初心者も分かる通貨=負債の概念を理解する-現代貨幣論(MMT)の基本

初心者、初級者に向ける現代貨幣論(MMT)の基本

 現代貨幣論、いわゆるMMT(モダンマネーセオリー)と呼ばれる理論は、その概念を理解するのに一苦労することは間違いありません。私の感覚で言えば「国債が1000兆円を超えてヤバい!」と思っている人に、「国債はデフレだったらいくら発行してもOKなんだよっ!」というのを理解頂くくらい、難しい概念だと思います。

 先に簡単に、国債について「どこが理解を阻むのか?」を記しておきます。国家の会計と、家計や企業の会計を一緒くたに考えると、国債はデフレである限りいくらでも発行できる。いや、むしろ資本主義では、国債が増大していくことこそが正しいという概念が理解できません。

 端的にいえば、国家の負債は内債(自国通貨建て国債)である限り、理論的にはいくらでも発行可能なのです。最も――インフレが行き過ぎれば絞らなきゃいけない、という制約は存在します。

 さて、現代貨幣論(MMT)では通貨も負債の一種である、と論じます。本日はこのことだけに絞って、出来る限りわかりやすく書いていきたいと思います。

負債と債務の違いをまずは理解しよう

 負債とは経済学や会計学で使われる、バランスシート上の概念、数字です。ここには返済義務の有無は関係ありません。返済義務がなくても、負債として計上される場合もあるのです。例としては特に通貨や国債です。

 逆に債務という言葉は、法律も絡んできます。ググった定義は以下です。

特定の人に対して金銭を払ったり物を渡したりすべき法律上の義務。多く、借金を返すべき義務。 「―を負う」

https://www.google.co.jp/ より”債務”で検索

 債務とは「法律上の義務」が存在する負債のことを指すわけです。主にその義務は返済義務となるでしょう。箇条書きでまとめます。

  • 負債:会計学上の概念、数字。返済義務の有無は関係なく、返済義務のないものでも負債に計上される。
  • 債務:法律(学)上の概念で義務。負債で返済義務のあるものを主に指す言葉。

 ちょっと話がずれますが、国家の徴税は国民にとっては債務と定義できるのではないでしょうか? 金銭を国家に支払う義務ですから、広義では納税も債務と言えるかも知れません。――まだ考察しきっていないので、断言できませんが……(汗)

 と思って調べてみましたら、法律上は納税者を租税債務者と表現するようです。(コトバンク――租税債務より)

 さて、通貨=負債なのでしょうか? それとも違うのでしょうか? 以下の画像を見ていただければ、通貨=負債は明白でしょう。


 発行銀行券が、我々に使用している現金通貨になります。ね? 会計学上の負債でしょ。1つ注意点ですが、先程申し上げた通り、通貨に債務性はありません。つまり法律上の返済義務はないのです。……国債にも実質的に債務性はないのです。

 なぜか? 債務とは「法律で定められた(主に返済)義務」であり、(日銀が発行する、発行主体から見た)日本銀行券に債務(という義務)は法律上、定められていないからです。

 本題はここまでで、以下からは余談ですので、読み飛ばしても良いと思います。じっくりお読みになりたい方は、どうぞ読んで頂けたら幸いです。

 下に行くほどややこしいことを論じていますので、貨幣と通貨の定義までは読んで頂けたら嬉しいなと……(笑)

余談――貨幣と通貨の定義をしっかりしよう

 現代貨幣論(MMT)や貨幣負債論では、貨幣=(特殊な)負債と論じます。なぜ特殊なのか? については後述します。余談ですが現代貨幣論(MMT)では「現実の金融構造がどうなっているのか?」を議論していまして、「あるべき(理想の)金融構造はどうなのか?」は現在のところ、議論していません。

 それは、現実世界が現在の金融構造で回っており、急激な改革や理想主義的改革は”危険”という、警戒感の表れでもあるでしょう。ある意味で、現代貨幣論は保守的議論とも一致するのです。

 閑話休題。貨幣と通貨の定義についてです。通貨とは「法定流通貨幣(つまり国定貨幣)」の略語です。国家が定めた自国通貨を一般的には”通貨”と言い、貨幣は例えば手形なども指します。

 貨幣は「決済手段として使用できる、あらゆるもの」を指します。企業や個人に信用があるのならば、手形なども発行できるというわけです。つまり世の中には、個人貨幣というものも存在しうるのです。仮想通貨も「仮想貨幣」と、本来は呼ぶべきでしょう。

信用ヒエラルキーって何?

