デフレとは?どうすれば脱却できる?日本一わかりやすく解説

デフレって「ダメなもの」とはわかるんだけど……。
イマイチ仕組みとか、理解できてないんだよね。

この記事で日本一わかりやすく、デフレを説明しますね。

 経済用語は難しい単語が出てきたり、とにかく理解するのが大変ですよね。本稿ではデフレを、これ以上は無理だ! というくらい簡単に解説していきます。
 記事を読み終えたあとには「ああ、デフレってこういうことか!」と、理解が深まることと思います。

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デフレの仕組みを知ろう

 デフレは供給>需要の状態です。以下の図が、わかりやすいでしょう。

インフレギャップとデフレギャップの図

 左がインフレ、右がデフレです。
 では需要<供給(需要不足)の状態では、どのような現象が起こるのでしょう?

デフレで物価が下落していく

 需要不足では、企業は価格競争します。需要が少ないので、売上を上げるために、他社より安くしてシェアを獲得しようとするのです。
 コストを下げて、利益を得ようともします。

 コスト=誰かが生産したものの値段です。ここでも価格低下圧力がかかります。

 物価が下落していく=貨幣価値が上がると表現されます。過去に1万円したものが、6千円になったとします。これは「現在の6千円の価値が、過去の1万円の価値と一緒」ですよね?
 同じものを、より安い値段で購入できるのですから。
 デフレによる物価の下落=貨幣価値の上昇。重要なポイントです。

合成の誤謬という難しい言葉は「簡単」

 デフレで企業は価格競争をして、コストダウンをはかります。人件費もコストですから、人件費もできるだけ下げます。
 人件費を下げるとは、働いている人のお給料が下がることです。

 お給料が下がったらどうするか? 節約しますよね?

 企業も個人も「デフレ」だから、節約をします。節約をするともっと、需要が減ります。デフレは需要不足の現象ですから、デフレに拍車がかかります。

 企業も個人も合理的に行動したのに、全体として悪い結果になること。これを「合成の誤謬」といいます

デフレスパイラルとは合成の誤謬で起こる

 デフレスパイラルとは日本語で、デフレの(悪)循環のことです。
 デフレで企業も個人も節約したら、需要不足に拍車がかかってデフレが加速する。これをデフレスパイラルといいます。

 デフレスパイラルは、デフレ下で企業と個人が、合理的に行動すると起こるのです。

デフレの問題点・デメリット

 デフレのいくつかの問題点、デメリットを解説します。

デメリット1 デフレは物価下落速度以上に、所得を下落させる

 デフレでは恐ろしいことに、物価の下落以上の速度で所得が下落します。

デフレにおけるコアコアCPIと所得の下落推移グラフ

 コアコアCPIとは、簡単にいえば物価です。上記は現実の数字をもとに、グラフ化したものです。
 デフレは物価の下落速度以上に、お給料を下落させるのです。

デメリット2 デフレは経済を停滞・縮小させる

 経済規模はGDPという数字で表します。GDPには名目GDPと実質GDPがありますが、デフレを考える場合には、名目GDPが大事です。

 名目GDPの計算式は「個人消費+民間投資+政府支出+純輸出=GDP」です。
 詳しくは知れば深まる!GDPの計算式とは?用語の覚え方のコツとは? | オルタナティブ投資の大学を参照ください。

 世界各国と比べた、日本のGDPの推移を見てみましょう。

世界と日本のGDPの推移の比較(2014年まで)

 1998年からが、日本のデフレのはじまりです。
 GDPが全く伸びず、経済が停滞していることが見て取れます。

 もしデフレにならなければ、日本のGDPは2014年で1500兆円近く! だったかも知れません。

デメリット3 デフレで企業は価格競争を強いられ、イノベーションも起きなくなる

 デフレは需要不足です。ですから企業もコストカットをして、価格競争を強いられます。
 余計なコストはかけられません。

 技術開発や研究開発への投資は、投資が成功するかどうか? 誰にもわかりません。100に投資して、ものになるのは10~15ほどだそうです。
 成功しても需要不足で売れるかどうか? わからない。失敗したらコストの無駄なら、投資に尻込みしますよね?

