IMFが日本に財政出動を求める-世界経済の不透明さが理由か?


 2008年以前のIMFといえば、プライマリーバランス至上主義でした。現在の日銀総裁である黒田総裁が財務官僚だったとき、IMFの勧告に対して「日本が財政破綻するなど、ありえない!」と書面で抗議したことがあったそうです。

 そのIMFが報道によると、日本に財政出動を求めているそうです。
 本日はIMFの姿勢が、どのように変化してきたのか? を解説し、逆説的に日本のプライマリーバランス至上主義が、いかに遅れているのかと指摘したいと思います。

IMFが日本に財政出動を求める

 日本、景気悪化には金融緩和より財政出動で対応すべき=IMF高官 (2019年4月12日) – エキサイトニュースによりますと、IMFの高官が「景気悪化に対しては、財政出動で対応するべきだ」との見解を示したとのことです。

 長い記事ですので、ポイントを要約しましょう。

  1. 景気下振れリスクが顕在化した場合、金融政策より財政出動で対応するべき
  2. 消費税増税の延期には反対(予定通り実行するべき)
  3. 海外からの逆風で、景気悪化するリスクはあるが、回避できると思っている
  4. 金融緩和の拡大余地は少ない
  5. 日本の金融機関は、おおよそ健全だ

 1.の財政出動で対応するべき、という見解には賛成できるのですが、2.の消費税増税するべきと1.が矛盾しています。
 日本はまだデフレ脱却したとはいい難い状況です。どのような理論で、2.のような見解が出てくるのか? 不思議ですが、記事には書かれていませんでした。

 3.の「海外からの逆風で」は本質をついていて、アベノミクスのGDP上昇のほとんどが外需、つまり輸出頼りであり、内需は依然として盛り上がりません。
 世界経済、特に中国とアメリカが減速すれば、日本も道連れというわけです。

IMFがケインジアンになった?ワシントン・コンセンサスからの脱却

 2008年以前のIMFといえば、バリバリの新自由主義組織でした。2008年のリーマン・ショック後に、徐々にその姿勢を変化させてきたといえます。

 IMFにはワシントン・コンセンサスという、ポリシーが存在しました。wikiによりますとこうです。

  1. 財政赤字の是正
  2. 補助金カットなど財政支出の変更
  3. 税制改革
  4. 金利の自由化
  5. 競争力ある為替レート
  6. 貿易の自由化
  7. 直接投資の受け入れ促進
  8. 国営企業民営化
  9. 規制緩和
  10. 所有権法の確立

 しかし世界経済が、長期停滞と囁かれ始めた2013年あたりから、姿勢が変化し始めます。ワシントン・コンセンサスからの転換 | 三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ(2013年9月)によれば、バリバリの新自由主義ではどうにもならないと気が付き始めたのが、2013年です。

 2018年には、政府のバランスシートの概念を導入しての分析まで出てきます。
コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論 – ロイター

 そして冒頭で紹介しましたように、”あの”IMFが財政出動にまで、言及するようになったのは、昔のIMFを知る者にとっては、大変な驚きです。

世界経済の情勢変化とIMFの姿勢の変化

 なぜこうもIMFの姿勢が変化したのでしょうか?
 大きな原因としてはやはり、2008年のリーマン・ショックと、それに伴う世界経済の長期停滞が関係しているのでしょう。

 分析にバランスシートを取り入れ、負債残高の絶対額は重要視しなくなりました。また2014年あたりだったかと思いますが、「格差は経済成長率にマイナスだ」というレポートまで、IMFから提示されたのです。

 世界経済の長期停滞は、グローバル化の必然といえます。偏在した富は、消費には回されずにひたすら、金融投資へと向かいます。
 金融投資そのものは何も生産しませんから、ほとんどGDPには関与しません。
 実物経済の投資が停滞していれば、当然ながら技術革新も経済成長も停滞することになります。

 またIMFが指摘したように、格差拡大も経済成長率の低下を生みます。

 新古典派経済学が何をいっても、”現実的には財政出動しかない”ので、IMFは姿勢を変化させたわけです。
※もっとも――IMFの姿勢の変化は良いとしても、分析や勧告の半分は、あまりあてにならないと判断しています。

プライマリーバランス至上主義の遅れた国家、日本

 一方で日本はどうでしょうか? あのIMF”すら”バランスシートでの分析をしはじめ、コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論 – ロイターのように「日本には問題なし」として、しかも「公共投資は純資産を増大させる」と分析しています。

 国債ばかりに焦点をあてるのではなく、政府の純資産や資産にも焦点を当て始めたのです。

 ところが日本は、いまだに「クニノシャッキンガー」という、遅れた言説を有識者や政治家、マスメディアが振りまき、国民も信じ切っている人が多数いるという状況です。
 すでに世界の主流では、ワシントン・コンセンサスは否定されているのです。

 自国通貨建て国債では財政規律は気にする必要がありませんし、規制緩和や民営化はデフレ圧力を強めるだけです。
 増税は個人消費を停滞させ、個人消費の停滞は、企業を研究開発コストカットへと走らせますので、当然ながら技術革新やイノベーションも起きにくくなります。

 企業は需要停滞の中で短期主義にはしり、長期視点を忘れ、実物経済への投資もおろそかになります。
 株主至上主義は労働分配率を下げ、格差も広がるばかりとなります。

 実際に失われた20年といわれる期間、上述したことが起き続けたわけですが、安倍政権になりさらに加速し、それを国民が支持するという有様です。
 これで、凋落しないほうがどうにかしております。

 せめてバランスシートを理解し、日本に財政問題は”存在しない”ことを、理解してほしいと思います。

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