なぜゼロ金利になったか?MMTと日本経済史でわかりやすく解説

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 本稿では少し専門的な話をしたいと思います。

 主流派経済学や有識者は、「財政赤字が増えれば、金利が上がってハイパーインフレ!」と主張します。
 現実はどうでしょう? いまだにゼロ金利、マイナス金利であり、金利が上がる素振りすらありません。またインフレ率も2018年で1%弱です。

 じつは自国通貨建ての政府赤字は、金融危機を抑制する、という驚愕の事実を、本日は解説してみたいと思います。

時間がない人のための、ざっくり結論

  1. 日銀が国債引受(金融緩和)すれば、準備預金が増えていく
  2. 高度成長期は朝鮮特需と、民間負債の拡大が引き起こした
  3. 証券不況や金融危機は、民間負債の拡大で起こる
  4. 逆説的に、政府赤字の拡大は金融危機を抑制する
  5. 昔、コール市場の金利が高かったのは、均衡財政の責任
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日銀国債引受で、準備預金が増えていく

 金融緩和と日銀国債引受で、準備預金は異常なペースで増えています。と書きますと、何が何やらわからないかもしれないので、少し解説します。

京都大学レジリエンス実践ユニット・MMT勉強会:「 MMT(現代貨幣理論)の論理構造と実践的意義」【講師:青木泰樹】
この動画、日本ではじめてのMMT(現代貨幣理論)の講義動画です。見なきゃ損です。

 日銀の信用創造とは、政府が国債発行をして、日銀が引き受けるという構造のことです。詳しくは信用創造とは?わかりやすく信用創造を初心者向けに解説を、ご覧ください。

 もう少し簡単にいえば、政府が自国通貨建て国債を発行するほど、構造的に必ず、準備預金は増えていくのです。
 準備預金が増えるとはどういうことか?

 銀行はインターバンク市場(コール市場、手形決済市場など)で、現金を融通しあっております。翌日物といわれる取引がコール市場では存在し、ここで現金を貸し借りするのです。
 しかし準備預金が増えるということは、インターバンク市場で借りなくて済むことになります。
参照:無担保コール翌日物│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券

 したがって、翌日物金利は現在おおよそ、0.1%程度です。つまり「翌日物で借りなくても、準備預金がある」ので、コール市場はあまり必要ない、ということになります。
 もっと簡単にいえば、準備預金がたくさんあるので、現金を一気に引き下ろされても、全く大丈夫という状態です。

日本国債発行史、1965年までは均衡財政だったという事実

 昭和の時代は、コール市場の金利が高かったようです。まず、この事実を覚えておいてください。

 日本の国債発行は、意外に思われるでしょうが敗戦後、初めて国債発行したのは1965年です。敗戦後20年近く、日本は均衡財政政策を取り続けていました。
参照:財政に関する資料 : 財務省

 一方で高度成長期1954年~1974年と一般的に言われます。
 この事をもって、「ほら見ろ! 政府負債がなくても、成長できるじゃないか!」という主張が見られますが、朝鮮特需の影響を忘れてはいけません
 日本の経済史、国債発行史をたどってみましょう。

朝鮮特需と民間負債の増加、証券不況

 朝鮮特需は1950年から始まり、1950年~1955年の6年間で36億ドルを日本にもたらしたとされています。
 高度成長期は1954年からですので、日本の高度成長期は、朝鮮特需によって引き金を引かれたわけです。

 1964年に大手鉄鋼企業等々が破綻し、証券会社も軒並み赤字に陥ったようです。これを証券不況といいます。ただ、個人消費にはほとんど影響を与えなかったようです。
 このことから、朝鮮特需が終わり外需が失われたために、鉄鋼企業が破綻したとなります。

 朝鮮特需によって需要がもたらされ、過大な投資によって企業負債が膨れ、朝鮮特需の終了とともに、負債が不良債権化したというわけです。

 翌年の1965年、日本政府は戦後初の国債発行を2000億円行います。この国債発行によって不況の深刻化を免れ、1974年まで高度成長期が続くこととなります。
※以降、国債新規発行は常態化しました。

