再エネはガス火力を増大させる事実および、再エネや原発、蓄電池の検討【再掲】


原発の発電性質の一般論

 まず原発という電力はベース電源と位置づけられます。ベース電源に現在の所なり得るのは原発、水力、石炭火力、ガス火力、地熱であろうと思います。ガス火力についてはベース電源の上部構造である調整電源としての性格が強いのですが、ベース電源としても活用は可能かと思います。石炭火力は調整能力にすぐれないためにベース電源と位置づけました。

 つまり原発の代替エネルギーとして考える場合、絶対に外してはならないのは「ベース電源として安定的に同じ出力を出せること」です。

 さらにもう1つは「原発と同程度、ないしやや劣る程度の発電量が必要である」ということは、当然の前提条件です。

 日本の電力需要の1~2割程度を「準国産並に」賄えねばならない、ということです。ここまでは原発の発電性質の一般論であり、電力構造を論じるものであれば誰でもご存知かと思います。

 先に結論だけ申し上げます。原発過去に賄っていた1~2割(ないしピーク時の3割)を再生可能エネルギーで賄うとすると、同じぶんだけバッファとして火力発電所(主にガス火力)が必要となります。これはイコールで「天然ガスの輸入量が原発で1~2割を賄っていたときより増える」ことを意味します

 まずは一般的とされている”現実として実用化されている”再生可能エネルギーおよび蓄電池から論じていきましょう。

 ちなみに、水力は除外します。また地熱については後述します。

 なお、この議論にまだ実用化されていないものは含みません。なぜならば「研究開発中」とは「アテになるかどうか不確実」を意味するからです。そのようなロマンで電力構造の議論は成り立ちません。

 もし「その技術は確実に実用化できるんだ!」とおっしゃるならば、ぜひともその知見を生かして開発に携わってください。多分、それは天才だと思いますから。

蓄電池についての現状と再生可能エネルギー

 例えば大阪に台風が来たとしたら風力、太陽光、潮力発電等々は不能になるでしょう。台風の期間中、蓄電池が持てば問題はないのですが、果たして持つかどうか?それほどの余剰電力を常時蓄えることが可能かどうか?という問いが必要でしょう。

 これは完全に現時点では「無理」です。

 世界最大の蓄電池120MW時、2万人が4時間使える(スマートジャパン 2017.3.13)

 上記の設備を大阪に130個作っても大阪人(大阪市)260万人が4時間耐えられるだけです。(自然エネルギー100%時)

 仮にドイツ並みの3割を自然エネルギーとしても40個の設備で4時間持つだけ。とすると1日持たせるのに240個、3日間持たせるのに720個もの上記の設備が”大阪市だけ”で必要になります。(※1)

 1割や2割の場合はご自分で計算してください。

 この蓄電施設の個数の問題は「場所」の問題でして、財政的な問題を指摘するものではありません。

 まあそもそも上記は電力需要と電力供給の差を吸収するスマートグリッド系の話で、台風などを想定したものでもありませんが(汗)

 そういった設備は未だにないと思われます。

 再エネ先進国と言われるドイツでは風力が再エネの主力です。

ドイツのエネルギー関係データ 発電のエネルギー源別内訳(ドレスデン情報ファイル)

 風力は基本的には風速25メートルで停止するように設計されております。台風のパワーを電力に!最強の風力発電への挑戦(マグナス風車の話)(EMIRA)については、まだ実用化されていないので論じません。

 したがって日本も風力を主力としようとすると、そのバックアップとしてガス火力発電所を増設ないし増強する必要が冗長性の確保の意味からも必要です。

 なお潮力については候補にできる場所が日本で数ヶ所、というお寒い有様でして、そもそも補助にすらなるかどうか怪しいのです。

 また太陽光発電は上記のドレスデン情報ファイルのリンクおよび再生可能エネルギーの課題(関電)を見てもらえれば分かる通り、曇天ですら効率が格段に落ちるものですので論外と考えて良さそうです。※1の議論を参照してください。

