現代貨幣理論(MMT)批判の「インフレになる」はいろいろ間違い

この記事は約7分で読めます。
スポンサーリンク
スポンサーリンク

 報道では様々な学者が「MMTを採用するとインフレになる! ハイパーインフレーションがくる!」などと大げさに批判を繰り広げます。

 本当でしょうか? 結論からいえば現代貨幣理論(MMT)を採用しても、積極財政をしてもハイパーインフレにはなりません。
 報道の有識者たちによる「ハイパーインフレが!」という現代貨幣理論批判は、完全に妄想ないしフィクションです。

 できるだけ平易に解説していきたいと思います。

スポンサーリンク

デフレのときにインフレの心配をしてどうするのか?

 現在はデフレです。デフレとはどういう状態でしょうか?
 供給>需要という状態で、需要が足りないのです。

 デフレのときに、インフレの心配をしてどうするのでしょう?

 もともと、安倍政権も日銀も「デフレ脱却! インフレ率2%!」を目指していたはずです。日本の経済学者や有識者も、この方針をおおよそ承諾していたはずです。

 ところが現代貨幣理論(MMT)はなぜか、「インフレになる! ダメだ!」と批判されています。裏を返せば有識者や報道は「デフレのままがいい」とでもいうつもりでしょうか?
 むしろ現代貨幣理論(MMT)でインフレになるなら、大歓迎しなければいけないはずです。

 反論としては「MMTではインフレが行き過ぎる! 無制限な国債発行は論外!」があります。現代貨幣理論(MMT)では、インフレ率によって国債発行は制約されるとします。
 無制限な国債発行を主張してないのに、主張していることにされているのです。こういった詭弁の反論は、藁人形論法でしょう。

 デフレのときにインフレを心配してどうするのか? MMT批判の報道、有識者が書いた記事を見ていると、頭が痛くなります。

現代貨幣理論(MMT)は「インフレにできる」であって、「インフレになる!」ではない

 資本主義の健全な姿は、適度なインフレであることです。

 供給<需要という状態は、企業からしたら「売上見通しが立つ、儲かる状態」です。需要が多いのですから、そこに投資していきます。
 投資もまた需要の1つです。供給するための投資が、需要にもなります。したがって供給と需要のおいかけっこになり、経済が拡大していくのです。

 だから安倍政権や日銀はインフレを目指しましたし、有識者たちもそれがいいだろうと認識していたはずです。
 それはインフレこそが、資本主義の健全な姿だからです。

 現代貨幣理論(MMT)を実行すれば、インフレにできます。
 なぜなら、現代貨幣理論は「需要が供給を追い抜くまで、政府支出をする」という理論だからです。
 財政政策で需要創出を行い、インフレにするのです。

国債の絶対発行額ではインフレ率は決まらない

 MMT批判では「国債発行額が増えすぎて、ハイパーインフレになる!」という議論が展開されます。ではいくらになればハイパーインフレになるのか? は誰も説明しません。
 説明できないからです。

 現在、日本の国債発行額は1000兆円といわれます。しかしデフレです。長期金利も0.1%です。つまり、国債をいくら発行しても、需要が供給を追い抜かない限り――供給<需要の状態――、インフレになりようがないのです。

デフレは供給>需要 供給が許す限り、国債は発行できる

 「国債をそんなに発行したら、どうやって返すんだ!」という反論があるだろうと思います。事実からいえば、自国通貨建て国債は、実質的に返済の必要がありません。
 償還期限が来たら、借り換えをしたらよいだけです。また通貨発行権のある政府が、通貨を渡してあげたらよいだけです。

 現代貨幣理論(MMT)では、通貨も国債も性質は同じものです。どちらも国家が発行し、国家が民間に供給します。どちらも発行権は統合政府(政府+日銀)にあります。
 日銀が金融緩和をしたときに、「そんなに通貨を発行したら、破綻する!」と誰も批判しませんでした。国債も一緒なのですが、なぜか批判されます。
※通貨と国債の違いは、市場流通性と民間での信用創造が可能かどうか? だけです。

 じつは通貨も負債の一種です。日銀のバランスシートで、負債側に計上されています。通貨を発行して気にする人はいません。国債も本当は同様に扱ってよいのです。

 したがって、デフレのときに気にするべきは国債発行の額ではなく、その額で需要が十分に生まれるか? だけです。

インフレ上限になったら、政府支出を前年度と同様にするだけ

 あらかじめ例えば、インフレ率4%を目処にしようと決めておけば、4%に近づいたら前年度と同様の政府支出の規模に抑える、ということでインフレの行き過ぎは防げます。

 ところが財政破綻論者やハイパーインフレがー! という人たちは、以下のような議論を展開します。
「一度積極財政をしてしまうと、歯止めが効かなくなって、ハイパーインフレになる!」