政府赤字の拡大が、金融危機を抑制する

 なぜ1964年の証券不況が起きたのか? 非常に簡単に申し上げれば、朝鮮特需発生で外需が発生し、それに応えるべく企業は投資をして負債を拡大させたからでしょう。
 また証券市場も1960年代に活発化しました。これは株式という「企業貨幣=企業負債」の発行が活発化したことを示します。
※株式は発行主体の企業のバランスシートで、負債の部に計上されます。

 簡潔にまとめると、高度成長期前半は企業の負債と、朝鮮特需によって支えられていたのです。
※1964年以前は、日本政府は均衡財政であったので、必然的に上記の帰結になります。

 民間企業の負債拡大は、何かのショックがあればすぐに金融危機になります。逆説的に、自国通貨建ての政府赤字の拡大は、民間の預貯金を生み出すので、金融危機が抑制されるのです。

 実際に世界的に、政府が財政黒字になるとバブルが発生し、金融危機になることが多いようです。
参照:「財政赤字の拡大」は政府が今やるべきことか | 東洋経済オンライン(中野剛志さん)

 考えてみれば当たり前で、GDPが同じ(ないし拡大している)で政府が黒字になるということは、その裏で誰かが負債拡大をしてなければなりません。
 証券不況は企業が負債を拡大し、2008年のリーマン・ショックでは、アメリカの個人負債が拡大していたのです。
※リーマン・ショックについては、CDSなどで企業負債も拡大していた。

 昭和の時代にコール市場が高金利であったのも、政府赤字が足りなかったからだ、と解釈するのが自然でしょう。
 政府赤字拡大と日銀国債引受=準備預金の増加=現金(マネーストック)の増加です。
 高齢の方ですと、当時銀行で借りるのに苦労したという方もいらっしゃるでしょうが、じつは政府の政策が原因(マネーストックの不足)であったのです。
ゼロ金利だから、政府支出が足りているというわけではありません

日本がMMT(現代貨幣理論)理想の地といわれる理由

 日本はアメリカのMMTer(現代貨幣理論者)やメディアから、MMT理想の地と言われるようです。緊縮財政ながら、金融緩和で準備預金が拡大し、金利は限りなくゼロに近いのですから、そう言われるのも理解できます。

 先日、麻生大臣は「日本は(MMTの)実験場ではない」との答弁をしたようですが、MMT(現代貨幣理論)は「現実の金融構造を詳らかにする」ものであり、実験は”必要ない”のです。
 麻生大臣の答弁は、全く的を外していると言わざるをえません。

 イデオロギーがどうであれ、事実として日本はMMT(現代貨幣理論)の論じる通りの現象が、そのまま現実に起きているのです。
※MMTが現実を論じている以上、当たり前といえば当たり前ですが……。

 しかしこのまま緊縮財政を続け、プライマリーバランスを目指す、ないし達成するとどうなるのか? を最後に論じます。

  1. GDPが縮小する
  2. GDPが縮小しない、ないし拡大するとすると、民間負債が増大する

 上記の1.か2.のいずれかになります。GDPの縮小は当然、国民の貧困化です。2.のGDP維持ないし拡大の場合は、企業ないし個人の負債増加になり、金融危機の恐れが高まります。
 プライマリーバランス達成は、国民の貧困化orバブル→金融危機のいずれかを引き起こすことになります。

 なんともバカバカしい目標ですので、是正しなければなりません。

まとめ ゼロ金利になったのはどうして?

  1. ゼロ金利とは基本的に、短期の賃借を指す
  2. 金融緩和によって、預金準備が増加したので、インターバンク市場(コール市場)では0.1%程度の金利になり、ゼロ金利になった
  3. 金融緩和(国債引受)には、国債発行残高が必要=政府支出が必要=政府赤字が拡大しても、日銀国債引受で現在の金利水準は維持される=金利の高騰はありえない

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