 余談ですが日本の太陽光発電量の世界シェアはじつは3位です。

世界の太陽光発電能力 国別ランキング・推移(GLOBAL NOTE 2017年)

 とすると常識的に考えても、再生可能エネルギーのシェアで伸ばしていくとしたら風力であり、アメリカやヨーロッパと異なり毎年のように台風の季節が来る、電力需要の多い夏にどうするのか?となると、原子力を使わない前提で考えると火力発電所のバックアップが必要不可欠になります。

 それはイコールで「原発を稼働させていたときより、ガス輸入が増える」のであり、外国依存が増大するという話になるわけです。

 すなわちエネルギー安全保障としてみた場合、じつは再生可能エネルギー(水力、地熱を除く)は、「国産エネルギー」と言われますけれども、実態としてはエネルギー安全保障を減衰させるということになります。

 さて、再生可能エネルギーを充実させるとガス火力の発電量などは増えるのかどうか?を実際に検証してみましょう。

日本の再生可能エネルギーの発電比率は高い?低い?(電気の比較インズウェブ)

 2011年の原発停止前と、2016年の比較です。(原発すべて停止は2012年5月)

 原発、水力、再エネ、これらは準国産、ないし国産エネルギー(と言われている)ですから合計しますと2011年は20.5%が国産エネルギーです。

 では再エネが5.1%伸びた結果どうなったのか?2016年は国産エネルギーの割合が17%、というわけで輸入エネルギーの割合が3.5%上がっております。この約3.5%が見事に調整電力として働く天然ガスに転嫁されております。

 これは偶然だろうか?とお考えくださいませ。

 ちなみに日経新聞でやっと出てきた真っ当な「再生可能エネルギー」報道(BLOGOS)によるとこうです。

5月10日付け日本経済新聞(電子版)では、同社の竹田忍編集委員が「脱原子力政策と再生可能エネルギーシフトを推進するドイツについて、現地事情に詳しいスイスの大手電力会社、アルピックのヴォルフガング・デンク渉外担当官に聞いた」として、次のような同氏のコメントなどを掲載している。

  • 再エネは化石燃料や原子力を代替しなかった。
  • 石炭火力は需給調整機能も担い、簡単には廃止できない規制がドイツにはある。火力と原子力の両方を減らすのは現実的でなく不可能だ。
  • (再エネの余剰電力分について)輸出は年々増加しており、13年は338億キロワット時、15年は518億キロワット時の余剰電力をスイスやチェコ、ポーランドなど周辺国に輸出した。
  • EUでドイツは統合送電網の拡充を主張している。統合というと聞こえは良いが、輸入側の実需を伴わない電力が流入しやすくなる仕組みは電力市場のゆがみを引き起こしかねない。
  • (ドイツ北部の大規模な風力発電、洋上風力発電の設備について)いずれも巨額の投資を要し、地球環境問題への対策と言うよりも有力なビジネスと化した。
  • 風力推進と山林保護という環境保護団体同士の間で利害の対立から緊張が生じている。
  • CO2削減を優先するのならば(再エネの増強よりも)化石燃料を減らすべきだ。
  • 私見だが、ドイツが工業国であり続けるためには火力発電が必要。温暖化ガス排出問題で比べると原子力発電所が多いフランスは優等生で、ドイツはワーストだ。

 余談ついでに世界的なエネルギーミックスの現状も見てみましょう。

【エネルギー】世界各国の発電供給量割合[2017年版](火力・水力・原子力・再生可能エネルギー)(サスティナブルジャパン)

 やたらと日本では「再生可能エネルギーで日本は遅れている!」と言われますが、エネルギーミックスとしてみた場合にじつは世界的にはかなり平均的です。

蓄電池のブレークスルーなき再エネは電力構造として実現が難しい

 まとめますと現段階では自然エネルギーとして有力とされているもの(水力、地熱以外)は、構造として「自然エネルギーのシェアを増やせば増やすほど、火力発電所が必要になる」ということになります。

