現代貨幣理論(MMT)批判に、再反論するQ&A-議論形式で理解を深める

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Q&A方式で現代貨幣理論への理解を深めよう

 現代貨幣理論(モダンマネタリーセオリー MMT)、貨幣負債論、国定信用貨幣論と呼ばれる論理は、ほとんど同一のものを指します。なぜいくつも呼び名があるのか? 現代貨幣理論(MMT)は出てきてまだ日が浅く、統一された呼び名が存在しないというのが事実です。

 現代貨幣理論(MMT)に対して、たくさんの批判が存在することは存じています。
 本日は、Q&A形式で検討してみようと思います。

 その前に、いくつかの言葉の定義だけ明らかにしておこうと思います。
 通貨:法定流通貨幣の略語。日本で言えば、”円”という単位がこれに当たります。貨幣は小切手なども含む。
 負債:返済の義務の有無にかかわらず、バランスシート上で計上される数字。
 債務:(法律上で)返済義務のある負債。

Q. 貨幣(通貨)は負債ではない!

A. 経済を考える上で「誰かの消費=誰かの所得」であり、「誰かの負債=誰かの資産」です。これが崩れることはありえません。
 仮に通貨が「負債ではない」とすると、逆に通貨は「資産でもない」ことになります。
 通貨が所持している人にとって資産である、と定義するのならば「誰かの負債である」と定義しなければなりません。

 通貨は日銀と政府を併せた統合政府の負債です。現実的にも日銀のバランスシート上は、そのように計上されています。
 ただし債務(返済義務を伴う負債)ではありません。なぜなら、法律で返済義務がないからです。

Q. 現代貨幣理論は新自由主義的!

A. 現代貨幣理論の貨幣観は、古くは200年以上前の地金論争に端を発します。つまり、近代化とともに議論されてきたのが貨幣論と言えます。

 貨幣論には基本的に、商品貨幣論と表券主義の2種類しかありません。表現を変えれば貨幣外生説(外生的貨幣供給論)と貨幣内生説(内生的貨幣供給論)の2種類です。
参照:貨幣供給内生説vs貨幣供給外生説: LAW,ECONOMICS&  PHILOSOPHY

 ケインズ、アバ・ラーナー、高橋是清、ハイマン・ミンスキー等々の、いわゆるケインズ学派――正確には現代貨幣理論はポストケイジアン――と呼ばれる経済観の人たちは、内生的貨幣供給論を支持しています。
 逆にリカードや新古典派経済学――新自由主義経済学、ネオリベラリズム――などは、外生的貨幣供給論を支持しています。
 現代貨幣理論は内生的貨幣供給論で組み立てられているので、新自由主義とは対極に位置する貨幣観であると言えます。

 この2種類の貨幣観以外は現在のところ、生まれていません。私は200年以上の議論に、新たな意見を唱えるほど頭はよくありませんし、そんな度胸もありません(笑)
 中には「貨幣論を語るのは、それ自体が新自由主義的だ」という批判も存じてますが、それは「新自由主義とはなにか?」を理解していない言としか解釈不可能です。

Q. (現代)貨幣論は実際の経済の役にたたない!

A. この設問というか批判は、「経理部なんて(会社の)売上を上げないから、役に立たない!」と言ってるに等しい暴論です。
 確かに現代貨幣理論に限らず、貨幣論そのものはGDPを上げたりしません。sorata31さんからご紹介いただいた言葉が、非常に腑に落ちました。L・ランダル・レイの言葉だったかと記憶しております。
「現代貨幣理論とは、レンズのようなものだ」

 経理という会計を通すと見えてくる事があるように、現代貨幣理論から見えてくる「経済観」があるのです。
 かつてケインズは「人は思想の奴隷」と表現しましたが、現在の日本は緊縮財政という思想に犯されています。それを拭い去れる可能性が、現代貨幣理論には存在するのです。
 思考とはいくつものフレーム(思想や定説や論理)と、そして言葉から成り立ちます。そのフレームの1つとして、現代貨幣理論は有力な論理であろうと思います。

Q. 機能的財政論だけで充分! 現代貨幣理論は必要ない!

A. 政治戦略としては百歩譲って、それでも構わないかも知れません。しかし忘れてはいけないのは、機能的財政論の根本にある貨幣観は現代貨幣理論的貨幣観である、という”事実”です。
 機能的財政論は外生的貨幣供給論では”成り立たない”のですから。
 上記の事実から必然的に、機能的財政論の根幹には内生的貨幣供給論が存在する、と解釈されます。

 それは違う! と反論されるならば、どのような貨幣観が機能的財政論の根幹に存在するのか? の説明が必要です。私の知る限りにおいて、現代貨幣理論や内生的貨幣供給論を否定しながら、機能的財政論の貨幣観を説明するのは不可能です。
※全く新しい貨幣論を打ち立てる、という可能性は存在しますが……それが出来たら、天才以外の何物でもありません。学会にすぐに発表しましょう。皮肉でも何でもなく、偉大なことです。

