今年3月14日より、三橋貴明さんが現代貨幣理論(MMT)について「三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ」で言及し始めました。
多くの三橋読者および、MMTerが「ようやくかっ!」と思ったのではないでしょうか?
私も三橋貴明さんのブログを、2009年辺りから10年ほど愛読してます。なぜ三橋貴明さんがMMTを、突如解説し始めたのか? 現代貨幣理論(MMT)と、従来の三橋理論の親和性・共通性について解説します。
後半では一部の「MMTはビジネス」批判について、「バカバカしい」ということを扱います。
2019年3月14日より、三橋貴明さんブログにMMTが登場し始める
三橋貴明さんブログに現代貨幣理論(MMT)が初登場するのは、現代金融理論(MMT) | 三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ(2019.3.14)です。
中野剛志さんの著作「富国と強兵」(2016.12.9)が、日本で初めて現代貨幣理論(MMT)を論じた書籍となります。
私事ながら「富国と強兵」を読了し、私も現代貨幣理論(MMT)に興味を持ったことを覚えています。
なぜ2019年3月になってから、突如として三橋貴明さんは現代貨幣理論(MMT)に言及し始めたのか。
前々から三橋貴明さんは「完全に理解しないと、書かない」といってました。ブロガーとして、ないし言論人として共感できるし、大事なことです。
2019年3月に現代貨幣理論(MMT)に言及し始めたのは、単に「完全に理解したから」でしょう。
三橋貴明さん2019年3月以降も、精力的に現代貨幣理論(MMT)を発信してます。これは「従来の三橋理論と現代貨幣理論(MMT)が、ほぼ共通のものだった」ことを示します。
なぜ現代貨幣理論(MMT)と三橋理論の親和性が高いか
なぜ現代貨幣理論(MMT)と三橋理論の親和性が高いか? 共通しているのか?
理由は非常に簡単です。「現実経済を考察して、そこから理論が導き出されているから」にほかなりません。
事実として、三橋理論は現代貨幣理論(MMT)の表現に変換できます。簡単なものだけ、例に上げます。
- 「誰かの資産=誰かの負債」=「信用貨幣論(貨幣=負債)」です。
- 「デフレ下で需要創出・財政拡大」=「市場に貨幣を供給する(貨幣量を増やす)」と一緒です。
- 「日本に財政問題は存在しない」=「内生的貨幣供給説・貨幣国定説→租税貨幣論」です。
前者が三橋理論、後者が現代貨幣理論(MMT)の表現です。
現代貨幣理論(MMT)は体系化された理論だ
従来の三橋理論ではダメだったのでしょうか? 簡潔にいえば、ダメということはありませんが「現代貨幣理論(MMT)のほうが、より広い範囲を体系化した理論」なのです。
三橋理論では、貨幣について語られませんでした。この事実1つとっても、現代貨幣理論(MMT)のカバー範囲の広さが理解できます。
理論とはそもそも何か?
個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系。また、実践に対応する純粋な論理的知識。「理論を組み立てる」「理論どおりにはいかない」
理論(リロン)とは – コトバンク
理論とは、矛盾の少ない認識枠組みです。矛盾とは「現実との矛盾が少ない」ということです。
上記の点では、従来の三橋理論は理にかなってます。
「統一的に説明ができる」も重要な点です。なぜなら、Aという事柄が説明できても、関連するBという事柄をが説明できねば矛盾が生じます。
この点で、現代貨幣理論(MMT)は三橋理論より、広くカバー(貨幣について)してました。
理論が統一的・包括的でなければならないわけ
ややこしいことは理論 – Wikipediaを参照ください。
例を出して解説します。
グローバリズムは正しいか、間違っているか? が最終命題だとします。「グローバリズムは正しい」が主流派経済学、「グローバリズムは間違っている」が現代貨幣理論(MMT)になります。
なぜそうなるか? 主流派経済学の貨幣観は、外生的貨幣供給説(商品貨幣論)。現代貨幣理論(MMT)は内生的貨幣供給説(信用貨幣論)だからです。
外生的貨幣供給説(市中銀行の又貸し理論)の立場でありながら、グローバリズムは間違っていると主張するのは「理論的に矛盾が生じる」のです。
逆にいえば「外生的貨幣供給説を支持すれば、グローバリズムは正しい」としか帰結しません。
やや難しい例題になってしまいました。もう少し簡単に、別のもので例えます。
一般的な肉じゃがを作ることにします。「じゃがいもは煮る、茹でる、焼く、揚げる」のどれが正解か? 煮るですよね。
肉じゃがという認識枠組みでは、じゃがいもは「煮るもの」です。
揚げると、肉じゃがという最終結論にはたどり着けません。
先程の例では「反グローバリズムという料理は、内生的貨幣供給説という料理法でしか作れない」のです。
「反グローバリズム(肉じゃが)だけど、外生的貨幣供給説(じゃがいもは揚げる)」が成り立たないのは、このためです。
どうでしょう? 「理論が統一的・包括的でなければならない」というイメージがわきましたか?