 また現段階では蓄電池のブレークスルーは起こっておらず、起こるかどうか?は不確実であるために当てにはできない。起こってもいないことを「さもこれから確実に起こる」として論じられるほど、技術革新というのは確実性のある話ではないのです。

 なにせ研究開発投資というのは「不確実性への投資(というか投資は全てそうですが)」なのですから。

 要するに蓄電池という「単一技術」への投資は、それが確実な結果をもたらすかどうか?は当てにならないというわけ。経済全体としてみれば投資金額=何らかの成果(技術革新)が生まれる可能性が高い、のですけれどもね。

唯一の有望な再生可能エネルギー地熱

 地熱発電の研究は1990年代から冷遇されていたようでして、日本において研究があまり進んでいないようですが、試算によれば日本全国の地熱をすべて活用するとすると33000メガワット(原子力発電所15~30個分くらい)になるとの研究もあるようです。

 またベース電源としても優秀である、と言えるでしょう。

 しかし問題点は温泉に影響があるのではないか?という点が多く取り上げられておりまして、それが1点。もう1つは地熱発電所候補地の多くが国定、国立公園と重なる点です。

 国立公園とは「自然環境を保護するための規制」であったりしまして、つまり自然エネルギーと言いながら自然破壊になってしまう可能性が高いという矛盾を地熱発電は含んでいるのです。

 主に地熱発電で心配されている影響は以下です。

  1. 湧出するお湯が減少する。もしくは枯渇する。
  2. 地下深くを掘ることによって地盤に変化が起き地震が誘発される。
  3. 同じく地盤の変化によって崖崩れが誘発される。
  4. 地熱発電に利用しない熱水を地下に還元することで地下水が汚染される。

 地震で原発事故が起こり、安全性へのリスクや不安や心配しての自然エネルギーの議論だと思うので、その自然エネルギーが地震を誘発するなど論外でありましょう。研究として国をあげて取り組む分には賛成ですが、それは上記のようなリスク軽減をどのようにするか?という環境アセスメントの問題の解決及び研究が主になりそうです。

 またどうしても地熱は温泉街とかぶるために、温泉を諦める必要性が出てくる可能性が高く、私は個人的には温泉が大好きですので反対の立場をとっておりますが、どうしても反対というわけではありません。

将来的に有望な再エネはないのか?

 海藻をエネルギーに変換する水産バイオマス実現への道のりによると昆布からメタン(天然ガス)を取り出せるとのこと。またこんな記事も。

ニッポンがエネルギー資源大国になる日 ~バイオ燃料「藻類バイオマスエネルギー」が導く未来~

 ただし何度も申し上げますが「まだ実用化されていないロマンを、電力議論とエネルギー安全保障の議論を混ぜ込む」ことは反対です。再生可能エネルギーへの投資はたくさんの可能性がありますし、国家としてどんどんやるべきでありましょう。ものになる再生可能エネルギーが見つかるかもしれない。

 しかし電力議論、エネルギー安全保障の議論は「今と将来の確実なものを議論」せねばならないのです。

 現状において再生可能エネルギー(水力、地熱除く)は火力のバックアップが必要ですし、再生可能エネルギーを原子力の代替にするのであれば1割の再生可能エネルギーと、それを支えるガス火力の”増強”が必要です。

 それは「現在より天然ガスの輸入が増える」ことを意味し、エネルギー安全保障としては低下すると論じました。

 発電量がどうだとか言う話ではなく、現在の蓄電池技術では日本の国土条件、つまり平地が少なく山が多い国土条件では、アメリカのように土地が余っているわけでもないので、大規模な蓄電所などは現在のところは非現実的なのです。