 研究開発への投資の減少は、イノベーションの減少に繋がります。

デメリット4 デフレは最終的に、供給能力まで毀損していく

 デフレという需要不足は、最終的に供給能力も損なわせていきます。

 あなたがトマト農家だったとします。デフレでトマトが売れません。売上が落ちて、利益もほとんどでなくなりました。どうしますか?
 廃業するか、作物を変えるしかないですよね。

 こうしてトマトの供給能力が、損なわれるのです。
 すべての産業に、デフレは売上不足=需要不足をもたらします。デフレは最終的に、日本の生産能力、供給能力を毀損するのです。

デフレの原因とはなになのか?

20年間の各国の成長率ランキンググラフ

 デフレの怖さは、十二分に理解いただけたと思います。デフレの仕組みも、簡単に解説しました。
 ではデフレの原因とは? いまから、解説していきたいと思います。

 その前に「デフレ=需要不足=競争の激化と価格競争」という式を、頭に入れておいてください。

デフレの原因とは大きく分けて3つ

 デフレの原因は「政府の緊縮財政(支出不足)」「規制緩和(競争激化)」「自由貿易(国際競争の激化)」の3つです。

デフレの原因1 緊縮財政

 緊縮財政とは、政府が支出を絞ることです。支出を絞る=節約=需要を絞ることになります。

 例えば健全なインフレの国があったとして、デフレにするのは簡単です。政府が支出を一切行わなければ、簡単にデフレになります。
 デフレは需要不足ですから、政府が需要(支出)を減らせばデフレ加速政策になるのです。

 最も重要ですが「未だにデフレ脱却できていない」のは、政府の支出が足りなかった結果です。予算を増加が足りていないのです。

デフレの原因2 規制緩和

 規制緩和は安倍政権で、成長戦略とされています。でも本当は、デフレの原因なのです。

 需要不足になると、企業は価格競争で市場競争を激化させます。
 健全なインフレの状態なら、研究開発投資で商品を差別化して、競争を勝ち抜くこともできます。
 デフレではその余裕はありません。つまり価格競争になります。

 規制緩和はただでさえ需要不足の市場に、多くの企業を参入させます。供給だけ増加するのです。したがって、デフレを加速させる原因になります。

デフレの原因3 自由貿易

 貿易は「国内vs国外」の市場競争です。安い中国製品に負けた日本企業は、数知れずでしょう。
 輸入とは「国内企業vs国外企業の(価格)競争」だったのです。

 デフレ下で自由貿易を推し進めると、デフレが加速する原因になります。本当はTPPも日米貿易協定交渉(TAG)も、してはいけなかったのです。

需要不足=競争過多=デフレと覚えよう

 100の需要に、100の供給であれば競争は激化しません。120の需要に100の供給では、供給側(企業など)が、売上を大きく上げることでしょう。
 では80の需要に、100の供給ではどうでしょう? 需要の取り合いになり、競争は激化します。

 デフレは需要の創出か規制の強化(供給の抑制)以外で、解消方法はありません。

デフレ脱却はどうすればよいのか?

 理論的には「需要を増やす」か「供給を潰す」の2択になります。しかし国内に限れば「供給を潰す=失業者を増やす」です。
 したがって、現実的には「需要を増やす」以外の選択肢はありません。

 自由貿易については、保護主義的な貿易をすることで、国内産業を保護する方法があります。これは「(海外からの)供給を潰す」となります。

 デフレスパイラルから抜け出せば、合成の誤謬は解消し、健全なインフレの循環に入ります。

政府による積極財政での需要創出でデフレ脱却

 合成の誤謬は説明しました。デフレ下では、企業も個人も節約してしまう。したがって需要はさらに減少する、という現象です。
 企業や個人が合理的に行動したら、結果が悪化することが「合成の誤謬」でした。

 企業も個人も、解決方法をデフレ下では示せません。残っているのは政府だけです。デフレは政府が、なんとかしないといけないのです。

 デフレは需要不足ですから、政府は需要を創出しなければなりません。政府が「これがほしい! あれがほしい!」と支出するのです。

 もしくは減税という手段もあります。減税して、国民のふところに余裕が出れば消費も増えるでしょう。

デフレ脱却の政策1 公共事業をたくさんする

 公共事業はデフレ脱却に、有効な方法です。道路や新幹線、リニアなどを政府がどんどん作るのです。

 南海トラフ巨大地震が心配されますから、防災や減災の公共事業も良いでしょう。他にも基礎研究などの分野に、大きく政府が投資するのもありです。

 人材は国家の財産という視点から、教育への支出の増大も良いでしょう。
 公共事業は「公的資本形成」ともいいます。OECDやIMFも最近は、公共事業の重要性を認めています。