 国家が発行した通貨と、そこらへんの普通のおっちゃんが発行した借用書、貴方はどちらがほしいですか? と問われれば、100人中100人が「いや、そら通貨(日本円)やろ」と回答することでしょう。

 簡単に言えば、これが信用ヒエラルキーです。だから通常、普通の一般庶民は自分で貨幣を発行することはできません(笑)信用が低いから、というわけです。

 うろ覚えですが信用ヒエラルキーは、政府と日銀の統合政府、銀行、企業、個人の順番になっています。単に信用の大きい順というだけの話です。そして日々の決済手段――ものを買ったり、支払いをしたり――には当然ながら、一番信用の大きな日本円が使用されることになります。

租税貨幣論

 これも本題ではないので、軽く触れておきます。軍隊と警察のない国家を想像できますか? 国家としての体をなしていないのが分かると思います。国家の権力とは、その国家の安定性につながるのです。逆説的ですが、安定している国家とは国家の権力が強くなっていく、とも解釈できます。

 このような国家の権力を背景として、直接的に通貨(法定流通貨幣)を通貨足らしめているのはなにか? 国家の徴税権と考えられます。これが租税貨幣論のほとんどすべて、と言っても良いでしょう。

 逆に使用する通貨が変わる場合、多くの例では政権が変わったり、王朝が変わったりしております。前の王朝の通貨を、引き続き使用する例はあまりないように思えます。これも租税貨幣論を裏付けるのではないか? と思います。

現代貨幣論(MMT)・貨幣負債論まとめ

 貨幣論でしばしば見られる議論は、負債=債務と混同している議論です。一般的には、つまり企業会計や家計ではほとんど同じ意味なので、しょうがないのかも知れません。しかし貨幣論では、ちょっと頂けないことになるわけです。

 負債と債務を混同することは、国債の議論で国家会計と家計を混同することと、ほとんど一緒だったりします。

 後述すると約束してましたので、通貨=(特殊な)負債という意味について、触れたいと思います。通常、手形や国債などの負債は一般的には出回りませんが、通貨だけが「国内中で使用できる決済手段」として用いられます。

 つまり通常の負債は、そんなに広く決済手段としては用いられないので、通貨=(特殊な)負債となるわけです。信用ヒエラルキーなどの話が絡んでくるので、とりあえず後述はここまでです。

貨幣論を論じるときのポイント

 貨幣論の議論としては――現代貨幣論でなくとも――ポイントは以下になります。

  • 負債(会計学上の計上される数字、返済義務の有無は関係なし)と債務(法律上の主に返済義務を指す)の定義をしっかりすること。
  • 通貨(法定流通貨幣、国定貨幣)と貨幣の定義をしっかりすること。
  • 理想の金融構造を語るにも、現在の金融構造の仕組みを知らずして不可能です。まずは現実の金融構造を全体論的に定義し、解釈すること。
  • 経済全体の構造も全体論的に解釈したほうが、より良いでしょう。

全体論から見る貨幣論解釈

 最後に私の、経済全体や国家の構造の解釈を、簡単に箇条書きで記しておきます。

  • 国家とは共同体であり、あらゆる慣習、文化、常識などを共有しているので、国家内での経済は共同体であるからこそ、円滑になる。
  • 国家の権力は、国家の主権として通貨発行権を有し、経済に対して需要創出を行える。その手段として国債が主に用いられる。
  • 国債を支えるものは日銀の引受であり、それは統合政府が通貨発行権を有するためだ。
  • 通貨発行権は国家の主権と権力(軍隊、警察なども含む)によって保たれる。直接的に通貨を通貨足らしめているのは、徴税権だ。
  • 政府の需要創出とは、民間市場への通貨流入量(=民間への仕事の発注)を増やすことと同義。
  • 上述した需要創出のプロセスを厳密に論じるためには、そのプロセスがどのように生み出されるのか? を理解するために貨幣論が必要になる。

 以上です。1点、おそらく貨幣論を混乱させているのは「国債でいいじゃん!」という話だと思います。それを唱えたのが山口薫博士の公共貨幣システム ですが、これは(一定の)信用創造をやめて国会で国債供給量(通貨供給量=需要創出)を決定させようというものかと理解しています。

 しかしそこには、「決定機関が1つだと、危うくないだろうか?」という危惧も存在します。

 「通貨や貨幣はそれはそれ!」と切り離してしまうと、全体論的な解釈が危うくなる場合は、多々あろうかと思います。大変複雑ですが、じっくりした議論をする際には必要な理解であろう、と思います。

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