 またドイツが風力を主力にできているのは「台風が来ない」という要因もあり、我が国において風力がいまいち広がらないのはこの辺の事情もあるのです。

 ついでに申し上げますと欧州は主に遠浅な場所が多く、洋上風力発電に向いておりますけれども、日本で遠浅な部分はあまりなかったりするのも、日本において風力が不利な理由でもあります。

 また太陽光はすでに発電量として世界第3位であり、十二分に「太陽光発電先進国」といえます。ちなみに太陽光では2017年でドイツを追い抜いていたりします。

 確かに再生可能エネルギーはロマンに満ち溢れております。私も大好物ですけれども、しかし現実としては様々に多角的にエネルギー構造議論、電力構造議論、エネルギー安全保障などを見ていきますと「技術的にもまだまだ難しい」というのが実情なのです。

 再エネへの過剰な期待は禁物なのです。

 また現在の安定した電力に、我々国民の生活がかかっているという現実を忘れるべきでもありません。

 将来的に蓄電池の技術的ブレークスルーや、もしくは昆布からのバイオマスなどが実現したとするのならば、脱原発も可能かもしれません。しかし「現状」ではそれらの夢物語、ロマンをアテにして議論することは避けねばならないと申し上げます。言っておきますけれども、私は積極的原発推進論者ではありません。

 ただ吟味すればするほどに、現時点での現実としては原発再稼働が有力な解として解釈せざるを得ない、というだけの話です。

 またエネルギー源は多数あったほうが良いという議論がありますが、それは「頼りになる」という前提条件が付きます。現段階では風力、太陽光というメジャーな再生可能エネルギーは、「頼りにならない」のであり、補助的なものとして使用するというのがよろしいかと思います。

小話 関電のきりきり舞い

 我が大阪の事情ですが大飯原発の稼働までの間、東北大震災前に160回/年であった火力発電所の起動回数は、平成24年において724回を記録したそうです。「柔軟な対応」とは「冗長性の欠如」とほとんど同義語だったりしまして、関電のきりきり舞いが伝わってくるようです。

 フル稼働で安定供給を支える火力発電所(関電)より。

参照サイトや記事、ソース

以下、他にもあったのですけれども略。

 以上、まだまだ詳しく論じたいのですが、わかりやすさを優先して論を終わります。

 ちなみに本稿の議論は2012年時点の私の検討の、再検討という形になります。なぜ再エネの普及に、蓄電池技術のブレークスルーが必要か?という疑問も解けたのではないでしょうか?

 まず再生可能エネルギーを論じるのであれば、エネルギーのベストミックスをどのように考えるのか?を提示されたほうがよろしいかと思います。私は現時点(将来的には変わりうる)では原子力2割程度、その他は石炭火力ないし石油火力を原子力の分減らす、というのが良いように思います。

 何はともあれ、それぞれの発電形態の特徴及び特色、そしてデメリットと国土条件を加味して検討するだけの話ですので、エネルギーのベストミックスを提示するのはそこまで難しい話でもありません。

 全体像を論じずに、部分に囚われた議論というのはともすれば方向性を見失います。

 おそらくコメントなどを見て多くの人が「どうせベース電源の議論だろ?」と思われかと思いますが、本稿で指摘したい一番の部分は「再エネ(水力、地熱除く)の増大は、ガス火力のバックアップが必要」という部分です。

 また再エネへの投資は国家としてどんどんやってしかるべきでしょう。主に研究投資になるかと思いますけれども、実験的な施設などを作ればそのノウハウの獲得にも繋がります。

 以上にしておかないと、またどんどん他のことを書きそうです(汗)

 3時間ほどソースを巡って精読し、3回ほど書き直し、数時間は書く時間だったかと思いますけれども、大変楽しい検討でありました。

 しかし本稿は私自身が読んでも「ちょっとわかりにくい?」「省きすぎたかも・・」という出来であるのは自覚しております。詳細に論じすぎるとそれはそれで、難解になりそうですのでバランスの難しいところです。

 また後日、例えば「原発vs地熱」などを書いても楽しいかもしれません。

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