端的にいえば「市中銀行又貸し理論」は、外生的貨幣供給説です。じゃがいもを揚げて、肉じゃがは作れません。又貸し理論では、反グローバリズムに帰結しないのです。
その証拠にケインズも、ラーナーも、クナップも現代貨幣理論(MMT)も、三橋貴明さんも「内生的貨幣供給説(信用貨幣論)」の立場です。
逆に主流派経済学やリフレ派は、外生的貨幣供給説(商品貨幣論)です。
「ジャンル分け」「思想潮流」「筋道」がない議論は、理論的ではありません。なぜなら、肉じゃがの議論をしているときに、「じゃがいもは揚げたほうが美味しい」というようなものだからです。
三橋貴明さんは、現代貨幣理論(MMT)が「統一的・包括的理論である」から受け入れたのでしょう。
一部で出てきた三橋貴明さん批判「MMTビジネス論」のバカバカしさ
現代貨幣理論(MMT)批判としては、主流派経済学やリフレ派の「(ハイパー)インフレになる論」がメジャーです。
この批判には現代貨幣理論(MMT)批判の「インフレになる」はいろいろ間違いで反論してます。
ドマイナーな批判としては「MMTビジネス論」があります。
概要はこうです。
- ケルトン教授日本招聘プロジェクトで寄付を呼びかけた
- 三橋貴明さんが呼びかけたゲルトン教授のシンポジウムの寄付に、2100万円集まった!
- 中野剛志さんが経産省の課長になったのは、MMTを礼賛したからかも知れない
- MMTをビジネスにしている!
- MMTは怪しい!
バカバカしい主張です。上記ブロジェクトでは「ケルトン教授の招聘に下手したら1000万円かかる」と書いてあるでしょうに。
仮にビジネスだったとしても、「現代貨幣理論(MMT)が間違っている証明」にならないのも自明です。
中野剛志さんについても、官僚の年収給料・20~65歳の年収推移・役職別年収|平均年収.jpで分かる通り、48歳で課長は「同じ世代の平均より下の年収」です。
邪推・妄想にも程がある、というものです。当然、理論的とはいい難いでしょう。
現在、巷では毎日のようにMMT批判が報道されます。そのすべてが「現代貨幣理論(MMT)を理解してない」か「藁人形論法」ないし「印象操作」のいずれかです。
「MMTを実行するとハイパーインフレになる!」などは、その典型例です。
常識的に判断して、現代貨幣理論(MMT)が正しいかどうか? は、かなり自明です。が……最初に「現代貨幣理論(MMT)批判」を「理解しないままやる」と、後戻りができなくなるようです。
「MMTはビジネスだ」批判などは、こじらせた典型でしょう。
上記のような批判は、三橋貴明さんや藤井聡京大教授も苦笑いでしょう。小論として「MMTビジネス批判」を提出したら、赤点どころかマイナスになるんじゃないでしょうか?
誤字、文章推敲は2019.6.2の13時半にしました。それ以前の読者にお詫びいたします。言い訳をすれば……土曜日の進撃の寄稿がなかったので、朝から2つ記事を更新で、大わらわでした(汗)
内生的貨幣供給と言う言葉がちょっと自分としては分かりづらいです。
自国通貨建てと同じ意味でしょうか?
分かりづらいですよね……。理解できます、私も最初「なにこれ、よくわからん」でしたし(笑)
意味としてはおおよそ、以下になります。
1)内生的貨幣供給論→信用貨幣論
2)外生的貨幣供給論→商品貨幣論
三橋さんのいう「お金のプールがあると考える主流派経済学やリフレ派」が2)です。
1)は「お金は、借りたら生まれる」という論です。
もう少し簡単にいえば2)は「お金の総量は決まっていて、中央銀行しか操れない(発行しないと使えない)」→又貸し論
1)は「借りれば借りるだけ(信用創造で)、お金の総量は自動で増える」です。
やっぱりわかりにくいですね……(笑)