映画、帰ってきたヒトラーレビュー コメディであり問題提起作品

配信型200円で、アマゾンへリンクしてます。

映画「帰ってきたヒトラー」あらすじ

 最近は近代の独裁者を研究しております。そのついでに映画や動画も見たりしています。なぜって? 理由はいくつかあるのですが、政治的な支配層と被支配層の関係性や構造を調べるのに、必要な要素の1つだからというのが、大きな理由です。

 もう1つは……単に歴史への知的好奇心です。

 さて、帰ってきたヒトラーを先日2周しました。前に一度見て、先日もう一度見たわけです。あらすじはこうです。

 大戦末期、地下壕にこもっていたヒトラーは2014年にタイムスリップします。軍装のまま通りを歩き、いろいろな人に「総統官邸はどこだ?」「今は何年だ?」と聞くのですが、相手にされずに行き倒れます。行き倒れた先は売店。優しい店主が面白がって、1泊させてくれます。

 もう1人の主人公の売れないフリーの映画監督志望のカメランは、その日会社から契約打ち切りされます。たまたま取っていた動画は、ヒトラーがタイムスリップして倒れ、起き上がった瞬間のものでした。

 そこでこのカメラマン、ヒトラーを探し当ててヒット映像を作ろうとします。そしてヒトラーは番組に採用され、そこで演説をぶちかまし、笑いと共感をドイツ中で呼ぶようになります。一大ブームになるわけです。

 しかし最後の方でカメラマンは「……本物のヒトラーなのでは? お笑い芸人ではないのでは?」と疑い、確証を得て……。上述したところまではコメディなのですが、最後の最後に恐ろしい現実が――ネタバレになるのでここまでです。

この映画、帰ってきたヒトラーはコメディだが後味は悪い

 ドイツの2015年の状況を記しておきましょう。イスラム難民がまだ爆発的に増えるか増えないかのときであり、それでもドイツは移民拡大しており、ドイツ国民の不満は相当に溜まっている時代です。

 ちなみにこの映画、原作が小説でして2012年に発行されているようです。つまり、ドイツ国民の移民への不満というのは、前から絶えずくすぶっていたようです。

 そしてこの映画は、ヒトラーに扮した役者が実際に街中を撮影に周り、それに反応しているのはエキストラでもなくドイツ国民、市民なのです。ヒトラーの役者はアドリブで、彼らと会話したそうでして、しかも! 襲われる危険性を考慮してボディーガードまでついたようです。

 つまりこの映画の市民の反応は、生のドイツ国民の反応なのです。私の見る限り、殆どがジョークとして捉えるか、好意的に捉えるかでありました。ドイツ国民の不満が、見て取れるようではありませんか。

 コメディタッチのこの作品ですが、最後は衝撃的な結末で幕を下ろします。一番最後に、コメディとしてみていた人は、現実に引き戻されて、後味の悪い感触を味わうことでしょう。これが、この映画最大の”売り”とも言えます。コメディであり、政治の問題提起・社会風刺の作品でもあるのです。

 私? この映画には5つ星をつけます。

見たい方はアマゾンからどーぞ。配信型で200円ですって。私はdTVで鑑賞しました。

ヒトラーとはなんなのか?

 しばしば、いえ常々ヒトラーは歴史で悪役として描かれます。どんなドキュメンタリーでも、ヒトラーを救世主として描くものはないでしょう。欧州各地への侵略、ホロコーストとユダヤ人迫害、政治犯などの粛清、枢軸国etc……。プロパガンダによって国民を騙し、操り、ドイツを戦争へと向かわせたモンスターとして描かれます。

 本当でしょうか?

 歴史的事実のみを述べるとすれば、ヒトラー政権はワイマール憲法という、当時最先端の民主主義的憲法のもとで、民主主義によって――多少の強引さ、権力闘争はあったにしても――選ばれた”政治家”でありました。当時、大多数のドイツ国民がナチスとヒトラーを支持していたのは、間違いがありません。

 ゆえにヒトラーは、合法的に”独裁者”になったのです。(ナチ党の権力掌握-wiki)

 そもそもヒトラーはファシズムを掲げていましたし、政権奪取前にも排外主義的な、ユダヤ人排斥を幾度も訴えています。当時のドイツ国民には――選ばないこともできたのです。

 しかし、当時のドイツは第一次世界大戦で莫大な賠償金を背負わされ、1929年の金融危機で失業率はただでさえ高かったのが、40%にまで跳ね上がったといいます。議会では30もの政党が軒を連ねて、決まらない政治どころか何もできないという状況でした。

 はっきりいって詰んでました。なにに詰んでいたか? 第一次世界大戦後の戦後秩序では下に置かれ、莫大な賠償金も戦後秩序を覆さないと払うしかない。国内の失業率は高騰して、大仰ではなく未来なんか見えない状況だったのだと思います。

 この状況でヒトラーから「失業者をなくす! 強い栄光あるドイツを再建する! そのためにはもう、独裁しかない!」と言われて、すがらない自信がありますか? 民衆は最後には、民主主義よりパンを選ぶのです。当たり前です。明日食べるものがなけりゃ、民主主義なんて意味ないじゃないか! というわけ。私もそう思うと思いますね。

 民主主義って「食うに困らないとき」しか選択できないのです。だから、民主制国家の最低限の責務は、民主制を維持したいのなら国民を飢えさせないことなのです。革命や反乱、一揆はいつも、飢えや困窮から起こるのです。

 ……あれ? そうするとおかしいですね? ヒトラーを選んだのはドイツ国民で、ヒトラーも言葉巧みながら、一応ユダヤ人排斥や戦後秩序を覆すことは、説明していた。ドイツ国民はヒトラーに未来を託すしかなかった。一体何が本当に悪かったんでしょう?

