費税は再分配されないという「事実」

 なぜヨーロッパは、高い消費税率で経済成長するのか? 賃金が上がるのか? 1つは政府支出を伸ばしてきたからです。
 政府支出を伸ばすと、以下のようになります。

  1. 政府支出を伸ばす=需要創出
  2. デフレにならない=インフレでGDP拡大=賃金上昇=民間需要の拡大
  3. インフレが自律的に循環する=マイルドなインフレスパイラル
  4. 政府支出を拡大しなくても、民間経済が拡大していく
  5. 結果的に、GDP比での国債発行額は少なめに抑えられる

 日本の場合は逆です。

  1. 政府支出をカットして、公共事業は半減=需要削減
  2. デフレになる=デフレでGDP停滞=賃金下落=民間需要の停滞や減少
  3. デフレが自律的に循環する=デフレスパイラル
  4. 政府支出を拡大しないと、民間経済は停滞・縮小する
  5. 結果的に、GDP比での国債発行額が多くなる

 思い切って1.の政府支出の拡大をドーンとやるしか、解決策はありません。しかし……そんななかで、じつは5%→8%への消費税増税分は、再分配されてませんでした。
参照:前回の消費増税分は8割が借金の返済ー「増税分は全額社会保障に使います」のウソとこれからの増税議論ー

 消費税を社会保障に使う! というのは、真っ赤な嘘でした。

 ならば誰が8%→10%への消費税増税が、社会保障に使われると明言できますか? そんな保証はどこにもないのです。

経世殺民な日本の経済政策は、国民の人権軽視だ

 経世済民とは「世を治め、民を救う」という意味だそうです。今の日本は「世を治め、民を殺す」方向ではないですか?
 実際に1998年の消費税増税の翌年からデフレに陥り、その途端に自殺者が1万人増えました。

 上記のグラフも、なかなかに示唆に富んでいます。
 デフレに陥り自殺者が増え、リーマン・ショックの直後に「自殺者が減少し始めた」のです。

 私の解釈で申し上げればこうです。「なんだ、世界も貧乏なんだ。俺とそんなに変わらないじゃん」です。開き直れた、といっても良いでしょう。
 「みんな貧乏だから、俺も貧乏でも気にしない」理論です。貧乏に慣らされた、ともいえます。

 それでも1998年から2009年まで、10万人以上の自殺者増加です。政府の経済政策が殺した、と見て間違いありません。

 自殺の原因は「健康問題」「経済問題」が1位と2位です。健康問題の中には「経済不安からの鬱」も含まれます。
参照:原因・動機別の自殺者数の推移(厚労省)

最低限文化的な生活という人権はどこに?

 憲法では「最低限文化的な生活を保証しないといけない」と決まっています。生存権です。国家は古今東西「民を食わせていくこと」が求められます。

 日本の経済政策は、賃金を抑制し、公共事業を削減し、GDPを停滞させてデフレです。安倍政権で伸びたGDPなんて、1997年に比して”わずか”15兆円程度です。
※1997年534兆円、2018年549兆円。日本のGDPの推移 – 世界経済のネタ帳より
※上記によると、GDPのトレンド転換も2010年からです。

 簡潔にいえば、日本政府は消費税でお金を巻き上げ、公共事業や社会保障の抑制でやるべき責任を放棄し続けたといえます。
 「国民の生活より、自国通貨建て国債の償還という数字」が大事だったのです。

 人権や国民より、自分で発行できる数字を重視したのです。こう考えると、日本に人権なんてあるのか? 人権思想は根付いているのか? と疑問に思います。

 なにせ日本は「経世殺民国家」なのですから。

申し込む
通知する

4 Comments
一番古い
最新 投票が多い
インラインフィードバック
すべてのコメントを表示
プロフェッサーカオス
5 年 前

>自殺の原因は「健康問題」「経済問題」が1位と2位です。健康問題の中には「経済不安からの鬱

この注訳はすごく大事なことだ
この注訳を入れない自殺率の年度別統計は最近安倍政権で流行の統計詐欺みたいなもんだ
数値はすべてを表しているなんて大嘘だな

経済不安からの将来不安からの鬱による自殺の数値も本当は知りたいところ
大半がこれだったりしてw

ドイツの道路すさまじいな・・

プロフェッサーカオス
Reply to  高橋 聡
5 年 前

やんのブログはいいねwたまに変なのがコメに湧いてイラつく事もあるようだがw
あと銀河英雄伝初めて見たw面白かったw最初はアニメで、次は漫画。キルヒアイス死んでるじゃんw
ヤンは俺の好きな韓信にも似ている、韓信も軍事以外駄目な子だ

あと今後突っ込まれそうなところ
これは自分のブログに書こうとも思った事だがw

価値観のグローバル化は言うほど、問題ない
日本人特有の価値観や文化が破壊される
とは考えず、日本特有の腐った価値観・文化を更新される意義のほうが大きい
まあ弊害も有ると思うが・・・、腐ってない文化や価値観も破壊される事もあるし

しかしグローバル化がゆえに、ドイツの道路の現状・他国の社会保障や、様々の分野の国際比較などと見比べる事が出来る面もある

問題のあるグローバル化とは、産業を破壊してしまうグローバル化だ。もちろん、グローバル化批判と言えばこれの事で ヤンもこれを主としていると思うが
産業が破壊されてしまうと、核となる日本人の生活に直結する。
もちろんいい意味で日本の腐った産業構造を破壊してくれるなら歓迎だがw
そういうふうにはなってないw

経済問題に関連する事で病んでいると見るのが、バブル崩壊以降自殺が増えたことからも妥当
ただ、自殺はバブル前から多めではあった。世界の上位ではあったと思う
まあバブル崩壊による経済崩壊で日本の隠させていた問題が吹き出したから
貧乏になったことで、隠れていたものが露見した形になったのがバブル崩壊でもあるから
元々、古き良き三丁目の夕日的な時代にも自殺要因となる不幸要因が多かった国だったんだろう

Muse
5 年 前

>日本政府は消費税でお金を巻き上げ、公共事業や社会保障の抑制でやるべき責任を放棄し続けたといえます。
>こう考えると、日本に人権なんてあるのか? 人権思想は根付いているのか? と疑問に思います。

まさしく仰る通りで、これまで20年以上続いた”経世殺民”政治が今後もさらに続くことになれば、国力全体の低下と国民生活の窮乏化(と経済格差の更なる拡大)はさらに進み、また、事実上の移民激増がもたらす地域社会における軋轢と治安の悪化と相俟って、日本は没落の一途を辿るでしょう。

近頃しきりに話題となっている年金問題一つとってみても、今後数十年の間に年金制度の”事実上の破綻”(つまり形の上では年金制度は続いても支給額が今の国民年金?並みの雀の涙の金額しかもらえない)をきたす可能性極めて大です。また、いまやすっかりテンプレ化したフレーズ=”老後資金2000万円必要”云々にしても、これはあくまでも今の高齢者夫婦のモデルケース(つまり夫が正規雇用で定年まで勤め上げた上で相応の額の厚生年金を貰い続けた場合)での話。

もし、これが雀の涙の年金しか貰えない自営業者や非正規雇用やフリーターだったとしたら?老後資金2000万円はおろか3000万円でも足りるかどうか?ちなみに自営業者のヤンさんは60歳までに3000万円以上の金融資産を貯められますでしょうか?