アメリカ上院で、MMTに対する非難決議が提出されたとのこと。佐藤健志さんの記事で知ったのですが、最初は私も「おいおい、またいつものジョークでしょ?」と思ったら、大マジでした。
アメリカ上院には、MMT非難決議案が提出されている! マジだぞ、おい!! | 佐藤健志 official site ”Dancing Writer”
ざっくりまとめると以下です。
- MMT非難決議をアメリカ上院議員5名が提出
- 内容は「財政赤字を許容してはならない、よって上院はMMTを非難する義務がある!」
- 佐藤健志さん、これに対して「くそまじめな人ほど、盛大な勘違いをやらかす=宇宙のジョーク」
日本のメディアもMMTを「トンデモ論」とみている
日本のメディアも、MMTをトンデモ論とみているようです。「MMT」に気をつけろ! 財務省が異端理論に警戒警報:朝日新聞デジタルによれば、記事のしめはこうです。
安倍政権はこれまでに2度、消費税の10%への増税を延期した。今年10月に消費増税を見込むが、夏の参院選を控え、増税を煙たく感じる政治家も少なくはない。そんな時に「再建しなくても大丈夫」とささやく理論が現れたら――。MMTを単なる「トンデモ理論」として簡単に片付けてしまえるとは、実はいえないのかもしれない。
「MMTを単なる「トンデモ理論」として簡単に片付けてしまえるとは、実はいえないのかもしれない。」と表現している時点で、MMTを単なるトンデモ論として片づけていた、と解釈できます。
そのわりには、なぜ毎日MMTを報道するのでしょう?
財務省に、報道するようにとでもいわれているのか? と勘ぐってしまうのは、私だけではないでしょう。
記事中に「アベノミクスとMMTは近い」という戯言が書かれていますが、アベノミクスは実行してない?嘘のアベノミクス詐欺と安倍政権の6年間で、そんなわけはないだろう、と論じています。
世界は中世の魔女狩りに先祖返り?
柴山圭太さんか、施光恒さんだったかと思うのですが、動画か何かで「世界が中世に戻ってない?」といっておられたと思います。
グローバリズムは格差を拡大させます。そして、格差を再生産して固定化します。
これが、中世の身分制度に先祖返りしてるんじゃないか? というわけです。
そして今回の、アメリカ上院のMMT非難決議案提出。まさに「魔女狩り」といわれて仕方のないものでしょう。
なにせ、政治において特定の学説を非難するのです。決議案では非難が”義務”とまで書かれているようです。
彼らがなぜ、政治的な道徳性を失い、特定の学説を非難するのか?
センメルヴェイス反射という言葉があります。wikiによれば「通説にそぐわない新事実を拒絶する傾向」のことです。
センメルヴェイスという人物は、医師より産婆が出産に立ち会ったほうが、母子ともに死亡率が低いことに気が付きます。
その事実から、手を消毒すると母子の死亡率が下がる、という事実を導き出しました。
ところが、当時の医師たちは「自分たちが、多くの母子を殺してきた」という事実を受け入れられず、逆にセンメルヴェイスを非難した、という歴史からセンメルヴェイス反射と呼ばれます。
「財政赤字は問題ない!」としてしまうと、今まで緊縮財政をしていた意味がなくなります。緊縮財政によって、アメリカではたくさんの人が貧困化しているというのに、いまさら「へへっ……すいません、緊縮財政は必要ありませんでした。てへっ」とはいえません。
ですので、アメリカ上院議員5名は「MMTを非難するのは義務!」と、魔女狩りを始めようとしているのでしょう。
新自由主義やネオリベラリズム、財務省がMMTを嫌う理由
結論だけ申し上げると、センメルヴェイス反射、ないし認知不協和としかいえません。
三橋貴明さんや、中野剛志さんによると、新自由主義や主流派経済学がMMTを非難するのは、以下のような理由ではないか? といわれております。
- MMTが事実を事実としてさらしたことが、認められない(自分たちの無知が明らかになる)
- センメルヴェイス反射で、今さら「財政赤字は問題ない」とは認められない(均衡財政が、どれだけの人を不幸にしてきたか!)
