平和主義は貧困への道、または対米従属の爽快な末路(著:佐藤健志)レビューと感想

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先日、購入して読了した「平貧」は内容が濃い

 平和主義は貧困への道、または対米従属の爽快な末路(佐藤健志さんの新著)、略して「平貧(©佐藤健志さん)」を先日購入しまして、読了しました。すげー楽しみにしておりまして、期待を裏切らずすんごい濃い本だ!というのが読み終えてすぐの感想です。

 かなり濃かった&1日で読了という急ぎ具合で、やや脳みそがグワングワンしております。

 まずは目次紹介から。

序章 賢いほどのバカはなし

第一章 平和主義は貧困への道

第二章 平和主義は少子化への道

第三章 愛国は虚妄か、さもなければ売国だ

第四章 経世済民のために経世済民を放棄せよ

第五章 従属徹底で自立を目指せ!

第六章 政治は口先と言い訳がすべて

終章 不真面目こそが未来を拓く

 まず最初に私の感想でいうと、「僕たちは戦後史を知らない」も併せて読むと大変理解が進むのではないか?と思います。というのも目次からお察しの方もいらっしゃるでしょうけれども、この「平貧」は現代日本における戦後レジームの限界点や矛盾を分析し、そしてもはや戦後日本が行き着くところまでいったと分析し、それに対してどのように我々は振る舞ったら良いのか?という視点を示唆する構成になっているのです。

 上記は戦後レジームという表現を使用しましたけれども、むしろ「戦後日本の”現実”を解き明かし、欺瞞を浮き彫りにし、問題点を顕にすること」と言い換えたほうがよいかもしれません。

 なぜならば・・・一般的に使用される戦後レジーム(戦後体制)という言葉の印象だと、少々物足りないというか違うというか。この本は「戦後レジーム」という言葉では表現できない”現実”に言及しているように思うのです。そう感じるのです。

 「普段は論理的に書くヤンが『そう感じる』って表現使うんやっ?」と驚かれたそこの貴方。帯の後ろには中野剛志さんが、こう書いてるんです。

 バカをやるのは利口者!やはりブルース・リーは正しかった。”考えるな、感じろ”さあ、目を開け。

 ざっとしたご紹介は以上として、この著書の佐藤健志さんの論理構造が非常に面白かったので、そちらをご紹介したいと思います。

この本の論理構造と作りの面白さ

 細かい議論は本を買って読んでもらうとして、戦後の大まかな論理構造、つまり日本の現実逃避というのは、端的にいえば「占領軍」を「進駐軍」と言い換え、「敗戦」を「終戦」と言い換えた欺瞞にあろうかと思います。

 つまり敗戦というのがそれほどのショックであり、だからこそ日本人全員で「いや、これは終戦なんだ」と否認したわけです。ストーリー的には「戦前の軍と大本営があかんかったんや!俺ら国民は騙されてたんや!」とした上で、だからこれは「敗戦じゃなくて終戦なんだ」というわけです。端的にいえば「言い訳」でありますね。

 しかし現実的には敗戦は敗戦だし、占領は占領です。

 そして一転して日本は戦後、平和主義を左翼、保守ともに採用する(していく)わけです。

 戦後は白洲次郎や吉田茂、もしくは55年体制に代表される保守の自民党などが色々やりくりして、「富国弱兵路線」になるわけですが、しかし欺瞞の上でいくらやりくりしても、砂上の楼閣とならざるを得ない。

 クラウゼヴィッツいわく、「軍事なき政治(外交)は、音符なき五線譜」でありますから、表現を変えれば「強兵なき富国なんぞありえない」のです。つまりは「平和主義は貧困への道」というわけです。

 さて、55年体制でいろいろやりくりしてみた結果・・・1980年代位までは見事に富国を実現したものの、1990年台に入って経世済民と富国が非常に怪しくなってきた。いやいや、明らかに衰退ないし停滞している。

 さらには2008年以降はもはや迷走につぐ迷走で、そうすると「現実がうまくいかないので、言い訳したくなる」のが人間の性というものです。

 実は「敗戦のショック」という「うまくいかなかった現実」から「言い訳」が生じたように、またもや日本は「経済停滞・衰退のショック、経世済民が進まないショック」という「うまくいかない現実」から「政治が言い訳ばかりしている」状態に陥ったと論じるわけです。

 一周回って「同じところに来てしまった、戦後間もなくにループした」のですけども・・・・目次をみてください。

序章 賢いほどのバカはなし

終章 不真面目こそが未来を拓く

 この本のテーマも「一周回っている、循環している」のではないか?ただし・・・・終章では「どのように振る舞うべきなのか?」という示唆がされていて、しっかりと目次や論理構造のほうは「ループから抜け出せる構造」になっているわけですが。