 ちなみに私、ヒトラーが”悪くない”と言うつもりは毛頭ありません。しかしヒトラーをモンスターに仕立て上げ、当時のドイツの状況諸々を軽視することは、「人間のドキュメンタリー」である歴史への冒涜です。ヒトラーも人間であった、と指摘しているだけです。

余談 第一次世界大戦当時の世界

 19世紀~20世紀初頭までは、近代史におけるグローバリズムの時代と定義されます。1929年の金融危機も、ハイマン・ミンスキーの金融不安定性仮説で説明が付きます。高い失業率や格差、例えばドイツにおいてユダヤ人の富裕層がいたことも、グローバリズム時代における必然だったのです。

 ヒトラーがグローバリズムの被害者だ、などという気は毛頭ありません。しかしこうした時代背景を含め、そしてグローバリズム時代には近隣窮乏化政策――ドイツの莫大な賠償金のような――が取られることは、珍しいことでもないのです。グローバリズムは最終的に、国家間に遠心力を働かせるのです。

 この中において、ファシズムの台頭すら必然と表現可能かも知れません。ファシズムとはイタリアのムッソリーニが、イタリア語のファッショ(結束)から生み出した言葉です。グローバリズムの時代において、原子論的個人に解体された国民を結束する。これがファシズムの意味だったのです。

 歴史は繰り返すと申します。1度めは悲劇として、2度めは喜劇として。もちろんその悲劇と喜劇を見るのは、私達ではなく後世の歴史家であるとお断りしておきましょう。

  • 帰ってきたヒトラー(字幕版) Amazonで200円。配信型で見る人はこちら
  • dTVでは3月26日まで配信とのこと。dTVは月500円で映画見放題……でも映画タイトル、私の好きなジャンルはちと少ない(笑)料理、歴史等々……(T_T)
4+

4
コメントを残す

2Comment threads
2Thread replies
1Followers
 
Most reacted comment
Hottest comment thread
3Comment authors
  Subscribe  
新しい順 古い順 最も評価の多い
更新通知を受け取る »
阿吽

 ヒトラーが、政治家として成功した人間か、失敗した人間かの2択でもし考えるのなら・・、これは、およそ600万人のドイツ国民を死なせたのですから、ドイツ国民の目から判断しても、失敗だったのでしょう。

しかし、当時のドイツにどの程度の選択肢があったのか・・?

おおまかに3つでしょうか・・?

だらだらと民主制をやって、貧乏になるか、最悪の場合、近隣の窮乏した国家に征服されるか?(ドイツがやったように・・)
(上記は、場合によったら平和主義は貧困への道の完成版みたいな国になるかもしれません)

または、赤化するか。

ファシズム化するか・・。

赤化してたら、どの道、ソ連に飲み込まれていたでしょうか・・・?(それとも、自分こそが正当な共産主義国家として、ソ連に喧嘩を売って、結果的に、第2次大戦と同じような結末を迎えるでしょうか・・・(笑))

戦争を選ばず、しかも、平和主義は貧困への道も目指さず・・、それでいて、あの当時、ドイツが再び反映する方法と言う第4の道はあったのでしょうか・・・?

国民全員が、コンピューターみたいな人間なら、もしかしたら可能かもしれませんが・・・・。

 返ってきたヒトラーは、かなりおもしろかったですが・・・、監督や役者さんが、微妙に左翼的平和主義者だったのが、ちょいと残念でしたね・・・。

そりゃあ、民主主義がヒトラーを生んだんだから、自分達が自分達で気をつけなければいけない・・、という指摘、部分は、正しい・・。(監督さん、役者さん個人に対するインタビュー記事で、左記のような内容のコメントがあったような気がします)

しかし・・、そこまでなんですよね・・・・。

今のままのドイツでは、その、左翼的平和幸せ回路そのものが、この21世紀にまた、ヒトラーを生み出しかねないという、その危険性に・・・。

左翼的幸せ回路からこそ、ヒトラーは生み出されかねないんじゃないかという認識は、なかったですね・・・。

ネオナチとか極右がヒトラーを生むのではなく・・、左翼的幸せラブアンドピース主義が(ヒトラーを)生むのかもしれないという所に・・・・・。

(まあ、つまりは、無分別な可哀そうな難民・移民受け入れ主義が、ヒトラーを生み出しかねないという所に・・)

(まあ、しかし、今のドイツに、またヒトラーを生み出す元気・・つまりは余力そのものが、あるのかどうかという話しもあるかもしれませんが・・・)

>帰ってきたヒトラー

以前から気にはなっていて、ヤンさんの解説で面白そうだなと感じ、先程DMMでブルーレイディスクのレンタルを予約しました。HDDレコの1.3倍速再生が私には毎回必要なため、ネット配信系のサービスが未だ利用したことがありません。。。