ついでに私、主流派経済学は、ケインズ理論の復活を恐れているのでは? とケインズ理論と現代貨幣理論(MMT)の共通点、および新自由主義の定義 にて、書いております。
ざっと復習、現代貨幣理論(MMT)
箇条書きで、簡単にMMTを復習しましょう。
- 貨幣=負債(単なる事実)
- 貨幣は信用創造によって、創出される(単なる事実)
- 信用創造は銀行によって行われる(日銀、市中銀行の2種類の信用創造)
- スペンディング・ファースト(支出が先)は、まず政府支出がないと徴税ができない、という事実を表す
- 4)は政府赤字は正常、という帰結になる
- 通貨と国債の違いは、流動性の有無だけだ
- 徴税という国家権力が、通貨を駆動する=通貨を通過足らしめている=理論上、通貨は無限に発行可能=国債も無限に発行可能(インフレ制約あり)
上記までが、現代貨幣理論(MMT)の守備範囲です。
MMTerが機能的財政論を支持するのも当然でしょう。
なぜなら、機能的財政論では「どのようなときに政府支出を拡大させ、どのようなときに政府支出を縮小させるか?」が論じられているからです。
長々と論じてきましたが、さすがにアメリカでMMT非難決議が採択されることはないと思います。常識的に考えるなら……ですが。
MMT(現代貨幣理論)をもっと知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
★議論をつめるべき点があります。
国債発行無限大可能論については統一戦線を張って仲間を増やさなくてはならないことは当然なのですが、MMTにしても、国土強靭化論にしても、国際収支を無視するために、賛成できなくなってしまいます。
一国の経済発展や国民の生活の安定にとって重要な認識を二つピックアップするとしたら、
①政府財政赤字は民間へのマネー供給であり、減らすべき借金ではないこと。
②外貨は国際取引によってのみで得られ、無視してはならないお金だとということ。
この①と②は、同じ程度の重要さで取り扱う必要があるということです。
ここは議論をつめるべきところではないでしょうか。
これをやらない限りは国債発行無限大可能論は広がり続けることないと思います。根本ですから。
国際収支を気にされるということは、端的に言えば通貨高を気にしている、ということでよろしいでしょうか?
そもそも論ですが、MMTでは「日銀が金利をコントロールできる」としているので、財政出動→資金のひっ迫→金利の高騰は、あり得ないのですね。
金利の高騰がなければ、通貨高もあり得ませんから、外需が減少することもあり得ません。
https://www.youtube.com/watch?v=LJWGAp144ak
上記の動画、日本の未来を考える勉強会ですが、おすすめです。
コメントへの回答には47分あたりからが、参照によろしいかと思います。
・ご返信ありがとうございます。
・又、面白い動画のご紹介ありがとうございます。
>国際収支を気にされるということは、端的に言えば通貨高を気にしている、ということでよろしいでしょうか?
・申し訳ないのですが、全く違います。
・国際収支を気にする理由は、外貨保有量を気にするということです。
・家計で言えば、純預金量(預金量-借金量)の多寡を気にしているということになります。
・家計では、預金少なく借金多ければいわば貧乏ですよね。
・そういう意味で国家においては、国際収支が良好でなくてはならないという意味です。
要するに貿易収支ですよね? 通貨高でなければ問題ないのでは?
>要するに貿易収支ですよね? 通貨高でなければ問題ないのでは?
・いやものすごい問題です。
・貿易収支は経常収支の一項目にすぎないのですが、
・ところで、国際収支そのものといってよい概念の
・経常収支及び対外資産負債残高は家計に例えれば、
・労働による家計の所得収支及び
・銀行における借金額と預金額に当たるからです。
・もう少し、国際収支について、別の言い方すると、
・外貨保有量と外貨収入に見合った外貨支出を行う必要があるということです。
・これが無視されれば日本が破産する可能性高まります。
・財政支出においては“フリーランチはない”は現実にそぐわない判断ですが、
・国際収支面、この面においては“フリーランチはない”とご認識いただきたく思います。
いえ、ですからその国際収支を支えるのは、貿易収支=ドルの収入ですよね?