 多分意図してされてるんだと思うのですが、面白い作りだなぁ・・・とびっくりしたわけです。

 最後に、序章のみちょっと解説してみたいと思います。

序章 賢いほどのバカはなし

 さまざまな問題にたいし、賢く対処しようとすればするほど、とんでもない愚行が繰り広げられる。

 最初のページの初っ端から真っ先に飛び込んでくる文章で、実際にふと文字で書かれています。どういうことなのか?この著書の最大のテーマでもあると思います。

 佐藤健志さんは「賢い」を2種類に分類されます。

賢い(一型) 物事のあり方を的確に理解することに優れている。

賢い(二型) 自分の利益を最大化することに長けている。

 主に文中で「賢い」で使用されるのは二型であり、これは愚行を繰り返す元となるわけですが、端的に表現すれば二型とは「その組織において、その組織の論理を全肯定し無批判に信じそれを元に行動するからこそ、(その組織内で自己の)利益が最大化できるのだ」というわけです。

 とすると「その組織の論理がうまくいない状況になると、当然ながら二型の賢さは一転して愚行を繰り返すことになる」のはなるほどその通りなのです。

 上記の「その組織」は例えば「日本」なり「緊縮財政とグローバリズム」なり、「経済学」でも何でも良いのですが置き換えられるでしょう。

 「その組織の論理」は佐藤健志さんは「支配的な認識枠組み」と呼び、中野剛志さんは「世界観を共有する認識共同体」と呼びます。いわゆるパラダイムってやつですね。

 この「支配的な認識枠組み」が「普遍的に正しいかどうか?」というと、じつはそうではない場合がかなりあるわけです。ある状況ではうまくいっても、ある状況ではうまくいかないという場合が多々あります。

 そして「うまくいかない状況」になったときに、

 さまざまな問題にたいし、賢く対処しようとすればするほど、とんでもない愚行が繰り広げられる。

 となるわけです。これが「戦後日本ないし、現在の政治にも当てはまる」ので、おそらくこれが最大のテーマなのかもしれないと思うわけです。

 ではどうすればよいのか?目次を見て一目瞭然!

 さすがにレビューと感想で結論を書くわけにはいかないので、ぜひとも興味のある方は手にとって読んでみてください。

 文体はむちゃくちゃ読みやすいですし、事前に「新訳 フランス革命の省察」ないし「僕たちは戦後史を知らない」を読んでいれば、テーマが頭に入りやすくスラスラと読めるかと思います。まあ、読んでなくても大丈夫でありますけれども。

 ごく一般的な日本の一般政治史や流れを抑えておけば、十二分に理解可能であると思います。内容は濃いですが(笑)

 ぜひとも「日本の現実」を理解するために、抑えておきたい著書だと個人的には強く思います。

 ちなみに読む前に一番気になったのが副題の「対米従属の爽快な末路」というところ。

 「対米従属で爽快に????」と疑問符が当然ながら超付きましたが、読んでみて納得。もしかしたらこの辺は、原子論的個人の議論でも「爽快になってしまう!」のかもしれません。そこらへん議論も、追々書いていけたら良いかなと思っております。

佐藤健志さんにコメント差し上げた

 ちなみに最初に佐藤健志さんが公開された表紙の記事にてコメント差し上げたところ、効率や利益にばかりこだわると、防災もできなければ学問も崩壊するにて取り上げていただきました。どのようなコメントであったか?

ヤン・ウェンリー命さんのコメントをご紹介。

気になりすぎます。

ぱっと見たときの第一印象は「(゚Д゚≡゚Д゚)?」でした(笑)

インパクトが半端ないです。

で、一日たって冷静になってからもう一度見てみました。

そうするとどうやら背景の旭日旗らしい模様は薄れ、沈みかけていて、

大きな女性の後ろにはコスモポリタン的な風景があり、

なんだか「最先端で最新鋭でスタイリッシュな女性」が前面にドドンと。

右側の橋の下は多分、震災かなにかの傷跡でしょうか。

なんとなく、なんとなくですが意味するところがわかってきたような?

これはもう、読むしかないです。

 ええ、ようやくいろいろと表紙の意味と裏面の意味の得心がいきました(笑)「おおぅ・・・なるほど~。これはデザイナーさんも面白がってつくりはったんやろな~」と読み進めていて納得です。

 なんというかあれですね、単なる本ではなく1つの作品、ストーリーになってる感じです。

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