デフレ脱却の政策2  社会福祉で支出拡大する

 年金、保険、生活保護、セーフティーネットなどの、社会福祉政策への支出拡大も、大いに結構です。
 社会福祉は所得移転なので、効果は公共事業より少なくなります。

 公共事業なら100万円を支出すれば、必ず100万円の需要が生まれます。政府が100万円のものを買うわけですから。
 社会福祉で例えば年金。100万円を支給しても、90万円しか使われないかも知れません。残りの10万円が貯金などに回ると、90万円の需要しか生まれなくなります。

 逆にいえば所得移転は、「インフレになりにくい、デフレ退治政策」といえます。どんどん拡大しても、インフレが行き過ぎる心配が少ないのです。

デフレ脱却の政策2  減税とビルトイン・スタビライザー

 減税もデフレ脱却に、有効な政策です。
 少し難しい言葉を、覚えてほしいと思います。ビルトイン・スタビライザー(税の自動安定装置)という言葉です。

 所得税は「所得がなければ、払わなくて良い」税制です。法人税も「赤字なら払わなくて良い」税制でしょう。

 不景気のときには、赤字企業や失業者が増えます。自動的に「税金を払わなくて良い人たち」が増えます。景気の下支えが出来るのです。
 好景気のときには、「税を払わないと、いけない人たち」「税が重くなる人たち(所得税)」が増えますので、インフレの行き過ぎを抑制できます。

 このような税制の機能を、ビルトイン・スタビライザーといいます。
 累進課税の税制は、ビルトイン・スタビライザーを持った税制に分類されます。

 逆に消費税には、ビルトイン・スタビライザーがありません。ないからこそ、安定財源といわれます。景気調整機能が、消費税にはありません。
 消費税のような税制こそ、減税、廃止するべきでしょう。

国の借金は大丈夫なの?

 日本にはじつは……財政問題は存在しません。驚かれましたか?

 歴史上、財政破綻したケースの全ては「外国の通貨建ての国債」です。つまり外国からの借金です。
 日本の国債は全て、自国通貨建て(円建て)の国債です。自国通貨建て国債で破綻した例は、ありません。

 国家には通貨発行権があります。日本では、日本政府が円をいくらでも発行できます。実際には紙幣は日銀、硬貨は政府です。最新の経済学説では、政府と中央銀行は一体だとみなされます。
 これを統合政府論といいます。覚えておくと、ちょっとかっこいいですね(笑)

 円を統合政府が刷れるのに、円建て国債を心配する必要があるでしょうか?

 大体はこのように反論があります。「円を刷り過ぎたら、インフレになる!」と。
 デフレで悩んでいるのに、インフレの心配をする必要はありません。

 また、ハイパーインフレにもなりません。現代貨幣理論(MMT)批判の「インフレになる」はいろいろ間違いを、ご参照ください。

資本主義はインフレが正常な状態

 資本主義では、インフレが正常な状態です。20年以上もデフレを続けている国家は、日本しか存在しません。
 失われた20年がなく順調に成長していれば、日本のGDPは1000兆円を超えていたという試算もあります。
 失われた20年でどれくらい所得が失われたか? 藤井聡京大教授によれば、8000兆円だそうです。
参照:驚愕★失われた20年の失った所得総額は八千兆円・藤井聡(京都大学)の試算

 8000兆円も、20年間で所得が奪われる。これがデフレの恐ろしさです。
 正しい知識をインプットして、ぜひとも他の人にも教えてあげてくださいね。

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4 Comments
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Muse
4 年 前

表題通り、実にわかりやすい解説でした。記事内容については完全同意です。

さて、記事のテーマとは直接関係がないのですが、ブログへのTwitterからのアクセス状況はいかがなものでしょうか?
確認してみたところ、ヤン・ウェンリーさんや進撃の庶民のツィートへのリツィートやいいねの件数がほとんど一桁台です(ただし、フォロワー数は500~800台ある)。これに対して、政権批判を行っている他のTwitterユーザのツィートの中には、3桁~4桁台のリツィートやいいねがついているものもあります。何でかなあと思いました。

リツイートやいいねの件数が増えれば、ブログへのアクセスはもっと増える気がするのですが。

Muse
Reply to  高橋 聡
4 年 前

なるほど。それでは、Twitterでは140字以内でパンチの効いたフレーズで惹きつけた上で、リンク先の(論理を重視した)当ブログへ誘導するのも一つの手ではないかと。