労働と貨幣の関係性

 補足としていくつか、書いておきたいことがあります。近代化以降の現代資本主義において、労働の対価は常に、貨幣で支払われてきました。おおよそは通貨で、です。
 労働の定義とは、現代資本主義の中では「貨幣(主に通貨)で評価される、財やサービスの生産」です。
 だからこそ、需要が少ない=労働機会が少ない=通貨流通量が過小というデフレ状態や、もしくはその逆のインフレ状態が存在するのです。

 現代貨幣理論では市場の通貨流通量(需要と供給)のコントロールは、国債を通じて行うべきと考えます。デフレであれば積極財政=通貨流通量の増加=需要増加を推し進めるわけです。
 このように、労働と貨幣には大いなる関係性が存在します。

 真面目に労働していれば、いつか報われる(はず)と考えるのではなく、「真面目に労働したら、報われる社会を作る」のに現代貨幣理論は必要な理論なのです。
 もっとも――真面目に労働をするというのは美徳です。否定をする気はありませんが、報われない人たちが多数存在する現在の社会を、どう改善していくか? を考えることも必要です。
 1997年をピークに日本人の所得は、50万円ほど下がっています。これは「日本人が真面目に労働しなくなったから」でしょうか? 私は断じて違う! と明言します。

 資本主義社会の仕組みと、労働が報われるという方向性を考えるときに、なぜ貨幣論を無視できるのか? 私には到底理解できそうにありません。

保守思想と現代貨幣理論の相性

 現代貨幣理論の概略や稿は検索: 現代貨幣理論 – 高橋聡オフィシャルブログBacchus(バッカス)-反グローバリズム&LIFEをご覧ください。
 ここでは保守思想と現代貨幣理論の相性について、述べたいと思います。じつは、保守思想と現代貨幣理論は相性が大変よろしいと解釈しています。

 現代貨幣理論は「現在の金融、貨幣構造を詳らかに解き明かす」ことが目的です。どのような構造で、どのように回っているのか? を解き明かす学問と言えます。
 この根底には何が存在するのか? 近代という資本主義の時代、つまり200年続いた社会の受容が存在するわけです。「ここが悪い!」「あそこが悪い!」ではなく、まずは現実構造を解き明かそうというわけです。

 保守思想もまた、不合理であれ何であれ伝統を重視します。伝統とは言い換えれば「現実」です。はっきり申し上げると、日本には保守思想や伝統、クライテリオンは蒸発しつつあります。
 だからこそ、伝統や文化、慣習や常識や土地から「再発見」しなければならないのです。
 近代以降、1970年代から台頭してきた新自由主義経済学は、貨幣論を封印しました。しかし現代貨幣理論は、18世紀の地金論争から貨幣論を再発見し、発展させていると私は解釈します。

 ほらね? 相性がよろしいでしょ。
 他にも、現代貨幣理論の貨幣観は「(共同体内での)貸し借りの貨幣観」と言えます。共同体を重視する保守思想と、相性が悪いはずがないじゃないですか。

完全だとは思わないが、安易に変えるべきではない

 貨幣論議論をしているときに、「これだから駄目だ! 変えなきゃいけない!」という議論をよく聞きます。現代貨幣理論が現実を(現代貨幣理論的視座で)、詳らかに説明するのに対して、その現実を否認・否定するというわけです。
 とんでもない話です。

 なぜなら、金融構造の全体論的な視野を持たないのに、「何かを変える!」とは良く表現しても革新的、悪く表現すれば「目隠しをして突っ走る」以外の何物でもありません。
 何度も申し上げますが、貨幣観には2種類しか存在しません。外生的貨幣供給論は論外としても、内生的貨幣供給論や表現主義、現代貨幣理論を否定したら、よるべき貨幣観がなくなります。

 現代貨幣理論も別に、完全だとは申し上げません。なにせ200年以上の時を経て、再発見されたばかりですから。
 簡略的ではありますが、これにてQ&Aをひとまず終わります。

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>現代貨幣理論(モダンマネタリーセオリー MMT)

以前からヤンさんの稿に対して思っていましたが、「モダンマネタリーセオリー」ではなく「モダン・マネタリー・セオリー(Modern Monetary Theory)」ですよね^^

安倍政権は「社会主義2.0」のパイオニア – アゴラ
http://agora-web.jp/archives/2037446.html

あの池田信夫氏も、「MMTなどトンデモ理論だ~!」と言っていた割に気になって仕方ないみたいです(笑)。あと5年くらい経過すれば、前言など忘れてMMTを前提とした経済観を池田氏は語っているような気がいたします(ヤンさんは無理だと仰いますが)。

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