つまり通貨高にならない=問題ない、では?
まあ、通貨高になったらなったで、バブルの時のように、海外資産を海外資産を買いあさりそうな気がしますが。
>いえ、ですからその国際収支を支えるのは、貿易収支=ドルの収入ですよね?
・問題にしたいことは凝縮すればそういうことになりますが、
・通貨高のことではなく、輸入額のことになります。
・財政拡大によって、企業競争力強化が必要ですが、
・その財政政策の選択によって、資源輸入の増加による輸入額の増加、ひいては貿易赤字の拡大にしてはいけないということが言いたいことです。
おっしゃりたいことはこうですか? 経済成長する=資源がたくさん必要=国際収支が赤字になる可能性がある
確かに日本は資源輸入国ですから、貿易収支ゼロ以上が望ましいでしょうね。
1996年のまだデフレでないころも、貿易収支は黒字ですし、デフレに転落してからも、貿易収支に変わりはないですよ?
http://frequ2156.blog.fc2.com/blog-entry-169.html
経済成長による資源輸入の増大の危惧はわかりますが、以下のような式も成り立つのでは?
・需要活発化=利益拡大=研究開発投資の増加=国際競争力の強化
1996年(インフレ)~2011年(デフレ)まで、貿易収支はほとんど変わってませんので、心配なくてよいのでは?
※2012年に石油高騰により、赤字=要するに石油の値段次第
>おっしゃりたいことはこうですか? 経済成長する=資源がたくさん必要=国際収支が赤字になる可能性がある
・経済成長にも資源消費の多いものと少ないものがあるということですね。どの分野で経済成長するかが大事だということです。
・それによって輸入量が変わるでしょ。
>確かに日本は資源輸入国ですから、貿易収支ゼロ以上が望ましいでしょうね。
・世界の歴史を見れば、元宗主国を除けば、国際収支が悪化した国々はハイパーインフレに見舞われています。日本をそのような破産状態にしたくないということです。
佐藤先生にはこんな面白いジョークはできないのでそりゃ真実でしょう(笑)
しかし、実際の所MMTの財政制約条件と新古典派の財政制約条件て差が無いんですよね
(どちらもインフレが基準、新古典派は財政赤字も問題に上げてるが
これはそれ自体ではなく結果のインフレへの危惧なので結局インフレ)
最大の差異は志向する財政政策が積極か緊縮かという点でして
経済学の歴史というものがその実、財政政策の政治闘争とそのレトリックの歴史でしかないのを実感した次第です
うーん、ちょいと異論を。新古典派経済学は「貨幣は中立」とか言ってませんでした? 端的に言えば「デフレもインフレも起こらない」みたいな。
多分ですが「デフレも起こらない」=「緊縮財政」だったかなぁ? と。違いましたら申し訳ないです。
>財政政策の政治闘争とそのレトリックの歴史でしかないのを実感した次第です
これは事実かもしれないですね~。経済と政治は不可分なのです。
どういう異論なのかちょっと意図を掴みかねますが
私の知る新古典派の貨幣中立命題は、「貨幣は物価には影響を及ぼすが生産活動や雇用には影響がない」
という仮定なのでそういうことはないです。
というか貨幣が物価にも完全中立という前提なら、連中の結論も緊縮にはならないでしょうw
そうなのですか……。これは私の勉強不足でした。
ホワホさんにご質問を~。ちと勉強させていただきたいのですがm(__)m
貨幣の中立命題調べましたら、おっしゃる通りでした。お恥ずかしい。
どうも、貨幣の中立命題→貨幣数量説(確か、物価は日銀当座預金も含めた、貨幣の数量で決まる的な?)につながるのですよね?
イコールで、リフレ派の「金融緩和でインフレ!」理論となる、という理解であってますかね?
>3 信用創造は銀行によって行われる(日銀、市中銀行の2種類の信用創造
・それと日銀でも信用創造が行われているとするのは事実誤認だと思います。