 デフレ下で粛々と、緊縮財政を受け入れている国民が、その様になるというのは説得力にかけます。なにより、国民をあまりにバカにした話でしょう。
 上記の議論は完全に「国民が金くれ虫になる! だから積極財政はダメだ!」という意味です。

 インフレが加熱してきたら、前年度と同じ予算程度に抑える。金融引き締めでインフレを抑制するなど、いくらでも対応は可能です。

ハイパーインフレの定義と起こり方

 歴史上のハイパーインフレは、戦争や、革命や内乱での国内の混乱以外で起こりません。
 補足ですが、自国通貨建て国債で財政破綻した国家も、歴史上存在しません。

 ハイパーインフレの定義は3年間で100%の物価上昇(貨幣価値下落)です。年間で26%の物価上昇が、ハイパーインフレの定義になります。

 例えばドイツのハイパーインフレは、第一次世界大戦の敗戦によって引き起こされました。ジンバブエのハイパーインフレは、独裁者の無茶な政策により引き起こされたものです。

ムガベは初めは黒人と白人の融和政策を進め[8] 、国際的にも歓迎されてきたが、2000年8月から白人所有大農場の強制収用を政策化し、協同農場で働く黒人農民に再分配する「ファスト・トラック」が開始された[8]

この結果、白人地主が持っていた農業技術が失われ、食糧危機や第二次世界大戦後、世界最悪になるジンバブエ・ドルハイパーインフレーションが発生した。

ジンバブエ – Wikipedia

 ジンバブエは食料の供給が著しく低下し、供給能力が毀損され、その結果としてハイパーインフレが起きたのです。

 日本の戦後のハイパーインフレも、敗戦で大都市が焼け野原にされて、供給能力が著しく低下したからです。

 このように、ハイパーインフレとは「供給能力が著しく低下する事態の発生」か「内戦や革命などによる混乱での、政府の信用失墜」でしか起こらないのです。
 自国通貨建ての日本国債で起こそうとすれば、至難の業になるでしょう(笑)

日本でハイパーインフレは起きようがない

 逆説的に、日本でハイパーインフレを起こそうとしたら、どうしたらよいでしょうか? 私が思いつくのは、以下の3つほどです。

  1. 毎年100兆円の新規国債発行をする(これでも、ギリギリハイパーインフレになるかどうか? のラインです)
  2. 企業を国営化して、政治的に生産を停止する
  3. どこかに戦争を仕掛けて、本土決戦で徹底抗戦して焼け野原になる

 どれも現実的ではありません。有識者や主流派経済学者たちの「MMTでハイパーインフレが!」という議論は、これほどに滑稽なのです。

デフレでインフレの心配をするのは、拒食症で太ることを心配しているのと一緒

 デフレのときに、インフレの心配をする必要はありません。
 拒食症で悩んでいるのに、医者が「いやいや、食べたら肥満になる!」と心配するようなものです。

 現代貨幣理論(MMT)の理論のとおり、貨幣供給量を増やす=需要創出を財政政策で実行する、をすればデフレ脱却が可能です。
 1997年をピークに、日本人の平均所得は50万円も下落しました。デフレだからです。
 インフレになれば日本経済も成長し、所得も上昇に転じます。

 ひたすらダイエットを20年間続けた日本は、今やまさに拒食症といってもよい状態です。財政政策、政府支出の拡大で「食べなければならない」のです。

2
コメントを残す

1Comment threads
1Thread replies
0Followers
 
Most reacted comment
Hottest comment thread
2Comment authors
  Subscribe  
新しい順 古い順 最も評価の多い
更新通知を受け取る »

私もちょうど数日前、次回の漫画エピソード用に下記脚本を書いているところでした(中野氏の論説を箇条書きにアレンジし、国名まで入れて挿入しています)。このあと作画が入り、来週には進撃の庶民で発表できると思います。

幸村総理「持続的な経済成長には物価の上昇が不可欠ですが、それが制御不能に至った事例も限られています」

●制御不能なインフレの事例
・戦争や内戦による供給力の破壊(日本ほか)
・領土割譲に伴う生産設備の喪失(ドイツ)
・独裁政権による白人農場の強制収用(ジンバブエ)
・経済制裁の禁輸措置に伴う物資不足(ベネズエラ)

※日本以外は全てハイパーインフレですね。。。

タイトルとURLをコピーしました