ブレグジットの混迷、EU離脱はかくも困難なのか
イギリスのEU離脱――ブレグジットが暗礁に乗り上げているようです。まさに迷走と表現して良い状況のようです。
経緯はおぼろげですが、以下のようなものだそうです。
- メイ首相のEU離脱案が1月15日に否決される
- メイ首相が修正案を提示するも、3月12日に否決。「メイ案か合意なき離脱かのどちらかだ」は強迫戦法とも表現されている
- 先日の3月13日、EUとの合意なき離脱回避が可決
- 本稿を書いている3月14日に離脱時期の延期が採決される
メイ首相の離脱案はEUに有利すぎて賛成できない、しかし合意なき離脱もしたくないということのようです。
ただし、イギリス議会で「離脱時期の延期」が可決されたとしても、EUがそれを受け入れるかどうか? は全く別のお話で、どうなるのかという見通しは不透明です。イギリスのEU離脱撤回まで可能性としては存在するわけです。
もしブレグジットを撤回するとなると、またも国民投票が必要になるのでしょう。しかしこれ……そこで「やっぱりイギリスのEU離脱多数」となったら、どうなるんでしょう?
まったくもって状況が見通せないのです。
ロックイン効果とスイッチングコストとブレグジット
ロックイン効果とは経済学用語として使用される概念です。EUとイギリスの話で言えば、一度EUに加入してしまうと、抜けるのが大変ということです。
これはグローバリズムにも言えます。一旦移民拡大政策をしてしまうと、不可逆的になってしまうわけです。しかも期間が長ければ長いほどに、ロックイン効果も強くなります。
したがって方向を転換しようとしたとき、膨大なスイッチングコストがかかってくるというわけ。
イギリスのEU離脱で言えば「離脱すればしたで、イギリスの経済の見通しが暗くなる」ですとか、「離脱するために何兆円も請求される」ですとかがスイッチングコストと言えるでしょう。
またEU離脱にかかる労力や期間もそれに当たります。
1つ秀逸な記事がありましたので、ご紹介したいと思います。
バスから降りられない! | 三橋貴明オフィシャルブログ
結局、グローバリズム路線というのは、一度、採用してしまうと、そう簡単に「バスを降りる」はできないという話です。
「バスに乗り遅れる。乗ってみて、ダメだったら降りればいい」
などと寝言を言っている連中は、何も考えていないか、自己利益のためにグローバリズムを推進したいのか、いずれかと考えて間違いありません。
大阪都構想とEUの共通点
EUに一度加盟してしまえば、EUから抜けるのが非常に難しいという”不可逆性”は、大阪都構想にも共通しています。
大阪都構想はご存知の通り大阪市解体構想ですが、大阪市を解体してから「やっぱり、大阪市に戻したい!」などと言っても、ほとんど不可能なのです。
イギリスがEUの前身であるECに加盟が1973年ですが、共通通貨のユーロを採用しなかったにもかかわらずここまでもめているのです。もしユーロを採用していたら? もっと不可逆性は強まっていたことでしょう。
また上述した三橋貴明さんの記事では、以下のように述べられております。
これは、農協改革などの国内の規制でも同じです。例えば、今後、農協解体的な農協改革に対し批判が高まり、「元に戻そう」となったとき、
「一体、いかなる形で元に戻すのか?」
という点において、農協内部ですら意見が分裂し、ましてや国民的な合意を得ることは難しく、ブレグジットのように紛糾することになるのでしょう。
大阪都構想も一度採用してしまえば、大阪市を復活させようとしても大阪市域で意見が分裂し、紛糾することは誰の目にも明らかです。
イギリスでもう一度、EU離脱の国民投票をしたらどうなるか?
状況が不透明ですのでどのようになるのか? わかりませんが、再度ブレグジットを国民投票するという事態もありえるのだと思います。
仮にここでイギリスのEU離脱賛成多数であれば、イギリスの政治家たちも腹をくくるのでしょうが……もしもEU離脱反対多数になれば? どうなるのでしょう。
いくつか問題が出てきます。
1つは「いつの時点の民意が正しいかなんて、誰にも根拠が上げられない」という問題。上記のケースですと民意は、わずか3年で真反対の結論を出したことになります。
最新の国民投票の結果が正しい! などと誰が言えるのか。世論とはときどき、矛盾を孕んだ結論を出すものです。
例えば最近の世論調査では、「大阪都構想には反対多数(42%)だが、大阪維新の会は支持多数(38%)」という結果になってまして、これはどう考えても矛盾しています。
2つめはブレグジットを再度国民投票したとして、それはEUからの圧力によって民主主義が歪められているのではないか? という問題。
そもそもグローバリズムと民主主義は、相性が非常に有害なことになるのだと思います。
ポストトゥルースと日本と大阪-大阪都構想、基幹統計不正と嘘のはびこる時代 – 高橋聡オフィシャルブログで論じたように、グローバリズム=ポストトゥルース=道徳の崩壊=嘘がまかり通る、であり正常な判断力を奪っていくからです。
イギリスのEU離脱――ブレグジットがどのようになるのか? わかりませんが、非常に象徴的な結果に終わることになるのではないか、と思います。
世界がポスト・グローバリズムに進めるのか、それともグローバリズムが継続するのか? を占う出来事の1つになるのではないでしょうか?
>1つは「いつの時点の民意が正しいかなんて、誰にも根拠が上げられない」という問題。上記のケースですと民意は、わずか3年で真反対の結論を出したことになります。
>最新の国民投票の結果が正しい! などと誰が言えるのか。世論とはときどき、矛盾を孕んだ結論を出すものです。
以前、ブレグジットがこの界隈で話題になった時・・、国民投票というものそのものが、代議制民主主義の否定・・、みたいなのりが各所でありましたが・・、こうなってしまいますと・・、結局、その通りだったのかなあ・・、と、思わざるをえないですね・・・。(議会で賛成多数で可決された内容を、再度、国民投票にかけるものはわける)
ブレグジットですが・・、個人的には一番の問題は、アイルランドとの国境の問題かと思いますね・・。
まあ、ここも、過去のイギリスのアイルランドの支配の因果がまわってきたかと思うと、なかなか面白いですが・・・。
代議制民主主義の否定という要素も、確かにありますね~。イギリスがどうなるのか? 非常に興味深いところです。