日銀が政府発表のGDP不信で、GDP独自算出はじめた本当の理由

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 報道を見ていて驚いたのですが、日銀がGDPの独自算出を始めるようです。日銀が独自のGDP作成、消費関連の精度高め景気判断に活用-関係者 – Bloombergによれば、個人消費値にぞくする家計調査の偏りの可能性などが指摘されているようです。

 簡単に結論だけ申し上げると、日銀が政府の統計を「信用できない!」と暗にいっているのです。
 どのような事実が背景にあるのか? 日銀はどのような方向でGDPを算出するか? 解説していきたいと思います。

政府統計のゆらぐ信頼

 22基幹統計で不適切処理 総務省「重大不正ない」 – 毎日新聞(2019年1月)で報じられたように、政府の基幹統計で不適切な処理が発覚しました。
 これにより2018年の実質賃金は、修正するとほとんどの月でマイナスになる、ということも発覚しました。

 森友学園問題での公文書改ざんが2018年3月に報じられ、2019年には基幹統計不正問題が発覚と、政府の文書や統計そのものへの信頼が揺らいでいるのです。

 また2016年末のGDP統計改定で32兆円が底上げされましたが、安倍政権は当初のGDP600兆円目標を据え置いた、というのもおかしいと囁かれました。
 本来なら、630兆円に目標を修正するべき、という声が多々聞かれたのです。目標を掲げてから改定ではなく、改定してから目標値を掲げるべきだったでしょう。

 このようにしてこの3年間、政府統計への信頼は揺らいだのです。

中央銀行が政府統計のGDPを、計算し直すのは異例

 先進国で、中央銀行が政府発表のGDPを計算し直す国はありません。政府統計とは通常、それほど信用されているものです。
 逆説的に、政府統計が信用できないというのは、発展途上国並みの状態であるといえます。もしくは全体主義国家、ファシズム国家では政府統計がしばしば、改ざんされたようです。

 日銀が独自でGDPを算出するという、異常事態が少しはご理解いただけるのではないか? と思います。

景気はいいはずなのに、実感できないという問題

 GDPは拡大していますので、政府発表では景気は良いことになっています。もっとも、2019年1~3月期のGDP速報はボロボロでしたが。
参照:1~3月期GDP速報で外需ズタボロ・民需も減少 消費税増税など論外

 しかし報道ではしばしば「実感なき景気回復」といわれます。これは当たり前で、GDPの6割を占める個人消費が停滞しているからです。
 なぜ停滞しているのか? 民主党の野田政権時代と比べても、アベ内閣の現在の実質賃金はマイナス5%ほどになっているのです。

 可処分所得が減少しているのに、景気が良いといわれても、そりゃ実感できないでしょう。本当にGDPは拡大しているの? と疑問の声を上げたくなります。

 有識者たちによれば、おおよそは「企業部門の利益が、家計部門に波及していない」といわれます。
 これは単にデフレだからです。

デフレでは企業部門の利益は家計に波及しづらくなる

 上記に上げた専門家の多くは、「企業部門の利益が、家計部門に波及しない」という現象は書いても、その原因は追求しません。
 答えをいえばデフレだからです。

 デフレとは供給>需要の状態であり、物価の下落ないし停滞を伴います。物価の下落=通貨価値の上昇です。
 したがって企業は債務返済を優先的にすすめ、設備投資等に対しては消極的になります。また内部留保に対しては積極的になります。
 なぜなら、通過を保有していたほうが、将来的に通貨価値が上がるからという合理的理由です。
 人材への投資、すなわち給与もできれば拡大したくない、というのが企業部門のデフレ下での本音です。

 家計部門でも同じことが起きます。消費に回すより貯蓄したほうが、デフレ下では合理的です。
 もっとも家計部門の場合、実質賃金が減少していますので、貯蓄に回す余裕がなくなってきている、という問題が発生しております。

日銀が独自に算出したGDPは信用できるか

 日銀が独自にGDPを算出し始めたのは、政府統計が信頼できないという理由が最も大きいでしょう。
 政府統計を信じて金融政策をしたら、間違えちゃいましたでは洒落になりません。

 現在、世界中で「もはや金融政策だけでは限界。政府による財政出動が必要では?」という声が出ています。IMFが日本に財政出動を求める-世界経済の不透明さが理由か?で書きましたが、IMFですら! です。OECDも財政出動を支持しているようです。
参照:
世界の経済大国、次の危機には減税と財政出動で協調をーOECD – Bloomberg
OECD、財政政策を支持する経済予想 | ピクテ投信投資顧問株式会社

 閑話休題。日銀の算出するGDPは、どのようなものになるのでしょうか? 2016年に日銀、政府発表GDP値を「間違い」と指摘…「消費増税の14年は景気悪化」を否定 | ビジネスジャーナルという、非常に興味深い報道がされております。

 上記記事によると、日銀が算出するGDPは「消費税増税がされても、プラス成長する」というものになる可能性があるのです。引用します。

(一部引用)
 日本銀行が2014年度のGDP統計(内閣府発表)に疑問を呈するレポートを発表し、内閣府が反論したことが話題になっている。日銀がこうしたリポートを出した背景は何か。

 この日銀レポートは個人名で発表されており、冒頭に「ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません」という注記がされている。しかし、レポートを執筆したのは日銀調査統計局の人物であり、職務に無関係な「趣味の研究」とはいいがたい。同レポートの背景には、日銀の組織としての意図があるとみたほうがいい。

 同レポートは、14年度の実質成長率について2.4%だったと指摘している。政府が公表しているものでは▲1.0%だったので、その差は3.4%と大きい。
(中略)
 政府は主として支出面からGDPを算出しているして、日銀レポートでは分配面から算出を行っている。今回の日銀による算出のポイントは、税務統計が使われている点である。税収は消費増税してもそこそこ好調であるため、税務統計を使うと分配面のGDPは大きくなる

 この報道が正しいとすると、日銀は正確なGDP速報値がほしいわけではなく、「これだけ金融緩和してるんだから、本当はインフレにすでになっているんじゃないのか?」という疑義を政府に抱いている可能性も否定はできません。

 つまり主流派経済学の理論通りに行かないので、この機会に自分たちでGDPを算出しよう、という動きだったとしても驚きはないのです。

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